DARK SOULS → SKYRIM でまったり()スローライフ()   作:佐伯 裕一

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サザエサザエサザエ樣、デーテ樣、たまごん樣、みそかつ樣、誤字報告ありがとうございます。大変助かりました。


一〇、はじめてのかちこみ(二日目)

 ブレックスが目を覚ましたのは、男の襲撃があった翌日の、もういくらかすれば日が中天にかかろうか、という頃になってだった。

 起き上がろうとして、鳩尾から胸にかけて走る痛みに顔をしかめる。

 次いで迫り上がる吐き気を堪えきれず、ベッドの近くにあった桶に吐瀉物を散らす。見れば、赤黒い塊も混じっている。

 

 物音に気付いたのか、部屋の外で待機していたのであろう配下の一人であるハンが、慌てて扉を開く。

 

「良かった。息があるのはわかっとりましたが、あんなことのあとですから、心配しました」

 

 ハンは安堵の表情を浮かべた。

 一味の中で誰がどの役職、などとは特に定めていないが、ハンはギルド時代からブレックスと長く行動を共にしており、実質的な副頭目と他の面々から目されている。

 腹心を始め皆に心配をかけたことは悪いと思うものの、ブレックスはそれより状況確認がしたかった。

 

「ノックくらいしろい馬鹿が。……俺がくたばってからどの程度時間が経ってる? あのあとのこと、被害状況、わかったことを全部話せ」

 

 ハンは順を追って説明していく。

 現在は男の襲撃があった翌日の昼前であること。

 男が襲撃でブレックスを昏倒させた直後、『居場所の把握が可能になる』という怪し気な魔術をかけ、その上で翌日、つまりは本日「自分が再度訪れたとき、砦に一味全員が揃っていなければブレックスを殺す」と通告したこと。

 通告のあとは、特に何もせず退散したこと。

 襲撃時に昏倒させられたほぼ全員が既に行動に支障が無いまで回復しており、男の吹き飛ばした牢の格子の破片を受けた者達以外に重傷者はいないこと。それも、命に関わる容態ではないこと。

 念の為に砦全体を調べたものの、何の細工もされておらず、仕掛けた罠も作動した一つ以外に手を加えられた形跡が無いこと。

 その先の執務室へと通じる場所のいずれにも、立ち入った形跡が無いこと。

 

 それらの報告を聞きながら、ブレックスは自己診断を下していた。

 血を吐きはしたが、臓腑が破れたというわけではなさそうである。しかし胸骨と、肋骨の第六、第七あたりはおそらく折れており、行動に支障が出るだろう、とも。

 どうも件の男は、配下達に比べて自分には随分と()()()当身を食らわせたらしい。

 クソッタレ、と一人毒づいていると、報告を終えたハンが覚悟を決めて切り出す。

 

「……頭、どうしますか? 俺達は頭にどこまでも付いて行くと決めてギルドを抜けました。頭が殺ると決めたんなら、肚括って全員でかかりますよ」

 

 ブレックスは馬鹿垂れとハンの頭をはたき、照れ隠しと呆れと痛みを綯い交ぜにして顔を歪める。

 

「あんな化け物相手にどう立ち向かうってんだ。犬死にして何の得がある。

 最も分が良くて手前等だけ逃がすって話だが、どうせ聞きゃしねえだろうが。言っておくが俺はろくに動けんぞ」

 

 ブレックスは自分の容態を告げながら、状況の悪さに歯噛みする。

 男がかけたという魔術など、今まで聞いたことが無かった。尤も、自分は亡きギルドマスターと違い魔術に精通しているわけでもないため、ハッタリだと断じることもできない。

 一味総出で逃げ出すのは、自分が足を引っ張り難しい。配下だけではそも逃げない。

 結局は男の言うとおり、砦で男の再訪を待つしかない、という状況だ。

 今まで、個人的武勇や政治的手腕に長けた相手を、磨き上げた業一つで手玉に取ってきたブレックスにとって、理不尽なまでの圧倒的暴力で選択肢を一つに狭められるのは、甚だ不愉快であった。

