Escape from Aincrad   作:リンクス二等兵

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お気に入り100件突破&キラキルタスク終了のテンションで、いつもより多めに投稿しております!!!

そういえば、11月にタルコフサバゲーなるものが企画されている模様です。気になる方は検索検索!(主はUSECでの参加予定です)


5層-11 トカレフ

Level 17 BEAR Operator "Ryoha”

Aincrad layer5 "Customs”

 

 

「シノン、こっちだ! ここの青トタンなら機銃をやれるぜ!」

 

 新建築よりやや北寄り、リワーク前から存在するエリアを突き進む。

 この辺りには燃料タンクが多く、さらには新建築より北に100メートル程度の位置には似たような作り途中の建物"旧建築"がある。

 

 そして、新建築エリアと旧建築エリアを隔てる青いトタンは一部が倒れていて、そこからならばレイジたちを抑える機関銃を狙撃できるはずだ。

 

「見えたわ、やれる」

 

「後ろは任せろ、気にせず集中してくれ!」

 

 スーカスーカとうるさいSCAVを撃ち殺して黙らせ、シノンの背中を守る。それが俺の役目、俺の誇り。レイジと組んでいた時と同じだ。

 それに、こんな可愛い少女の背中を守って戦えるなら悪くないだろうよ。きっと俺が死んでも、この戦乙女がヴァルハラに連れて行ってくれるさ。

 

 甲高い銃声が響き、溶けていく。俺のSordinヘッドセットはそれを増幅して、やけに近くに感じさせた。シノンとの距離はそんなに近かっただろうか。

 

「やったわ、機関銃のアルティンを仕留めた」

 

「グッドキル。レイジ、上は仕留めた! 突っ込め、俺も側面から行く!」

 

『誤射すんなよ!』

 

 後は俺の出番だ。この身を盾に、剣として、奴らの横っ腹を食い破ってやる。

 

「シノン、先行くぜ!」

 

「了解、カバーする」

 

 シノンを追い越し、側面入口を狙って突っ込む。その少し斜め後ろ、シノンが肩越しに守ってくれている。

 守り守られる、そんな関係。デスゲームになってからというものの、こうして背中を預ける相手のことが何よりも特別に思える。

 

「レイジ、ライトつけて突入するぞ!」

 

『インテリ側で交戦中! フォールン共の抵抗が激しい!』

 

 ひっきりなしに響く銃声と、BT弾の赤い光。レイジの野郎がコハルとキズメルをカバーしながらやり合っているのだ。きっとフォールンだけでなく、リシャラの取り巻き軍団ともやり合ってるだろうな。

 

 待ってろよ、今助けるぜ相棒。

 

「シノン、このまま突っ込んで下を押さえる!」

 

「行って!」

 

 突入すると、目の前には2人の取り巻きがいた。レイジの方を向いていて、俺には無防備な側面を晒している。

 

「もらったぞバカめ!」

 

 まず1人、頭に2発撃ち込んでキル。隣の奴は俺に気づいたが、シノンの射撃を喰らってもんどり打ちながら倒れた。

 

「2人やったぞ!」

 

「2階にもいるぞ、気をつけろ!」

 

 無線を使わずともレイジの声が聞こえる。上からは足音が聞こえて、きっと敵が走り回っているのだろう。

 入ってすぐ左には階段がある。正面はクリアだし、そこから上がってさっさと仕留めてくれようか。

 

「先行くわ!」

 

「あ、待てシノン!」

 

 シノンが階段を駆け上がり、逆に降りてきた人影と激突した。茶色のジャケットに髭面の坊主頭。間違いない。アレはリシャラ本人だ!

