悪魔城ドラキュラの要素が多分に入っております。
おぜうのカリスマ振りをご覧下さい
幻想郷では新聞記者は天狗と決まっている。彼らは風のように速く、配達に適している。
その中でも信用のある天狗、姫海棠はたてはツインテールを振りながら紅魔館に取材に来た。
「咲夜さんはどういった経緯で紅魔館にやってきたのですか?」
紅魔館の主、レミリア・スカーレットは言う。十六夜咲夜は超強くて紅魔館のメンツは自分以外全員負けたけど、レミリアのみは追い詰められながらも、レミリアの有する運命を操る能力で支配したと。
レミリアの妹、フランドール・スカーレットは言う。さくやは超強くて自分のいい遊び相手になったけど、途中自分たちの戦いに巻き込まれてぼろぼろになったお姉様に憐憫してお世話係になったと。
図書館長パチュリー・ノーレッジは言う。突然気絶させられて、メイド長が気が利く十六夜咲夜に変わっていたと。
図書館司書の小悪魔は語る。語るも恐ろしい。昔のさくやさんは妹様より怖かった。そしてきもかった。自分は相手にもされずただ踏みつけられるのみ。
門番の紅美鈴は言う。さくやさんと私は最強のコンビだった。さくやさんと一緒に紅魔館のほとんどの敵を倒したが、急にさくやさんがメイドに就職したため、わたしも門番に就職した。なんて話しはどうですかー?
どうですかとはなんだと思ったが姫海棠はたてはこわばった笑顔を作って次に進んだ。
メイド妖精は言う。知らない。ただ、昔館内のほとんどの妖精が踏みつけにされたという伝説が残っている。
魔物 昔は館内には強力な魔物が沢山いたが、さくやさんがひとりで全員やっつけた。しかも瞬殺に近かった。あのさくやさんを支配するとはさすがレミリア様
招かれざる来客の魔理沙は言う。ここだけの話、全ての黒幕はパチュリーだぜ。
レミリアを復活させ、フランの封印を解き、二人を利用して全世界を支配しようと企んだ。
弟子である十六夜咲夜がこの企みに気がつき人類を守るために野望に立ち向かうのだ。
レミリアとフランはそれを聞いてはしゃぐ。
招かれた来客霊夢は言う。咲夜はバンパイアハンターで貧乏だった。レミリアの暮らしぶりを見てうらやましく思っていたらスカウトされたので転職した。今は満足している。どう?
どう?とはなんだという顔を再び見せる姫海棠はたて。霊夢はそんな姫海棠はたてに驚きもせず、頬杖を解いて両腕を天に捧げ、あくびまじりに言う。
「まっ、取り合わない事ね」
博霊神社境内
霊夢は吸血鬼のお客さんのレミリアに話しかける
「ねえ、レミリア、誰もが思っているとおもうんだけどさ、あんたの能力を使えば問題なんか起きないんじゃないの?」
レミリアと呼ばれた吸血鬼の少女は胸を張る。
「運命を変える程度の能力、まさに私にふさわしい能力ね。」
横から魔理沙が身を乗り出す
「吸血鬼ハンターをメイド長にするんだもんな。すごいぜ」
レミリアは背中から生えた蝙蝠のような羽をぱたぱたさせて答える
「さくやのことね!昔のさくやは尖っていたのよ。」
「おやめくださいお嬢様」と隣に控えていた侍従長咲夜は優しくたしなめる。
「私も尖っていたのよ」とたしなめられても元気いっぱいのレミリア。
「そのころはきっと能力を使いまくりだったんだろうな。」と霊夢の友人であり魔法を使う人間魔理沙。
「そうよ、そのころに会っていたら霊夢も魔理沙も私の僕になっていたのよ」レミリアは得意そうに言う。
「本当かしら」霊夢は冷たい。
「でも実際、咲夜はやられているぜ」と語尾が特徴的な魔理沙。
「お嬢様の能力を見たことがないので断言できませんが、恐らく私に対しては使われておりません」咲夜は静かに否定する。
「さくや?」レミリアは不安そうに咲夜を見上げる
「私は私の意思でお嬢様に使えているのです。きっと、カリスマに打たれたのですね」
「運命の前には意思なんて無意味よ。カリスマは大事だけど」
「レミリアおまえ、大体そんな能力を持ってんのか?雨でふてくされたり、霊夢に負けたり、妹に手を焼いたり、鬼に見下されたり、咲夜に変なお茶のまされてうっとなったり、月に行って…」
「さくやー、さくやー」レミリアは咲夜にしがみつく
「お嬢様を傷付けないで下さい」と咲夜
