DARK SOULS → SKYRIM でまったり()スローライフ() 作:佐伯 裕一
上記のとおり、アカウントロックの心配は無く、ハーメルンを利用できなくなる心配もありません。ですので、これからも変わらずこの場にて執筆を続け、(何年かかるかわかりませんが)完結を目指して邁進する次第です。
勿論、私としては今までどおり微力を尽くして執筆にあたりますが、皆様におかれましては、そのようなことはお気になさらず、暇潰しにでもしていただければ幸いです、と改めて心境を述べさせていただきます。
少々長くなりましたが、以後も変わらぬご愛顧のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
また、サケノミ樣、ゆゆゆ03樣、ひね様樣、ぽんぽぽ樣、誤字報告ありがとうございます。大変助かりました。
愛息からは実戦経験を積ませてくれと懇願され、友からは計画の進展を促された。さて、どうしたものか。私は「一旦保留」を宣言し、ラーナルクには明朝、付き人と共にいつもの稽古場に集まるよう指示を出した。
言ってはなんだが、この二件は一度に片付けることが可能である。……というかおそらく、あの悪戯親父は配下の報告から私をそのように誘導しようと、言い出す機を伺っていたのだろう。抜け目ないことである。しかし私にも多少は考えというものが有る。
というわけで、後から話を持ってきた相談役殿(忘れがちではあるが、あの男、町の重鎮でもあるのだ)の家を訪ねた。私も、従者に任ぜられることが内定している身である。首長に近い者同士が接触することに、何の怪しいところもない。盗賊連中相手に堂々と話ができるようになったのは、そうでなかった頃の手間や労を鑑みれば、ある程度の成果であると言える。少々感慨深い。
ちなみに狭い町であるため、私の従者内定は既に住民達の耳にも入っている。前祝いだ、と一部住民が宿屋で宴会を開いてくれたことがあったが、なかなか心が温かくなる
まぁ大崩壊からこっち、従者なんぞという役職の者は存在しなかったようなので、町の復興が順調に推移していることへの喜びもあったのかもしれない。人間、明日は今日より良くなる、と希望が持てれば、気前は良くなるし、多少のことには目を瞑るようになるものだ。それはあらゆる面で我々にとって都合がいい。
私自身、多少の情が湧いてきた住民達を利用していることに全く思うことがないでもないが、それはおそらくあちらも同様。お互い様であろう。時間が経てば、打算抜きで酒を酌み交わすこともできるはずだ。
閑話休題。
相談役殿は、訪ねてきた私の言に若干渋い顔をしながらも、道理を認めて許可を出してくれた。そしてその場で、「どうせ衛兵隊の手には余る案件だ」と丁度いい討伐司令書を寄越してくれる。用意がいい。全く以て、持つべきは仕事のできる友である。
一夜明けて。
「色々と考えた結果、まずはラーナルクの腕試しだ。これからこの四人で賊退治に向かう。出立前から既に『試し』は始まっている、とラーナルクはそのつもりでいるように」
「いや旦那。坊っちゃんの腕前は旦那も知るところでしょう? 最近じゃ、サシならトロールやホラアナグマだって仕留められるようになりやしたぜ? そいつは頭だって知ってる。だから俺たちゃてっきり、旦那が坊っちゃんを連れてダンジョンへ向かうもんだとばかり思ってたんですがね」
私の言が不服だったのか、一味の一人が抗議の声を上げる。……いや、この半分以上はラーナルクの代弁か? 親子とは言え、試される若輩者が試す年長者へ不満を口にすれば角が立つ、と思い矢面に立ったか。
いつぞや我が友は私を「子煩悩だ」と言ったが、今では盗賊連中と私とでどちらが「子煩悩」なのかわからんな。どうも、『期待の新人候補』から『一味の末子』と認識が変化したように見える。
我が愛息がそれだけ此奴等に受け入れられた、という事実は喜ばしいものの、もしラーナルクに何か重大事が出来したら、此奴等は自らの役目を果たせるのだろうか? 仮にだがその場合、まず私は怒り狂っているだろう。冷静に損得を勘定して進退の進言をするのは、此奴等の役目だ。そのあたりは玄人としてあてにしているのだから、しっかりしてほしいのだが。
