ビルド廻戦   作:EGO

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7.

 崩壊しかけた校舎を前に、ビルドと虎杖が地面を爆砕しながら走り出す。

 ライトスマッシュに向かう虎杖を複眼で捉えながら、ビルドは真人の元へと一直線に。

 醜悪な、けれど愉快そうに笑う真人もまた彼を迎え撃つように手を広げ、ゴキリと指を鳴らした。

 どす黒い呪力が全身から滲み出し、後方の吉野は凄まじい悪寒に襲われるが、そんな彼に仮面の戦士の背中が映る。

 足が震え、怖気に襲われる自分とは違う。恐れもなく、ただ前に突き進む映画のヒーローのような背中。

 両者が同時に腰を捻り、拳を引き絞る。

 握られた拳に呪力が込められる。タンクハーフボディに蒼い輝きが宿り、足裏のキャタピラが回転。拳を構えた状態で急加速したビルドに対し、真人は驚きもしない。

 

「オラァ!!」

 

「おりゃ!!」

 

 そして、雄叫びと共に拳が放たれた。

 お互いの顔面に向けて放たれた拳を、どちらも避けない。

 直後、鈍い衝撃音が響き、真人の拳が仮面にめり込んでいくが、ビルドの拳が振り抜かれた。

 骨を砕く乾いた打撃音にも似た軽快な音と共に、真人は抵抗も赦されずに吹き飛ばされる。

 汚い悲鳴と共に宙を舞い、倒壊しかけの昇降口に突っ込んでいった。

 

「ふ──……」

 

 拳を振り抜いた大勢で息を吐いたビルドはちらりと吉野の方に振り向く。

 そしてライトスマッシュとの交戦に入った虎杖を一瞥すると、吉野に向けてこくりと一度頷いた。

 

『任せたぞ』

 

 言葉もなかった。けれど吉野には確かに彼の言葉が届いていた。

 出会って間もない間柄ではあるが、少なくとも虎杖を任せていいと頼ってくれたのだ。

 吉野が頷き返すと、それを合図にビルドは校舎へと突入。

 同時にラビット、タンクフルボトルをゴリラとダイヤモンドフルボトルに交換し、レバーを回転。

 ベルトから『《ベストマッチ!》』と陽気な声が響くがそれを聞き流し、ビルドは呟く。

 

「──ビルドアップ」

 

 その声を合図にして、ラビットハーフボディとタンクハーフボディが閃光と共に形状が変化。

 

『《輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イェイ…!》』

 

 茶色と水色を基調したゴリラモンドファームへと変身し、ビルドは薄暗闇に包まれた廊下の先を睨みつけた。

 

「おぉぉりゃ!!」

 

 闇を切り裂くように放たれた、槍のように尖った真人の指先をダイヤモンドハーフボディで受け止め、ゴリラハーフボディの巨大な右腕──サドンデストロイヤーによるアッパーで全ての指先を粉砕。

 遠くから聞こえる呻き声を追うように走り出し、視線の先に手を振ってこちらをおちょくっている真人の姿を認める。

 廊下の床を粉砕し、さらに加速した矢先に真人は廊下の曲がり角の先──おそらく階段の方へと変えていく。

 無論、それを追いかけるしかないビルドは愚直なまでに真っ直ぐと真人を追いかけ、階段に向けて曲がった瞬間、

 

「ははっ!」

 

 二階から断頭刃(ギロチン)のように変形した真人の拳が放たれた。

 落下の勢いと呪力を乗せて威力を底上げしたその一撃はビルドの脳天に向けて突き進み、彼が何事と顔をあげた瞬間にその顔面にぶち当たり──しかし、その攻撃は彼の体をすり抜けるようにして床へと当たった。

 

「……は?」

 

 呪力も感じる。魂も感じる。なのに攻撃が当たっていない。

 真人が困惑の声を漏らした瞬間、彼の背後の床が爆散。飛び散る破片の中からビルドが飛び出し、真人の顔面にサドンデストロイヤーが叩きつけられる。

 

「ぶっ!?」

 