「ごめんだぜ」と魔理沙は謝った。
咲夜はしがみつくレミリアの後頭部を見ながら思い出す。昔のお嬢様。
「ドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥエ」
森の奥から奇妙なかけ声が近くなってくる。
ジャンプしては急降下キックで移動する変態機動の何者か、人間のように小さい影ではあるが、とうてい人間の出せる速度ではない。森から抜けた何者かは月光にその姿を現す。
青みがかった銀髪。Sの刻印がなされた鞭を持った少女
門番の妖怪を瞬殺する 起き上がる前に瞬殺
門をくぐり紅魔館の中に入ると、ぬいぐるみとパラソルの下で椅子に座りうたた寝をしている少女が居た。
近寄ってみると涙の後。Sの鞭を持つ少女、以後Sが思わず涙を拭おうと手を伸ばすと、その前に大きな目を開けて起きあがる。
側に人が居る気がつくと「ぎゃおー、たーべちゃーうぞー」としつこく脅かしてくる。
勢い余ってパラソルから出て倒れ込む。
日陰に運んでやるとやがて気がつく。病弱っ子だ。
門番を倒した事実を聞くや館案内をするという。
魔物だらけの館内。魔物を倒して先に進むように進言する少女。
途中Sはいろいろな魔物を倒し、魔法の道具を取得していく。
早い、きもい、強い。
「ドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥエ」
立ちはだかる者全てに急降下キックを入れ、立ち止まることなく突き進む。
少女は懸命に後をついて行く。
台所で料理長に出会う。巨体を誇る魔物をSはいともたやすく空中へと蹴り飛ばす。
不可解にも突然360度に囲繞した無数のナイフが魔物をズタズタに貫いた。
Sは眉一つ動かさず、厨房の奥へと入っていく。
台所の先にはおしゃれした人間がだらだらしていた。
Sが助けに来たと言ってもにらみ返される。
驚いたSはとらわれている人間の目を見た。術にかかっているわけでもない。吸血鬼にもなっていない。凶暴でもない。
彼らは言う。
ちょっと血を抜かれる者と、ちょっと噛まれる者が居る。血を抜かれる方は立ちくらみ、噛まれる方は血だらけになるが、健康に別状はない。
何を言っているのだとSは憤る。
すごくいい待遇をされて里に帰されるという。
この得点を手に入れるために自分を磨いてきたし、順番待ちもしてきた。
横入りはするなと怒られる。
Sは戸惑う ここの吸血鬼は変だ
少女がくいくいとSの服を引っ張る。時計台の鍵を手に入れたという
何故台所に鍵があるのかとSは至極当然な疑問を少女にかける、
台所とは倉。倉は昔から最重要聖地と決まっていると答え
なんとなく納得するS
時計台に行く。時計台の屋根の上まで行く。
少女は狭いことを口実に密着してくる。抱っこの形。
うれしそうな顔の少女
30分ぐらいそうしていた。Sの端正な横顔はその間眉一つ動かさず、青い銀髪が夜空になぶられるままになっていた。
「さあもういいわ」と言いながら少女は懐から鍵を取り出す。
「ここで30分、月を眺めていると図書館の鍵が手に入るのよ。不思議な場所なの」
ふたたび館に入り、体が冷えたことに気がついた少女は妖精にお茶を所望する
しかし、お茶はなかなか出てこない。20分してようやく冷めたお茶が出てくる。
悲しそうな少女の横顔をSは見る。なぜ御茶が出てきたのか、なぜ冷めているのか
図書館に行く。
少女はSに図書館長を紹介してあげるから少し待つように言って中に入る。
何者なのだ、とSは少女に不審を抱く。
そして、少女は図書館長に出会い頭に怒られる。「進入者が多すぎる」
そして紹介する間もなく図書館長は「居るのでしょう出てきなさい」と言いながら待っているSの見当に攻撃をする。激しく手加減の見られない攻撃。
少女は取りなそうとするが小悪魔に邪魔される。
Sが中に踏み込むや罠、罠、罠。しかし鬼神流で躱しパチェリーを攻撃。踏みつけ、裏周り、で姿さえ見せず撃破。
小悪魔はパチェリーがやられたことにうろたえる。
少女と小悪魔はパニックになりながら図書館長を介抱。不器用。おろおろ。
みかねてSが遅効性の回復薬を渡す。
