ギャルゲー主人公の義妹もわたしを好きだと言っています。これは両思いですね   作:二葉ベス

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ギャル好き(本作)の最終話ストックの執筆が終わりました。
52話で終わりになりますが、それまでお付き合いいただければ幸いです。


第35話:初お披露目は勝利フラグ

 肌を焼く太陽、なんてものは天井のすりガラスで防がれている。

 カルキの匂いと、纏われる湿気。そして半裸の男女!

 

「あー、本当にプールだぁ」

 

 何年ぶりだよわたし!

 最後に行ったのが大学の時だった気がするし、おおよそ四年か五年……?

 嘘でしょ。それだけあったら小学生が中学生になってる!

 

「幸芽ちゃん! 見て! あの流れるプール! あっちはウォータースライダーかな? あ! あれは波が出るやつ!」

「姉さんはしゃぎすぎです。もっと静かにしてください」

「だってプールだよ?! テンションも上がっちゃうよ!」

 

 夏といえば海だと言う輩がいるが、それは違う。

 真のテンションが高い陰キャは、肌を焼きたくないからプールに行くのだ。

 解放感は海ほどではないにしろ、広いプールサイドを見ていたら、気分が高ぶるのは必定と言えよう。

 要するに、今のわたしは普段の数倍面倒くさい!

 

「あはは! 花奈ちゃんテンアゲ早すぎー!」

「だって上がらない?! も―ホント、何年ぶりだよーって!」

「あれ、去年行かなかったか?」

 

 そんな男の声が耳に入る。

 誰だ、なんて無粋なことは言わない。

 涼介さんがズボン型の海パンを身にまとって登場したのだ。

 

「あ、あー! みんなと行くのがね!」

「いや、でも。去年もこの三人とは――」

「檸檬さんも一緒で、ってことですよ! ね!」

「いや、あたしは……」

「ね!」

「……ソ、ソダネー」

 

 ごり押した。

 檸檬さんも涼介さんも困惑の二文字を並べているし、幸芽ちゃんは一つため息をついている。

 気を付けなきゃなのは分かってる。ちゃんと自分を律しないと。

 

「それより、どーよ! あたしの水着姿! イケてない?」

 

 檸檬さんが突然モデルのようなポージングを取り始める。

 彼女の金色のサイドテールはそのままに、黒いビキニが際立つ。

 体系がスマートなのもあるけれど、それ以上に胸のインパクトがすごくて。

 素直に言おう。

 

「モデルさんみたい!」

「マジ?! ありがとー! 花奈ちゃん好きー!」

 

 わたしの手を強引につかんで、ブンブン左右に勢いよく振る。

 まぁ、その。モデルさんみたい、という言葉には裏があって。

 単純にエロいよね、うん。絶対狙ってきてるでしょ檸檬さん。これは子供には刺激強すぎるって。

 

「花奈ちゃんのもすごくかわいいよ!」

「ありがとう!」

 

 わたしの水着は俗に言うパレオだ。

 でもちょっと普通じゃないのは上にはビキニだけじゃなくて透けてもいい白Tシャツを着ているということ。

 裾の方を少し結んで完成。みんなからもはい歓声、みたいな。

 

「どうかな、幸芽ちゃん」

「どうって。まぁ……いいんじゃないですか?」

「やった! 頑張って選んだ甲斐があったよ!」

「別に、姉さんならなに着てもかわいいですし」

「ん? 何か言った?」

「なにも!」

 

 小声で何かが聞こえた気がするけど、ここじゃ周りの声でかき消されてしまう。

 でも幸芽ちゃんに褒められたの、めっちゃ嬉しい。

 昨晩タンスを漁り、水着をこれでもかと試して、一番いいのを繕ったので嬉しいのだ。

 

「花奈はなに着てもかわいいからな」

「え? なんて言ったの?」

「お前、絶対聞こえてたろ」

「聞こえてませーん! あはは!」

 

 ちらりと幸芽ちゃんの方を確認する。

 なんとなく不服そうな顔をしておられる。

 幸芽ちゃんが好きなのは涼介さんだもんな。悔しいことに。

 

「で、幸芽ちゃんはいつまでタオルかぶってるの?」

「……あー、えっと」

「いいんだよ、バカにしないし」

「別にされない身体してると思うんですけど」

 

 しぶしぶ、と言わんばかりに身体からタオルをはがしていく。

 ふんわりとワンカールアレンジが入ったミディアムヘアをポニーテールした彼女は、とにかく美しかった。

 身長が百五十センチメートルにも満たない小さな体躯から延びるのはしなやかで白い手足。

 雪のように、という言葉がふさわしいか。触れば思わず埋もれて、跳ね返ってきそうな柔肌。

 その美しい手足から胴体に視線を向ければ、少し幼さ残る胴体だった。

 寸胴とは言い難いものの、くびれが少ない身体はわたしの保護欲を刺激する。

 それに合わせたのだろう。フリルが装飾された白と水色のビキニに、わたしは唖然とした。

 

「……やっぱり、似合わなかったですか?」

 

 そんな不安げな言葉に全力で首を横に振り、それを拒絶する。

 

「そんなことない! 幸芽ちゃんかわいい! すごっく! このために生きてるって感じ!」

「冗談言わないでくださいよ」

「冗談じゃないよ! それぐらい、美しくて綺麗でかわいくて。やっぱりどんな姿でも幸芽ちゃんが大好きなんだなって思っちゃった」

 

 自然と、そんな言葉が出てきていた。

 褒めるならとことん褒める。その方が言われてる相手も気分がいいと思うから。

 

「あ、ありがとうございます……」

「ふふ、照れてる。わたしのこと好き?」

「照れてないですし、好きじゃありません!」

 

 嫌いでもないですけど。と小声で口走る幸芽ちゃん。

 残念。それはわたしの耳に入ってるんだなー。

 すっと幸芽ちゃんの指先に自分の指を絡めて、ちょうど恋人つなぎになるように指を折る。

 

「……なんですか、この手は」

「恋人の証!」

「ま、まぁいいですけど」

 

 真っ赤になる幸芽ちゃん。かわいいな。

 でも多分、わたしも顔真っ赤になってる気がする。あとでプールに入って冷やさなきゃ。

 

「初々しいねー。って、涼介くんどしたの?!」

「やっぱり、幸芽を幸せにするのは花奈だけだーーーー!!!」

 

 何かの致死量に達してしまった涼介さんが横たわりながら、びくびくしているのを尻目に、これからどんなことをしようかと、思案しているのだった。


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