思考が逸れた。ラーナルクの腕前については、私とて疑うものではない。そのへんの傭兵とだって正面切って戦えるだろうし、私と盗賊達が仕込んだ卑怯戦法を用いるならば、打てる手は山程ある。大概の相手は話にもならんだろう。……分析しておいてなんだが、我が子ながら末恐ろしい才である。
しかし、私にも言い分は有る。
「あぁ、お前たちの言うとおり、ブレックスもそのあたりを想定して、首長の兜の話をしたのだろうよ。
しかしだ。私は基本的に誰かと連携を取ったことが無い。永く、一人で戦い、動く者を全て鏖殺してきた。つまり、ラーナルクを連れて行ったは良いものの、きちんと連携らしい動きができるか、互いの隙を庇い合うことができるのか、こればかりは試してみなければわからん。つまりは私側の都合だ。
もう一つ。ラーナルクに十分な腕前が備わっていることは知っているが、それが鉄火場でも十全に発揮されるか、私はこの目で見たことが無い。お前達は散々見てきたかもしれんが、私が一度くらい確認したところで罰は当たらんだろう。ラーナルクには少々肩透かしな思いをさせるかもしれんが、親のわがままだと思って我慢しなさい」
初めは盗賊に目線を合わせていたが、後のほうはラーナルクに語りかけている。ダンジョンの探索を臨む若者からすれば、多少の不満はあれど、ある程度の道理を認めたのだろう。内心の整理を付けて、歯切れよく返事をした。
「とはいえ先にも言ったとおり、これは兜奪取に同行させるか否かの試験でもある。そのつもりで挑むように。私の目に『力不足である』と映れば、誰が何と言おうとも時期尚早であると判断し、お前は置いていく。出立は昼餉を済ませてすぐだ。全員分の用意ができれば、町の入口に集合すること。以上」
ラーナルクは一瞬体を強張らせたが、すぐに先と同様の返事をする。
そして踵を返すと、すぐに屋敷へ走った。かと思えば背嚢や肩掛けの布袋を幾つか掴んで屋敷を飛び出し、ブレックスの家に駆け込んでいく。夜逃げでもする勢いである(朝だが)。試しは「出立前から」という言の意味を正しく捉えているようで大変よろしい。まぁ、それが理解できんほどの愚図だとは欠片も思っていなかったが。
……にしても、残された盗賊二人からの視線が痛い。私とてあれは可愛いのだ。別にいじめているわけではない。寧ろ石橋を叩く思いで段階を踏んでいるのだから、その親心こそ汲んでほしいものだが。
本当に、どちらがあれの親なのかわからんな。いや、どちらも、なのか? すると私が父親で、盗賊連中がまとめて母親か? 随分と強面でむさ苦しく後ろ暗い母親がいたものだ。
私はあれの身の安全を第一に考える。連中はその力量を何度も間近で見てきたために、その心情をこそ第一に考える。教育方針の齟齬によって夫婦仲が拗れ……。止めよう。少し気持ち悪くなった。
どの道、我ら親子を『家』として見るなら、家長は私だ。このスカイリムでは特に家長の発言権が強い。それでなくともブレックスと対等である私は、事を起こす際、盗賊連中の暫定的な上役になる。故に文句を言われる筋合いは無いはずなのだが……。この気安さも、勝ち取った絆ということにしておくか。
私はラーナルクを手伝おうと動き出す盗賊二人の首根っこを掴んで宿屋へと引っ張って行く。私は『試し』だと言った。当事者からは助言も助力も許さん。大人しく飯でも食っていろ。
席に付いて、辛気臭い顔の盗賊が私の目を盗んでなんぞ『ズル』をしないかと見張っていると、そこにラーナルクが駆け込んで来た。見れば店主に、保存性の高い食料や酒、水を融通して欲しいと交渉している。あれが私の倅であることは、この町では周知の事実である。その立場と子供らしさを最大限に活かした交渉術で、ラーナルクは相場よりいくらか安く食料を揃えてしまった。『話術』というかなんというか、あれにかかれば値段交渉も優位に働くのか。ますます末恐ろしい。
交渉が済んだら運ばれてきた物資を袋に詰めて、入って来たときと同じく忙しなく出ていった。昼餉の最中に慌ただしいことだが、居合わせた住民たちは「相変わらずの元気小僧だ」と朗らかに笑っている。穏やかなひと時だ。
その様子を見ていたむさ苦しい母上方は、やっと落ち着いて食事に専念することにしたらしい。あれは身内とばかり過ごしていたからな。値段交渉も住民の反応も、初めて見たのだろう(私もだが)。それで多少は納得し、任せてみることにした、と。