ほっとけば直ると分かると少女は図書館長が気絶しながらも、小脇に抱え続ける本を抜き取り、地下に案内する。
「あなたならいい遊び相手になる。」と言い地下の封印を先の本で解き別れる。
行き着く先には城主吸血鬼が待っていた。カリスマ、魔力、狂気申し分なし。
「フランはフラン。この城に閉じ込められている吸血鬼だよ!!」
咲夜は初めて本気を出す。咲夜が放つエネルギーの具現体が、他人には見えぬ恐ろしい怪力が、フランドール・スカーレットへ向けて放たれる。
見えぬだけに不可避の暴力に、殴り飛ばされたフランは、吹き飛びながら狂気のまなざしを咲夜に向ける。
飛びつき殴られ飛びつき殴られを繰り返すうちにフランは見えない攻撃の法則を感得する。フランはスラッグガンのように密度の高い弾幕を放つ。右へ、左へ、正面へ、上へ、下へ、飛び回る咲夜に向けて執拗に放たれる。ついにその一撃が咲夜に直撃しそうな時に、その正面に、3メートルはあろう人型のエネルギー体があらわになる。
フランドール・スカーレットは炎の魔剣レイバーテインを手にして、見えないエネルギー体ごと貫き殺そうとする。炎の壁が咲夜に激突しそうになるも、次の瞬間には必ず咲夜は他の場所に瞬間移動していた。
「瞬間移動の能力を持ってるね!じゃあ、もっと本気をだすよ!」
フランドール・スカーレット四人に分身する。高速移動で四体に見えるわけではない。本当に四人のフランドール・スカーレット。禁忌「フォーオブアカインド」
四人が一斉にレイバーテインを振る。
部屋中が灼熱地獄になると思いきや、
次の瞬間四人のフランドール・スカーレットは同時に殴り飛ばされていた。
一秒のずれも無いフォーオブアカインドへの攻撃に時間を止めていることをフランは気がつく。
フランは万物を破壊する能力を持っている吸血鬼であり、その能力は遊びでは使わないつもりだった。
しかし、禁忌「フォーオブアカインド」が破られた今使わざるを得ないと判断する。
「吸血鬼ハンターさんお疲れ様ー。バイバーイ、ギュッとしてドカー…」
しかし、手を握る隙がない。
右手を切り飛ばされて、初めてフランの顔に恐怖が宿る。
七色の翼が色を失う。
だが、城は崩れない。
フランは城主は自分でなく姉だといいながらワープゾーンを作り出しそこに逃げ込む。
ワープゾーンは誘うように有り続ける。Sは入る
。
ついた先はファンシーな部屋、妖精メイド達が集まって部屋の一角をリフォームしている。先ほどの少女がその前で「早く、早く」と妖精メイド達をせかしている。
できあがったのは三段の段差とその上に置かれた豪華な椅子。
Sが近寄ると、妖精は蜘蛛の子を散らすように逃げる。少女もはっとして急いで豪華な椅子にたどり着くと、椅子に座って足組をして逃げ遅れた妖精に何か持ってくるように指示。妖精は少女に湯飲みをわたして一目散に逃げる。
「ようこそ、吸血鬼ハンター。私がこの紅魔館城主、デーモンロード」
レミ、リア、うー☆と湯飲みが邪魔なのでいったん手すりに置いてから再びカリスマポーズ。両手をあばらに添えたり、天高く捧げたりしてにっこり笑う。
沈黙が流れる。
「驚いているようね。無理も無いわ、ずっと仲間だと思っていた私がラスボスなのよ。」
「あなたが城主なの」Sは静かに尋ねる。
「その通りだ人間。我こそは夜の王、人間の天敵」
「……」
レミリアは黙り込まれたことで不機嫌に也手すりの上でゆのみをくるくる回した。
勢い御茶があふれ、わあと叫び声を上げる。
真っ赤になってレミリアは続ける。
「ヴァンパイアハンターよ、貴様のようなちっぽけな人間が何しに来たの」
「……」
「まさかこのレミリアを退治に来たなどとはいわないわよね?」
「……」
「退治に来たんでしょ?」
「……」
「ねえ、ねえ!」
「まあ……。」
「やってみるがよい!」
レミリアは大願成就を果たしたように湯のみを放って亜空間転移する。しかし湯飲みは丈夫らしくカーペットにぶつかって割れず、もすと音をたて着地し静かにSの足下に転がった。Sはこれを拾うと近くのテーブルまで移動して上に置いた。レミリアは亜空間転移で出現したが、湯のみを置くために移動したSを見失いぼんやりと立っている。
Sは不思議な気持ちで城主レミリアと対峙する。