 

 それでも、何か対抗する(すべ)は無いものかと思案していると、なにやら遠くから物音が聞こえてきた。近ければ喧騒とも呼べる類の慌ただしさである。

 嫌な予感に再び顔を歪めていると、開かれたままの扉から、配下の一人が駆け込んできた。

 

「頭、あの男が……!」

 

 ブレックスはもう少し早く目覚められればと頭痛までし始めた体を起こし、喧騒の発生源まで足を引きずることにした。

 

 

 

********************

 

 

 

 砦で頭目ブレックスと話をし、配下達に再訪を告げられた。私はこれらの成果に満足して帰宅した。

 そして今日のあらましを()()()()家主殿へ語り、時間が惜しいとばかりに面倒事を頼み込んだ。

 

「ブリニョルフ、砦の連中に振る舞う酒や食材を融通してもらえるよう、手配を願えないだろうか。できれば百人前か二百人前ほど。勿論、代金は払う」

 

「それくらい朝飯前さ兄弟……と言いたいところなんだが、いくらなんでも多すぎる。『ブルー・パレス』でパーティを開ける規模だ。件の砦が大改修をしたなんて報告は聞いてないんだがね。

 何件か当たってみるが、明日までに用意できるのはせいぜい三十から四十といったところだろう。残りは随時、となるが、それでいいかい?

 代金は君から預かっていた宝物から差し引いておくよ。多分、これで墳墓と巨人から得た分が相殺されるかな」

 

 私は問題無いと彼に告げ、食事の支度を始める。

 何せ彼にはこれから何件もの店や卸商を梯子してもらわなければならないのだ。

 夕飯の支度くらいは買って出ても罰は当たらないだろう。

 早速作業に取り掛かろうとした私に、友が声をかける。

 

「しかし君も気が早いな。今日は(砦襲撃のための偵察など)様子見だったんだろう?

 連中を懐柔したあとの宴会に備えているとは、随分自信があるようじゃないか。英雄に相応しい天啓でも授かったのかい?」

 

「わかっていて言ってるな? よしてくれ。

 それでも、備えておいて損ということもないだろう? 必要になってから慌てて用意するよりは余程良いはずだ。

 連中については(一派の反応が思っていたものと違ったため)、もう数日は時間をかけようと思う」

 

 彼は「違いない。備えを怠る者は自ら昏い道を進む愚か者だけだ」と格言めいたことを言いながら家を出た。

 おそらく臍を曲げているであろうブレックス一派が、これで多少なりとも機嫌を直してくれるといいのだが。

 

 

 

 翌朝、ブリニョルフが手配してくれた酒や食材の詰まった木箱や樽を市場で回収した。

 口にしていたとおりせいぜい三十人分といったところだが、十分だ。

 連中はまさに男盛りといった年頃の者が多いように思えた。

 彼が気を利かせて多めに用意してくれた肉やチーズは、きっと喜ばれることだろう。

 

 日暮れから翌日早朝にかけてこれだけの物資を用意するとなれば、複数の店と面倒な交渉する必要があったはずだ。単に割増料金を払うだけでは済まなかっただろう。

 だが彼は、それでも私が言うのだから必要なのだ、と無理を押してくれたのだ。

 やはり持つべきものは友、それも出来る友である。

 私は彼の献身に温かなものを覚えながら、それに報いられればいい、今日()良い日になればいい、と気分良く町を出た。

 

