Escape from Aincrad 作:リンクス二等兵
ローグUSECも出したいけど、その前にレイダーも出したい!
マンティスからはひっきりなしに銃声が響いて、迫っていたレンとリョーハを寄せ付けない。マンティスは完全にキラの城になってしまっていた。
その間に俺の足と腕の治療が終わり、戦闘体制がようやく整った。コハルは心配そうだが、やらなければ仲間がやばいからな。
マンティスの入口は正面と側面の2箇所で、内部は病室代わりに使われていたらしく、パーテーションで迷路のように区切られている。
キラはそこから顔を出しては応戦して来ていて、当てたとしても引っ込んで回復される。つまり、長期戦が嫌なら突っ込んで仕留めるしかないのだ。
『レイジ、籠城されている限りは手出し出来ないわよ。突っ込むとしたら、フカ次郎単品ね』
『M4はあるけど、射撃下手なんだよぉ〜……リョーハぁ、守っておくれよ』
『それなら絶賛実行中! レイジ、そろそろ残弾やべえから代わってくれ!』
「今行く。コハル、悪いけどカバー頼む。俺の死角から敵が来ないか、目になってくれ」
一緒に戦うぞ。そんな意思を込めて声をかければ、コハルは強く頷いてくれた。
「任せて。私が目になるから」
「SCAVだったら無理せず俺に言えよ? それか、グレネードを投げつけて追い払ってやれ」
コハルはグレネードを手に息を呑むが、決意を込めた目で俺を見返す。
「頑張るね」
「無理しない程度にな。フカ、シノンを上に残して降りてきてくれ」
『聞いたか? お前が必要ってことだ』
『へへへっ、リョーハの頼みならすぐ行くぜっ!』
カンカンカン、そんなエスカレーターを駆け降りてくる音がする。フカ次郎も来てくれたなら、一気に決着をつけられるだろうさ。
俺はキバストアを飛び出し、真っ直ぐリョーハのところへ進む。左右はあんまり見ない。コハルが守ってくれるから、何も恐れることはなかった。
「リョーハ、スイッチ!」
「助かるぜ。弾込めてすぐ戻る!」
『レイジ、医療施設方面からSCAVが来てるわよ』
次の瞬間には銃声と共に、SCAVの悲鳴が響いてきた。シノンが狙撃で仕留めたようだ。キラを狙えない分、SCAVが不幸に見舞われることになったらしいな。
「随分仕事が早いな。リョーハが喜んでるぜ」
『リョーハ、喜んでないで仕事しなさい』
『だから弾がねえんだって!』
しかし、シノンは上機嫌だぞ。だって鼻歌を歌いながら狙撃してるんだ。SCAVにとっては悪夢だろうな。照れ隠しに狙撃されて、しかも正確に脳天をぶち抜かれるんだから。悪夢以外のなんだって言うんだ。
「レイジさん、私もそろそろ弾がなくなりそうです!」
「レンもかよ! これ使え!」
レンにP90を投げ渡し、俺は再び顔を出すキラへの銃撃へと戻る。AKの60連マガジンをたっぷり持ってきたから、俺はまだ戦える。
店内からはキラが撃ち返してきて、その度に俺らも撃ち返す。でも決定打にはなっていなくて、キラは引っ込んでは回復を繰り返す。いつまでも続くようにさえ思えた。
リョーハさえ来てくれたなら、すぐに決めてやると言うのに。ああもう、どうしてこんなにももどかしい!
