クリスマスをぶっつぶそうとする正邪と、凍てつく孤独の中に居るアリスの話です。どたばたする鬼人正邪を愛でて下さい

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第1話

クリスマスがやってきた。

 

「鳥肌がとまらねえ、なんて不愉快な恒例行事か。」

アマノジャクである鬼人正邪は肌ざらしの二の腕をさすりながらしかめっ面にこうつぶやいた。その後、さする手を止めてきらりと目を輝せて悪い笑みを口元に浮かべる。

 

それでこそやりがいがある。それでこそ、嫌がらせのかいがある。

 

たとえばそう、小石は人にぶつけやすいが大した被害は与えられない。

だが、でかい岩を落とすことができれば、どでかい被害を与えることが出来る。

 

幻想郷は第一世界で忘却された観念が流れ着く場所だったはずだが、その設定は忘却されたらしい。今だ現世でフルスイングであるにもかかわらず、幻想郷の全ての場所でクリスマスパーティーが開かれている。

 

椅子に座った鬼人正邪のジト目は、遂にテーブルにたどり着くことは無かった。

間を阻む掌中にまとめられた封筒を扇のように広げ見ながら思う。

自分の所にさえクリスマスの招待状が来た。愉快なことだ。潜入の喜びは薄れるが内部から嫌がらせをする絶好の機会を得ることができる。

 

正邪はだらしなく口元をゆがめた

今年は誰を突き飛ばしメイクとケーキを台無しに為てやろうか

今年はどんな珍しい楽器を持っていきクリスマスソングに要らぬアレンジをいれてやろうか。

今年はどんな和菓子を用意して気分を分散させてやろうか。前に大量のおはぎを持って行った時の反応はおもしろかった。最終的には貧乏巫女とゆゆこが台無しに為てしまったのが残念だが。

催し物の全てを台無しに為てやる。

手品を台無しに為てやる。

演劇でへんなところで相の手を入れてやる

サンタのひげに火を付けてやる。

うふふ。

クリスマスパーティの招待状の束を見ながら少女は嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

はたして、鬼人正邪は招待状を受け取った三つのパーティには赴かず、というよりは性分が邪魔をしてどうしても赴けず、やむなく招待状を送ってこなかった他の三つのパーティーの存在をかぎつけて侵入し、果たして三つとも耳を捕まれて外に放り出された。

耳は痛むし、いたずらに費やした出費はあたかもパーティーを主催したような巨額になったが、幻想郷の連中にそうとう嫌な思いをさせることができた。彼らの気分は既にこの楽しい夜のために持ち直しているようだが、たとえ一時的でも馬鹿相手に嫌な気持ちにさせることが出来たのだから十分と思わねば成るまい。

 

正邪は喜んで地面を離れ誰も居ない聖なる夜空の中を泳いだ。

フクロウと共に家に帰る道すがら、魔法の森の上空に来た時、黒塗りの森の一区画の葉の間に七色のイルミネーションが漏れ見えてきた。

 

正邪はそこで止まり、空に浮いたままあぐらをかく。

ここにも誰かが住んでいたな。誰だったっけ?

正邪は魔法の森の葉に突撃しながら思い出す。アリスの家だ。

地上に近づくとはたしてぼっちハウスに灯火。

アリスはどのパーティーでも見かけなかった。とすると、仲の良い友達とクリスマスパーティを主催中とみた。

正邪は嬉嬉として家の前に降り、いきおいよくドアを開ける。

よばれてないのにじゃじゃじゃじゃーんせいじゃちゃんだよーん

返事は無い。正邪は留守かなと思いつつ勝手に中に入っていった。

玄関の横を通り過ぎる時、せいじゃは七色に輝いた。傍らのもみの木のイルミネーションが映り込んだのだとしれる。正面の灯のともる暖炉の前には山のようにつまれたプレゼントが無造作に転がっている。

見るも不快な浮かれた景色は正邪の鼻に皺を作る。

いくつかのドアの中から人騒がしい向きへと視点を定める正邪。

ガラス戸越しに隣の部屋を覗くと、ダイニングキッチンであるらしい。中央には木造のダイニングテーブルが見える。はたして予想通りでテーブルの上にはきらびやかなごちそうが並んでいた。クリスマスケーキ、クリスマスディナー。そして、席にはついているのはこの家の主人金髪碧眼の美少女アリスマーガトロイドと六人の人影。戸の隙間から朗らかな談笑が透けて聞こえる。