いつまでもぐだぐだ抜かすなら多少の闘魂注入も必要かと考えていたが、此奴等の様子を見るに、違う思いが浮かんできた。
「此度の件、色々と思うところあるかもしれんが、一度それは脇に置いて聞いてくれ。
お前達も気付いていようが、あれは、どうもしばらく前から悩んでいるようだ。しかし私は、お前達からの報告を聞いても、その本質まではぼんやりとしか察しきれん。おそらく、すぐに解決するものでもないのだろう。
そんな難しい時期に、私の目が届かんあいだ、あれの面倒を見てくれてありがとう。ただ世話を焼くだけでなく、慈しみ、愛し、親身になって接してくれた。本当に助かった。礼を言わせてほしい」
言っているうちに、その気は無かったのだが自然と頭を下げていた。盗賊達が頭を上げるよう慌てて言う。あまり頑なでも周囲の目を引くか。私は素直に従った。
「礼は、へい、確かに受け取りやした。……ただまぁ、実のところ礼を言いてえのはこっちのほうなんでさ。
あっしも含めてですが、一味の連中はガキなんざ拵えたこともねえヤツやら、居てもとうに別れたろくでなしばかりでさ。そんなクズ共の集りだからか、坊っちゃんがやたら物怖じしない性質だったからか、両方か。旦那もお察しのとおり、あっしらは坊っちゃんを手前の倅みてえに見てる節がありやす。旦那の手前、ちと厚かましくはありますが。
みんな、坊っちゃんの世話を焼いてるあいだ、頭に付き従うのとはまた違う、まっとうな人間らしい温かみを感じることができやした。
いやま、稼業が稼業ですからね。んなもんは一時の幻想だとは理解してんですが。でも、そんな時間をくれた坊っちゃんにも、勿論旦那にも、感謝してんでさ、へい」
これまでのことを思い礼を言ったら、思いの外、本音で礼を返された。私の胸にも温もりが広がるが……。ちと悪戯心が湧いた。
「そんなに言うなら、あんな恨めし気な視線を寄越すこともないだろう」
「それとこれとは別でさ」
しんみりとするほどの礼を吹き飛ばしていけしゃあしゃあと言うものだから、思わず声を上げて笑ってしまう。今度こそ周囲の目を引いた。倅は大急ぎで旅装を整えており、その親は付き人と上機嫌で食事を楽しんでいる。事情を察しようにも、よくわからんだろう。
まぁ良いのだ。我ら親子は『変わり者』で通っているらしい。それも、やや好意的な目で。ならば時折話題を提供してやるくらいが丁度いいだろう。
それからあれこれと話をし、食事を終えて宿屋を出た。
町の入口には、ラーナルクのほうが先に辿り着いていた。隣に一人、一味の者を帯同させている。はて、賊退治は「四人」と宣言したため、増援を認めることはないというに。訝しい。ラーナルクがその程度も理解していないはずがない。なんぞ
「早いなラーナルク。突発的であっても期限までに仕度を整えたこと、まずは合格だ。良くやった。
それから、今回の一件を言い出したのは私だがな。ことのあいだ、つまりは再び町へ帰還するまで、私はお前に雇われた傭兵として動く。戦力としてもそれなり程度だ。
『合格』という単語にひとまずの安堵を得たらしい。愛息を危険地帯に連れて行くかどうか、という話なのだ。私は徹底的に試すぞ。
「ではお父さん、遅ればせながら質問があります。この場で、退治する賊の情報を明かしていただくことは可能ですか? 目的地や、規模など」
「いいとも。標的は、ここから北西にしばらく行ったところにある、難破船を根城にした連中だ。衛兵隊と一味の者から報告が上がっているが、正確な規模はわからん。確認できているのは十、といったところだ。それ以上は、現地で見てみなければ何とも言えん」
ラーナルクは私の回答を受けて、やや考え込み、いくらか機嫌を良くした。表情にはほぼ変化が無いが、私にはわかる。十人以上の賊集団が相手ともなれば、それなりに実戦と呼んで差し支えはない。今回は私という駒を放り込んで蹴散らすこともできない。それなりに歯ごたえはある、と踏んだのだろう。
次いで、用意した背嚢のうち、幾らかを隣の盗賊に渡している。なるほど、此奴は余剰物資を持ち帰らせるためか。目的地が不明だったため、ある程度余裕を持って支度したわけだ。それはいい。