 道を覚えるのは然程得意でない私だが、砦までは街道を通ってほぼ一本道と言っていい。

 道中、あちらこちらから視線を感じたが、邪魔にならないのなら問題はないだろう。昨日も特に支障は無かった。

 狼や、スカイリムでも特に自然の豊かなリフト地方ならではの害獣である『フロストバイト・スパイダー』にも遭遇したが、何の問題も無かった。寧ろ収穫が増えて幸先がいい。

 あの大蜘蛛については害虫と呼称するのが正しいのかもしれないが、足を含めれば牛程もある巨大な蜘蛛を誰が虫ケラ扱いできると言うのか。

 どうでもいいが、通常の蜘蛛は割と好きである。害虫どころかれっきとした益虫であるのだし。

 そんな益体もないことを思い浮かべているうちに、砦が見えてきた。暇な移動中は思考の海へ潜るに限る。

 

 

 

 今日は密やかに襲撃するつもりはない。裏手から近づく必要も無いだろう。

 私が昨日と同様に林から出ると、気付いた見張りがこちらへ弓を向けた。

 無駄に刺激することも無いだろうと、そのまま遠巻きに正面の門まで移動する。……のだが、砦のある左手では口笛がひっきりなしに飛び交っている。

 どういうことだろうか。

 訝しみながら砦正面へ辿り着くと、門が固く閉ざされているではないか。私はこちらへ弓を向ける見張りに声をかけた。

 

「おうい、再訪すると言付けておいただろう? 何故門が開いていないのだ。客人を持て成すにはちと無作法ではないか?」

 

「野郎、何様のつもりだ。言われて大人しく通す馬鹿がどこにいるってんだ。兄貴んとこにゃ行かせねえぞ」

 

「そうだ! 魔術だか何だかで奇襲をかけるのは得意らしいがな、今日はそうはいかねえ。来るとわかってて何度ものされるものかよ。おやっさんはやらせねえぞ!」

 

 私は、昨日伝えたとおり話をしに来ただけで別段ブレックスを害する気はないのだが、どうもそのあたりの連絡がなされていない気がする。

 居場所を探知する魔術など当然ハッタリであるため、ブレックスには逃げられないよう強く当身を食らわせたわけで、それ故まだ目覚めていないのだろうか。

 しかし、言付けたのは奴の周りにいた面々だ。頭目が寝ていようが起きていようが、関係は無いと思うのだが……。

 末端まではうまく伝わらなかったか? 襲撃を受けて頭目が昏倒するというのは、紛れもなく異常事態だ。混乱から上意下達が正しく行われずとも無理はない。

 

 ……いや、それも違うな。

 昨日、牢を破ったときに見た、決死の色が目に覗える。

 腐っても元盗賊ギルド員。ブリニョルフの同胞であったのだ。彼の言を借りるならば、『頭にチーズでも詰まってる』ぼんくらではないはず。

 私が何を言おうとも、自分達の頭目へ近寄る危険を僅かでも遠ざけようとしているわけか。まぁ、私が奴に無体を働かない保証など、どこにも無いしな。

 成程、なかなかどうして予想を裏切り続けてくれる。

 

 しかし、それならば、だ。こちらも相応の態度で臨まねば礼を失するというもの。

 弾んだ心そのままに、私は声を張り上げた。砦にいる全員に届けとばかりに。

 

「その心意気や良し! ならば派手に()()といこうではないか。食料を持ってきたからな。終わったら宴会にしよう」

 

「どこまでも舐め腐る……!」

 

 見張りが我慢の限界を迎えたのか、左右二人が同時に矢を放つ。この程度なら簡単に防げる。

 と、思いきや、私の視界の左右ぎりぎりから、地を這うように四本の矢が迫り来る。

 予め、射手が地中に潜んでいたようだ。私が正面から来る、という信頼が嬉しい。

 しかしこれを受け切るのは無理だ。自慢ではないが、私は攻撃特化であり頑強性は然程でもないのだ。

 おそらく様々な()()()がまだまだ至る所にあるのだろう。もたもたしていると針鼠になりかねん。

 

