Escape from Aincrad   作:リンクス二等兵

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20層-0 悪夢の中で

Aincrad

BEAR Operator”Rage”

 

 あの時どうするべきだったかなんて、今更考えたって遅い話だ。少なくとも、あの時そうするべきだと思った。怒りに身を任せていたのだとしても、そう判断したのは他でもない俺なのだ。受け入れる他にあるまい。

 

 でも、後悔はしていない。仲間だと言えるサーニャに、そして何よりコハルに刃を向け、人質にしやがったオレンジを俺は許すことが出来なかった。

 だから、コハルの願いを忘れたように暴れた。力のままに、感情のままに銃を撃ち、ナイフを振り回して。

 

 その報いが今だというのであれば、受け入れるしかない。コハルと一緒に眠っていたハイドアウトにはもう帰れない。どこかのフィールドの安全地帯で、他のプレイヤーの存在にまで怯えながら眠らなければならない。

 

 目を閉じれば、紙芝居のようにあの時の光景が一つ一つフラッシュバックする。人質に取られたコハルの姿が浮かび、ホルスターに手をかけて飛び起きた。

 

 ある時は、榴弾が降り注ぐ中で戦っていた。ローグの放つグレネードランチャーの弾幕の中へ、オレンジプレイヤーを蹴り飛ばして自分は逃げた。悲鳴が耳をつんざき、跳ね起きた。

 

 次は何だっただろうか。そうだ、俺の目の前で次々と死んでいく仲間たちの姿だったな。彼らの名前を叫んで、その手を掴もうと足掻いた。

 掴んだ。そう思った瞬間には彼らの姿は消えて、俺の手は虚空を掴むばかりだった。

 

 最後に見たのは、脱出用の装甲列車にコハルたちが乗り込む姿だった。あの手を掴んでいたならば、きっと違う未来があったのかもしれない。

 でも、掴めなかった。その手を振り払ってしまったのは俺自身の意思で、彼女に背を向けてしまった。その代償が今なんだ。

 

 結局、守りたかったものは何一つ守れなかった。そして、コハルにもう顔を向けることは叶わない。俺はそこまで堕ちてしまって、アトラスにいることさえも出来ない。

 補給もなく、略奪で食い繋ぐしかない。武器もSCAVから奪ったボロで、かつて使っていたカスタマイズAKに比べたらゴミのようなスペックにしかならない。フィールドでは交換できるパーツな制約があるから、仕方ないことだ。

 

 いい加減、移動するとしよう。ここも安全ではない。他のプレイヤーに見つかるわけにはいかないのだから。

 雪が降り積り、俺の足跡を消してくれる。きっと、誰にも見つかることはないだろう。そこにいたからこそわかる。あいつらはどこを探すか、どう考えるかを。だから、俺が捕まることはないさ。

 

 髑髏のバラクラバを被り、フリースキャップの上からヘッドセットを被る。次はどこへ行こうか。何をしようか。辺りには俺を片手間に殺せるようなモンスターがウヨウヨしている。どこへ行っても同じだ。

 罪の証を背負いながら、また行くしかないんだ。願わくば、かつての仲間に出会うことがないように。

 

 でも、死ぬのならば仲間と呼んだ人たちに殺されたいなって、そんなふうにも思ってしまうんだ。

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