ビルド廻戦   作:EGO

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4.

 とある校舎の一室。

 壁一面を覆うように大量のモニターが設置された一室。

 モニターに映る各生徒の動向を見守るのは、夜蛾、五条、楽巌寺、庵の教師陣と、五条によって半ば強制的に連行された吉野。

 そして、三つ編みにした髪で顔を隠す妙齢の女性。

 烏を操る術式『黒鳥操術』を扱う一級術師──冥冥。

 モニターに映る映像も、彼女の術式によって操作された烏達の視界を拝借して映しているものだ。

 ちなみに超がつくほどの守銭奴。今回ここにいるのも中継の手伝いのために雇われたためだ。

 そして、彼女の目が向いているのは貴丈。より正確には彼の持つ呪具である。

 ただの鉄パイプを武器にし、廃棄されたバイクを新品同然へと変える。

 そんな彼が生み出したものは、はっきりいって金になる。

 呪力だけで動くバイクに、呪力を弾丸にできる銃。しかも術者本人でなくても使えることは真依により実証済み。

 あれを仕入れ、必要としている人に売ることができればじゃんじゃん金が手に入ると言うのに。

 

「ねえ、五条くん」

 

「駄目ですよ、冥さん」

 

「残念」

 

 もう何度目かもわからないやり取りに冥冥は小さく息を吐く。

 貴丈と商売話ができたのは一度だけ。それもあっさりと断られてしまった商談未満のもの。

 今度こそ彼を振り向かせたいが、間に五条が入ってきてそれどころじゃない。

 さて、どうしようかなと思慮する彼女と、そんな彼女の迫力に空笑いする五条。

 吉野はそんな無言で牽制しあう二人のやり取りから逃げるように、モニターへと目を向けた。

 そこに映るのはメカ丸と斬り合う貴丈と、西宮を追い回す貴丈。

 

「……どうして変身しないんだろう」

 

 吉野はそんな生身で戦っている貴丈の姿に疑問符を浮かべた。

 彼も貴丈の術式のことはよく知っているし、その戦いを間近で見てきたのだ。

 だからこそ、変身せずに走り回る彼の姿を疑問に思ったのだろう。

 

「順平。『縛り』って知ってる?」

 

「『縛り』?」

 

 五条の言葉に首を傾げる吉野。

 そんな彼の反応に、五条は教師風を吹かせながら言う。

 

「手っ取り早く言えば、自分ルールを決めて術式の効果を底上げしたり、自分や相手の間に契約みたいものを結んで、絶対に破れない約束をさせることだよ」

 

「あの人が変身しないのも、それが理由なんですか?」

 

「うん。貴丈の『縛り』は単純。『戦闘状態になってから変身すること』。そして『それを他人に共有すること』」

 

 貴丈はこれから激化する戦いに備え、自身に様々な縛りをかけた。

 その一つが五条が言った『戦闘状態になってから変身すること』。

 無防備な生身を晒すという危険(リスク)を犯し、その対価に変身後の身体能力を微増させる。

 もう一つの『縛りの内容を他人と共有すること』も、術式や縛りの情報を特定人数にばら撒くことで、情報漏洩という危険(リスク)を対価にさらに能力をあげる。

 無論、戦闘状態になる前から変身することも可能ではある。それでは本来の身体能力(スペック)の八割程度の力しか発揮できないが。

 

「おっと。噂をすれば、かな」

 

 五条が笑いながらモニターを示し、吉野がそのモニターに注視する。

 そこにはメカ丸を蹴り飛ばし、ベルトにフルボトルを嵌める貴丈の姿があった。

 

 

 

 

 

「さあ、実験を始めようか!」

 

『《サメ!バイク!ベストマッチ!!!》』

 

 貴丈の心底楽しそうな声と共に、ベルトに嵌められたのはサメフルボトルとバイクフルボトル。

 真希により発見されたベストマッチを、せっかくだからとこの場で試す。

 

『《Are you ready?》

 

「変身!」

 

 右手を前に、左手を顎の前に構えるファイティングポーズをとり、いつもの掛け声を放つ。

 

『《独走ハンター! サメバイク! イエーイ!》』

 