「レイジ、今そっちいくぞ! とりあえず3本フルで詰めた!」
「そんだけありゃ足りる! レンと代わってやれ、詰めて仕留めるぞ!」
やっとリョーハが戻ってきた。ようやくこれで終わらせられる。レンは下げて、俺とリョーハが突入してカタをつける。
今頃、キラのアーマーはボロボロだろう。後は一気に火力を叩き込み、回復の間を与えずに仕留めるだけだ。それだけで終わる。
「準備OK。配置に着くぞ!」
「コハル、グレネード用意! 合図したら、店の中に投げ込め!」
「オッケー!」
マガジンを交換。60発フルに詰まったものに変えて、ライトを点灯する。リョーハも準備が出来たようで、ヘッドセットから準備よし、という声が聞こえた。
「コハル、グレネードぶち込め!」
「投げるよ!」
コハルが投げたグレネードは入口へ飛び込み、パーテーションを飛び越して店のかなり奥に入った。キラの悲鳴と足音に遅れて爆音が響くが、呻き声は聞こえない。
まあ、やることは変わらないか。あとは俺たちの仕事だ。
「突入、突入!」
「誤射すんなよ、突っ込むぜ!」
俺とリョーハは同時にマンティス店内へ突入し、仕切られた区画一つ一つを制圧して進む。そんなの、1分もあれば片付くくらいの量だった。
角を曲がると、暗闇の中からそれは浮かび上がった。近過ぎて、ライトが浮かび上がらせたのはタンカラーのアーマーの一部と、そこに白く書かれた「KILLA」の文字だけ。
「Aaaaaaa!」
「クソが!」
キラはRPKを振りかぶり、ストックで俺を殴りつけてきた。こんな行動パターン、今まで見たことがないぞ!
咄嗟にしゃがんで回避し、肩に逆さに取り付けていたナイフを抜き放つ。ここまで接近したら銃よりナイフの方が早そうだ。
でも、その手はキラの銃に弾かれた。クソ、槍みたいに使って来やがる!
「レイジ、退け!」
「このクソを何とかしてくれ!」
キラと取っ組み合いの格闘になり、リョーハが後ろから来るけど撃てずにいる。撃ったら俺も巻き添えだ。
「レイジ、離れて!」
今度は後ろから、耳に心地いいコハルの声がする。キラが振り回す銃を弾いてしゃがむと、その上を閃光が駆け抜けた。
コハルのソードスキルが緑の光を纏い、キラのヘルメットを捉える。これなら仕留めただろ、誰もがそう思ったし、俺も確信していた。
でも、それは間違いだった。マスカヘルメットのバイザー、あの鉄仮面はコハルのダガーを弾き、硬直したコハルは銃床で殴られて後ろへと吹き飛んでいく。
悲鳴が聞こえ、心臓が握り潰されたような感覚がした。そして溢れ出るのは怒りの感情。よくも、俺のパートナーをやってくれたな、このクソが!
堪えられない。例え相討ちでも構わないから殺してやる。AI相手だというのに、俺は堪えられない。殺さなければ、収まりがつかない。
「死ね、スーカ!」
前蹴りでキラの胸を捉える。押し出すような蹴りをまともに食らったキラは体制を崩し、俺と距離ができたことでリョーハが弾幕を浴びせた。
これで落ちるか、そう思ったのも束の間、キラは咄嗟に伏せてリョーハへ撃ち返した。
「おいマジか!?」
流石にリョーハの判断は早く、飛び退くように近くの物陰へ隠れる。俺もようやく体勢を整えて撃ちまくったが、キラはクラウチングスタートの如く走り出した。こいつ、元アスリートだけどやってたのは陸上競技じゃねえだろ!
「レン、そっち行ったぞ!」
追いきれない。キラの足が早過ぎるのだ。そして、その逃げた先にはレンが待っている。
「おっと、このフカ次郎様が相手だぜ!」
店を飛び出した瞬間、一つの爆音とともにキラがよろめいた。足から血飛沫のエフェクトが飛び散り、動きが止まる。
榴弾じゃない。確かに何かを撃ったようだが、はてさてどうしてか爆発に味方を巻き込むことなく、キラの足だけを破壊してみせた。後でトリックを聞くとしよう。
「これで、倒れろ!」
柱に隠れていたレンが飛び出す。そのまま、キラの胸にP90を押し付けるようにしてトリガーを引くと、釘打ち機かのように弾丸が胸に撃ち込まれる。
アーマーは俺とリョーハがボコボコにした。P90のSS190でも十分貫けるはずだ。
呻き声が上がる。重量物を叩きつけたような音を響かせて、キラがようやく崩れ落ちた。
シノンのため息が聞こえる。今回の手柄はフカとレンに持っていかれたんだ。それもそうだろうな。
こうして漸く、ULTARには静寂が戻ってきた。
・フカ次郎が使った弾薬(M576)
グレネードランチャーに装填する散弾。160ダメージのペレットを15発発射する。
威力は申し分ないが、1発ずつしか装填できず、連射に難があるので運用が難しく、それを物語るようにフリーマーケットでは二束三文で取引されている弾薬である