機動戦士ガンダム外伝 サイド7最後の銃声   作:震電みひろ

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無人となったサイド7に残された「データ収集用のプロト陸戦型ガンダム」。
その機体とデータを回収に来た地球連邦軍の技術将校、エイタ・ジョンソン・ソウマ。

だがサイド7には「もしかしたら残された情報があり、それを連邦軍が回収しにくる可能性がある」と言う事で、ジオン軍の古参兵・ヒロシ・オダワラが潜んでいた。

戦闘経験のない技術将校が、定年除隊直前の古参兵のいる無人のサイド7に入る。


3,起動

エイタはランチを操り、サイド7の宇宙港に入れた。

さすがにエイタ一人のために、宇宙巡洋艦がわざわざサイド7に立ち寄る事はなかった。

 

「戦闘があったからゴミも大量に浮遊してるし、帰りは迎えに来てくれるって言うからいいんだけどな」

 

エイタはそう独り言を言いながら、ランチを降りると気密ブロックに入る。

三つの気密ブロックを抜けて、ようやくコロニー内部に降りられるエレベーターに辿り着く。

ここから3250メートル降りればコロニーの内壁、人工の大地だ。

ガンダムとザクとの戦闘でコロニー外壁に損傷があると聞いていたが、既に空気の流出は止まっているらしい。

 

エイタはエレベーター内で重たいノーマルスーツを脱いだ。

これから反対側にある工廠エリアまで行くのだ。

その距離は30キロ。EV(電動カー)で移動するとは言え、ノーマルスーツを着ているのはしんどい。

 

「モビルスーツに乗るんだから、パイロットスーツくらい用意してくれてもいいのに」

 

エイタはまたもや独り言で愚痴を言った。

同じノーマルスーツでも、標準のノーマルスーツとパイロット用では動きやすさと快適さが段違いだ。

だが彼が乗って来た宇宙巡洋艦『エインズワース』には、余分なパイロットスーツは無いと言う事だった。

補給係いわく「工廠ならパイロットスーツくらいあるから問題ない」との事だった。

 

エレベーターが地上に到着すると、エイタは畳んだノーマルスーツを抱えてEVまで移動する。

一応、軍の備品だ。放置はできない。

 

オープンカータイプのEVに乗り込むと、無人のコロニーの中を南(太陽がある方向)の工場地区に向かって進んだ。

工場地区の端には耐圧隔壁があり、その向こう側にはさらに建設途中の区画が続いている。

 

コロニー内部は所々破壊されてはいるが、住宅地はほぼ元のままだ。スーパーなどの商店も、そのまま残っている。

そして人の姿だけがない。

 

……まるで幽霊船ならぬ、幽霊コロニーだな……

 

事前に「完全に無人」と解っていても、無意識の内に人の姿を探してしまう。

だが見かけるのは遠くを飛ぶ鳥の姿と、置いてきぼりにされた犬や猫の姿だけだ。

 

左手に目をやると、白い一本の線がコロニーの北側から住宅街・森林地帯を貫いて南側まで続いている。

大型構造物や資材を運搬するための専用道路だ。かっては自動運転トレーラーがそこを行き来していたのだろう。

地球で言えば『貨物専用列車』に相当すると言える。

 

やがて住宅街を抜けると森林地帯に入った。

 

……さすがに地球連邦が肝入りで作っただけあって、まだ新しいコロニーにも関わらず木の高さが高いな。地球から運んでくるだけでも金がかかっただろうに……

 

エイタは道の両側の森を見ながらそう思った。これだけの高さのある樹木なら、モビルスーツを隠す事が出来そうだ。

 

森林地帯を抜けると工場区画だ。

目的地はこの工場区画の一番南の山側だ。

コロニーは円筒形の両端を『山』と呼んでいる。その名の通り傾斜した地形になっているのだ。

 

エイタは工場区画の中でも一番奥にある『小型宇宙艇製造工場』の前にEVを止めた。

スマホで位置を確認する。ここで間違いないはずだ。

けっこう大きな工場だ。この工場は、表向きはコロニー間で人や物資を輸送する小型宇宙艇を製造している事になっている。

 

エイタは工場横の作業員が出入りする扉から中に入った。

工場の中は薄暗い。電気は切ってあるのだろう。

工場中央にある管制室に向かう。工場内には四隻の建造中の小型宇宙艇があった。

中央の二隻はまだ骨組みと外装の下側しか出来ていない。

管制室のパソコンを操作する。ログインのパスワードなどは情報通りだ。

すると中央の二隻の小型宇宙艇が左右に移動し、その下にぽっかりと大きな地下空間が開いた。

パソコンを操作すると、その地下空間部分にも電灯が燈る。

そこまでの操作をするとエイタは管制室を出て、新たに開いた地下空間に向かった。

 

