Escape from Aincrad 作:リンクス二等兵
Raid #no data
Day no data
Level 51 BEAR Operator "Rage"
Task Force "Atlas" 1th Raid grope
Aincrad Polkihim"Factory Zone”
窓からグレネードを放り込み、敵を混乱させる。たちまちPMCは事務所に突入して銃撃戦を繰り広げた。
逃げ惑う敵、更衣室で籠城戦に持ち込もうとする敵、様々な動きをする敵を制圧射撃で押さえつける。階段は俺たちが押さえた。奴らに逃げ場はない。俺たちが奴等をすり潰すか、この包囲を食い破るかだ。
硝煙が辺りを白く染め上げ、視界が悪くなっていく。でも敵にPMCは少ないようで、返ってくる銃弾は少ない。ただ、ダガーとか片手剣を持った奴らが煙の向こうから突っ込んでくるのだ。
「仕留めろ!」
「死ね、ラフコフの人でなしが!」
怒り心頭の味方が激しい弾幕を浴びせると、突っ込んできた敵が転倒した。それで済ませるかと追い討ちの銃弾を撃ち込み、味方がグレネードを放り投げてトドメを刺す。
爆発とともにHPバーが削れて、そいつの死を告げる。ゲームの世界での死だから、本当ならばどこかで生き返るのだろうけれども、このゲームでリスポーンは存在しない。正真正銘のワンライフ制なのだ。
そんな世界でも、プレイヤー同士で殺し合う。現実の自分が、相手が死ぬと分かっていても止まらない。こうするしかないから。想い人に別れも言わず、こんな戦場に来てしまった。
「1人仕留めたぞ! 残りも殺せ!」
「マウスが被弾! 血塗れだ!」
「シヴァタ、カバーをくれ! マウスを引っ張る!」
盾を持った剣士が前に躍り出て、銃弾を受け止める。その間に別のPMCが負傷して倒れる仲間を引きずり、物陰へと運ぶ。
「弾切れ……リロードする!」
「リョーハ、グレネード撃て!」
「制圧中、制圧中! 廊下は押さえてる!」
味方が弾幕で敵の動きを押さえつける。その間にグレネードランチャーを取り出した相棒が廊下へと躍り出た。
「グレネード撃つぞ!」
ポン、という銃弾に比べたら間抜けな音がする。でも少しのラグののち、銃弾とは比べ物にならない爆音が響き渡って、何人か倒れ込むのが見えた。
もちろん、倒れた哀れな連中は追い討ちの銃弾が命中し、残っていた僅かなHPも削り切られる。殺した罪悪感なんて後にとっておけ。今の俺たちには復讐心があれば良いんだ。
「レイジ、このままじゃジリ貧だ! 突っ込むか退くかしねえと!」
「押し込むぞ! キリトにトゥームストーン作戦発動を伝えたから、じきに援軍が来る!」
「クソッタレのイカれ野郎め、そもそも事前通告なしの作戦だろーがよ!」
そうだ。本来なら偵察任務だったのに、こっそり用意した奇襲作戦計画に変更してこうなった。発動までは読むなと作戦計画書を渡しはしたが、命令違反に等しい真似をした俺たちを助けになんて来るものか。鼓舞するための嘘っぱちだ。
だから、俺たちだけでやるしかない。どうせ、この先俺たちはついて行けないのだ。せめて最後に、あのPKギルドの連中を道連れに葬り去ってやるのが、せめて置土産だ。
「弾の少ねえやつは予備を出せ! グレネードの合図で詰めて、一気に潰す! 捕虜は不要、PoH以下幹部全員をここで殺す!」
「言われなくてもわかってる! 弟と仲間の仇だ。奴らを生かして帰すか!」
ポケットからグレネードを取り出す。パイナップルみたいな塊が攻撃の合図となり、仲間たちに死ねと命令するも等しい。
でも、それはリーダーとして負わなければならない責任だ。この作戦を立案した時から、覚悟は出来ていた。自分の墓の場所さえ分からず、悲嘆に暮れる想い人を幻視して尚、俺は戦う。
目の前の敵があの少女を人質に取った時、ローグをけしかけてその少女を殺そうとした時、仲間を殺しやがった時。その全てが過ぎり、覚悟となった。ここで終わらせてやろう。何もかもを。
「やれ、デアデビル! 俺もついていく!」
相棒が背中を押す。覚悟を決めて、俺はピンを引っこ抜いた。もう戻せない。この手の中の殺意を、奴らに投げつけるだけだ。
「
狼煙を上げた。グレネードと敵が叫び、ロッカーに身を隠していく。走り回る音もした。
それから遅れて響く爆音は突撃の合図。どんな結末が待っているかわかっていても、俺たちは進み出した。激しい銃火を浴びせかけ、恐怖をかき消しながら。
許してくれ、コハル。俺はまた約束を破る。