機動戦士ガンダム外伝 サイド7最後の銃声   作:震電みひろ

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ついに始まった直接戦闘。

戦闘経験はないが、性能に勝るガンダムに乗り、期待を熟知している技術将校のエイタ。

機体性能は劣るザクだが、戦闘経験は豊富で戦場を知り尽くした古参兵のオダワラ。

果たして勝利するのは?


13,決戦(中編)

オダワラはザクを走らせ、ジャンプし、急制動をかけ、方向転換をして……

ザクの限界とも言えるほどの挙動を行っていた。

だがそれはザクの機体だけではなく、オダワラの55歳の肉体にも過度な負荷をかけていた。

 

……やっぱり若い時と同じようには行かないか……

 

上下左右から絶え間なく襲って来るGに、歯を食いしばりながらもオダワラは自嘲的な笑みを浮かべた。

何しろ敵はオダワラの弾を少々喰らっても、どうと言う事はない。

だが敵の弾は、ザクの超硬スチール合金の装甲を撃ち抜いてくるだろう。

オダワラとしては被弾を許す訳には行かなかった。

 

「それにしても、連邦のモビルスーツの盾は優秀だな」

 

無意識にそう口にしていた。

 

ザクでは重いシールドをマニュピレーターに持たせる事は、腕部に余計な負担をかけるという事で、肩にマウントされる事になった。

このため、右肩を突き出した『ショルダー・アタック』的な時には盾が有効だが、モビルスーツ戦闘のような機動性を要求される時には軽量で自由に盾を構えられる方が有利だ。

連邦軍では、堅牢さよりも衝撃吸収性を重視した軽量なシールドを開発しているのだ。

 

……ザク・マシンガンでは敵の装甲を撃ち抜けない……

 

その時、敵の100ミリ弾がザクのシールドに当たった。

角度が浅かったため鋭い金属音がして弾は弾かれたが、『当たればやられる』状況でこの距離での撃ち合いは不利だった。

 

……いくら装甲が良くっても、全てをカバーできる訳じゃない……

 

例えばモビルスーツのカメラ。これが破壊されれば相手はサブカメラだけ戦わなくてはならない。

戦闘中に視界が制限されるのは大きなマイナスだ。

それとスラスタ。ここに弾を撃ちこむ事が出来れば、内部の推進剤を誘爆させて敵を内部から破壊する事が出来る。

もう一つは関節部。ここだけは装甲で囲っても限界がある。関節部に弾を当てる事が出来れば、相手は行動不能になるだろう。

 

……危険だが距離を詰めるしかない……

 

奇しくもオダワラは、敵モビルスーツ・パイロットと、同じ頃に同じ結論に辿り着いていた。

ザク・マシンガンの弾倉が空になった。

オダワラは予備のドラム・マガジンをマシンガンに装填する。

それが最後の弾倉だった。

 

 

 

「「行くぞ!」」

 

エイタとオダワラは、別々の場所から互いに敵として、同じ声を上げていた。

オダワラのザクが森から横っ飛びにジャンプしながらマシンガンを撃つ。

エイタはシールドを構えながら、ザクとは逆方向に走りながら、100ミリを撃ち返す。

ザクがジグザグに走りながら距離を詰めて来た。

ガンダムも急制動をかけると、そのスラスター推力に物を言わせて低高度でジャンプしてくる。

ザクも巧みにジャンプを組み込みながら、100ミリの弾を躱し続ける。

一方、ガンダムの方もザク・マシンガンの弾をシールドで受け続けた。

 

全長18メートルもの金属の巨人が、住宅街を戦場をして走り回り、飛び回り、互いに銃を撃ち合っている。

モビルスーツの脚が急制動をかけるたびに、急ごしらえのプレハブ造りの一般住宅は模型のように壊れて飛び散った。

相手に命中しない弾が、そこら中に着弾し、コロニー内のビルが、住宅が、地面が吹き飛ばされる。

 

熟練パイロットが操るザクが上か?

機体性能で上回るガンダムが上か?

