ギャルゲー主人公の義妹もわたしを好きだと言っています。これは両思いですね 作:二葉ベス
「……な、なんですか」
「いや、別に?」
お昼ごはん中。わたしはずーーーーーーーーっと幸芽ちゃんのことを見つめていた。
何故か。そんな答えはかなりシンプルなものだった。
――幸芽ちゃん、その写真いつ撮った?
謎が謎を呼ぶ迷宮。真実はいつもひとつと言うけれど、実際調べなきゃ分からない。
だからこうやって見つめてるんだけど、幸芽ちゃんの反応がややおかしい。
「ご、ご飯に集中してください!」
「うん……」
お茶碗で隠しているように見えるけれど、頬のあたりが少し赤くなっている気がする。
熱っぽいとかそういうのじゃないだろうけど。
視線を追ってみても、涼介さんがいるということもなく。
いったい、何に頬を赤らめているのだろう?
「幸芽ちゃん、風邪とか?」
「え?!」
「そうなのか? それだったらご飯のあと休んだほうが」
「や、そういうんじゃ……。いや、そうしておきます」
「わたしも付き合おうか?」
「い、いいです! 風邪とか移したら嫌ですし!」
全力で拒否されてしまった。わたし涙目。
心配なのは心配だけど、気になることもあったりする。
「ごちそうさま、美味しかったよ!」
「はい……」
写真。そう、あの写真だ。
わたしの頬が緩みきった写真なんて、それこそタイミングを見計らわないと撮れない。
幸芽ちゃんのことだから隠し撮りはないと思うんだけど、うーむ。
足早に幸芽ちゃんが食器をシンクの中に収納し、自分の部屋へと立ち去っていく。
気になる。めちゃくちゃ気になる。
当然幸芽ちゃんに好きと言わせなければ死ぬ、という状況は分かっているけれど、個人的な興味本位からは逃れられないのだ。
「って言っても強引に攻め入ったんじゃ、幸芽ちゃんに嫌われるし……うむぅ」
「なに独り言つぶやいてるんだ?」
「エロ本の隠し場所をどうやって見つけるか、みたいな?」
例え方がひどすぎた。涼介さんめっちゃ動揺しているし。
「べべべべ、別に俺はエロ本隠してねぇし!」
「まぁそれはどうでもいいんだけど」
「ど、どうでもいいのかよ!!」
一人で抱え込んでいてもしょうがない。
ということで、先ほどの事情をぺらぺらと口に出す。
なるほどな。と腕を組んで考える涼介さん。ちょっと様になってる。
「俺も花奈の恋は応援したいしな」
「……本当に、変わったね」
あれだけ好きだと思っていたのに、人の心とはあっさり変わるものだ。
「いや、一昨日も言ったけど、今もお前のことは好きだからな?」
「でもほぼ諦めムードでしょ?」
「俺としては幸芽と一緒にいてくれればそれでいいし、それで二人が結婚したら、お前からも『兄さん』なんて呼ばれたりもできるだろ。そういうことだよ」
「ごめん、今の聞かなかったことにしていい?」
「すまん。俺も失言だったわ」
訂正しよう。なんだかんだ未練がましい男だということだ。
まぁ、今では親しい間柄だとも思ってるし、いいんだけどさ。
「気になってたんだけどさ。結局お前らって付き合ってるの?」
「……まぁ一応」
「向こうから好きとは言われてないけどね」と軽めに笑いながら、口に出す。
簡単に聞き出せてたら、あの自称カミサマの術中にはハマらない。
意外と難易度高いのは分かっていたけれど、幸芽ちゃんガード堅いんだもん。もうちょっと柔らかくしてほしいものだ。
「今日のところは引き上げてもいいかもな。あの様子じゃ、多分出てこない」
「やっぱりかー。幸芽ちゃんのけちんぼ」
「あはは。まーさ。夏祭りに誘えば、案外心を許してくれるかもだぞ」
「夏祭り?」
あー、そういえばゲームのパッケージにそんな感じにイベントスチルあったっけな。
そっか。もう夏休みだし、夏祭りとかもあるんだよね。
「毎年恒例のな。だいたい二週間後ぐらいか」
「夏祭り。幸芽ちゃんと夏祭り。浴衣の、幸芽ちゃん……!」
「お、テンション上がってきたか」
そりゃそうよ!
何色が似合うかなー。やっぱりクールな花柄の青かな。あのふんわりとした髪の毛がポニーテールみたいにまとまってくれれば、さらに嬉しい。
夏限定の幸芽ちゃん。んー、課金したくなっちゃう。
「海とかも行きたいねー。プールとかもいいなー」
「川でBBQもありだな」
「その場合幸芽ちゃんには過労死してもらう羽目に……」
「あー、確かに」
檸檬さん辺りも誘ったりなんかしたり。
あれ、もしかして夏休みって結構忙しかったりする?
「宿題もやんなきゃだしな」
「うぅ……」
「いい思い出にしたいよな」
軽く微笑みかけるように涼介さんがわたしの方を見る。
ったく。そういうところをもっと他の人に分け与えてあげればいいのに。
「そうだね!」
社畜時代に比べて暇だって思ったけど、あれは嘘だ。
昔よりも全然忙しいし、今の方がもっともっと楽しい。
これが学生時代の青春か。ちゃんと予定立てなきゃ。
海にプールに夏祭り。それに宿題と。悪くない、忙しさだ。
二人と比べたら老婆めいた思いを胸に秘めつつ、わたしたちはテレビを見ながら談笑に耽るのだった。