DARK SOULS → SKYRIM でまったり()スローライフ() 作:佐伯 裕一
また、たまごん樣、使用人樣、誤字報告ありがとうございます。大変助かりました。
ブレックスに食堂まで案内させた私は、その広さを見て意外に思った。
廃棄された砦ということもあり内装を好き勝手に改めたらしく、面倒を嫌ったのか厨房から食堂までの壁や扉が取り除かれている。
椅子や机を運び込むか、最悪、床に敷物でもすれば、一味の者共が十分に収まるだろう。
今は調子の悪い面々も含めて、快復のあかつきには大宴会としゃれこめそうだ。
私はブレックスに数人の人手を借り、調理に取り掛かる。
初めは私が持ち込んだ食材への忌避感から反発されたが、頭目が改めて指示を出すと、しぶしぶながら大人しく従ってくれた。
奴の「生かしておいて毒を盛る理由も無え」だとか「近頃はろくな物を食ってねえんだから、食えるときに食え」という言は道理ではあるが、感情の問題は如何ともし難い。
特に寄越された人員は若い者が多かった。年嵩の者に比べれば尚更であろう。
ちなみに若者が多い理由は、毒も薬も自前で用意するこの一味にとって、「まともな飯も作れない奴に錬金術なんざ恐ろしくて任せられるか」とのことだった。
つまり食事当番は若い構成員の錬金術修行でもあるらしい。これも道理である。
持ち込んだ食材は多いが、人海戦術で取りかかれば然程の時間はかからない。
パンとチーズ、肉や魚の汁物と、数品の焼料理。急ぎで拵えたにしてはよく料理してくれたと思う。
一つ首を傾げたのは、明らかに甘味とおぼしき焼き物や練り物が添えられていたことだ。私の感覚では、その手の品は食後に食べるものだという認識があるのだが、このあたりではそうでもないらしい。
配膳が終わる頃には、砦の無事な面々が既に食堂に詰めかけていた。
私が妙な動きを見せたなら身を挺して頭目を守ろうという心積もりなのだろうが、今日は仲直りの宴会であるのだ。連中のそれは杞憂というものである。
そも、私は食べ物を粗末にするのが嫌いだ。そのような事情が有ろうと無かろうと、食事中に荒事を起こしたくはない。
食堂は中央に長い大テーブルが鎮座しており、壁際には数人掛けのテーブルと椅子が大テーブルをぐるりと囲むように配置されていた。
本来は大テーブルの短辺壁側が上座となるのだろうが、私は長辺中央に陣取り、ブレックスにはその対面に座るよう指定した。
話をするのにあまり離れていては何かと面倒である。ここでも配下達が騒ぎ立てかけたが、奴が一喝した。奴自信、そろそろ面倒になったようだ。
「さて、酒も料理も行き渡ったな? それでは一言。
我々の出会いは少々手荒いものとなってしまったが、腹を満たすことでいくらか溜飲を下げて欲しい。
あぁ、これは今日だけの話ではないぞ。食材は明日以降も持って来る。存分に飲み食いしてくれ。
それでは、我々が手を取り合い輝かしい未来へ進むことを願って、乾杯!」
訪れる静寂。音頭を取ったはいいものの、盛り上がりはしなかった。
だが、ブレックスが仏頂面で黙ったまま杯を掲げ、隣に座った男、奴の腹心らしいハンが「乾杯!」と応じ、景気良く一息に飲み干した。
数人が目を見開いて驚いているが、ハンは何事でもないという顔をして、食事に取り掛かっている。
ガツガツと豪快に食べ、「まともな飯は久し振りだ!」とはしゃいでいる。
というより、他の者も自分に倣えと言いたいのだろう。察した者達も皿に手を伸ばしている。
ハンは機嫌良く舌鼓を打つようで、その目の奥には油断ならない光がある。この場においては私の振る舞う食事を甘受することが、ブレックスの安全に繋がると考えているのだろう。
そしてブレックスもハンの思いを理解しているがために、不機嫌面のまま何も言わない。
尤も、仮にブレックスがハンを誤解して「自分を裏切り奴に乗り換えようとしている」などと思い違いをしても、おそらくこの男は変わらぬ行動を取るのだろう(見る限りでは、この頭目はそこまでの愚物ではなかろうが)。
この砦の連中は誰も彼も、頭目殿が余程大切らしい。違うのは経験の有無からくる立ち回りくらいなものだ。
しかしここまで心を砕く男が、他の面々から悪く思われても不憫である。少し助け舟を出すとしよう。
「ハンと言ったな。喜んでくれているようで、私も嬉しいぞ。わざわざ持参したかいがあると言うものだ。
さぁ、毒見役はこの者が買って出てくれた。他の者も皆、遠慮せずに食べてくれ。食材に罪はないのだ。折角の美味しい料理が冷めてしまうぞ?」
手を付けて居なかった者達も、おずおずと手を伸ばし始めた。
私の言葉、というより既に察して食べ始めていた者達がそれぞれ目配せしたためであろう。
皆が食事を始めたのはいいが、たったそれだけのことがここまで面倒になるとは。
砦へ襲撃をかけた際には殺すか拷問にかけるつもりであったとはいえ、今になってみると少々対応を間違えた感がしなくもない。
まぁ、過ぎたことは仕方ないのだ。気持ちを切り替えていこう。失敗をいつまでも引きずるのは良くない。
私が溜息を堪えていると、ハンが話しかけてくる。
「しっかし旦那の魔法は便利ですね。これだけ大量の食料を手ぶらで持ち運べるなんて。厨房で旦那の手元から樽や木箱がごろごろ出てきたときにゃ、随分驚かされました。昨日も頭に不思議な魔術をかけとりましたし。
素晴らしき戦士であり、素晴らしき魔術師でもある。古の英雄のようですな。
ただ、これ程の力をお持ちだというのに、あたしゃ高名なはずの旦那のお話を聞いたことが無いんでさ。浅学で申し訳無いんですが、もしかして旦那はどこか遠くからおいでになったんじゃありませんかい?