 

両機とも小型熱核融合炉はフル稼働だ。ジェネレーター出力も限界まで引き出している。

機体温度は既に人間の手では触れないレベルだ。玉子を落とせば即座に目玉焼きが出来るだろう。

そして双方のモビルスーツとも、アクチュエーターなどの可動部分も悲鳴を上げ始めていた。

 

 

 

エイタは額から汗が流れ出るのを感じた。

パイロット用ノーマルスーツは、それ自体がかなりの体温調節機構がついている。

おそらくコックピット内はすでに50度を超えているだろう。エアコンを付けていてもだ。

ザクとの距離は100メートルほどだろうか。

ガンダムの右腕が持つ100ミリ・マシンガンも、いま付けている弾倉が最後だ。

敵のザクが左への移動から右への移動に切り替えようと、一瞬だけ動きを止めた。

 

「くたばれっ!」

 

エイタはそのチャンスを逃さず、100ミリ・マシンガンを連射した。

 

 

 

 

オダワラは荒い息をついていた。

やはり50歳を過ぎてからの長時間戦闘は身体に応える。

そしてそれはザクも同じだった。

さっきから右足の反応応答性がおかしい。何か緩い感じがする。

それでも敵に狙いを付けさせないため、高負荷運動を続けざるを得なかった。

オダワラが右への横移動から左への移動に切り替えようとした瞬間。

ザクの右足が「グニャ」と少しだけ揺らいだ。

 

……ショックアブソーバーがヘタったか?それともモーターが一部切れたのか?……

 

その一瞬の隙をついて、敵モビルスーツが銃を向けてくる。銃口から閃光がほとばしった。

 

とっさにオダワラは右肩のシールドでその銃弾を受け止めた。

だが連続発射された100ミリ弾はついにその一弾がシールドを突き抜け、ザク本体にマウントされているラッチ部分を破壊する。

 

「むう」

 

次の左移動で敵弾を回避するが、もはやザクのシールドは機体にブラブラとくっついている重荷なだけで、役には立たない。

オダワラは左のマニュピレーターを操作して、右肩のシールドをもぎ離した。

そのまま連邦のモビルスーツに向かって投げつけると、それを目くらましにしてマシンガンをフルオートで連射しながら突進する。

 

 

 

「やったのか?」

 

エイタがそう思った瞬間、ザクは右肩のザク・シールドをもぎ取ると、ガンダムに向かって投げつけて来た。

 

「なっ!」

 

短い叫びと共に、エイタはそれをガンダムの右腕で跳ねのけた。

予想外の攻撃で不意を突かれたのだ。

 

だがその時には突進して来たザクがかなり近くまで来ていた。

腰だめで抱えられたザク・マシンガンがフルオートで弾丸を吐き出す。

エイタは左腕に持ったシールドをでそれを受けたが、敵の一弾が右手の100ミリ・マシンガンを直撃した。

 

「しまった!」

 

エイタはそう声を上げたが、その時には100ミリ・マシンガンは無残に砕け散っていた。

しかしザクの方もそれが最後の弾だったのか、ザク・マシンガンを放り投げた。

そのまま右手が背後からヒートホークを取り出す。

 

「くっ」

 

エイタも100ミリ・マシンガンの残骸を手放し、右ふくらはぎ外側にガンダムの右手を伸ばした。

そこに格納されたビーム・サーベルが飛び出す。

エイタのガンダムがビーム・サーベルを握った時、ザクが突進の勢いそのままに、ヒート・ホークを振り下ろしていた。

 

 

 

オダワラのザクは走りながら、マガジンが空となったマシンガンを投げ捨てた。

代わりに腰の後ろに装備してあるヒート・ホークを取り出す。

 

盾を捨てた事で機体のバランスが多少変わったが、オダワラほどのベテラン・パイロットにとっては問題にならない。

むしろ機体が軽くなった事、モビルスーツの右腕回りの動きが軽くなった事は、近接戦闘では有利だ。

しかも幸運な事に、最後にマシンガンで放った一連射が、敵のマシンガンを破壊した。

 

オダワラは突進の勢いを殺さずに、振り上げたヒート・ホークを打ち下ろした。

敵はその弾痕だらけの赤い盾でガードする。

ガツンッ!

勢いよくヒートホークが敵のシールドを貫通する。

そのまま赤く光る刃が、敵モビルスーツの濃紺の胸部上側に当たった。

 

……シールドで防がれた分、致命傷にはならなかったか……

 

オダワラがそう思った時、敵は破損したシールドを振り上げ、右手に持ったビームサーベルを一直線に突き出してきた。

 

「狙いはコックピットか!」

 

オダワラは急いでザクを後方に飛び下がらせる。

だが敵モビルスーツのビームサーベルの先端が、僅かに腰部冷却用パイプを傷つけていた。

パイプから凄まじい勢いで冷却材が霧状になって噴出する。

 

「マズイッ!」

 

ザクの腰のパイプは熱核融合炉の冷却用だ。

傷ついても即座に動けなくなる訳ではないが、時間が経てば排熱が追い付かなくなり、爆発する危険性すらある。

 

「新米将校が……」

 

思わずオダワラは呪いの呻きを漏らした。

 




この続きは、本日夜8時に投稿予定です。
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