Escape from Aincrad   作:リンクス二等兵

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全SCAVがレイダーに変わるイベントと聞いて、投稿を忘れてレイド行っておりました……


1層-6 ホルンカ

 はじまりの街から数時間歩き、俺たちはホルンカの村に到着した。待ち合わせ場所ではキリトが立っていて、動かないものだからNPCに見えてしまった。

 

「キリト、来たぜ」

 

「無事でよかった。変なNPCに絡まれなかったか?」

 

「ああ、SCAVの事か? 俺とリョーハで皆殺しにして、片っ端から装備を奪ってきた。どっかで換金できるか?」

 

「それならあそこで……」

 

 どうも、SCAVは従来通り頭か胸部の耐久値を全損すると死亡するらしい。1発60ダメージの銃弾で削り殺すのも大変だから、これは嬉しい情報だった。

 その辺はアルゴが嬉々として纏めていたし、いい収穫だろう。

 

「あと、アルゴに俺らの事頼んでくれたって? ありがとな」

 

「いいさ。アルゴもEFTのことを知りたがっていたし。それで、1人増えたのか?」

 

「ベータ時代の仲間だ。ほら、茅場の話の時に酒飲んで酔っ払ってたアホ」

 

「誰がアホだ!」

 

 リョーハが後ろから組みついてくるが、脇腹に肘を入れて反撃する。アホはアホだ。事実なのだから仕方あるまい。

 

「ああ、あの時の……よろしく。キリトだ」

 

「リョーハだ。心強い仲間が増えて嬉しいぜ」

 

 キリトとリョーハは握手を交わす。リョーハは中々にコミュ力が高いので、初対面の人でも打ち解けられるのが強みだ。

 

「で、状況を。俺を呼んだってことは、タルコフ絡みの何かなんだろう?」

 

「その可能性があるんだ」

 

 キリトの説明によると、道続きで"ホルンカの森"へ行けるはずだったのだが、ホルンカの森が無くなって草原になっていたらしい。

 そして、村にいる案内人に話すことで森のダンジョンに行けるのを見つけたが、行き先はホルンカの森ではなく"Prozersk自然保護区"となっていたという。

 

「プリオゼルスキー自然保護区……レイジ」

 

「ああ、予想通りならWoodsだろうな」

 

「Woods? タルコフのマップなの?」

 

「少し待て」

 

 タブレットを取り出し、トレーダー画面を開く。村や街の鍛冶屋と違い、EFTにいた8人のトレーダーはこの端末を介して取引及びタスクの受注を行うようになっている。

 

 その中から"Therapist"を選び、Woodsの地図を購入する。こうして買ったものは直接インベントリか、ハイドアウトのスタッシュに格納される。

 

「そういえば、そのマップにはもう入ったのか?」

 

「まだだ。説明も随分変わっていたから、無茶はできなかったんだ」

 

「賢明だな。変わっていたって言うのは?」

 

 地図を開きつつ、変わっていたと言う部分について訊いてみる。今の環境ではそういった些細な変化も見逃すことは出来ない。

 

「本来のダンジョンはスタート地点から始まり、ゴール地点から出る、それは大丈夫だよな?」

 

「ああ、RPGは齧ってたからな」

 

 本当に申し訳程度だが、この手のRPGの経験があるから基本知識は問題ない。キリトが困惑する変更とすれば、EFT絡みだろうか?

 

「それが、ランダムな地点にスポーンして、指定された複数の脱出地点のどれかに到達するってなっていたんだ。それに、パーティが1つにつき5人までになってる」

 

「ああ、完全にタルコフのシステムだな。地図がなきゃ分からないだろうし、入らなくて賢明だ」

 

「地図推奨と説明もあったし、近くの道具屋でも地図を取り扱ってたぞ」

 

 SAOプレイヤー向けの説明なのだろう。PMCなら大体の脱出地点は覚えている。地名で示された脱出地点は、攻略サイトでも見ないと見つけるのは困難だ。

 地図にも脱出地点の位置は書いてあるが、そもそも自己位置を判別するのが難しすぎる。

 