幸せそうにしやがって気に入らない。「ぶっつぶしてやる。」正邪はダイニングへと続くドアを乱暴に開けて中へと躍り込む。

「メリークリスマース。せいじゃちゃんいずかむひ…」

アリスは正邪を見た。そして周りの客もそれに倣い一斉に正邪を見る。アリスは驚いていたが、対照的にそら恐ろしいまでに冷静な12個の客の瞳。

正邪はその目にいすくめられて台詞を最後まで言い切ることができなかった。

「びっくりするじゃない」と言ったのはアリス一人だった。

イルミネーションに照らされながら、クリスマスディナーとケーキを取り囲んでいた他の六人は無表情で正邪を見つめ続けている。

アリスと…六体の人形。

えー!!クリスマスに、人形とディナー食べてるぅ。

その光景をみるなり鬼人正邪は心の中のメーターが未だ到達したことの無い場所に傾いたようにを感じた。哀れで滑稽な光景のはずなのに、なにかそれ以外のえもいわれぬ感情。

「あら、せいじゃちゃんか。めずらしいわね」

屈託の無い笑顔のアリスを見た時、正邪は不思議と直感力がさえ、何かを我慢しているのでは無いかと疑い、思いに動かされて顔をのぞき込む。しかし、アリスの瞳は公明正大に輝いていた。

つまり、と正邪はこの状況に対して以下のように結論付ける。

彼女にとってこれが日常なのだ。このアマノジャクから為て凍てつかせる孤独だが、彼女にとってはなんの疑問も無い日常なのだ。

自分が操る人形六体とクリスマスディナーを囲むことに、なんの疑問も持たない。

自分が操る人形と、自分が用意し、おそらくは自作であろうプレゼントを交換し、開けても良いかとか、わくわくするとか、そういうナンセンスな事を言うことになんの戸惑いも無いのだ。

ああ、アリス。アリス。

気がつけば眼前のアリス顔は怪訝そうに曇りその瞳はこちらの意をはかるように見つめている。

そして、手には奇妙なぬくもりがある。不審に成って見てみると自分の手がアリスの手を強く握っていた。

いつもと逆だ。手を握られて嫌な顔をするのは自分の役目なのに。

くそっ、好事魔多しだ。

 

 

「なぜパーティーに行かないんだい?マーガトロイド」

すこしいらいらしながら正邪は問う。

「ふん、忙しいからしかたがないでしょ。上海達と先約があったのよ」

アリスの答えを聞くなりすぐに腰砕けになるせいじゃ。

「上海って、たしかその人形だよな」

「そうよ。いつも一緒なんだから!」

「今年はパーティーの多い年らしい。私にさえ招待状が三通来ていたぜ」

「うそうそ!」

「アリス、お前まさか、一通も。」

「き、来てたに決まってるでしょ。」

「どこから」

「ま、魔界から、来たと思うの、きっと」

「実家らしいけど、魔界もクリスマスをいわうんだね。それ以外は?」

「きっと、引っ張りだこだから送っても来ないだろうと思われてだれも送ってこなかったのね。そうに決まっているわ。」

「…。」

「…。どうして黙るのよっ

「アリス。まだ八時だよ。クリスマスはこれから盛り上がりを見せる。ここで二人で楽しんでも良いが。」

「二人じゃないわ、八人よ!」

「…。二人と六体で楽しんでも良いが、もっと楽しいことがあるんじゃないかな。こう、もっと明るく楽しく、クリスマスにふさわしいような…早い話がぶちこわすような。浮かれ野郎どもの尻にドタ靴を一発喰らわせるような。」

「そんなの悪いわ。」

「ここに来る前に三つのパーティーにでたんだけどな。」

「!!。」

「すくねしんみょうまる。このパーティーにはこれといったイベントも無かった。強いて言えば本来天井にぶら下がるべきイルミネーション達がみな九十九神でテーブルを取り囲んでいる様が珍なだけだったかな。」

「そう。」

「だが、紅魔館。普段おとなしい魔法使いがいたな。なんといったか…。」

「パ、パチュリー?」

「そうそうパチュリー。あいつあんな楽しそうな顔が出来たんだなぁ。いやあ、魔法を使って花火を上げていたよ。実に綺麗な花火でね、吸血鬼やメイドを初め沢山の人達が賞賛していた。」

