機動戦士ガンダム外伝 サイド7最後の銃声   作:震電みひろ

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RX-79T『プロト陸戦型ガンダム』に乗る戦闘経験の無い技術将校エイタと、
MS-06ザクに乗る退役間近の熟練兵士オダワラ。

双方のモビルスーツは傷つき、ついに相打ちとなって両方とも行動不能になる。
そして二人のコックピットには『機体爆発のアラート』が鳴り響く。


13,決戦(後編2)

ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ!

 

コックピット内部に警告音が鳴り響く。

モビルスーツ同士が正面からぶつかった衝撃で、オダワラの意識は若干朦朧としていた。

その虚ろな目でモニターを見た時、オダワラの意識は一気に覚醒した。

 

……熱核融合炉の炉心温度、爆発危険域だと!……

 

このまま行くと、いつ核融合炉が爆発するか分からない。

オダワラは急いでシートベルトを外すと、コックピット・ハッチの開閉スイッチを押した。

が、ハッチは開かない。

 

……ハッチの開閉装置が壊れたのか……

 

オダワラはシート横にある『非常用ハッチ開放ハンドル』に飛びついた。

だがハンドルは固くて動かない。当然だ。ちょっとやそっとで動くようでは、気密性の点で逆に問題だろう。

蒸されるようなコックピットの中、オダワラは必死でハンドルにしがみ付いた。

だがハンドルはまったく動かなかった。

 

……このままでは死ぬ……

 

オダワラの中で焦りが生じる。

戦士として戦って死ぬならいざ知らず、こんな所で蒸し殺されるか、爆発で死ぬなんて真っ平だ。

ふと思い出してシート脇にあるアサルト・ライフルを取り出す。

その銃身をハンドルに差し込み、テコの原理で力を込めた。

するとあれほど強固だったハンドルが、ゆっくりと回り始めた。

オダワラは何度もライフルを刺し直し、ハッチ開放ハンドルを回して行く。

やがてゆっくり、ゆっくりとハッチが開いていく。

 

ついにハッチが半分まで開いた。

ここまで来れば何とか通り抜ける事が出来るだろう。

オダワラは藻掻くように、開いたハッチの隙間に身体をねじ込んだ。

 

 

 

ビーッ、ビーッ、ビーッ、ビーッ!

 

コックピット内部に激しく警告音が鳴り響く。

エイタは虚ろな目で正面モニターを見た。

敵のザクは沈黙している。

 

「やった……のか……」

 

全身の力が抜けるような気がする。

そのままシートに身体を預けようとして気が着いた。

 

……この警告音は何だ?……

 

正面モニターには「ALERT」の文字が赤く点滅していた。

そしてモビルスーツの機体状況を映すモニターを見ると、機体各部が赤く点滅している。

そして……

 

……ジェネレーター異常だって?……

 

エイタは我が目を疑った。

ジェネレーターが熱暴走し、それに連動する小型熱核融合炉が異常反応を起こしている。

このまま行けば大爆発を起こすだろう。

気が付けばコックピット内の温度も60度を指そうとしている。

ノーマルスーツを着ているから気づかなかったのだ。

 

エイタは慌ててシートベルトを外すと、コックピット・ハッチを開くスイッチを押した。

 

ガコッ

 

何かが詰まったような音がして、ハッチの開閉が止まる。

 

このプロト陸戦型ガンダムのコックピットは胸部中央にあり、そのハッチはコックピットの上部だ。

ハッチは二重構造になっていて、内側が上部モニターを付けた内部ハッチ、外側に外部装甲を兼ねた外部ハッチがある。

その外部ハッチが、ザクのヒートホークの一撃を受けて変形し、完全には開かなくなっていたのだ。

開いた隙間はわずか10センチ足らず。

ノーマルスーツを着ては、腕を出すだけで精一杯だ。

 