しかし、欲を言えば初めにそのあたりを確認しておけば……。いや、本人もそれは気付いている。そのうえで、遠隔地まで移動することも考慮し仕度を整えて来たのだ。不問としよう。仕度を間に合わせたこととそれら柔軟な対応で、
だが、見過ごせない
別段、何点以上で試験合格、などと決めているわけではないが、あまりに減点が酷ければ、苦言を呈することになるかもしれん。
今度こそ仕度が整ったのか、ラーナルクは出発を宣言する。……もう少し意地悪をしてみるか。今の私は、空気の読めない凡蔵な傭兵だ。
「馬は使わんのか?」
「はい。途中から山中を進む予定です。その際、馬は邪魔になりますし、馬を用いて山を迂回しても、到着までの時間は然程変わらないと見ています。この面子なら体力的には問題ないはずなので、少々急ぎ足の
それに、仮に現地まで馬で行ったとしても、不意を突かれ賊の逃走にでも利用されれば、面倒なことになります」
うん、今度は文句無しである。加点二としよう。それに、出会った頃の口の重さが嘘のようだ。普段はまだ重さがあるが、公私のけじめをつけ、切り替えられるのだろう。このあたりはトルドスや盗賊達に感謝しなくてはならんな。
私の満足気な首肯を見てほっとしたのか、ラーナルクの顔にも喜色が見える。
他に質問が無いことを確認し、全員が背嚢を背負ったところで、一行は町を出た。
道程はラーナルクの先の言のとおり、途中までは街道を進んだ。私やラーナルクが時折狩りに出ており、最近では衛兵隊の巡回も少しずつ範囲を広げている。特に危険も無く、穏やかなものだ。
これが試験でもなければ、良い休暇となったであろう旅日和である。季節は晩夏から初秋といったところで少々時期外れだが、小春日和とでも言いたくなる。真夏でもなければ年中冬の如く寒いのがこのウィンターホールドという土地なのだ。暖かい日差しは貴重である。
……私が言うのもなんだが、よくこんな土地に好き好んで住もうだなどと考えたな。ノルドの寒さへの耐性は、少し異常だ。私が不死人でなければ、とてもではないが耐えられなかっただろう。
何事もなく半日ほど進んだところで、今日はもう野営にするとのこと。明日はこの場所から、街道を反れて山に入るらしい。
すぐに日も暮れる。確かに頃合いではある。あるのだが、別に夜間での山中行軍を苦にする面子でもない。とはいえ、それをするにも一長一短あるわけで。このあたりは好みの問題と言えよう。加点も減点も無しだ。……最初の確認不足が響くなぁ。
野営の仕度は、思ったよりずっと手際のいいものだった。ラーナルクが屋敷に帰って来なかったことなど片手で足りる程度しか無いはずだが、そのあいだに習得したというのだろうか。相変わらず物覚えがいい。
ちなみに、ラーナルクは火起こしに
私の間抜けた視線が小さな羊皮紙に向けられていることに気付いたのか、尋ねるまでもなくその心を答えてくれる。曰く、速やかに火を起こさなければならないのに、雨天や装備が濡れている場合、燧石だけでは時間がかかりすぎる。そしてそのような場合であれば、命に関わる事態である可能性が高い。ならば高価であっても軽く嵩張らずにすむ道具を携帯すべき、と。
我が愛息は、私の言う「試験」をかなり真剣に受け止めているようである。それはいいのだが、スクロールとは随分と贅沢なことである。
あぁ、そういえば以前、懐が許すなら道具はいくらでも使え、というようなことを言った気がする。私の、遠距離から弓矢でちまちまと敵を削ったり、ひたすら苔を食いながら『糞団子』を投げて毒殺した経験から来た助言であったのだが、よもや火起こし程度にスクロールを用いるとは。いやまぁ、スクロールは確かに邪魔にならないし、我が家はそれが許される程度には金満ではあるのだが。発想が、なんというか非凡だ。一応、加点一としておこう。実際に役立ったのなら五だ。
火を囲み夕餉を摂りながら、明日の行動について打ち合わせを進めていく。どうやらラーナルクは、
ブレックス一味のように、頭目の求心力と配下の篤い忠義が根底にあるのなら、極論、説明など不要である。指示だけ出していれば、一味の全員が疑問を抱かずブレックスの思うとおりに動いてみせる(実際には指示が必要かも怪しい。言われずとも頭目の胸中を察して、勝手に最善手を取り続けるだろう。恐ろしい集団である)。しかし即席の一行ならそうはならん。面倒な揉め事や、後々の理解不足、連携不備を防ぐためにも、合理性を以てきちんとした打ち合わせを行うべきである。