 

「この、離しなさい……!」

 

「シノン、振り解け! それじゃ撃てねえ!」

 

 シノンはのしかかるリシャラに膝蹴りや拳をぶつけて振り解こうとするが、上手くいっていない。近すぎるせいで俺も射撃出来やしない。

 そんな中でリシャラが拳銃を抜いた。金色の成金趣味丸出しなトカレフは奴のユニークアイテムだ。スペックはトカレフのままだから、タスクとかアイテム交換にしか使い道はない。

 

 脅威的ってわけでもない。メインで持ってるAK-102の方がだいぶ厄介だ。それなのに、シノンはそのトカレフを突きつけられて動けなくなっていた。あからさまに瞳孔が見開いている。

 らしくない。そう思った刹那に悲鳴が響く。コハルでもキズメルでもなく、あのシノンが悲鳴をあげ、SVDSも放り投げてやたらめったらに暴れまわっていた。一体何だってんだ!

 

「こんな時にSANチェックミスるなよ!」

 

 トカレフとて、頭に食らえば1発で壊死するのは間違いない。こんなところで戦闘不能になられるのは困る。死なせるわけにはいかないんだよ!

 

「どけよクソ野郎!」

 

 階段を駆け上がり、リシャラの顔面にドロップキックをお見舞いしてやる。お陰で奴の銃弾はあらぬ方向に吹っ飛んでいった。よし、間に合った!

 リシャラは階段横から地面に転がり落ちる。シノンはまだ怯えていて、現実なら過呼吸間違いなしだろう。しばらく動けないなこりゃ。

 

「おいリョーハ、リシャラはどうした!?」

 

「下に転がり落ちてる! ぶち殺せ!」

 

「クソが、邪魔すんな!」

 

 リシャラはレイジの激しい弾幕を浴びて逃げ出す。更には残っていたフォールンや取り巻きの妨害を受け、思うように追撃ができずにいた。

 ボスはスポーンしたあたりから離れないんだが、やっぱり仕様が変わってるんだな。俺も不安定な姿勢から撃ちまくったけど、致命傷を与えられずに逃げられてしまった。

 

「リョーハ! 上からシノンに狙撃させろ!」

 

「無理だ! ブルっちまって動けねえ!」

 

「スーカ!」

 

「シノンを連れてセクシー部屋に待避するぜ!」

 

「行け! 上は俺がクリアする!」

 

 俺はシノンを担ぎ、近くの小部屋に運ぶのが精一杯だった。レイジとだったら、今頃血眼で追撃に向かってたんだろうな。

 シノンといるのは楽しいが、思うように突っ込めないのがどこか寂しい。奴と猟犬コンビとか呼ばれて、正面切って戦ってたあの時をどうしても懐かしく思ってしまった。

 

 鬼の形相で階段を駆け上がり、特殊部隊かのようなクリアリングで上を制圧していくレイジの後ろ姿が、どうしてか羨ましく思えた。

 

 

 折り畳みベッドが並べられた小部屋でシノンを寝かせている。壁にはセクシーなねーちゃんのポスターが貼ってあるから、俺たちは"セクシー部屋"って呼んでる場所だ。

 ようやく落ち着いたシノンは天井を見つめ、ゆっくりと呼吸を整える。仮想世界で呼吸に意味はないのだが、心を落ち着けるのには必要かもな。

 

「落ち着いたか?」

 

「ええ……ごめんなさい」

 

「気にすんな。水飲んで少し休め」

 

 この部屋で拾った水のボトルを差し出すと、シノンはそれを一気に飲み干す。そうだ、休んで怖かったことなんて忘れちまえ。

 

「……リシャラは?」

 

「レイジが追撃してる。ガソスタ方面に逃げたらしい」

 

 無理に起きようとするシノンの肩を掴み、もう一度寝かせる。俺はそのそばで寄り添うだけだ。これじゃあ、猟犬じゃなくて番犬だな。

 

「怒ってないの?」

 

「どうしてだ?」

 

「ボスを取り逃したのよ」

 

「死ぬよりはいい。仲間を死なせるくらいなら仕切り直すさ」

 