エイタは恐怖した。

このままでは、ここで蒸し殺されるか、モビルスーツと共に爆死するかのどちらかだ。

モニターを見ると、敵のザクも高温を発しているらしい。

エイタは必死に外部ハッチを叩いた。

だがモビルスーツの装甲でもある外部ハッチが、そんな程度で開く訳がなかった。

既にエアコンも停止している。

ノーマルスーツの体温調整機構も間もなく効かなくなってくるだろう。

 

「誰か、助けてくれ!」

 

思わずエイタはそう叫んでいた。

 

 

 

オダワラがザクの太腿部分を伝って降りようとした時だ。

 

「誰か、助けてくれ!」

 

そう叫ぶ声が聞こえた。

ふと声の方に目をやると、連邦のモビルスーツの胸の中央部分の上側が、わずかに開いている。

 

……あそこがこのモビルスーツのコックピット・ハッチなのか……

 

すると中から白い手が出て、ハッチを必死に持ち上げようとした。

だが装甲が歪んでいるせいか、ハッチが動く様子はない。

 

……あの様子じゃ、まず出られないだろうな。気の毒に……

 

さっきまで命を賭けて戦っていた相手だが、オダワラは哀れみを感じずにはいられなかった。

 

……だからと言って、俺に出来る事は何もないけどな。これも戦争の現実だ……

 

オダワラはそのままザクのふとももから地面に降り立った。

そのままモビルスーツから急いで離れるべきだったが、なぜかもう一度視線が先ほどの場所に向いてしまった。

白い手は何度もハッチを叩いている。そして次には中から押し開けようとしていた。

まだ若い将校だが、最後の瞬間まで生きようと足掻いているのだろう。

 

……嫌なものを見てしまった……

 

オダワラは無理に視線を引きはがすように顔を背ける。

その時、幼い甥の姿が目に浮かんだ。

 

……あの子もあのパイロットと同じくらいの年頃なんだよな……

 

オダワラは何故か自分がとてつもなく、人としての道を踏み外しているように感じられる。

 

「エエイ。クソッタレが!」

 

オダワラはいま降りて来たばかりのザク機体をよじ登り始めた。

 

 

 

エイタは何度も何度も外部ハッチを叩いた。

さっきは無意識に「助けてくれ」と叫んだが、ここでエイタを助けてくれる者は誰もいない事は解っていた。

それでも叫ばずにはいられなかった。

渾身の力を込めて、ハッチを押し開けようとする。

だが何度やっても、ハッチはビクリとも動かなかった。

 

……俺は、こんな所で死ぬのか?戦闘でもない、別の原因で……

 

そう思った時だ。

外部から誰かの怒鳴り声が聞こえる。

 

「連邦のパイロット、ハッチから離れろ。今からそのハッチを引きはがしてやる!」

 

……え?……

 

エイタは驚きながらも、ハッチにかけた手を離して、上を見つめた。

するとわずかに開いた隙間から、深緑色の無骨な鉄の指が見えた。

そしてハッチを掴む振動が響くと、メリメリという音を立ててハッチを引きはがして行く。

やがて完全にハッチがもぎ取られると、それを投げ捨てる音が聞こえた。

 

エイタは呆然としながらもハッチから身を乗り出した。

正面には、同じくハッチを破壊したザクの中に、ジオンのパイロットが見える。

オダワラは自機に戻ると再びコックピットに潜り込み、まずは自分のハッチを破壊して正面が見えるようにし、続いてガンダムのコックピット・ハッチを破壊したのだ。

 

ガンダムのハッチから呆然と上半身を晒しているエイタに、オダワラは怒鳴った。

 

「ボケッとしてんな!もうすぐ、俺とオマエのモビルスーツは爆発する。今すぐに出来るだけ遠くに逃げろ!せっかく助かった命だろうが!」

 

オダワラはそう言うと、ザクのコックピットを飛び出し、そのまま太腿を滑り降りて走り出して行った。

エイタも慌ててガンダムの胸部から、非常用ワイヤーを引き出して地面に降りる。

一目散にオダワラとは逆に北側を目指して走った。

息が切れても走り続ける。

五百メートルほど離れた時、背後で爆発音が響いた。

 




この続きは、本日夜9時に投稿予定です。
次が最終話となります。
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