「偵察に行こう。ハッキリさせないとな」

 

「オイラもついて行っていいよナ?」

 

「勿論だ。アルゴにはこの情報を広めてもらわないと、SAO連中が遭難しちまう。パーティは2つ。俺とリョーハがそれぞれ先導。それでいいな?」

 

 意見は出なかった。Woodsを歩き回った経験があるのは俺とリョーハだけなのだから、当然だろう。後は、SAOプレイヤーの振り分けだけだ。

 

 あとは、無線機を全員に渡しておくか。

 

 

Raid #1

Day 1

Level 2 BEAR Operator "Rage”

Aincrad layer1 "Woods”

 

 ブラックアウトした視界に光が戻る。砂浜を思わせる湖畔と、潰れかけたログハウスの集落が視界に入る。

 嗚呼、ここか。PC版からVR版と、歩き慣れた場所だった。

 

「レイジ、ここってどこ?」

 

 俺に同行するコハルは地図と睨めっこして、現在地を把握しようとしているが、上手く行っていない様子だ。

 

「マップ北側、小さな湖が5個あるところだ。南に伐採場がある」

 

 Woodsはマップ中央付近に巨大な岩山が存在し、目印となっている。その近くには伐採場があって、かつては諸般の事情で激戦区になっていた。

 

「ここだね。脱出地点はどこだろう?」

 

「南側、Outskirtsだろうな。スポーンが北か南かで脱出地点が決まってるのさ」

 

 視界右上に意識を集中すると、脱出地点の表示が現れる。といっても、地名を表すだけだから地図がないと役に立たないが。

 

 脱出地点は"Outskirts"”ZB-014”"Factory gate"”Bridge extraction"の3箇所。ZB-014とFactory gate、Bridge extractionはギミックがあるため、確定で使える脱出ポイントはOutskirtsのみになる。

 

『レイジ、こちらリョーハ。Outskirts付近でスポーン。そっちはどこだ?』

 

 無線機からリョーハの声が聞こえる。トレーダーに追加されていたアイテムで、ダンジョン内でも仲間と連絡が取れる便利アイテムだ。

 正直、メールで事足りそうと思ってしまったが。

 

「新エリア、水没した村のあたりだ。魔法陣とかUSECキャンプ近く」

 

『なら、スナ岩頂上で待ち合わせよう。ログハウスと検問所漁ってからそっちに行く』

 

「じゃ、俺らは魔法陣とUSECキャンプ漁るわ。村はお前らが帰りにでも漁れ」

 

『助かる。着いたらまた連絡するぜ』

 

 リョーハの方にはキリトとアルゴが付いていった。くじ引きの結果とは言え、何か作為的なものを感じるのは俺だけか。

 

「リョーハ、どこでスポーンしたって?」

 

「Outskirts。俺たちの脱出ポイントだ。本来なら、伐採場あたりで鉢合わせてPMC同士の大激戦になるところだがな」

 

 まずはこの近くの漁り場所にコハルを連れて行こう。いいところがある。地図に載っていない情報を調べ、記録して広めるのも、先駆者の大切な役目だ。

 

「それで、あの家にアイテムが出るの?」

 

「家にクレートとか食品が湧くこともあるが……目的は別にある。魔法陣が本命だな」

 

「魔法陣? 魔法なんてあるの?」

 

「違う違う。タルコフにはカルト教団がいて、所々に儀式の跡があるんだ。奴らはそこにお供物をする」

 

「つまり、レアアイテム?」

 

「高確率でな。武器とかアイテム収納用のケースとかスポーンするから、周辺はいつも激戦だよ」

 

 他のマップだと、魔法陣のあるところには鍵が掛かっている。マークド部屋や魔法陣部屋と言われるそこは、タルコフのガチャ的存在だ。

 

 潰れかけた木造家屋の庭、物干し竿近くの地面に目を凝らすと、それはあった。

 ミステリーサークルのように丸く草を刈り取ったそこに、稲妻模様と円形の魔法陣があった。

 