 顔面が変形するほどの衝撃に真人は吹っ飛び、踊り場の壁に激突。

 顎が砕かれ、間抜けにも大口を開けながら壁にめり込んだ真人は、次の瞬間にはぎょっと目を見開いた。

 視界をビルドの足裏が埋め、それを認識した直後にはビルドの飛び蹴りが顔面に突き刺さる。

 

「〜〜〜!!!」

 

 人であれば頭蓋が砕かれ、脳髄をぶち撒けているだろう大ダメージを受けてなお、真人は祓えない。

 ぐにゃりと体が紙のように歪み、追撃の拳をひらりと交わしてビルドの背後に。

 そのまま大量の針を生やしながら体を広げ、彼を閉じこめる。

 鉄の乙女(アイアンメイデン)じみた攻撃でビルドを包み込もうとするが、ビルドは自身を覆うようにダイヤモンドの障壁を展開。

 針とダイヤモンドが激突する甲高い音を響かせ、障壁越しにビルドと真人が睨み合う。

 

「器用だな。だが、甘いんだよ!!」

 

 ビルドは隠そうともしない侮蔑の込めた言葉を吐き、障壁を内側から破裂させる。

 ダイヤモンドの礫が薄く伸びた真人の体にいくつもの風穴をあけ、辛うじて判別できる口からごぼりと血を吐き出した。

 吐き出された血が仮面に降りかかるが、ビルドは怯まない。

 床を割るほどの踏み込みと共に拳を放ち、真人の腹に打ち込む。

 紙の柔らかさで体を曲げて拳を受け流す真人だが、直後に拳を中心に爆ぜるように弾けた呪力の衝撃(インパクト)だけは受け流せずに再び吹き飛ぶ。

 階段の踊り場から二階へと飛ばされた真人は人型に戻りながら血の混じった唾を吐き、鎖のように変形させた腕を薙いだ。

 壁や柱を切り裂いて迫る鎖を前に、ビルドは避ける素振りすら見せず、ただ腕を差し出した。

 ダイヤモンドハーフボディの硬質な腕と鎖が激突するが、甲高い金属音と共に鎖が止められる。

 

「なめんな!」

 

 真人が醜悪な笑みと共にそう告げると、すぐさま鎖がビルドの腕に絡みついた。

 そしてビルドが振り払うよりも早く、鎖の一つ一つがチェーンソーを思わせる連なる刃に変わり、高速で回転を開始。

 金属が擦れる耳障りな高音と火花が舞い散り、ビルドの仮面を照らす。

 このまま装甲を削りきらんとする真人が嘲笑う中、ビルドは仮面の下で鬱陶しそうに目を細めた。

 少しずつ削られていく装甲を見つめながら、高速回転を続ける鎖を掴んだ。

 引き寄せられまいと足裏から針を生やして床に固定する真人だが、いつまで経ってもそれがない事に疑問符を浮かべた瞬間、鎖を掴むビルドの手に呪力を籠ったのを確認した。

 その瞬間、ビルドの腕に絡みつく鎖が形をそのままに半透明の結晶──ダイヤモンドへと変化する。

 鎖の回転が止まり、呪力の光を反射して不気味な光を放っていた。

 

「マジか」

 

「マジだ」

 

 真人は冷や汗と共に困惑の声を漏らし、ビルドは淡々とした声音でそう返し、結晶化した真人の腕を握り砕いた。

 

「……ッ!」

 

 無為転変による変形など無意味だと言わんばかりの、魂そのものを砕いてきた攻撃に真人は悲鳴をあげそうになるが、それをどうにか歯を食い縛ることで堪える。

 無為転変とは違う、けれど似たような能力。やはりビルドと自分の術式は似ていると確信する。

 ダイヤモンドと化し、砕かれた腕を無為転変で元の形に戻しながら、真人はあえてビルドの懐に入らんと駆け出した。

 対するビルドも走り出す。足元に転がるダイヤモンドの破片を踏み砕きながら、迫り来る呪霊へと肉薄。

 ビルドはサドンデストロイヤーを振りかぶり、真人は棍棒のように変形させた腕を振り上げる。

 互いの攻撃を放つのはほぼ同時。サドンデストロイヤーと棍棒状の腕が激突する間際、するりと棍棒がビルドの体をすり抜けた。

 