折角こうして同じ釜の飯を食っとるんです。よろしければ旦那の話を聞かせてくださいな」
この男、人懐っこい雰囲気を醸して私の情報を少しでも得ようと虎視眈々である。程良い緊張感が背筋を駆け抜け、とても心地が良い。
それに、昨日はブレックスの尋問に付き合う形で聞かれたことにしか答えていないので、たしかに私自身の話はあまりしていない。
私の
故に墳墓でブリニョルフにしたような言い訳を基に(ブリニョルフが)脚色した物語を披露する。
結果、私はタムリエルの東や南の大陸を股にかけて活躍する凄腕冒険者で、私の特異な魔術に目をつけた魔術師の一団に依頼され実験を行っていたところ、転移事故に巻き込まれて件の墳墓に飛ばされ、ブリニョルフと出会った。という話になった。それなりに自負はあるとはいえ、友の創作した話をさも自らの実績であるように語るのは少々気恥ずかしいものがある。
そしてそれを聞くハンは、相槌を打ち、細々とした質問を挟み、嫌味にならない程度に笑い驚き場を盛り上げている。なかなかの聞き上手であった。
私のロードランやロスリックでの実体験を
内容がやや雑談めいて来たところで、それまでずっと黙っていたブレックスが口を開いた。
「ハン、済まねえな。だが、そろそろ突っ込んだ真面目な話をしてもいい頃合いだろう」
私としてはハンと楽しい話を続けていても良かったのだが、ハンを含めて私に心から気を許している者がいない現状、茶番めいた空気が無かったとは言い難い。
頭目殿が水を向けてくれるのなら、私に否やは無い。
「『仲直り』は一応済んだことにしようや。幸い、こちらに死人はいねえ。痛みと屈辱を味わったが、手前が相手だったことを鑑みれば、御の字といったところだろう。
だから手前は今から、正式に俺達の客人だ。……全員そのつもりでいろ」
今やっと、『話し合い』の席に着けたということなのだろう。長かったような、短かったような。
いや、訪問二日目であるのだから、短かったのだろう。大金星と言っても良いのかもしれない。やはり今日はいい日である。
「話を戻す。手前の目指すところは俺達を手駒として力を持つことだろう? だがそれは極めて難しい。客人を相手として誠意を持って伝える。手前への反発心で言っているんじゃあねえ。それは誓う。
まず俺達は、言うまでもなく盗賊としての技能集団だ。だが、ギルドを抜けた今、その腕を振るい続けるのは自殺行為になる。
いずれはギルドの権益を犯すことになりかねんし、そうなれば待つのは粛清。つまりは論外だ」
まぁそれはそうだろう。仮に連中の盗賊働きを続けさせる道があるとするならば、連中を完全に私の管理化に置き、その上でブレックスがメルセル・フレイに頭を下げ、実質的な下部組織に納まらないことには難しい。
だが、そんな真似をするくらいなら、そもギルド脱退などせんだろうし、ブレックスに付いてきた連中も納得はしまい。
「別に賊稼業しか能がねえわけじゃねえ。ギルドの中には盗賊としての腕だけを磨けばいいなんて考えの連中も居たがな。
俺はギルドマスターに倣い、こいつ等には優れた盗賊であるために、錬金術、鍛冶、魔術、土木建築、宝物の鑑定、暗殺、商売と、様々な技能を身に着けさせた。だが当然、全員が全てを修得しているわけでもねえ。
盗賊から足を洗ってまっとうな稼ぎで生きていくことはできるだろうが、それは個々人がそれぞれにって話だ。
この馬鹿共は寂れた砦まで俺に付いて来たがな、実利的には俺達はまとまっている必要がねえんだよ。
そんで何人かはヘマこいて幾つかの都市で手配書が回っちまってるからな。散らばってってのも難しい。
しかも最後が決定的だが、俺を含めてどいつもこいつも盗賊であることを捨てる気が一切ねえんだわ。
ここしばらくの実態は良くて山賊といったところだが、心は盗賊ギルド員のままだ。フラゴン一派、なんて意味ではなくな。
そんな連中だからよ。デカイ山のために一時的に表の顔で潜入することはあっても、それを本職になんて御免被んだよ。そもそも、育ちが悪いのが多いから、堪え性のいる生活に向いてねえって話もあんだが。