 彼が纏うのは青と赤の二色の鎧。

 右目の複眼はバイクのハンドルを形作り、左目の複眼はサメを形作る。

 左腕には盾のように車輪が取り付けられ、左肩には歯車を思わせる装飾が取り付けられる重装甲。

 右肩の装甲はサメの顔になっており、右腕にはサメのヒレを思わせる装飾『メガロフィンレイザー』が装備され、触れるだけで怪我をしそうな鋭利な印象を相手に与える。

 もっとも、メカ丸にその傷つく肉体がないと言えばそうなのだが。

 

「実験だト?」

 

「ああ。見た感じ操作系の術式だろ?本体がどこにいるかは知らねえけど、どうせ校舎とかの競技範囲外だろうし」

 

 ヒュンヒュンと鋭い風切り音をたてながら右腕のヒレを振り回す貴丈。

 

「お前をバラバラにして呪霊を探す。さっさと団体戦を終わらせたいんでな」

 

 お前なんか瞬殺できると余裕綽々な彼に、メカ丸は静かに関節のパーツを鳴らした。

 

「悪いが、それは無理ダ」

 

 同時に「刀源解放(ソードオプション)!」と左手の刃を展開。

 

「天与呪縛は知っているナ」

 

 こちらに歩み寄りながら告げた言葉に術式の開示かと警戒しつつ、耳を傾ける。

 天与呪縛となれば真希と同じ。生まれ落ちた瞬間から『縛り』を強制され、代償に強力な力を与えられるという、呪術における特異な現象の一つ。

 

「俺は右腕と膝からの下の肉体と腰から下の感覚がなイ。肌も月光で焼ける程に脆いうエ、常に全身の毛穴から針を刺されたように痛ム。その代わりに日本全土に渡る広大な術式範囲と実力以上の呪力出力が与えられタ」

 

「望んで手に入れた力じゃなイ……!呪術を手放して元の肉体に戻れるのなラ、よろこんでそうするサ……!」

 

 彼の悲鳴にも似た声に、血を吐きながら叫んでいるだろう言葉にビルドは言葉を無くしていた。

 同情はできる。同じ状況になれば、自分も同じことを思う。というか現在進行形で思っている。

 俯くビルドを睨みつけたメカ丸は肘からのジェット噴射で加速力を得ながら、右手の肘から先を高速回転。

 

絶技抉剔(ウルトラスピン)!!」

 

 突き出した右腕をドリルとしてビルドの装甲を抉らんとするが、対するビルドはそれを左腕のタイヤを盾にして受け止める。

 金属が削れる嫌な高音を森に響かせながら、大量の火花が舞い散る。

 両者踏ん張るように踵をめり込ませ、メカ丸はさらにジェット噴射の勢いを強めた。

 押される勢いでビルドが僅かに下がり、メカ丸はこのまま押し切らんと両足を踏ん張らせるが、ガキン!と何かが割れる異音が鳴った。

 

「っ!?」

 

 驚くように首を揺らしたメカ丸。ビルドは仮面の下で笑みを浮かべ、左腕を振り抜いた。

 ガシャン!と粉砕音を響かせながら、メカ丸の右手首が粉砕される。

 ドリルは確かに固いものを砕き、貫くためのものだ。だが相手が硬すぎた場合、ドリルの方が砕ける。自明の理だ。

 だがメカ丸も負けてはいない。

 左手をビルドに向け、そこから覗く砲口から呪力の砲撃を放った。

 

大祓砲(ウルトラキャノン)!」

 

 小さな手のひらから放つにはあまりにも極太の砲撃にビルドは面をくらうが、彼は素早くハンドルの形をしたアンテナをその形通りに捻る。

 獣の唸り声にも似たエンジン音と共に彼を赤い呪力が包み、次の瞬間には彼の姿が掻き消える。

 大祓砲(ウルトラキャノン)が彼の残像を飲み込む、ついでに木々を薙ぎ倒しながら邁進していく。

 

「当たらなけりゃ、どうってことねぇな」

 