「そう。」

「最後に行ったのは博麗神社だったなあ。やれやれ神社なのにクリスマスパーティとはね。」

「…。

「あの紅白巫女は哀れなほどがっついていた。目につくものを何でも口に入れている様子で、あれじゃあ本人もなにをたべているかわからなかったんじゃないのかなあ」

「霊夢は貧乏だからね。…それで」

「それでとは?」正邪は後ろ手を組みつつ片眉を上げた

「そこにはいたでしょ、もう一人、ほら、人間が。」

「どうだったかなあ?」

「金髪の、かわいい、その…。」

「あー、あの白黒の。信じられないほどはしゃいでいたあいつか。」

「た、楽しそうだった?」

「ああ。」

「なにか屈託は無かった?」

「全く。」

「何か、誰かを待っている様子は…?」

「ぜんぜん。むしろ一番はしゃいでいたのは彼女だよ。ほら、私はアマノジャクだからはしゃいでいる奴が苦手だろう。だからそいつには近づけなかった。それで印象が薄かったんだなあ。」

「そんな。まりさ。」

「そうそうまりさ!そんな名前だった。ソレを知っていると言うことは君のお友達かい?」

「…。」

「まさか、まさか、君を誘わずあんなに楽しそうにしていたというのかい?」

「…。えぐっ。」金髪の美少女はべそをかき始める。

「一人だけであんな楽しそうに、友達も誘わず…いやいやまてよ、違うなぁ、パーティーだもんなぁ、一人だけで楽しむというのは。絶対に違うなあ。パーティー会場のみんなと楽しんでいたんだ。」

「えぐえぐ。」

「誰と楽しんでいたのかなぁ。赤の他人?だったら招待状なんか要らないよなあ。なにかつながりがあるはずだ。なんだろうなあ、アリス。」

「えぐえぐえぐ。」

「おや!もしかしたら彼女が出席していた博麗神社のパーティーは友達同士の集まりだったのかもしれない。だけどそうなると…あれあれ?おかしいぞ?アリス、だって君は」

「えーん。まりさの馬鹿ー。しらない。」ついに泣き出すアリス。

「アリス、思い出させてやろう。大切な人はここに居ますと。ついでに罰してやろう。聖夜に友達を裏切った馬鹿者どもに。」

「でもでも。」とアリスは煮え切らない。

「アリス、君は優しすぎる。だからつけ込まれるんだ。さあ、このせいじゃちゃんと一緒にあいつらのパーティーをぶっ壊しにいこうぜ。」

 

「さて、どんないたずらをやろうか。同士よ」

「そうね、サンタさんの人形をいっぱい作ったわ」

「んー、あんまりおもしろくないなあ。たしかに用意せぬ小道具がかってに増えたら気味が悪いかもしれないけど、主催者以外はたぶん気がつかないね。」

「違うわ。誰が飾りを増やすなんていったのよ。飾りに紛れて内部侵入させて爆発させてやるのよ。」

「あははっ、爆竹みたいけたたましいやつだ。さぞ驚くだろうねえ」

「館ごと消し飛ばすのよ。」

「…。え?」

「せいじゃも気をつけてね。巻き込まれたら死んじゃうぞ☆。」

「え?」

 

「よばれてないのにじゃじゃじゃじゃーん」と正邪

「メリークリスマース」と控えめに現れるのは、アリスマーガトロイド

 

「やっと来たんだぜ」と霧雨魔理沙はアリスの横に駆け寄る

「え?せいじゃに言ったの?」とアリスは尋ね返す。

「んなわけあるか、アリスに言ったんだ。誘いに行ったけど家の中が楽しそうだったので誘えなかったんだぜ、まったく」といって霧雨魔理沙はかぶっているZUN帽のつばを押さえて目元を隠すのだった。

 

「招待状なんてあるわけないじゃない。相手は妖怪よ、来たい奴は止めても来るし、そうじゃない奴は何言っても来ないわよ。」と博麗霊夢はアリスに告げた

「アリス、来たければいつでも来て良いわよ。そのかわり、お酒か食べ物を持ってきてよね」と霊夢は続ける。

「お賽銭は」アリスは尋ねる

「おさいせん。なにかその…懐かしい…響きね。なんだったかしら。」霊夢は空を仰いだ。その頬には一筋の涙がきらめいていた。

 

「でもまりさは招待状をくれたって。」

「ふーん…。」と霊夢は感じない。

「それはな、アリスには来て欲しかったから、特別に私がアリスに送ったんだぜ」と霧雨魔理沙が横から飛び出してくる。

「なんであんたが内のパーティーの招待状を他人に送るのよ」と霊夢は初めて表情を見せる。

「いいだろ別に」霧雨魔理沙は譲らない。

「まりさっ、ねえ」アリスは横から満面の笑みで魔理沙の横につける。

「ん?」

「と、く、べ、つ?」

「ああ、クリスマスをアリスと一緒に過ごせてわたしぁしあわせだぜ」

「えへへ、わたしも」

そんないきさつを知らぬ正邪

「まったくとんだ奴に声をかけたもんだ。人形とクリスマスディナーを囲んでいる様を見た時の直感を信じていれば良かった。とにかくまごまごしていられないぞ。隙を見て逃げなきゃ命に関わる」

