エリートオペレーターでも転職は考えます 作:休んじゃダメですよ
お気に入りさん……???
UA数さん……………????
評価さん…………?????
ランキングさん……???????
みなさん????????????
なんだか気がついたら凄いことになってました、大変ありがとうございます。地べたを舐めればいいですか? へ、えへへ……。
命よりも金の方が大事。逆ならば腐るほど聞いてきたが、金を優先する言葉を耳にしたのも少なくない。なぜならこれは金を用意する側の上の立場の存在ではなく、金をもらう側の下の立場の存在……俺たちのようなものが特に多く口にする言葉だから。
仕事に就いている者の下であれば下であるほど言葉を聞く機会は多かった。だがそれはおかしいことではない。地位が定められある程度の収入が決まってる上と違って、下に就いたものたちは今の頑張りによってこの先が決まるのだから。自らの行動で自らの人生が決まる、今得るべき金は今燃やすべき命よりも価値がある、その考えは決して間違いとは言いきれないのだ。
上にいけば上にいくほど、その価値観は薄れていく。当たり前に十分な金が懐に入ってきてようやく、命の方が大事などと言えるようになるのだ。そして自分の経験も忘れて助言としてまた下の者へと伝える。それがどれだけ皮肉になっているかも、いつの間にか気が付かないまま。
まあ、俺には全く縁の無い話ですけどね!
お金! お給料! 生涯予算! 身を粉にしていくらあっても困らない、手に入れたいものなので。どっちがどうとか難しい話はありません。5000兆龍門弊欲しいです。
エリートオペレーターって部門ごとのエリートって意味だけじゃなくて給料の方も、それはそれはエリートだって思ってたのに違いましたし。正確には小隊を率いるレベルになるとより給料アップも見込めるんだけど、俺の場合が『小隊を率いるのに向いてない』ってケルシーさん直々のダメ出しをくらってるので。うん、救いがない。やっぱり、このままロドスに居続ける意味ってもしかして無いのでは……?
何故急にお金の話をもちかけたか。それは俺がこれから行く場所に関係していて、ちょうど今ロドス内部施設の貿易所エリア前に立ってるからです。この場所は簡単に言えばテラ──この大陸に存在している多くの組織、勢力とお金や資材のやり取りをするところです。難しい取引とか駆け引きが予想される場所、と思うけれどご安心! 初心者にも優しいお仕事場です!
怪しい言い方にはなったけどここは本当にその通りで、今からする仕事だって組織間での契約とか協定とか難しい事ではなくて、主に資材や資料がたっぷり詰まった荷物を分類ごとに仕分けたり運んだりする簡単なもの。どれだけ効率よく仕事が出来るか、一度に沢山まとめられるかとかはオペレーターの得意分野によって分かれるから働いた分の成果の差は出るけど。
実際の複雑な職務は、外交や貿易を専務とするオペレーターが別の部屋で続けてくれてるからそのオペレーターたちの補助が貿易所の仕事にあたる。でもここ、俺が見た限りだとずっと稼働してるけど休日ってあるのかな。
流石に専門オペレーターも交代制ではあると思うけど。ブラックの気配が微かに……? ……何かこれに触れるとロドス勤務体系の闇に触れそうなので思考を止めよう。
本題に戻ります。俺は別に、貿易所で効率よく仕事ができるオペレーターではありません。もちろん配属されたらサボったりせず人並みに働きはするけど、本当にそれだけ。今日そもそも当番でもないしね。そんな俺がなぜ扉の前にいるのか……。
基本的に内部施設である基地で働く時はオペレーターそれぞれの適性を見て、ドクターやアーミヤさん、クロージャもたまに加わって時間なども決めてくれる。
だから『仕事が終わったら何が始まるか? 仕事が始まる』な状況に陥ってる俺は普通貿易所に足を運ぶわけないんですけどね。数分前のことは今でも思い出せるよ……あれは丁度、勤務が終わって休憩室ぼっちを堪能してから自室に戻るところだった。
「いやー、ごめん! 実は今日、アップルパイパーティーパイパーティー・アップルにお呼ばれしてたの忘れてて!」
なんて?
「じゃあ代わりによろしく! テキサス達には言っておいてあるから!」
突如現れた赤髪のオペレーターは、詳しく聞き出せる隙もなく、光の如く走って去っていった。名前も知らないオペレーターに仕事を押し付けられたんですよ。え、おかしくない??? ロドスの職場ってこういうのデフォルトになったの???
