オダワラの乗るMS-06ザク。
双方ともマシンガンの弾は尽き、近接戦闘用の武器を手に戦う。
「危なかった……」
エイタは全身から、ドッと汗が噴き出るのを感じた。
ガンダムのシールドは、既に限界近くまでマシンガンの弾を受けていた。
そこにザクが走り込んでヒート・ホークを振り下ろしてきたのだ。
辛うじてシールドで受けたが、ヒートホークの刃はその部分を貫通して、ガンダムの胸部上側、コックピットハッチの部分にガツンと当たったのだ。
幸いにしてそこを突き抜けるほどではなかったが、もう少しシールドが痛んでいれば、エイタはコックピットごと焼き切られている所だ。
コックピット・ハッチは二重になっているが、その衝撃は内側ハッチに取り付けられた『上方視界用モニター』まで破損していた。
「だけど前方視界に影響が無ければ問題ない!」
エイタはシールドごと相手の右手を跳ね上げると、すかさずビーム・サーベルを突き出した。
だが相手は瞬時に後ろに飛び下がる。
サーベルの刃は相手の腰のパイプを傷つけただけだ。
エイタのガンダムは右マニュピレーターにビーム・サーベルも握って仁王立ちになる。
既にアテにならないシールドは捨ててある。
……負けられない……
エイタは目の前にザクに、全身の闘志を燃やしていた。
白と深緑の巨人が戦っている。
白い巨人はピンク色に輝く光の剣で。
深緑色の巨人は刃が高熱で赤光する斧で。
それぞれの得物を振り回し、相手の得物を躱す。
一瞬が永遠にも思えるほどの緊張の中。
二体の巨人が互いに距離を取った。
エイタのガンダムは既に全身が傷だらけであった。
頭部のV字アンテナは片方が破損し、顔面左側部分に大きな傷があった。
左腕マニュピレーターはヒートホークの一撃を受けて、肘から下が切り落とされている。
その他も胸部・腹部・腰部アーマーの予備電池など、至る所にヒートホークによる傷を受けている。
だが一番マズかったのは、ジェネレーターの異常だった。
エイタは戦闘が始まる前、ジェネレーターのリミッターを解除した。
そのためRX-78に匹敵する戦闘出力を維持できたが、この機体に使われている余剰部品・テスト部品では耐える事が出来なかった。
連続的に高出力を出し続けるジェネレーターは、既に計算上の耐熱温度を超えていた。
ガンダムの機体から熱気で陽炎が立ち上るほどだ。
コックピット内のエイタも、ノーマルスーツの体温調節機構があるにも関わらず、既に全身が汗でぐっしょりと濡れている。
コックピットの内部温度も50度を超えていた。
しかしエイタの目は戦意に燃えていた。
今のエイタは慎重で戦い嫌いの技術士官ではない。
戦うためだけの獣となっていた。
だがエイタの身体もガンダムの機体も、既に限界に達していたのだ。
それはエイタ自身にも解っていた。
エイタが操作レバーを握る。
ガンダムの右手が同じようにビームサーベルを握りしめた。
「いよいよ最後の時か?」
オダワラのザクも、既に満身創痍の状態であった。
オダワラの操縦技術で辛うじて直撃だけは避けていたが、ザクの全身いたる所がビームサーベルで抉られている。
左腕は肩の下、上腕部で斜めに断ち切られていた。
そして何より致命的だったのは、最初の一合で腰の冷却パイプを切られている事だった。
既に小型核融合炉の温度は危険域を越えている。
このままでは大爆発を起こしかねない。
さらには連続的に高温を発し続けているヒートホークの刃の部分が、物理的に弱くなってきているのだ。
オダワラは敵モビルスーツを睨んだ。
……今の状態のヒートホークでは、敵のあの装甲は簡単には破れない……
オダワラは先ほど、ガンダムの左腕を断ち切った事を思い出した。
……関節部までは頑丈な装甲で覆えないと言う事か。狙うとすれば足の膝関節だな……
オダワラのザクがヒートホークを構えた。
「次が最後の一撃だろうな。俺はこの一撃に、軍人人生の全てを賭けるぜ」
「うおぉ!」「いやぁっ!」
ガンダムとザクが、ほぼ同時にダッシュした。
だが先に仕掛けたのはガンダムだ。
ビームサーベルはヒートホークより間合いが長い。
ガンダムの右腕がビームサーベルを横殴りに払った。
ザクの頭部が切り飛ばされる。
だがそれはオダワラにとって計算済だ。
頭部には各種センサーや運動コンピューターもあるが、それで即座に全体が停止する訳ではない。
身体を屈めて頭部を無くしたザクが、やはり横殴りにヒートホークを振るう。
ガツン!という固い音と共に、ヒートホークの刃がガンダムの左膝に半分以上食い込んだ。
ガクンとガンダムの体勢が崩れる。
ザクは素早くヒートホークを引き抜くと、今度は上からガンダムの頭部目掛けて振り下ろした。
だがガンダムもほぼ同時に右手のビームサーベルをザクに向かって突き出していたのだ。
ガンダムのビーム・サーベルはザクの胸部中央を貫き、
ザクのヒート・ホークはガンダムの左肩にめり込んでいた。
そして、ほぼ同時に、エイタのガンダムも、オダワラのザクも
『活動不能』の警告をモニターに映し出していた。
この続きは、明日正午過ぎに投稿予定です。