 そっと頭に手を添えてみる。いつものシノンならつねるか捻るかしてくるのに、今日はやけに素直だ。何もせず、ただ撫でられている。随分弱っちまったな。

 ただ、生きてくれればそれでいいさ。スナイパーは壊れやすいって言うし、シノンも限界が来たのかもしれないからな。

 

「……私は強くなりたい。数多の敵を斃して、それで私は私を取り戻せるって、そう思ってたのに、どうしても……」

 

 シノンは拳を握りしめる。トカレフはマカロフと並んで日本に密輸されてたりする。だから、何かしらトラウマになるような事があったのだろう。

 それを掘り下げるつもりはないけどな。俺はカウンセラーじゃない。情報系の大学に通うしがない学生で、ただのサバゲーマーだったんだ。彼女の人生に責任を負えるような人間じゃない。

 

「無茶苦茶するくらいならば本部勤務してくれ。俺は相方を死なせるつもりはない。レイジも、お前も」

 

 それは自分の為だ。俺が飄々とレイジの副官をやってられるのも、まだ仲間を死なせていないからに他ならない。

 俺もレイジも強い人間じゃないから、仲間を死なせる決断なんてできやしない。もし死なせようものなら、その時はきっと壊れてしまうだろう。

 

 それが怖い。俺の手の届かないところで見知った人が死んでいく。別れの言葉も無く、リアルに帰っても墓場の場所すらわからない。

 それに俺は耐えられない。それはレイジも仲間達も同じだから、俺は死んでも構わないとか思いながら死ねずにいる。それだけだ。自分の為だけだ。

 

「勝手な……」

 

 シノンは俺の胸ぐらを掴んで壁に押し付ける。その力は弱々しく、振り解くのは容易い。

 だけど、振り解いたらそれっきりになるような気がした。彼女と繋いだ縁さえもが振り解かれて、もう紡ぐことは叶わなくなる。それが怖くて、俺は振り解かなかった。

 

「勝手さ。お前やレイジに死なれたら俺は立ち直れねえ。そんな自分の勝手で死なせる気はねえって言ってんだ」

 

「そんなこと言うなら……なら! あなたが私を一生守ってよ!」

 

 そんなの、組んでまだ2ヶ月やそこらの男に言うようなものではないだろう。

 そう答えるのは容易いが、そうしたが最後この手は振り解かれる。シノンはこの下にある出口から脱出して、きっと会うことはなくなる。

 

 何に怯えているのかもわからない。傷ついた野良猫が精一杯の威嚇をしているようにしか見えない。そんな哀れな姿に、俺の心が傷んでいるのも確かな事実だ。放って置けない。

 

「出来ないでしょう? なら、そんなに軽々しく守るだなんて「いいぜ」」

 

 シノンの言葉に被せて、たった一言だけ言い放つ。多分、俺は冷酷な目をしていたと思う。

本来の自分と同じ黒の髪と瞳のままにしている。そんな漆黒な瞳をシノンの茶色の瞳が映していて、底知れぬ闇に見えた。俺って、こんな目ができるんだな。

 

「……何言ってるか、わかってるの?」

 

「ああ、分かって言ってる」

 

 静かに告げると、シノンの足から力が失われていく。俺の胸ぐらを掴む手もだらりと垂れて、その身を預けてきた。

 かけるべき言葉は見つからず、探すつもりもない。俺はただ、泣き喚く子猫にこの胸を貸しておくだけだ。




・ゴールデンTT
 成金趣味な金色のトカレフ拳銃。性能はトカレフそのままだが、これを所持しているのはReshalaのみであり、彼のユニークアイテムである。
 Reshala殺害タスクにてこれを納品する必要があるが、KillaのマスカヘルメットやShutrmanの鍵と違い、確定で持っているわけではない+入手しても生還しなければならないため、かなりの苦行を強いられることになる。(感想欄で嘆いていたニキは入手できただろうか……)
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