 前転して矢を躱し、即座に昨日同様『スモウハンマー』を生成し門へ叩きつける。

 派手な音は鳴るものの……手応えが鈍い。重い、と言い換えてもいい。土嚢か何か内側に盛ったか。

 連中は不用意には近づかず、射撃の間隔を僅かずつずらしながら矢を射ち続けている。いやらしいな。いいぞ。

 だが感心してばかりもいられない。口笛で知らせ合ったのか、こちらへ近づく気配を感じる。

 あとのことを考えれば砦は極力壊したくなかったのだがやむを得んだろう。

 私は左手に『呪術の火』を宿らせ、『混沌の大火球』を門へ投げつけた。

 殴り飛ばせないのならば燃やしてしまえばいいのだ。

 この炎は、地面に着弾すれば溶岩溜まりを作るほど、ひどく()()。門に直接当てたなら、表層を燃やすに留まらず、熱が収まるまでしっかりと門を破壊してくれる。

 

 門が破壊し尽くされるのを悠長に待っている猶予は無い。ある程度脆くなったところで、勢いをつけ蹴破る。

 門の内側には、人一人分ほどの隙間を残して効率良く力を逃がすよう左右に土嚢が山と積んであり、足元には溶岩溜まりが僅かに見える。

 どうも燃えるのに時間がかかっていたと思った物には、門だけではなくその後ろの土嚢も含まれていたようだ。

 土嚢の隙間から見える演習場にも、弓や剣を構えた者達がいる。ガラ空き、などということはあり得ないと思っていたが、然程の数でもない。

 門の突破を許したことで、口笛の応酬が一際激しくなり、程無くして止んだ。敵はすぐ側にいるのだ。知らせることももうあるまい。

 

 先のように四方から矢を放たれては敵わんので、土嚢を手近な射手に投げつけながら右手の壁沿いに走る。

 勝手口が視界に入ったが……今日は無視した。

 どの侵入口にも罠はあるだろうが、侵入し易い場所に仕掛けたくなるのが人情というものだろう。昨日は無視した大扉へあえて向かう。

 矢を躱し、私の歩みを止めようと複数人で連携して飛びかかってくる連中を平手で叩き、仲間へ投げ、肩と背で弾く。

 一瞬、一人二人を抱えて盾にしようかとも考えたが、やめた。仲間の矢で死ぬのは不憫であるし、今日は捕縛でも殺しでもなく()()しに来たのだ。

 

 大扉が射程に入ったところで、先程同様、超高温の大火球を投げつける。

 砦内部へ侵入したあとも後ろから狙われるのは面白くないので、振り返り、外部にいる連中へこちらからも弓矢と投擲で応酬する。

 ちなみに、矢は昨日同様、鏃に土を付けた木の矢で、投げているのはこんなこともあろうかと林で拾った比較的丸い石だ。毎度金貨を投げていては文無しになってしまう。

 外部にいる者は粗方片付けたところで、燃え滓となった大扉を蹴飛ばし……待ち構えていた者共からの矢を防いで一度物陰まで引いた。

 

 砦とは防衛用の軍事施設であるのだ。

 正面の門から続く大扉を突破しても、侵入者を撃退しやすいよう長く射界が開けているのは当然である。

 が、飛来する矢の数がちと想定外だ。少しでも顔を出せば、まるで横殴りの雨のように矢を見舞われる。

 どうりで、外部にいた者が少ないと思ったのだ。

 門の突破や内部への侵入を阻止できれば良し。しかしその公算は低いと見積もり、迎撃しやすい内部に多数の人員を配置した。そんなところか。

 しかしこの矢雨は酷い。こちらから把握できる以上の数が飛んできている。どうも壁に狭間が空いているようだ。何人潜んでいるのだろう。

 また大火球でも投げるかと思うが、あれでは焼殺してしまうだろう。困った。

 どうしたものかと思ったところで、ふと、この場に丁度良い道具を大量に所持していることを思い出した。友の言う天啓であろうか。

 

