ギャルゲー主人公の義妹もわたしを好きだと言っています。これは両思いですね   作:二葉ベス

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第48話:ラスト・オブ・ゴッド

「やっほー!」

「……何か御用で」

 

 二度あることは三度ある。なら四度目以降は?

 答え。絶対にある。

 

 ということで今晩も呼ばれてないのに飛び出てくる。そんな自称カミサマである。

 

「いやぁ、夏休みも超えられたしよかったよかったー」

「元はと言えばあなたのせいなんだけど」

「そんなこともあるさー。実際終わる前に好きって言われてよかったじゃん」

 

 ハテナ。そんな機会はあっただろうか。

 いや、あるにはあったというか。聞き逃したと言いますか。

 

「それ、聞いたことないんだけど」

「あれれ~? 幸芽ちゃんからの愛のメッセージ、あなたには届いてなかった感じ―?」

 

 イラァ。

 なんでこのカミサマはこんなにも人の神経を逆なでしてくるのだろうか。

 わたしは聞いてないったら聞いてないというのに。

 

「教えてあげてもいいんだけどー、カミサマに何か言うことないかなーって」

「なんの話?」

「ほら、恋のキューピットとして、さ」

 

 指先がこちらを煽るように前後に動く。

 なんて恩着せがましい。そんなでも神様か。いや、カミサマだからか。

 はぁ。と一つため息をついてから、パジャマ姿のわたしの胸に手を置く。

 

「あー、かみさまありがとー」

「わぁ、すっごい棒読み」

 

 だって感謝の意図なんて一切ないから。

 確かに転生してくれたことには感謝だが、故人的にはそのまま死なせておいて欲しかった。

 あ、今の個人と故人をかけてた素敵ジョークなんだけど、伝わらないか。

 

「まぁいいけど。カミサマがあなたを転生してあげたのはほぼ気まぐれだし」

「で、その幸芽ちゃんの件ってどういうことなの?」

 

 ホントに気付いてなかったんだ。と口にした彼女はその場で指をパチリと鳴らす。

 現れたのは周辺を木々で囲まれて、見晴らしがそれほど良くないベンチの上。

 そう。言ってしまえば、夏祭りの時の再現であった。

 

「幸芽ちゃんも舞い上がってたんだろうね、あなたに好きって言ったの」

「え?」

「あの時に呪いは解除。それであの徹夜騒ぎだから、ホントに面白かったよ」

 

 あははと、またもやどこから出したか分からないラムネを口にする。

 そっか。そっかやっぱり、幸芽ちゃんは……。

 

「ちゃんとわたしのこと好きでいてくれたんだ」

 

 にやけているわたしの顔はきっと気持ち悪いことになっていることだ。

 それだけ。そう、本当に嬉しかったんだ。

 

「言葉ってのは魔力だよ。たった二文字の言葉に一喜一憂する。人間は愚かで惨めで醜い生き物だが、いびつで一つの作品として美しいとカミサマは思うんだ」

 

 わたしを指さして、あなたみたいにね。と口に出す。

 

「ま、届いてなければ聞かなかったことと同じなのだけど」

「カミサマって本当に一言余計だよね」

「カミサマだからね。よくおせっかいと言われるよ」

 

 そういう意味で言ったんじゃないんだけどな。

 ため息をまた吐き出して、ベンチに座ろうとした瞬間、それは目の前の彼女によって消されてしまった。

 

「カミサマのお告げはもうない。あとは順風満帆な毎日を送るといい」

「なら清々するんだけど、一つ、いいかな?」

 

 あぁ、分かっている。とカミサマは言葉にすると、わたしが懸念していた事案が画像のように写し出される。

 

「本名バラすなんて思ってもみなかったよ。ま、言葉にしちゃったなら仕方ないかと思うけど」

 

 クスリと笑う彼女がやや憎らしい。

 別に自分の名前だ。そこでとやかく言われる筋合いはない。

 

「ま、真理に触れる研究員や、神様をあがめる教団員にバレなきゃいいんじゃないの?」

「そんなあっさりでいいの?」

「カミサマは寛大だから。それに悪いことが起きても、それはあなただけの責任。カミサマは簡単にもみ消せちゃうからね」

 

 やっぱりこの神、邪神の類なんじゃないだろうか。

 そう考えてしまう程度にはこのカミサマのうさん臭さは異常だった。

 

「だからこれからはあなたの人生だ。カミサマがここに出てくることは、もうない」

「ならよかった、かな」

「チート技能だって渡す機会はなくなっちゃうね」

「持ってるの、着付け技能だけだし」

「欲しくない? 異能力系のやつ?」

 

 別に要らない。

 そんなのをもらったところで、やっぱり使いどころないと思う。

 というか、さっきから微妙にわたしを引き付けようとしてない?

 気のせいだといいんだけど、この前、わたしのことを気に入っている、って言ってたっけ。

 

「ひょっとして、寂しいの?」

「……どう思う?」

 

 先ほどまでの無邪気な笑い声が、ゆっくりと形を変え、妖艶なものへと変わる。

 それは今まで彼女を見てきた中で、最も恐ろしく底知れぬ不気味な存在であることを示唆していた。

 

「なんてね。カミサマだって気に入っている子が人に堕ちるんだ、これほど悲しいことはないよ」

「わたしは元々人間なんだけど」

「あなたはやがて神にだってなれたかもしれない。もちろんカミサマの下で、だけど」

 

 ケラケラと笑いながら、その実、目は笑っていない。

 

「冗談はさておき、カミサマがその気になれば、そのぐらいのことはできる。神様としての権能をあなたにも渡して、何もかもを思い通りにできる。世界から弾かれた者同士、そういう生活を送ることだってできる」

 

 それは、理想的な生活だ。

 何もかも思い通りで、ストレスもお金も、愛も自分のものにできる。

 娯楽と愉悦に満ちた甘美な世界。

 何故わたしを誘ったのかはさておき、わたしの答えはとっくに決めている。

 

「絶対に嫌だ。そんな生活は、願い下げだよ」

 

 彼女はクスリと笑った。

 ついさっきまでの感情がどこかに行ってしまったかのように、晴れ晴れとした笑みだった。

 

「あなたなら、そういうと思ってたよ」

 

 ふわりと身体が浮かび上がれば、わたしの意識が徐々に天へと昇っていく。

 

「じゃあね。あなたに、希美ちゃんに祝福あらんことを」

「……最後に神様らしいことしないでよ」

「神様だからね」

 

 彼女はどんな思いだったのだろうか。

 言葉とは言わなきゃ意味がない。伝わらなければないも同じ。

 であるなら、言葉を閉ざしたカミサマの気持ちは誰にも分からない。

 ま、神様だから、伝わらなくてもいいんだろうけどさ。

 

 でも、最後であるなら。わたしも伝えよう。

 

「さよならカミサマ。もう二度とちょっかいかけないでね!」

「じゃあずっと見てることにするよ、神様だからね!」

 

 最後に見たカミサマの笑顔は、にこやかと太陽のような微笑みをした『少女』の笑顔だった。

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