「また!?」

 

 真人が驚動の声を漏らした瞬間、棍棒がすり抜けたビルドの奥からビルドが現れ、真人の顔面を殴り抜いた。

 凄まじいインパクト音と共に真人が吹っ飛び、廊下の床を無様に転がる。

 

「ごほっ!げほっ!ああ、くそ!簡単じゃん!なんで気づかねぇんだよ!!」

 

 血の塊を吐き出しながら壮絶な笑みを浮かべた真人は先程のビルドの能力をようやく理解した。

 幻影だ。光を利用した幻影を見せ、空振りを誘ってくる。わかってしまえば後は──。

 

『《ゴリラ!ガトリング!》』

 

『《Are you ready?》』

 

「ビルドアップ」

 

 そして真人の言葉から種が割れたと即断したビルドは、ダイヤモンドフルボトルをガトリングフルボトルに交換。

 左手に生成されたホークガトリンガーを構え、脱力するように構えながら引鉄を弾いた。

 瞬間、吐き出される十数の呪力弾に真人は「やべ!」と堪らず焦りの声を漏らし、すぐ横にあった扉を破って教室に退避。

 彼がいた場所を呪力弾が通過していき、廊下の曲がり角に大量の弾痕を刻んでいく。

 

『《ハリネズミ!ガトリング!》』

 

『《Are you ready?》』

 

「ビルドアップ」

 

 ホッと安堵の息を吐いたのも束の間、壁の向こうからベルトの音声が漏れ聞こえてくる。

 目を見開きながら隣の教室と彼がいる教室を隔てる壁に目を向けた瞬間、壁を突き破ってきた純白の針がその眼窩に突き刺さった。

 

「────っ!?!?」

 

 慌てて針を抜く真人だが、針の先には彼の眼球が突き刺さったままだ。

 自身の眼球ごと針を投げ捨てた瞬間、針の掃射が壁越しに行われる。

 

「やばい、やばいやばい!!」

 

 眼球を再生する暇もなく、真人は先程破った扉から廊下に躍り出る。

 白い針が大量に散乱する教室を横目に一旦逃げようとする真人だが、

 

『《ハリネズミ! 消防車! ベストマッチ!》』

 

 処刑を宣告するように、ベルトの音声が耳に届く。

 

『《Are you ready?》』

 

「ビルドアップ」

 

『レスキュー剣山! ファイヤーヘッジホッグ! イェーイ!』

 

 陽気な音声と共に、隣の教室から姿を現したビルドの姿は様変わりしていた。

 頭部の左半分。右腕。左足のハーフボディは白を基調としたハリネズミハーフボディへと変化していた。

 右拳を覆うように剣山を思わせるナックルパーツが装着され、複眼が模しているのはやはりハリネズミ。その中の針の一本がアンテナとなっていた。

 それと対となるように頭部の右半分。左腕。右足のハーフボディは真紅に染まり、複眼は消防車を模したものへと変わり、そこから伸びるラダーがアンテナとなっていた。

 左の胸部から肩、腕に至るまで消防車を思わせる装甲が追加されていた。

 

(さっきの声からして、白い方の能力は針を飛ばすこと。紅い方の体は消防車だったっけ?水でも吐き出してくんのか?)

 

 彼の変容に警戒しつつも能力を考察する真人。そして思考のために動きが鈍ったその一瞬を、ビルドは見逃さない。

 左腕のマルチデリュージガンを真人に向けたかと思った瞬間、そこから高速でウィンチが伸びた。

 

「ちょ!?」

 

 伸びてきたウィンチをギリギリで避ける真人だが、引き戻すと同時にその先端についていたフックが右肩に突き刺さり、彼をビルドの元へと引き戻す。

 こちらに迫ってくる真人に見せつけるように、右拳の剣山──BLDスパインナックルを構えるビルド。

 あれはやばいと直感した真人は、右肩を自切してフックを外した。

 チッと舌を弾いたビルドを睨みながら、真人はやり返すように彼の元へと持っていかれる腕を針付きの鉄球へと変形させ、戻される勢いを利用して彼を串刺しにしようとするが、ビルドが無造作に放った蹴りの一撃で粉砕される。

