Escape from Aincrad 作:リンクス二等兵
BEAR Operator”Rage”
Aincrad”Hide out”
俺のハイドアウトにはアトラスのメンバーが集っていた。と言っても全員じゃない。コハルやシノン、レンとフカには少し買い物に出てもらっていて、代わりに1線級部隊の連中がこの場に集まっている。
「揃ったな。セリョーガ、ダスティ、報告してくれ」
セルゲイとダスティは頷き、インテリジェンスセンターのボード前に立つ。2人はアトラスの諜報部隊"ラングレー"隊のメンバーで、普段はアルゴに貸し出している。アトラスはそのレンタル料として、アルゴから情報を貰っている。
「このところ、オレンジプレイヤーの目撃証言が増えている。被害報告もまた然りで、下層では有志の自警団を組織しているらしい」
セルゲイは溜息混じりに報告する。他のプレイヤーを傷つけたり、NPCの商店から盗みをするという悪事を働くと、頭上のアイコンが緑からオレンジに変わる。
そうなったプレイヤーは圏内へ入れなくなるなど、ペナルティを負うことになる。
そんな連中が圏外で暴れているそうだ。特に、オレンジ共のギルドが暗躍して、グリーンに被害が増えているという。いい加減、見過ごせない域に入ってきている。
「ダスティ、攻略組の動きは?」
「まだ何もないな。あいつらは攻略にお熱だ」
「だろうな」
「それでも、PMC部隊だとオレンジを返り討ちにしたという報告も多い。俺らはPvPを生業にしていたからな。それで、護衛にPMCを雇う例も増えているそうだ」
EFTは元々PvPありきのゲームだ。SAOに取り込まれたから忘れがちだが、SCAVだけでなくPMCとも殺し合う。
殺し殺され、それをPC版だけでなくVR版を1ヶ月体験してきただけでも、やはり殺しへのハードルは随分違う。正直、PKも俺たちには"いつも通り"だ。
「だが、例の扇動ギルドの件があっただろ? そいつはどうなった」
リョーハが指し示す場所、壁のコルクボードには扇動ギルドのことを書いた付箋が貼り付けてあった。忘れるわけもない。モルテの野郎が仕組んでくれた5層の事件は本当にヤバかったからな。
「それならキリト、アルゴを巻き込んで最優先調査中。どうも、連中は表に出てこようとしない」
「それでも、圏内に入れないオレンジ共が武器や食料をどう調達してるんだ? PKだけじゃあるまい」
フィールドにあるオブジェクトを漁ったとしても、安定供給するには心許ない。武器になると尚更だ。
「それについては調査中。少なくとも、オレンジのグループに何人か調達、連絡役のグリーンがいるらしいな」
ビンラディンを追い詰めたCIAみたいなことしてる、とダスティは苦笑しながら呟く。そのグリーンを特定できれば、アジトへの強襲も可能になるだろう。調べる価値はある。
「2線級部隊で、諜報に適性ありそうな奴はいますか?」
俺が顔を向けた先にはディアベルがいる。5層を生還した彼はずっと、アトラスの2線級部隊長をしてもらっている。基本的にはSAOもEFTも問わず、後進の育成だ。
「それならば、ちょうど1線級へ推薦しようとしていた人がいる。レコンって言うんだけど、情報収集能力は確かだ。戦闘能力には不安が残るけどね」
「1線に出れるなら、自衛戦闘くらい問題なく出来るのでしょう? ダスティ、お前の下につけるから使ってやってくれ」
情報収集能力は生死を分ける。少しでも優秀な奴がいたら引き上げたいし、見込みがあるなら育てていきたい。敵が裏でこそこそしているなら、俺たちはそれを暴き出すだけだ。
「アトラスは予定通り12層攻略に取り掛かるが、同時並行でオレンジギルドの実態解明も進める。それでいいな?」
異議なし、と声が上がり、方針は決まった。その中で唯一、リョーハの手が上がる。
「オレンジの攻撃を受けた場合については? ここで交戦規則も決めておけ」
「決まってるだろ。もし自身他者問わず、オレンジプレイヤーの攻撃を確認した場合については」
言葉を切ると、全員が俺に目を向けていた。その目はギラギラとしていて、ある日の光景を思い出しているかのようだ。
あの日々を、こいつはもまだ忘れられずにいるのだろうな。
「交戦を許可する。射殺も辞さない構えでいけ」
奴らは俺たちを殺しにくる。ならば殺す覚悟で挑まなければ、こちらの死体が増えるだけだ。タルコフでそれが身に染みているからこそ、生半可に捕獲など言わないさ。