 声が聞こえたのはメカ丸の背後。

 彼は排熱する左腕をそのままに、振り向き様に裏拳を放つ。

 だがそれも空を切る。ビルドの残像が掻き消され、攻撃が連続で空振りに終わったメカ丸は舌を弾いた。

 直後ビルドの拳が腹に打ち込まれ、メカ丸の骨格(フレーム)が悲鳴をあげる。

 そのままメガロフィンレイザーを振るいメカ丸を文字通りにバラバラにしようとするが、彼もまた仮にも準一級術師。

 辛うじて起動する右腕の刀源解放(ソードオプション)を無理やり展開し、彼の乱撃を紙一重で捌いていく。

 二人の腕が激突する度に金属音と火花が散り、その様は呪術師の呪いあいには程遠い。

 謎の仮面をつけたヒーローとロボットがどつきあっているのだ。どこの子供向けの特撮番組だと、画面越しに彼らを見る教師陣は内心思っていた。吉野は目を輝かせているが。

 

「はっ!」

 

「ッ!?」

 

 メガロフィンレイザーの乱撃を辛うじて捌いていたメカ丸だが、赤い燐光と共に急加速したビルドの蹴りがこめかみを打ち据え、その衝撃に蹴り飛ばされる。

 バイクハーフボディの超加速に着いていけないと白状するに等しい今の被弾は、二人の力量差を如実に表していた。

 だがビルドは敢えて追撃しない。今は交流会、様々な手で相手と切磋琢磨する場でもある。

 メカ丸にも何かしら成長のチャンスを与えるべきだと、倒す気ではあるがそれはそれとして多少の試し行為をする手は止めない。どうせ呪骸だし。

 ビルドの左肩が光る。マシンビルダーを思わせる装飾の歯車が回転して何かの信号を放つように点滅するが、何も起こらない。

 

大祓砲(ウルトラキャノン)!」

 

 再び放たれる呪力砲。

 威力は変わらず、ビルドを呑み込む力の濁流を前に、彼は動かない。

 左腕の盾をしっかり構え、両足を踏ん張って受け止める体勢を取る。

 直後、直撃。

 ビルドは大祓砲(ウルトラキャノン)に吞み込まれ、光の中に消えていく。

 疑う余地なくわざと被弾した状況にメカ丸は警戒を強めるが、その横腹にマシンビルダーが激突。

 そのまま呪力を捻出してエンジンをかき鳴らし、メカ丸をひき逃げして森の奥へと消えていく。

 バチバチと横腹から火花を散らしながら立ち上がるメカ丸。

 ビルドは爆煙の中から歩み出すと、左肩の歯車が再び発光。

 それを合図に三台のマシンビルダーが出現し、「行け!」と左手でメカ丸を指差すと同時に一斉に走り出す。

 メカ丸は舌を弾き、迫ってくるマシンビルダーをギリギリで避けていく。

 ビルドは指揮棒を振るようにせわしなく左手を振るい、それに合わせてマシンビルダー達も動く。

 

(いヤ、ブラフだナ)

 

 だが明らかにわざとらしい動きにメカ丸はそう判断した。

 実際にマシンビルダーはビルドの思考に合わせて動いているため、馬鹿正直にビルドを叩きに行けば問答無用で潰されていたことだろう。

 いい勘してると仮面の下で笑みを浮かべ、ならばと次の手に打って出る。

 右肩のBLDシャークヘッドショルダーに呪力が集まり、マシンビルダーを避け続けるメカ丸は警戒するが、それでもおなお足りなかった。

 ビルドの右肩が光った瞬間、メカ丸の足元からサメが飛び出した(・・・・・・・・)

 

「な!?」

 

 空中に放り出されたメカ丸は驚倒の声をあげ、自分の目を疑うように自分の左足に食らいつくサメを見やった。

 マシンビルダーのみならずサメの召喚。真依の構築術式とやっていることは同じだろうが、その質も精度もこちらが上だ。

 左手の呪力砲でサメを吹き飛ばすが、間髪入れずにビルドの足元から大小様々なサメが飛び出し、メカ丸に襲い掛かる。

 途中で多頭のサメやタコと一体化したようなサメの化け物までいたが、構うことなくメカ丸はその全てを迎撃。

 瞬く間にサメ達は肉片へと変わり、呪力の粒子へと還っていく。

 

「相手が悪いか」

 

 降り注ぐサメの残骸を避けながらそんなことをぼやくビルド。

 マシンビルダーの召喚もサメの──実在、非実在を問わない召喚も、面白い能力ではあるが一定の実力がある者なら、それこそ東堂相手ならただのカモだ。

 トントンとこめかみを叩きながら思案するビルドだが、その目の前にメカ丸が着地。

 