 腕を生やしながら苛立ちを隠そうともせずに眉間に皺を寄せる真人。

 ビルドは変わらずにマルチデリュージガンを真人に向けた。

 ウィンチで戻された都合、間合いは先程よりも近い。今度こそ捕まってたまるかと身を捩る真人だが、その瞬間にマルチデリュージガンが文字通り火を吹いた(・・・・・)

 廊下を覆うほどの大火炎に真人は瞠目し、退避する間も無く炎に呑み込まれていった。

 炎の中から聞こえる悲鳴を聞き流しつつ、火炎放射を中止。

 火だるまになりながら床を転がりまわる真人を絶対零度の視線を向けながら、ベルトのレバーを握り、回転させるビルド。

 デフォルメした工場の作業音のようなチャージ音を響かせながら、そのまま床を燃やす炎を踏み消して助走をつけていく。

 

「がっ……!あぁぁあああ!!」

 

 魂さえも燃やす業火に真人は悶え苦しむが、ビルドの接近に慌てて顔をあげるが、その瞬間を狙っていたかのようにその顎を蹴り上げられた。

 円を描くように宙を舞う真人。そして、呪力のチャージが終わる。

 

『《レディー・ゴー!!ボルテック・フィニッシュ!!!》』

 

 白と紅の複眼が光を放ち、BLDスパインナックルが呪力を帯びる。

 そして呪力が炎へと変換され、BLDスパインナックルが燃え上がり、燃える拳を構え、真人の腹部に打ち据えた。

 拳が腹にめり込む快音を響かせ、真人が大量の血を吐き出した瞬間、ビルドは「ふん!」と気合いの声を漏らす。

 直後、赤熱するほどの熱を孕んだ大量の針が真人の体から飛び出し、彼の体を燃える剣山のごとく変化させた。

 文字通りの必殺。魂さえも燃焼させる焼滅の一撃に、ビルドは仮面の下で目を細めた。

 まるで手応えがない。拳を打ち込んだ瞬間には何かに当てた感じはあったが、その後の針による追撃の手応えがあまりにもない。

 ビルドはBLDスパインナックルに更に呪力を込めて火勢を強め、真人を焼き払う。

 一瞬にして灰も残さずに焼失する真人。だがやはり祓除反応がない。

 仮面の下で目を細めるビルド。そして真人を焼き払った炎を払いうと、その轟音に混じってペタペタと素足で廊下を走る足音が耳に届いた。

 

「げっ!?」

 

 そして睨みつけるように音の主人を見た瞬間、子供のように小さくなった真人が情けない悲鳴をあげる。

 

(──なるほど、脱皮か)

 

 その姿にビルドはすぐに理解する。

 殴られた瞬間に真人の中で体を小さくし、余った骨肉を緩衝材にして拳を防御。後は燃やされる前に小さくした本体を裂いた背中から脱出、逃走。

 

「器用な奴」

 

 その手際の良さを褒めつつ、「だが」と言葉を区切ってベルトのフルボトルを交換。

 

『《ラビット!タンク!ベストマッチ!!》』

 

『《Are you ready?》』

 

「ビルドアップ」

 

『《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イエーイ!》』

 

 ラビットタンクへと変身を終えたビルドは床を砕くほどの踏み込みをもって疾走を開始。

 体を元の大きさに戻しつつ階段に逃げようとした真人に瞬時に追いつくと、

 

「うおら!!!」

 

「ぶっ!?」

 

 その顔面に蹴りを叩き込み、窓の外へと蹴り出した。

 

 

 

 

 

 時間を僅かに戻し、校舎内でビルドと真人の戦いが始まった頃。

 

「おおおら!!」

 

『ヒャハ!?』

 

 虎杖の拳がライトスマッシュの胴体に叩き込まれ、仰け反る。

 そのまま虎杖は相手が立て直す暇を与えず、連打(ラッシュ)を開始。

 拳が放たれ、一瞬遅れてくる呪力の衝撃にライトスマッシュは防御すらもままならず、重々しい打撃音がひたすらに帳の中に響く。

 遅れて合流した吉野があまりに一方的な攻撃に、下手したら自分もああされてたと嫌な方向で働いた思考を振り払い、両手で印を組む。

 