真面目なところよ、俺達にとって、磨き上げた業を捨て、誇りを捨て、手前の元で何かしら世間様に顔向けできる事業にでも従事するなんてのは、それこそ耐え難い。手足を縛られたまま生きて、何が楽しい。何のための人生だ。
手前は昨日、言うことを聞くまで拷問にかける、とか何とか抜かしていやがったがな。そんな手間は取らせねえよ。
従うこと自体が拷問なんだから、速やかに自害してみせらあな。
が、もしかしたら何人かは今の生活に嫌気が差してるかもしれねえ。そういうのがいたら、手前の手で日の当たる場所へ戻してやってくれや」
ブレックスの最後の一言に配下達が
だが「頭!」だの「おやっさん!」だの「兄貴!」だの「大将!」だの、呼称に統一性の欠片も無いな。このあたりも、規律を重んじるフラゴンにいるギルドの面々とは違うと思わせられる。
しかしそうか。ブリニョルフの話から、ある程度力づくでことを運べるかと思ったのだが、存外連中は盗賊としての生き方に執着しているようだ。
私としてはそれを尊重してやりたいと思う。ブリニョルフではないが、私は会ったばかりのこの連中を少し気に入りかけているのだ。
それに、無理を押してことを運べば、此度の砦への一件が丸々無駄足になりかねん。
どうしたものだろうかと悩み……一先ず問題を先送りにすることにした。
「ブレックス、お前の言うことはわかった。
聞きようによっては恐れ知らずというか開き直ったというか、なかなか危うい奴だと思わされたが、腹を割ってくれたことに礼を言おう」
奴は「酒と飯の代金だ」などと吹いているが、有り難いことには変わりない。
「その上で提案だ。何かお前達、食料事情以外で困っていることは無いか? 私はそれの解決に助力しよう。
そしてそのあいだに、お前達は双方が納得できるような、互いに利があるような、そんな妙案を考え出してくれ。
自慢ではないが私はタムリエルの事情に詳しいわけでもなければ、知恵が回る性質ではない。その点、お前達はお前達の力量や実現可能な範疇などその他諸々把握しているのだし、自らが許せる範囲で差し出せる労力を弾き出すこともできるだろう」
ブレックスは「また勝手なことを」とでも言いたげな顔だが、隣のハンが「それなら地下の拡張工事を頼めますか?」と申し出た。
恐ろしい素早さで首を副官のいる隣へ向けたブレックスの裏切られたような顔が少々滑稽で面白い。
「いやね頭。この自由極まりない旦那を野放しにしておくほうが危険だと思うんでさ。それなら妙案が浮かぶかは別として、何か仕事を割り振ってしまうのが短期的には良いのではと思うんですが、如何でしょう?」
ブレックスは少し考えてから、一理あると思ったのか「勝手にしろ」とぶっきらぼうに言い放す。
そして更に少し考えてから、ハンの頭を叩いた。楽しそうである。
「それでは、私は早速工事に取り掛かる。考え無しにあちこち掘って地下水脈にでも当たっては不味いからな。誰でもいいから詳しい者を付けてくれ。ではな」
歩き出した私の後ろから、頭目と副頭目が追いかけてくる。特に頭目は「地質に土木となると、わかるのは俺くらいなもんだ。結局俺がこいつに付き添わにゃならんだろうが」またハンの頭を叩いている。仲が良い。
しかしお前、出会ったときはもう少し泰然としていなかったか?
(※あくまで参考にさせていただくまでで、必ずしもアンケートの結果に沿うかはお約束できません) 文字数について質問です。拙作において一話あたりの平均が8000字強くらいらしいのですが、この文字数が長いのか短いのか、読者の皆様がどうお感じになっているのか気になりまして。私としては深く考えず、キリのいいところまで、くらいの意識だったのですが。一つ、ご協力よろしくお願いいたします。
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~5000くらいはいるくない?
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Don't worry.
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もっと長くしろよ読み応えがねえだろハゲ