「見つけたよ! これは……レイピア?」

 

「SAOのアイテムも湧くようになったか。強いかどうかはキリトに見てもらおう。後は……AKMNか」

 

 有名なAK-47の改良モデルAKMの夜戦対応型で、側面にサイドマウントが増設されている。

 俺はAKMなどの大口径弾は使わないから、リョーハにでもくれてやろう。奴はパワーこそ全てなタイプだ。

 

「これ、今のより強いから使ってみるよ。幸先がいいね」

 

「コハルの行いがいいからじゃないか? 次行こう次」

 

 そこから丘を越え、道無き道をかき分けて岩山へ登る。木の茂る岩山の中部には、偽装網(バラキューダ)を張って隠されたキャンプがある。

 SAOの世界には似つかわしくないオフロード車や、ヘスコという大型の土嚢で作られたそれはUSECの拠点だった場所で、食料やウェポンパーツがスポーンする。

 

「テントに折りたたみベッド……これ、持ち帰れないかな?」

 

「オブジェクトは無理だろ。欲しい気持ちは俺もわかるけどな。寝転んでいくか?」

 

 折りたたみベッドは確かに欲しいが、血痕が残るものを使おうとは思えない。コハルも血痕に気付いたのか、嫌そうな顔をしていた。

 

「やめておくよ……あ、何か出た」

 

 コハルがクレートから取り出したのは黒い照準器。

 HHS-1はホログラフィックサイトと倍率ブースターのコンボで、等倍と3倍に切り替えが可能。近〜中距離戦闘に対応できる優れものだ。

 

「序盤だとお高いやつだ。持って帰って売るといいぞ」

 

「レイジは使わないの?」

 

「あると嬉しいけど……コハルの儲けだろ」

 

 EFTは見つけたもの勝ちだ。タスクの納品などで必要な時はシェアすることもあるが、トラブル防止のためにそう取り決めておくことが多い。

 

「ううん、レイジが使って。私にはこれがあるから」

 

 すらり、と抜いたレイピアは僅かに緑色を帯びていた。さっきの魔法陣からスポーンしたそれは、目を引くほどに美しい。

 

「レイジが教えてくれた魔法陣で、独り占め出来たのにくれたんだもん。お礼させてよ」

 

「お礼したいのは俺の方なんだけどな」

 

 コハルがいなかったら、今頃俺は死んでいたかもしれない。背負うものもなく、守るものもない。好きなように戦い、好きなように死んでいったはずだ。

 その支えが、枷がコハルだ。どこかへ消えてしまわぬよう、捕まえていてくれる。

 

「レイピアと照準器の交換だよ。プレゼント交換みたいに!」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 ちょうどよくサイドマウントレールを拾っていたので、それを介してコハルのくれたサイトを銃に取り付ける。

 ベータでも愛用していたサイトだけあって、随分しっくりくる。装備が良くなるにつれて、少しずつ自分を取り戻すような感覚がした。

 

「すごくかっこいいよ、特殊部隊みたい!」

 

「コハルのおかげさね。さ、残りも漁っていこう。牛乳とオートミールがあるぞ」

 

「朝ごはんに良さそう。牛乳はハイドアウトの冷蔵庫に入れておこうね」

 

 まるで、おまけ付きのお菓子を開けるかのようなワクワク感を楽しみつつ、キャンプを漁っていく。

 漁るのは確かに楽しいのだが、コハルと喋っているのはもっと楽しい。取り留めもなく、暇を潰すだけだったとしても、一つ一つが宝物のように思えた。




・EFTの体力システム
 体力は頭部、胸部、腹部、腕×2、脚×2の合計体力440であり、耐久値が0となった部位は破壊(壊死)状態となって対応するデバフを受けてしまう。

 特に、頭部(35)か胸部(85)が壊死した場合は即死するシステムだが、流石にシビアすぎたためか、PMCに限っては緩和されている模様。但しSCAVは普通に死ぬ。
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