 奴等の狙いは正確だ。意を決して通路の中央まで飛び出し、我が身を曝すことで、両の手から放たれる品が射線から外れるようにし、投げる。

 手が空いたところで『ロスリック騎士の大盾』を地に打ち立てるように構え矢を防ぎ切り……轟音。『火炎壺』はいい具合に連中の中心付近で爆ぜたらしい。

 巡礼を始めたばかりの頃はよく世話になったものだが、いつ頃からか手間の割に威力不足ですっかり存在を忘れていた。闇霊相手には案外使える品であるのだが。

 

 さて、効果の程はと思い盾から目だけを出し覗き見るが、一息後には変わらぬ勢いで矢雨が降りかかる。

 数は若干減っているし、狙いも多少甘くなっているが、どうも怒りを買ったようだ。

 このまま盾に隠れていては、奴等も何かしらの手を打ってくるだろう。

 現に口笛が再び聞こえた。通路で挟撃などされてはたまらん。念の為、背後にも『黒鉄の大盾』を打ち立て、防御とする。

 一応の安全を確保したところで、火炎壺が駄目なら『黒火炎壺』だと再び両手から投げる。文字通りの爆音。元々狭い室内で使う品ではないのだ。熱風はこちらまで漂い、音は乱反射してよくわからなくなっている。

 

 流石に効果有りだろうと思いきや、まだ矢が降ってくる。……段々面倒になってきた。自慢ではないが、私はあまり堪え性が無いのだ。

 そっちがその気ならこっちもこの気だと、黒火炎壺を盾の陰から投げ続ける。安心しろ、数なら無限に近くある。

 途中、空中で撃ち抜かれ爆ぜる壺もあったが、問題無い。一番の効果は縦横無尽に暴れまわる音であるからだ。連中には耐え難い圧を伴う音であろうが、不死人は音程度で死んだりしない。

 それそれと調子に乗って投げ続けていると、盾に当たる矢の音が徐々に減り、やがて途絶えた。

 

 これで全員を昏倒させたとは思わない。

 おそらく大部分は一時撤退し、次の迎撃地点で待ち構えているのだろう。

 とはいえ正面からの矢雨では効果がないと理解したはずだ。全方位を警戒し、不意打ちに備える。

 一先ず、会敵するまでは進むことにした。壺の効果か、そこかしこに寝ている者は足で軽く小突いて狸寝入りではないことを確認する。

 一応、罠も警戒しておく。これだけ人員が入り乱れているのだ。誤作動を防ぐためにも罠が仕掛けられている可能性は低いが、奴等は盗賊である。あるとわかっている罠の回避くらいなら、どれほどの緊急時にも軽く熟してみせるかもしれない。

 大胆細心。警戒は怠らないまま、砦内部を突き進む。

 

 一度、二度と口笛が聞こえる。今度は何の悪巧みだろうか。

 そこから少し進んだところで、昨日私が見事にはまった罠の地点まで辿り着いた。

 昨日は砦の東西を回っていたためそれなりに時間がかかったが、大扉から直接赴けば、然程の距離は無かったらしい。

 しかしどういう仕組みなのか、崩れたはずの床が元通りになっている。石造りの床とはそれ程容易く崩したり戻したりできるものではないと思うのだが。

 ちなみに黒い細紐は見あたらない。

 これは矢雨より余程困ってしまう。罠なのかそうではないのか、私には判断がつかない。

 

 どうしたものかと数瞬悩んだところで、再び妙案が閃いた。

 別に今日は隠密行動ではないのだ。先程もどかんどかんとやらかしたばかりであるし。

 ならば罠があるかどうか、叩いて調べながら歩けばいい。今日の私は調子が良いかもしれない。

 私は『ルッツエルン』を取り出し、さぁ調べるぞと振りかぶった。

 

「待て、このトンマ。そんな()()()()()で叩かれちゃあよ、折角歩けるように直した床がまた抜けちまわな。

 にしても、人の寝起きに馬鹿でかい音を好き放題鳴らしやがって。人生でも一二を争う最高の目覚めだ。心から礼を言うぜ。あ、り、が、と、う、よ」

 