「『澱月』」

 

 そして現れるのは、クラゲを思わせる式神。

 虎杖がライトスマッシュを殴り飛ばし、距離が開いた瞬間を見計らって触手を放ち、先端の針で相手を貫き、彼の術式である『毒』を流し込む。

 

『────!?』

 

 体内に流れ込む異様な気配の液体にライトスマッシュが驚愕し、ほんの一瞬体を硬直させる。

 

「シッ!」

 

 その隙に飛び出した虎杖がライトスマッシュの顔と思われる部位に飛び膝蹴りを叩き込み、そのままこめかみと思しき部位に蹴りを叩き込む。

 吹き飛ばされ、地面を転がるライトスマッシュ。受け身と共に素早く立ち上がった彼は全身に呪力を激らせると、電球がほんの一瞬発光。

 だが完膚なきまでに砕かれた電球の光は長続きせず、代わりに漏電。

 バチバチと音を立てて放電(スパーク)が起き、地面をかける雷が全方位に放たれる。

 虎杖は素早く跳躍することで雷から逃れ、吉野は澱月に乗ることで回避。

 足元を駆け抜ける雷の閃光と、地面が焦げるほどの熱量に怖気を感じつつ、当たらなければいいと意識を切り替える。

 虎杖が着地と同時に再び肉薄。再び放電しようとしていたライトスマッシュを殴りつけて行動を止め、そのまま足を払って転倒させる。

 

「ぬぅら!!」

 

 そのまま転び、仰向けに倒れたライトスマッシュの胸部に拳を打ち据え、遅れてくる呪力の衝撃(インパクト)に地面が砕ける。

 ライトスマッシュの妙に人間臭い悲鳴を聞き流し、更に追撃の拳を一撃。

『ぎゃ!?』と気色悪い声を漏らしたかと思えば、そのまま殴ってきた彼の拳を骨にヒビを刻むほどの力でもって掴み、全身に呪力を激らせる。

 

「やべっ!」

 

「悠仁!」

 

 高まる呪力。バチバチと放電(スパーク)音を立ち、それに当てられた虎杖の髪が逆立つ。

 回避不能。脱出も不可能。これは当たっちまうと、虎杖が額に冷や汗を流した瞬間、横合いから放たれた鉈の一撃がライトスマッシュの腕を完膚なきまでに破壊し、虎杖の手を解放させた。

 そのまま現れた何者かは虎杖を抱えてライトスマッシュから離れると、凄まじい轟音と共に雷光が迸った。

 帳の中に雷鳴が木霊し、地面を雷が走る。

 だが被害はない。吉野は澱月に乗って回避し、虎杖は抱えられたままライトスマッシュから距離を取ったため。

 虎杖をその場に落とすように置いた介入者は眼鏡の位置を直しながら、深く息を吐いた。

 

「虎杖くん。あまり無茶はしないでください」

 

「ナナミン!?」

 

 虎杖は現れた増援に驚きつつも喜びの笑みを浮かべ、七海は油断なくライトスマッシュを睨みつける。

 相手は深傷をおっている。虎杖か、貴丈か、あるいは後ろで状況もわからずに困惑している吉野がやったのか。

 とにかく、ここからは大人である自分の仕事だ。人殺し(・・・)は、自分の役目だ。

 

「お話は後で。まずはあれを──」

 

 ライトスマッシュを睨みながら、虎杖との連携を口にしようとした矢先、窓ガラスが割れる音と共に何かがライトスマッシュの隣まで飛ばされてくる。

 げほげほと血の塊を吐き出しながら立ち上がる真人。血走った目で忌々しそうに睨むのは、窓枠に足をかけ、まさに飛び降りようとしているビルドだ。

 

「全員集合って感じだな」

 

 真人は到着した七海を見て嗤い、ぺっと血の唾を吐く。

 

「纏めて祓って(殺して)やる」

 

 そんな真人と満身創痍のライトスマッシュを見下ろしながら、ビルドは冷たい声音でそう告げるのだった。

 

 

 

 

 




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