地下空間には、様々な計測器と共に、モビルスーツの盾と傍らにビームライフルが置かれていた。

だが肝心のモビルスーツが無い。

そして中央には、地下空間のためか、コロニーの構造材が大きく張り出していた。

エイタは地下空間に設置されたパソコンの一つに近寄り、それを操作する。

するとコロニーの構造材と思われた部分が、「ゴンゴンゴン」という重々しい音を立てて開いていった。

中にあったのは……ガンダムタイプのモビルスーツだった。

 

『RX-79T』

RX-78の試作部品や余剰部品で組み上げた1G下でのモビルスーツのテストベッド機。

その機体を見た時、エイタはほっと独り言を呟いた。

 

「良かった。ここはジオンには見つかっていなかった、って事だな」

 

そう言いながら、パソコンのモニターに映るモビルスーツの各種機能をチェックする。

外から見る限りは問題なさそうだ。

核融合炉に必要な重水素も、スラスターの推進剤も十分に補給されている。

 

「後はコックピットに入ってからだ」

 

パソコンをシャットダウンすると、エイタは横たわるRX-79T『プロト陸戦型ガンダム』に近づいた。

ジオンのモビルスーツ『ザク』に比べて角ばった外観を持つガンダムを、エイタは改めて見上げた。

 

RX-79Tは1G下、つまり地上戦を想定しているため、コアブロックシステムは組み込まれていない。

RX-78が鳩尾部分にコックピットがあるのに対し、RX-79Tは胸部中央にコックピットがある。

そのコックピット部分の両側にはバルカン砲が備え付けられている。

 

エイタはガンダムの左腕部分からよじ登り、モビルスーツの首の下、胸パーツの上部に来た。

コックピット・ハッチの暗証番号を入力すると、軽い駆動音と共にハッチが跳ね上げるように開いた。

 

「システム、完全に止まっているよな、やっぱり」

 

エイタは暗いコックピットに潜り込むと、仰向けになるような感じでシートに収まった。

コックピット右下にあるパネルの起動スイッチを入れると、右下のタッチパネルに暗証番号の入力画面が表示された。

エイタが暗証番号を入力すると、正面モニターに『システム起動中』のメッセージが表示される。

それと共に様々なコマンドラインやシステムチェックのログが、大量にスクロールされていく。

これは本機体がテストベッド機のためだ。実戦配備される時には、こんなOSやドライバのログは必要ない。

 

やがて別ウィンドウで『熱核融合炉起動』というメッセージが表示された。

ミノフスキー物理学を応用した超小型熱核融合炉は、安全性が高いだけではなく、通常運転出力までの反応も早い。

 

三分ほど経っただろうか。

やはりモニターに『ジェネレーター出力を制限しますか?(Yes/No)』のメッセージが表示される。

本来のRX-78と違って、試作品やB品を使用しているこの機体では、ジェネレーター出力を10%ほど低い1250kWに押さえている。

エイタは『Yes』をタッチした。

するとモニターが青く変わり、機体各部の状況を知らせる計測ウィンドウが表示される。

起動準備の完了だ。

 

エイタは四点式のシートベルトを締めた。この時点ではパイロットスーツを着用する必要はないだろう。

天井部分に当たるコックピット・ハッチを閉じる。

すると天井部分はモビルスーツ上部を映すモニターとなった。

左右の操作レバーを握る。スロットルを軽く捻るとジェネレーターからの電力供給が上がり、機体が軽く振動すると同時に、胸部排気口から排熱された熱い空気が吹き出す。

 

「RX-79T、プロト陸戦型ガンダム。起動します」

 

無意識の内に訓練手順の言葉を口にしたエイタは、それを聞くオペレーターがいない事を思い出して苦笑した。

軽く操作レバーを前に押し出す。

それと共にRX-79Tの機体が上体を起こし始めた。

それまで背中にかかっていた重力が、徐々に腰の部分にかかるをの感じる。

ガンダムが上半身を起こした所で、エイタは気がついた。

 

「無人のコロニーとは言えど、このまま工場の天井を破壊するのはマズイよな。後でバレて始末書とかも嫌だし」

 

コックピット左下の通信用タッチパネルで『格納ゲートオープン』のメニューをタッチした。

すると『小型宇宙艇製造工場』の屋根部分が大きく開いていく。

天井が開くと、6.5キロ先の別の地面が見える。

 

「地球では絶対にありえない光景だな」

 

エイタはそう呟きながら、左右の操作レバーとフットペダルを微妙に操作しながらガンダムを立ち上がらせた。

 

エイタは自分が設計すると同時に、モビルスーツの操縦シュミレーターも開発していた。

そのため、自分でも何度かRXシリーズを動かした事がある。

実戦経験はないが、モビルスーツの移動くらいなら問題ない。

 

エイタは右側面のモニターを見た。

そこにガンダムの盾とビームライフルが置かれている。

エイタはその盾とビームライフルに手を伸ばした。




この続きは、明日AM7:30頃の投稿予定です。
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