 目的の人物に会えたことで、私は得物を下ろした。一人、配下を付き従えているが、さしたる問題でもあるまい。

 しかしこの男、当身を食らわせたときに何本か骨をやった手応えがあったが、顔には一切それを見せない。普通なら息をするのも辛いだろうに。

 ブリニョルフといいこの男といい、盗賊ギルドの幹部は痩せ我慢の教練でも受けるのだろうか。

 

「昨日ぶりだなブレックス。いやぁ、礼には及ばんぞ。今日はなかなか歓迎してもらえたからな。

 しかしやっと会えたという心境でもある。困難を乗り越えた分、感慨もひとしおというものだ」

 

「生憎だがクソ野郎殿、俺はできることならそのツラ、二度と拝みたかなかったぜ」

 

 なんと、聞き捨てならない。

 

「いかんぞブレックス。命を粗末にしてはいかん。

 私はお前に会いに来ると言ったのだ。私に会わないということは、お前が自害することを意味する。それはいかん。

 命は()()一つしか無いのだ。大事にしろよ」

 

「……手前、ブリニョルフの奴によ、『常識が無い』って言われたりしてねえか?」

 

「彼は広い心を持っているからな。私が多少馬鹿を抜かしても許してくれる」

 

 ブレックスは処置無しとばかりにこめかみを押さえ俯いている。

 いや、流石に今の命云々は私なりの冗談のつもりだったのだが……これは『滑った』というヤツなのだろうか。

 私が調子外れなことを言ったのもそうだが、ブリニョルフなら上手な返しで会話を誘導してくれる気がする。

 やはり此奴とは相互理解が足りない。

 

「それで、聞くところによると今日は話し合いに来たそうじゃねえか。

 なのにやってることは正面切っての殴り込みだ。昨日に引き続きとも言えるな。

 手前は何か? まずは殴ってから挨拶をしろとでも母親に教わったのか?」

 

 今度こそ聞き捨てならない。今度は冗談ではない。

 

「まさかまさか。今日は本当に、穏便に話をしに来たのだ。

 だがお前の配下達はお前を守ろうと必死でな。その心意気を無下にしては興が醒めると思い、相手になったまでだ。

 それに相互理解を深めるためには、喧嘩が必要なこともあるだろう? 私はお前の可愛い配下達の『おとこのこ心』を尊重したに過ぎん。

 ……それはそうとブレックスよ。私の母について、いや母だけではない、私の親族と友人達について一言でも再び侮辱してみろ。この砦の一味全員に『殺してくれ』と懇願させてやる。

 私が大口を叩いているなどと考えるお前ではあるまい?」

 

「……クソめ。了解だ。そして今の一言に関してのみ、謝罪しよう」

 

 素直に謝るか。まぁ許してやろう。私と此奴は知り合って間が無いのだ。何が逆鱗であるかなど、知っていようはずもない。

 私は仲直りの宴会を催したいといい、ブレックスに食堂まで案内させた。

 奴は初め、執務室へと案内したがったのだが、私は砦の全員と仲良くしたいのだ。大勢が集まれる食堂のほうが都合がいい。

 勿論全員は収まりきらんだろうが、幾らかは寝ているか飯が食える状態ではないだろう。であればそれも結果として都合がいいというもの。

 さて、ブレックスではないが、今日も昨日に引き続き、実りある一日となれば良いのだが。

 私は、有意義な話し合いになることを祈った。

(※あくまで参考にさせていただくまでで、必ずしもアンケートの結果に沿うかはお約束できません) 文字数について質問です。拙作において一話あたりの平均が8000字強くらいらしいのですが、この文字数が長いのか短いのか、読者の皆様がどうお感じになっているのか気になりまして。私としては深く考えず、キリのいいところまで、くらいの意識だったのですが。一つ、ご協力よろしくお願いいたします。

  • 最低文字数(1000)で十分。
  • ~5000くらいはいるくない?
  • 今よりちょい短めで(~8000弱)
  • Don't worry.
  • もっと長くしろよ読み応えがねえだろハゲ
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