「せーいじゃ。こんなところにいたんだ。あの後大変だったんだからね」宿禰少名針妙丸が正邪をにらむ。

「ん?姫様、なんでここに」

「二次会は合同でやろうと巫女から提案があったんだよ。それよりせいじゃ、みんなにちゃんと謝って…」

「ちゃんとお料理持ってきました?」正邪は聴かず質問する

「もちろん。一次会の食べ残しだけど、それが欲しいんだってさ。」

「そうでしょうね。あの巫女修行僧の食事を見て贅沢だって言ってましたよ」

「どんな食生活をしてるのさ。」

「それじゃあわたしは急いでいるんで」

「だーめ。またいたずらするんでしょう」

「今から帰るんですよ」

「それじゃあしょうがないね、お帰り。」

「はいはい。さいなら」

「待った、おかしいね、」

「なぜ

「天の邪鬼がお帰りと言ったのに帰ろうとしたからだよ。」

「… 」

 

「まりさ、招待状なんて送ったの?」霊夢が魔理沙に尋ねる。

「送ってないぜ。」魔理沙はつっけんどんにそういった。

「じゃあどうして。」

「なあ、霊夢、もう少し他人に興味もてよ」

「持ってるから聞いているんじゃない。」

「嘘付け、じゃあなんで話しかけるふりしながら私の皿からそっと唐揚げをつまみ上げているんだ。戻せ」

「解ったわよ。あれ、ちょっとまって、これは独り言だけど私さっきの後架の後、手を洗ったかしら。」後架とはトイレのことである。

「解った、やるよ。持ってけ。」

「思い出した。洗ったわ。ところでこれはもう私の唐揚げだからあんたにつべこべいわれる筋合いはない。それで」

「ん?」

「なんで嘘をついたの」

「アリスが怒っていたから。」

「よく解るわね」

「真っ赤で腫れぼったい目、手には禁書、髪の毛は魔力でなびいている、不審にもこもこした人形がざっと30体、にやにやしたアマノジャクが隣に居る。これで解らないお前がどうかしている。」

「人は見た目じゃ判断できないものよ」

「アリスは人じゃ無くてもと人だぜ。って、唐揚げが全部無くなってる!」

「ときどき思うのよ、私は他人に興味が無い冷たい奴なんじゃ無いかって」

「他人に興味があったら幻想郷の人間は腹の中だな。」

「…妖怪と人間どっちが栄養があるのかしら」

 

「おい、計画はどうなった」ひそひそで正邪は問う

「中止よ。」アリスは短観に返事をする。

「なぜ」これまた簡潔な疑問文で返す正邪

「本当は誘いたかったんですって」私ををしょうりゃくするアリス。

「嘘だそりゃ。」

「嘘じゃ無いわ。マリサが言ったんだもん」アリスはつんと澄ましかえった。

 

しょうのないやつ。しかし、と正邪は思案する。

計画が成功した場合どうなるだろうか

人が嫌がるというか、人が居なく成るというか

居なくなると嫌がりようが無い。

だからまあ、いいか。

「そんじゃあ、さいなら。」正邪は告げる。

「せーじゃ、とっととお帰り」少名針妙丸は詰めたい言葉を正邪に投げる。

「やっだよーん」と正邪

「よしよし、目障りだからあっちにお行き」

「ごいっしょしますよ、姫様」

「ちょろいなあ」

 

妖怪達の宴会芸がはじまり。

妖怪達の喧嘩と代わり

 

神社が消し飛び

酒が炎上する

妖怪達は再び、巫女から出禁を言い渡される。

 

「アリス、来年もまたやろうぜ」すすにまみれた正邪は嬉々としてアリスにこう告げる。

「強いわね、あまのじゃく。」

「あまのじゃくの言うとおりだぜ」と魔理沙。

「まりさ」アリスは相手の名前を呼んだ。

「そう気にするな。すきかってにやりゃいいんだ。ここに来ている連中はほぼ全員出入り禁止と言われているんだぜ」

「そういえばそうね」アリスは逆らわない。

「わたしも図書館で出禁くらってるけど毎日のように出かけてるぜ。」

「…。可愛そうなパチュリー」

「いいかアリス

まりさにがっと腕を回されて赤くなるアリス。

「幻想郷ではなっ、出禁されたところにこそ行かなきゃいけない」

「そうだ。」あまのじゃくは飛び上がる

「柵が無いところは無視しろ、鍵のかかっているところに全力突撃だ」

「ふふふ、」隣のあまのじゃくはわくわくする

「なんにしろ所有権は実際手にしている奴のものだ。」

「なんという悪党。ほれぼれするな、お前だけは!」喝采するあまのじゃく

「そうか。みんなアマノジャクなのね」

 

「あんた達、言うことを聞く気が無いならせめてかたづけていきなさい」

「えーと、あの、霊夢そのなんだ。」

[[逃げろ!]]