刀源解放(ソードオプション)!」

 

 右腕に刃を展開してビルドに斬りかかるが、彼は左腕の盾でそれを防御。

 徒手空拳も織り交ぜたメカ丸の連打を盾一枚で防ぎ続け、お返しと言わんばかりに足を払って体勢を崩させると、盾でメカ丸の顔面を殴打。

 甲高い金属音と破砕音を響かせ、メカ丸の頭部にヒビが入り、中身がまる見えになった。

 彼の動きが一気に鈍くなり、片膝をつく。

 取ったとビルドがメガロフィンレイザーを構えた瞬間、メカ丸の右手がビルドの腹部に──ベルトへと押し付けられた。

 

「この距離なら、防ぎようがないだろウ!」

 

「ちょ……!?」

 

 メカ丸の咆哮にビルドが狼狽えた瞬間、一点集中型の大祓砲(ウルトラキャノン)が放たれた。

 鋭い閃光がビルドのベルトに直撃し、彼を数メートル吹き飛ばす。

 どちゃと背中から地面に叩きつけられたビルドと、右腕の装甲を開いて放熱するメカ丸。

 

「相手を格下だからと侮るからダ。そのまま寝ていロ」

 

 確かな手ごたえに勝ちを確信し、右腕の装甲を元に戻す。

 京都校の援護に行くかとビルドに背を向けた瞬間、『《ボルテックフィニッシュ!!!》』と陽気な音声が頭に響いた。

 弾かれるように振り向いた瞬間、視界一杯に迫るのはマシンビルダーの車輪。

 再びのひき逃げにメカ丸は吹き飛ばされ、立ち上がって追撃に備えた瞬間に腹にサメが食らいつく。

 

「づぅぅぅぅ!!?」

 

 サメに咥えられたまま、大木に叩きつけられ、悲鳴を漏らすメカ丸。

 逃げようにもサメがメカ丸を離さず、むしろこのまま嚙み砕いてやると力を込めた。

 フレームが悲鳴をあげ、牙がめり込む右腕が折れ曲がる。

 そして、

 

「ハアアアアアアアアア!!!」

 

 跳び蹴りの体勢に入ったビルドの姿が目に映った。

 逃れる術はない。ビルドの必殺がメカ丸を捉え、大木もろともに彼の体を粉砕した。

 華麗に着地を決めるビルドと、半身を抉られながら地面を転がるメカ丸。

 二人の目が合い、メカ丸は「騙し討ちカ」と恨めしそうにビルドを睨んだ。

 ビルドも変身を解除し、貴丈としての姿を見せながら彼を見つめた。

 メカ丸はちょっと焦げた程度のベルトとフルボトルに目を向け、見た目ほどダメージもなかったかと自嘲する。

 

「俺もこんな力欲しくはなかったよ」

 

 そんなベルトとフルボトルを忌々しそうに見下ろした貴丈はその場に座ると、メカ丸の目を覗き込む。

 

「この力を差し出して全てが戻るなら、俺だってそうする」

 

 家族を奪った力。

 普通の人生を奪った力。

 そして、家族を奪わせる力。

 捨てられるものなら捨ててしまいたいと本音をこぼすが、すぐに強がるように笑みを浮かべて彼は告げた。

 

「でも時間は前にしか進まないから、俺はこの力と上手く付き合っていくよ」

 

「この力のおかげで出会えた人達がいる。この力のおかげで出来ることがある。メカ丸、お前はどうだ?」

 

「俺ハ……」

 

 貴丈の言葉に引っ張られ、思い描くのは京都校の面々だった。

 最初はメカ丸を気味悪がられたが、事情を知ればそれなりに付き合い、時には助言や贈り物をくれる友達に出会えた。

 だが、それもメカ丸のカメラ越しだ。モニターとスピーカー越しの会話でしかない。

 ちゃんと面と向かいあって、皆と席を囲んでみたい。

 

「みな迄は聞かないけど、何かあれば言ってくれ。手伝うから」

 