「レミリアストレッチー」レミリアは本気の気味で叫んでいる。
「くらえっ、全世界ナイトメア」一生懸命だ。
「レッド不夜城」
踏みつけるとカリスマガード。両手で頭を押さえて丸くなる。
攻めにくい。真剣にそう思っていると、フランが入ってくる。先ほど切り飛ばした右手は元に戻っている。吸血鬼は再生能力が高いのだ。
レミリアは今自分が遊んでいるから入ってくるなと言うが聞かない。
フランはSに攻撃を始める。レミリアはこれを止めにかかる
フランは本気モード、Sも本気の鬼神流。丁々発止、気がつけば倒れたレミリアをフランが踏んでいる。
Sは思わずフランをはねのけ、レミリアを抱き上げる。
レミリアは弱々しくフランに逆上するなとしかる。
フランは倒れている姉を見て「お姉様はけっして逆上するなと言った、しかしそれは無理ってもんだ、こんなことを見せられて頭にこねぇ奴はいねぇ」と憤る。
「最終ラウン…踏んでいたのはお前だ」何か言いかけたSだが、正当な突っ込みを入れるにとどまった。
フランは自分がレミリアを踏んづけていた事実に気がついてしょげる。
気絶しているレミリアを見るSの心にいまだかつて例のない母性愛。
守ってあげたい、世話を焼いてあげたい。暖かいお茶を飲ませてあげたい。一緒に居てあげたい。
フランはレイバーテインを突きつけながらSに言う
「ねえ、人間。あなたはここに何をしに来たの」
「もちろん吸血鬼を滅ぼしに来た」
「そう。じゃあ何故踏みつけにされていたお姉様を助けて、今もなお介抱しているの」
「……」
「お姉様は放っておいて、決着が付くまで戦いましょう。これほど楽しい遊びは生まれて初めてよ。もしかしたらあなたはフランを…。私を殺せるかも知れない。滅ぼすことは出来ないでしょうけどね」
「……」
「お姉様は大丈夫よ。大丈夫よね?」
「おそらく」
「じゃあなぜいまも膝の上にのせているの?」
「わからない。フランドールスカーレット、私はおまえならば倒せるかも知れない。だが、このレミリアは倒せる気がしない」
「お姉様は強いわ。でも私の方が強いのでは無いかしら?」
「そうだ。現にいま気絶しているのはフランに踏まれたためだ。力の差は歴然。はっきりしている。だが、勝負をして勝つ見込みがあるのはフラン、おまえだけだ」
「どうして」
「私はレミリアに攻撃できない。そしてそれがなぜだか分からない」
「あー。お姉様は可愛いからね」とフラン。妙な顔をするS
やがて、レミリアは咲夜の膝の上で目を覚ます
「あなたに負けたのね、ハンター」とレミリアは言う。
「……違う。おまえは妹に叩きのめされたんだよ。」
「では、なぜ私はフランでは無くあなたに膝枕をしてもらっているの?」
「介抱したのは私だから。」
「それじゃやっぱり私の負けよ。高貴な吸血鬼はごねたりしないの」
「敗者は、なんでも言うことを聞くと言ったな」
「そうね。」
「では私はおまえを監視する」
「私の戒めになろうというの?」
「ついでに世話も焼く」
「あら、それは「ばあや」みたいなものね、小娘よ。」
「この館を支配する。私はおまえの侍従長になる」
「それが望みなら止めはしないわ。だけど、もしあなたのお望みでも果たせばあなたは形式上私の僕。あなたは私のものになるのよ、構わないの?」
「それが望みだ」
「聞き入れました。それでは明日からよろしくね。」
「Sだ」
「ダメよ、明日からあなたは私のもの。今日までの過去は全て捨てて貰うわ。名前さえもね。……だけど、今日はまだあなたの方が勝者。強者は弱者を甘やかさなくてはいけないのよ」
そしてひとつの夜が終わりを迎える。
「おはよう」にっこり笑って咲夜と名付けられたSに抱きつくレミリア。
「お嬢様、甘えるのは昨日限りとおっしゃっていたではありませんか」
「あなたは既に私のもの。あなたは今日始まったのだから昨日なんて無いのよ。弱者は強者に従うもの。強者が甘えて来たとき弱者は甘やかすのが運命なのよ」
今のレミリアを見る。
あのときと全く変わってない。
しきりに昔は尖って他と主張していたが
咲夜とは会ったときからレミリアはこんな感じだった。
見上げた顔を見ると
今の方がずっとうれしそう。