無視して放っておいたら後から彼女に文句を言われたり、残りの当番の人達が可哀想だから……そんな感じで来たわけです。ちなみに去っていった後にふわふわ淡い光を放つ羽が散ってて、手に取ってみたら何だか身体が軽くなったような気がしたんですよ。レッドヘアー翼を授けるみたいな感覚。具体的には体力と攻撃力がちょっと上がった感じがす「おい。お前が、エクシアの代わりに来たオペレーターか?」
ふと、声をかけられる。振り返った先にいたのは二人の人物。片や黒髪黒目のループスの女の子、もう一人は銀髪銀目で顔に傷のあるこれまたループスの女の子。話しかけてきたのは黒髪の女の子の方で、少し眉間に皺を寄せて口を開いていた。
「……、うん。そうだけど。何か?」
ただ急に話しかけないでください反応するのに息が詰まったじゃないですか。いや別に、コミュニケーションに自信ないなんてウけるんですけどー、ループスプスとかそういう訳ではないんですよ。考え事してたら急に話しかけたら動揺しません? え、それがコミュ弱の特徴? そんなー。
「……、いや……ロドスでもあまり見かけない顔だったからな、恐らく私達の名前も知らないだろう。私はテキサス、ペンギン急便から派遣されている。……お前も話せ」
「テキサスが言うなら。ボクはラップランド、ロドス直属のオペレーター。君の名前を覚えるつもりは無いから、ボクの名前も別に覚えてなくて無いよ」
「どうもありがとう。それなら俺も助かるかな。コードネームはブラックアウト、適当に邪魔にならないところで仕事させてもらうね」
二人とも新人の方なのかな。俺のことを見た事がないのは別に珍しいことじゃないけど、俺から彼女たちのことを知ったのは今この瞬間が初めてだし。新人って覚えることが多いし、一緒に仕事するといっても今回だけだから気を使ってもらうのも悪いからね。単なる名もない助っ人として扱われる方が俺も気が楽です。
ペンギン急便のテキサスと、同じ職場のラップランドね。覚えました。ただラップランドが今俺の発言を聞いてから、すんって表情が冷たくなった気がするんだけど気の所為かな。笑みを張りつけてたけど笑みすら浮かべずに冷たい目を向けてくる感じ。怖い……怖い……。
見るからに後輩にそんなにビビるなんて情けないって? チッチッチ、そんなんじゃ甘いよ。歳が離れたりしてても怖い人は怖いんだから仕方ないんだよ。はい、逆パワハラは勘弁してくださいお願いします。
「……今回は急に代わってもらってすまない。いつもは私と、ラップランド……そしてエクシアの三人でこの貿易所で働いてるんだが……」
「何かお茶会に呼ばれてたのを忘れてたんだってね。まあ騒々しいのが居なくなって良かったじゃない。ボクとテキサスだけで過ごせるなんてサイコーだねっ」
「ラップランド……!」
「ん、何? だって、彼は自分から邪魔にならないって言ったんだよ? 何もおかしなことは言ってないけどねぇ」
まるで俺のことをこれから無視するといったラップランドの発言をテキサスが注意してくれる。ただラップランドは俺の言葉の揚げ足を取るみたいに、そしてそれを得意げに見せつけるようにふっと笑って肩を竦めていた。
これに関しては確かにラップランドは悪くない。俺からあまり気にしないように勧めたんだし。それでも指摘してくれる辺り、テキサスは優しい人なんだということがよく分かる。あ、いや、決してラップランドが悪い人だって言う訳じゃないです。気になるところがあるとしたら、今はなりをひそめてるけどヤバい雰囲気というか得体のしれない底というか……そんなのを感じるだけで。どちらと仲良くなりたいっていわれたら、テキサスの方だと迷わず答えたくなるほど。
それにしても、と会話をしてる彼女達ふたりを見つめて思考に耽ける。黒と銀混じりの白、容姿や装いも相まって彼女たち二人が揃ってると視覚的にも丁度良い。性格も噛み合ってそうだし、何だか……。
「二人って、お似合いだね」
「は?」
「え?」
あ、つい心の声を声に出してしまってた。二人も目を丸くして会話を止めてこっちを見てる。で、でもいつもこの貿易所であのエクシアってサンクタを含め三人一緒に仕事してるんだからきっと仲良しだろうし。別に口を滑らせて不味い言葉でもないよね。危なかった。
「へぇ……へええぇ……! キミ、見る目があるね! はは、ほらテキサス! ボク達お似合いだって! アハハッ」
「……ブラックアウトといったか。どうやらお前は皮肉が好みみたいだな。よく覚えておこう」
あれ??? 何か、テキサスからの視線が滅茶苦茶冷たくなってませんか? さっきまで中立的、なんだったら同情な視線を含められてたのに今まるで敵を見るような目になってません??