 そんな彼の想いを知ってか知らずか、貴丈は微笑みながらそう告げた。

 誰かに助けられたのなら、次は自分の番とでも言いたげに。

 その底抜けな微笑みに、人生を呪われたある意味での同胞の姿に、メカ丸は──カメラ越しに貴丈を見る青年は笑って見せた。

 

「俺の姿を見た後でも、同じことが言えるかナ」

 

「言うよ。だって俺はヒーローってやつだからな」

 

 自分を指差し、二かっと笑って見せる貴丈。

 メカ丸は小さく鼻を鳴らすと「うるさい後輩だ」と悪態を吐いた。

「学年は同じはずだろ!?」と貴丈は嚙みつくが、その言葉は届いていない。

 メカ丸のカメラから光が消え、機能を停止していたからだ。

 

「いうだけ言って逃げやがった……!」

 

 貴丈はそんな彼の態度に苛立ちつつ、それを鎮めるように息を吐いた。

 

「絶対に会いに行く。そのうちな」

 

 新しい友人の顔も知らないなんて嫌だしとメカ丸の残骸に背を向けると、タカフルボトルとガトリングフルボトルをベルトに嵌めた。

 

『《タカ! ガトリング! ベストマッチ!》』

 

『《Are you ready?》』

 

「変身!」

 

『天空の暴れん坊! ホークガトリング! イェーイ!』

 

 そして手早く変身の動作を終えた彼は、橙色のタカハーフボディと濃灰色のガトリングハーフボディに包まれたビルドへと変身。

 背中のソレスタルウィングを展開して飛翔すると、そのまま上空から森を偵察。

 タカハーフボディの翼を模した複眼が、本物の猛禽類の如き視力をビルドに与え、分身から逃げ回る西宮の姿を視認。

 そして獲物を見つけた鷹の如く急降下していき、

 

「だぁあああ!!!」

 

「きゃ!?」

 

 西宮を急襲した。

 一直線に森に突っ込んだ彼は木々の枝を折りながら西宮と彼女の箒を捕まえ、そのまま地面へと押し倒す。

 

「やばっ」

 

 背後で分身が消える気配を感じながら彼女にホークガトリンガーを向け、気絶する程度の威力の弾を撃ちだそうとするが、その瞬間、チカリと視界の端が光った。

 

「!!」

 

 ビルドが咄嗟にソレスタルウィングを盾代わりに体を覆うと、数十の呪力弾が彼に命中。

 あまりの威力と弾幕に後退を強制され、近くの木に飛び込むことを強いられる。

 自由になった西宮が今度こそと離脱していく中、貴丈は片手でビルドフォンを操作。電話をかける。

 二回のコール音の後、相手が電話に出てくれる。

 

『戦闘中に電話って正気?』

 

「それに答えるお前も大概だよ。真依」

 

 チラチラと木陰から彼女の位置を探しながら、「相変わらずいい腕だな」と彼女の狙撃──と呼ぶには濃すぎる弾幕を褒める。

 

『桃を脱落させるわけにはいかないから』

 

 少し得意げに告げられた言葉にビルドは肩を竦め、どうしたものかと頭を捻る。

 こうして隠れた所も見られているだろうし、真依の腕ならどう動くが当てられるだろう。

 ダイアモンドの防御で強引にと、少々力業過ぎる解決策が頭をよぎった瞬間、『楽しそうじゃねぇか』と聞き馴染みのある声が電話越しに聞こえてきた。

 

「真希!?」

 

 ビルドが慌てて木陰から顔を出し、射撃があった方向を注視すると、そこには睨み合う真希と真依の姿があった。

 

『手ぇ出すなよ。そこで見てろ!』

 

『動かないで、貴丈。動いたら真希を殺しちゃうかも』

 

「…………うす」

 

 電話越しに聞こえる姉妹の殺意溢れる言葉に、噓は言ってなさそうと冷や汗を流すビルド。

 彼は言うとおりにしますと言う代わりに変身を解除しながら両手を上げた。

 その姿を遠目ながらも確認した二人はそれぞれ獲物を──真希は撃破した三輪から拝借した刀を、真依はホークガトリンガーとリボルバーの拳銃を構える。

 

「それじゃやるか、妹」

 

「ええ。やりましょう」

 

 貴丈を立会人とした姉妹の決闘が幕をあげた。

 

 

 

 

 




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