このあたりは一味の者、というよりはギルドの教えではなかろうか。メルセル・フレイや幹部達を見ていれば、そうした仕組み、というか体制が出来上がっていると考えられる。発案が出来物ガルスのものか我が友ブレックスのものか伝統的なものかは別として、それを教授されたのだろう。……ラーナルク自身が考えついた可能性も否定できないのだが。
打ち合わせによれば、明日は夜明けとともに街道を避けて山中を進み、賊の拠点である難破船まで近づく。これは、街道を監視しているやもしれぬ賊を警戒してのこと、という意味もあるようだ。直線距離で言っても山中を抜けたほうが近いので、悪くない判断だと思われる。予定では日暮れ頃になる。
そして、完全に日が没したら夜襲をかけて一気に殲滅、とのこと。盗賊の技能を持つ者が三人と、姿や足音を消せる人間が一人いて、馬鹿正直に真正面から挑む必要もない。
ふと気になったので、仮に率いるのがそのへんで雇った傭兵三人であればどのように動くか、ラーナルクに尋ねてみた。すると欠片の迷いもなく返答が来る。
「昼間に傭兵を囮として正面から攻めさせ、僕は背後から奇襲をかけます。その際、傭兵達には無理に攻めかからせるより、挑発に重きを置かせます。隠密行動も取れない者では夜間でも感づかれるでしょうし、視界が悪ければ、地の利のある相手に有利です。ならば開き直って昼間に仕掛けるほうが余程いい。勿論、報酬は首の数ではなく、こちらの指示した働きに応じたかどうか、とします」
道理である。不得手なことをさせて土壺に嵌るくらいなら、それらは助勢と割り切ってしまったほうが安定するだろう。当てにならない味方など、壁か囮くらいにしかならん。加点一である。
そう感心していると、まだ続きがあるようで、ラーナルクが更に口を開いた。
「またその際、傭兵の力量や性分から鑑みて一人選び、報酬に色を付けます。これは、最も腕が立ち、最も強欲な者が望ましいです。増額分は実際に前金で渡してもいいですし、信用させられるのなら口だけでも構いません。
雇い主の目が届かないところでは、傭兵共はすぐに逃げ出すかもしれません。しかし一人でも踏み留まる者がいれば、奇襲の時間を稼ぐくらいはできるでしょう。
賊も傭兵も死んでくれれば面倒が無くて良いのですが、今後の風評を鑑みて、僕が自ら手にかけることはしません」
…………逃走を防ぐための報酬云々はまだいい。いや、それさえも驚いてはいる。ラーナルクが傭兵を率いたことは無いはずなのだ。前々からあらゆる事態を想定していたのか、今、考えたのか。どちらにせよ見事である。加点一。
問題は最後だ。味方でさえ、金払いを惜しんで死んでくれれば御の字とは。しかも始末しない理由は、外聞が悪いから、ときてる。一応、私でも報酬くらいは払うぞ。盗賊連中は十三の子供にどういう教育をしているのか。まぁいい。今は子の成長を喜んでおこう。頭が回って悪い、ということもないのだし。私は我が子が清廉潔白であろうが腹黒であろうが構わん。が、この件が終わったら、盗賊連中と話合いの席を設けるとしよう。場合によってはクラブが必要になるかもしれん。
話終わったラーナルクへ、眠るよう勧める。夜番は、通常どおり交代で務めることになった。今回限りなら、睡眠の必要性が薄い私が一晩中起きていても良いのだが、これは試験である。ラーナルクが今晩、警戒しつつ休息をとれるのか。翌日、万全ではない状態でも問題なく動けるのか。そのあたりが見たいからだ。
さて、明日はどうなるやら。私は、ラーナルクが戦力にならずとも失望などしないと断言できるが、それではあれ自身が己を許せなくなるだろう。かと言って、未熟な愛息を危険地帯に連れていき、死なれでもすれば私が亡者になりかねない。試しに手心を加えることはできん。できんが……あれにとって良い結果になってほしいと、今は地平線の遥か下に沈んでいるであろう太陽に祈りを捧げる。姿の見えぬ太陽は何も応えてはくれないが、代わりに火の中の薪がパチリと爆ぜた。
少し短め(8700字強)ですが、一度区切ります。