「あっ」

「アリス、手伝って。」

「えーと」

幻想郷ではアマノジャクでなくてはいけない。

きびすを返し逃げようとするアリス。

「アリス」

いつになく哀れっぽい声が背中にのしかかってきた。

「お願い。間近に迫る大晦日と元旦は神社にとって全てなの。」

振り返れば泣きそうな顔でへたり込んでいる霊夢。リボンが哀れっぽくたれている。

「解ったわ。悪いのは私だし。」

「なぜ?レミリアが馬鹿な芸のために爆発させたのよ。当人が奇妙に驚いているのが不審だったけれど。」

「えーと。と、友達でしょう。友達を見捨てて逃げようとしたから、悪かったのよ」

「…アリス」

 

掃除のさなか、なぜかばらばらの人形の破片が大量に発見される。

発見される度に霊夢の目が険しくなっていく。

誤魔化すように働くアリス。

 

「まあ、とにかく片はついたわ。肌寒い疑惑は残ったけれど」霊夢は静かにつぶやく。

「ぜえぜえ。はつもうでにはかならず博霊神社にくるわ」とアリス。

「そう。そうだ、ちょっと待ってて」

霊夢は手に持っていた箒をアリスに預けると、下駄をつっかけて社に上がり、中へ入っていった。

アリスはその隙に逃げようかも思ったが、例によってきまじめな性格でそれが出来ない。

石灯籠を背にもじもじしていると、霊夢は社から何かを薄っぺらいものを手に出てきて辺りを見回した。

アリスが石灯籠から体を出して片手を上げて合図をすると、霊夢はため息の後、濡れ縁の端を蹴り、げたも履かずにアリスの所まで飛来して手に持ったものを差し付ける。幻想郷の少女は飛べるのだ。

「はいこれ」

霊夢はやや高いところから和紙で包まれた封筒をアリスに差し出した。

「ん?お駄賃?」

「違うわ。」霊夢から稲妻のように早い返答が帰ってくる。

アリスは受け取った封筒をその場で開けてみる。

中には三つ折りにされた紙が入っており、一つ目の折り目を開くと来年のクリスマスの日時が書かれており、折り目を二つ開くと博例神社とあり、最後の三つ目を開くとそこには大きく招待状と書かれてあった。

「これは、招待状というよりはポスターね。」

「しょうがないでしょ、本当に招待状なんて作ったこと無いんだから」と霊夢は柔らかに笑った。

「せめてあなたと私の名前が書いてないと不手際だわ」

「そうね。」

「でも、霊夢、」

「…」

「ありがとう。」招待状を抱きしめてアリスは笑った。

「そう、きっと来なさいよ」

「ふん、スケジュールが空いていたらね」とまた澄ますアリス。

轟音が鳴り響き、神社の一角が吹き飛んだ。霊夢とアリスは驚いて振り向く。

のこった人形が大爆発した。草むらから、犯人であろう、せいじゃちゃんがうししと笑う。

「やっぱりアリス、あんたも出禁よ」向き直った霊夢は冷たく言い放つ。

「またね、霊夢。来年のクリスマスも必ず参加するわ」アリスは澄ましたままだ。

「出禁って言ってるのに」

「だから参加するってば 」

「なによ、ほんと妖怪はあまのじゃくばっかりね。強く戒めるほどよって来るのだから。」

「私ばっかりか。そりゃおもしろいなあ。」正邪はにっこりと笑う。

「せいじゃ、あんたは来て良いわよ」とあさっての方を向きながら霊夢は言う。

「うっ!!!」正邪は凍り付いた。

「らいねんのパーティーも絶対に参加しなさいよね。待ってるわ!」

霊夢は冷たく言うとあまのじゃくの反応も見ずさっさと社に入っていった

「うううー」

大荒れが予測される来年のパーティーに参加したいが、来いと言われると来たくなくなる。

板挟みに頭を抱えこんでいたせいじゃはのこのこと霊夢に続いて社に入っていく。

「霊夢っ、来ないでって言ってくれる?」

「嫌よっ、ほら、招待状よ、絶対来なさいよ」

「ありがとううううぅ!!」正邪の断末魔が祭りの後に響き渡るのだった。


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