「ボクも覚えておくよ! 恐れ知らずのブラックアウト、戦場で一緒になった時はお互い楽しくやろうね? フフ……アハハハハハッ!」
逆にラップランドが全く興味も無かった冷たい顔から、歓喜と興奮に満ちた笑顔で迫ってきてるんですけど。何だったら今瞳が怪しく光ったよ? 明らかに狂気を孕んだ瞳で恐ろしいこと言ってませんか??
どうして……どうして、こんなことに……。一体、俺の何が間違っていたっていうんだ。二人ともよく話してたから仲良しだねって言っただけなのに…………!!
今すぐにでも逃げ出したいこの空気。しかし、仕事の時間のアナウンスが流れると貿易所の扉は無情にも開くのでした。
この後にした三人での貿易所のお仕事ですが、雰囲気は最悪でした。一人だけものすっごく楽しんでるみたいだったけど。
「……へぇ。彼、成り立てとはいえエリートオペレーターだったんだね。ロドスに就いてからはかなり経ってる癖に」
ラップランドは珍しく、それこそロドスで偶然再会したテキサスや自分を受けいれたドクター以来にロドスの資料に目を通した。手にしているのは最近更新されたブラックアウトのプロフィール。ドクターへ掛け合えばすぐに用意してもらえたそれを、カップ片手に確認する。
「年齢不詳。出身地、誕生日共に非公開。戦闘経験は七年って書かれてるけど……アハハ、どうせこれロドスに来てからの年数だろうね」
不明なところが多いけれど、ブラックアウトが自分に負けず劣らず、いや、それ以上の変わり者だと鋭利な牙を見せてラップランドは嗤う。相手がどれだけその身に血を浴びてきたか、どれほどの力を有しているのか……相手を見るだけでその力量を量れる、その力があるとラップランドは自負している。だが今回ばかりは上手く騙された。
「力を誇示するのは赤ん坊みたいな脳みそを持ってるヤツらにも出来るけど……能ある鷹は爪を隠す、か。もっともブラックアウトは鷹どころか……フフ、とんだ曲者もいたものだよ」
会ったその瞬間は何も感じることは無かった。いつもより心地よい空間に時間を過ごせた仕事場でも、変化は無かった。ブラックアウトがエリートオペレーター……ロドスの中でも選りすぐりの存在であることに気がついたのだって今この瞬間だ。
つまり、ブラックアウトは故意にその力を隠していた。素性だって記載しない彼が戦闘経験とはいえ正直なデータを残したりするだろうか? 経験則でいうのであれば、実力を完全に隠せるほどの気配の殺し方を七年間で会得出来るものだろうか?
「ああ……戦ってみたい、戦いたいなあ。テキサスやあの赤い子以外にここまで疼くとは思わなかったよ。決して無事では済まないけど、でも……」
──死合いたい。
それは、ラップランドの純粋な好奇心と歪んだ狂気から来る、しかし最大の賞賛でもあった。
「そういえば……ブラックアウトが仕事の合間に、各組織についての資料を見る時間が一つ一つやけに長かった気がするね。あんなのに載ってることなんて概要や雇用形態、給与情報なんてくだらないものだったと思うけど。エリートオペレーターの彼に必要な情報なのかな?」
(とある一室。部屋の横断幕には Apple!! の文字)
「お待たせー! これが『アップルパイパーティー』で出したグム特製のパイだよ! 今日はこれでパーティーを楽しんでいってね!」
(部屋の中で歓喜する複数のオペレーターの声)
「いえーい! ひゅーひゅー!! 待ってましたー!!!」
「ありがとーエクシアお姉ちゃん! でも、お仕事抜け出してきちゃって良かったの?」
「大丈夫大丈夫! 通りすがりの灰色のローブを着た男の子に代わりを頼んだから!」
「灰色の……? ……もしかしてブラックアウトお兄ちゃん……? ち、ちなみに、なんて言ってお願いしたの?」
「うん! アップルパイパーティーパイパーティー・アップルに行ってくるからって!」
「なんて?」