それはトレセン学園でのある日の日常
学園の屋上、グラウンドが良く見える一匹狼にはいい隠れ場所
「…………」
孤高のウマ娘がそこにはいた
透き通ったような美麗な黒髪、それを後頭部で束ねた、まるで武人のような印象を受けるウマ娘
佇まいだけで周囲を圧倒させる絶対強者
ナリタブライアン、それが彼女の名である
彼女は屋上のフェンスに手をかけ、じっと食い入るようにグラウンドを見つめている
「…………ん」
「ようブライアン、まーたこんなとこから見てるのか」
そんな彼女に声をかけたのは
「トレーナー」
「暇だね~、そんなに気になるか?」
彼女のトレーナーである
人ごみに紛れていてもよく目立つ白髪、ナリタブライアンのように伸ばした後ろ髪を束ねている。彼女と少し違う点があるとすれば、彼女はポニーテールだが彼の場合はローポニーということか ――ナリタブライアンは背の中ほどまで伸びたそれを見ていつも切らないのかと疑問に思っているが何かの願掛けらしい―― 次に目立つのはあまり手入れのされていない無精ひげ、本人の年齢は二十代前半だがその髭のせいで実際の年より老けて見える
まるでチームスピカのトレーナのような髪型だがあちらとは違ってもみあげを刈り上げてはいない、更にはこうも目立つ髪色でもない
良くも悪くもスピカのトレーナーとは趣の違う人物だ
「見てるだけでいいのか? 昂らんのか?」
「昂ってるさ」
彼は彼女の隣にいき、フェンスに背を預ける
彼がどうしてナリタブライアンに付いているのか、その理由は長くなるので割愛する
経緯はどうあれ、今のナリタブライアンのトレーナーはこの白髪のトレーナー
「なら走ったらどうだ」
「よく言う、今日はトレーニングはするなと言ったのはアンタだろうに」
「ああ、その通りだ。でなきゃずっと走ってるだろ? お前は」
こうして日頃から彼女のスケジュールを管理している
トレーナーは少し話すと背をフェンスに預けたままグラウンドへと視線を向ける
「ブライアン、溜めろとは言ったが、溜めすぎるのは逆効果だぞ」
「わかってるさ」
二人の視線の先にはグラウンドを駆け抜ける三人のウマ娘がいた
一人は栗色の髪が特徴の小柄なウマ娘、学園でも小食であることで知られるナリタタイシン。三人の中で一人寡黙に走っている
もう一人は先のウマ娘とは対照的に気合の一声を上げながら力強く走る、ウイニングチケット
「チケゾーは元気だなー、タイシンとはえらい違いだ」
「タイシンも元気がないわけじゃない、彼女は誰よりも活気に満ちている」
二人は模擬レースをするウマ娘たちのトレーニングに対する姿勢を評価する
だがナリタブライアンの心は三人目のウマ娘に奪われていた
白く長い髪が特徴のウマ娘、ビワハヤヒデ
ナリタブライアンの姉である
「…………」
「……まったく、好きだねーオマエ。姉バ鹿め」
トレーナーが少し嘲る、ナリタブライアンは何も言わずに姉とその友人たちが走る姿を眺めている
グラウンドで駆ける三人のレースは最終局面へと入っていた。最後のコーナーを超え、後はそれぞれがラストスパートをかけるだけ
ウイニングチケットは既に外から差し切る態勢に入っている。ナリタタイシンも速度を乗せ先頭を走っている
ビワハヤヒデは二人の後ろにつき様子を見ている
「コーナーを超えれば残り400、俺はタイシンに賭ける。オマエは?」
最終コーナーに進入
「……無論だ、私は――」
コーナーを曲がりきる為にナリタタイシンとウイニングチケットが速度を緩めた時だった
「――姉貴に賭ける」
一瞬、刹那の間
ビワハヤヒデが加速し二人の間から抜け出した
そのままビワハヤヒデはハナを進み400mを通過、300、200、100――――
「お見事、駆け引き上手だな。頭がデカいだけはある」
「あれは毛量が多くてそう見えるだけだ、実際は他と変わらん」
ビワハヤヒデが二人に大差をつけて勝利した
その後レースをしていた三人は、お互いにそれぞれの感想を言い合っているのだろう、流した汗を拭きながら笑顔で語り合っている
これはチームBNWの日常である
「トレーナー」
「おう」
ひとしきり話した後、三人は別のチームにレース場を譲り離れて行った
「賭けは私の勝ちだ」
「ああ」
ナリタブライアンとトレーナーは次に走り始めたチームを見やる
二人は顔を会わせず、はっきりとした言葉も交わさず、しかし確かにお互いの意思を疎通する
「この後、グラウンドが空くか確認しておく。相手は誰がいい」
「強者だ、この熱をぶつけられるような」
トレーナーがフェンスを離れる
「お姉ちゃんに声は掛けるか」
「いいや、姉貴とは本番でやる」
「そうかい、可愛い妹さん。それじゃ別の奴…… まあ歩きながら探すか」
トレーナーは屋上からいなくなる
ナリタブライアン、彼女だけが取り残される
「……孤高でいるのも楽ではないな、あの気遣い上手め」
トレーナーは彼女の為にトレセン学園中を歩き回り始めるだろう
全ては担当ウマ娘の為、支えると決めた相棒の為
「まあ、悪くはないさ」
ならばウマ娘には何が出来るか、己の為に動くトレーナーの期待に応える、これだけだ
ナリタブライアンは一人、トレーナーの帰りを待つことにした
「という事になるな」
「ルドルフ」
そんな彼女のもとに颯爽とやってきたトレセン学園生徒会 会長、シンボリルドルフ
ナリタブライアンは突然現れた彼女に驚くことなく目を向ける
「流石は君の姉、素晴らしい俊足だ」
「見てたのか」
「ああ、といってもすぐ下の階の廊下の窓からだったが。ここ程よくは見えなかったさ」
どうやら彼女も先のレースを見ていたらしい、一言シンボリルドルフの口から感想が放たれる
「まったく、流石は君の姉と言うべきか。ビワハヤヒデはハヤイデ―」
「……ルドルフ」
「フッ、ではサラダバー!!」
用件は済んだのか、上機嫌でどこかへ去っていくシンボリルドルフ
「……アイツ、この為だけに来たのか」
後に残されたナリタブライアンは再びグラウンドの練習風景を眺めるのだった
アニメも未試聴の為チーム生徒会のトレーナーが誰かもまだ確認してません
仮に真面目に書くなら一期二期両方見てからですね
つまり、連載小説は考えていないという事。スミカ・ユーティライネンです(´・ω・`)ノシ
アニメとゲームの設定をうまく混ぜて書きたいね(トレーナー同士でも絡ませたいから)