機動戦士ガンダム外伝 サイド7最後の銃声   作:震電みひろ

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無人となったサイド7で、戦闘に不慣れな技術将校エイタと、戦闘経験が豊富な退役間近のジオン軍上級曹長オダワラが激突する。

互いに「相手が一人らしい」となり、持久戦となった。二人。
だが武器は互いに乏しい状況である。


8,渇きと疑惑

「クソッツ、なんでこんなに暑いんだ」

 

エイタは顎から滴り落ちそうになる汗を、ハンドタオルで拭った。

そのハンドタオルも既にぐっしょりと湿っている。

原因は解っていた。

ガンダムの小型熱核融合炉を『戦闘出力』に維持していたため、排熱が追いつかないのだ。

 

元々、モビルスーツは戦闘状態ではかなりの高熱を発する。

その冷却のために外部装甲板から熱を逃がすようにしている。

だがRXシリーズの外装であるルナ・チタニウムは、ザクの外装である超硬スチール合金より熱伝導性が悪い。

そのためRXシリーズでは、胸部に大きな排熱口を持っている。大気中では空冷で、宇宙空間では冷却ガスを排出する。

しかし今のエイタのガンダムのように、動かない状態で『戦闘出力』を保っていては、排熱が追いつかないのは当たり前だ。

本来ならは今のようにモビルスーツを待機させている時は『スタンバイ・モード』または『スリープ・モード』にしておくべきなのだ。

 

だが『敵がいつ、どこから現れるか分からない』という状況から、エイタには『戦闘出力』を解除出来なかったのだ。

モビルスーツ本体は『スタンバイ・モード』でもすぐに動かす事が出来る。

だがビームライフルやビームサーベル、またスラスターを利用した運動は、起動後の数十秒は出来ない。

その数十秒が命取りになる可能性は高い。

その結果として、エアコンが装備されているにも関わらず、現在のコックピット内部の温度は40度に達しようとしていた。

 

「このままじゃ敵にやられる前に、俺が暑さでやられちまう」

 

エイタはジェネレーター出力レバーを操作し、ようやく『スタンバイ・モード』にセットした。

 

「水……水が欲しい……」

 

既にエイタの喉の渇きはかなりの所まで来ていた。

 

……しかし水や携帯食料を入れたバックパックは、EVに積んだままだった……

 

そのEVは敵の一射目で炎上している。

 

……このまま持久戦になったら、水と食料は確保しておかないと……

 

三日後には連邦軍の宇宙巡洋艦『エインズワース』が迎えに来るのだ。

たとえここでザクを倒せなくても、三日間乗り切ればエイタの勝利と言える。

 

……だが水も食料も無しでは、三日間を乗り切る事はできない。最低でも水だけは確保しておかねば……

 

エイタは既に乾ききった舌で、やはり乾いた唇を舐めた。

 

……暗くなったら水と食料を探しに行こう……

 

 

 

オダワラは丘の上に作った偽装監視壕から双眼鏡で、連邦のモビルスーツがいる辺りを覗いていた。

 

「奴さん、新米将校のクセに粘るな。一日もしない内に音を上げて動き出すかと思ったんだが……」

 

オダワラはそう言った後で、レーションにあったチョコレート・バーを齧った。

物資不足に悩むジオン公国にとって、チョコレートの原料となるカカオは貴重品だ。

今回は満期除隊の事もあって、補給係が特別にオダワラには支給してくれたのだ。

 

「まだ火事の後が残っていて、赤外線センサーは使えないか」

 

モビルスーツはかなりの高音を発する。

そもそも一時間以上の連続戦闘を想定はしていない。

宇宙空間なら冷却水の循環とスラスターの推進剤の気化熱などで排熱を行うが、コロニー内ではそういう訳にも行かない。

チョコレート・バーを食べ終わったオダワラは、水筒の水を一口飲んだ。

 

「水も手に入らないのに、暑いモビルスーツのコックピット内で息を潜めているのか?」

 

だがそんな我慢は無駄だろう、とオダワラは思う。

オダワラは監視壕を出て丘を降りると、生理現象の事前解消として放尿した。

その時、ふとある思いが頭を過る。

 

……あの新米将校はランチで来たという事は、連邦軍の船は奴を途中で降ろしたと言う事だ。つまり帰りに拾っていくのだろう。長期戦になればコッチが不利だ……

 

……敵のパイロットが一日中コックピットの中に籠っているのは、近い内に味方の迎えが来る事を想定しているのかもしれない。そうすると俺が考えているより早く、ここに連邦軍がやって来る事になる……

 

オダワラはズボンのチャックを上げると、再び丘の上に立って敵モビルスーツがいる辺りを眺めた。

 

……連邦軍の増援が来るまで時間がかかるとしたら、敵のパイロットも一度はコックピットを出て、水や食料を探すはずだ。一度は相手の様子を偵察しに行った方がいいな……

 

そう考えたオダワラは、さっそくコックピットに戻ると白兵戦用の無反動ライフル70-Rカービンを取り出した。

腰のホルスターにはナバン62式拳銃が収められている。

 

……敵の新米将校が動くとしたら、やっぱり暗くなってからか……

 

オダワラはザクを『スリープ・モード』にセットして、コックピット・ハッチを暗証番号でロックすると、静かに熟練の動きで森の中に消えて行った。

 




この続きは、本日午後3時頃に投稿予定です。

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