DARK SOULS → SKYRIM でまったり()スローライフ() 作:佐伯 裕一
日はまだ高いが、天幕の中で一人時間を持て余す。
この天幕で明朝まで休み、その後、日没までにリフテンへと移動する予定だ。
村との交渉の結果、村には天幕以外にも食事を用意してもらえることになった。当然、それなりの対価を払ったが。
その際、対価については私も折半して渡そうとしたのだが、ブリニョルフが「ペンダントの件では十分譲歩してもらっている。これ以上は俺の矜持に関わる。男と思ってくれるなら、それ以上は野暮ってもんだぜ?」などと気障に決めるものだから、私は手を引くしかなかった。
残りの交渉についても、彼に丸投げとなってしまった。申し訳なく思う。
空き家が無いわけではなかったが、「天幕のほうが夜間に襲撃を受けた場合、早く
なるほど、相手は懐の温かい旅人二人。襲って一時金を得ようと魔が差すこともあるだろう。
案外、彼が実際に体験したことなのかもしれない。
村に到着して少し経ってから、彼の勧めで樵の真似事をさせられた。
村人達は大いに盛り上がり、ついでとばかりに、薪割りと製材も手伝わされた。元々の目的であるという示威行為になったのかは全くの不明だ。
……これ、おそらくだが襲撃を心配する必要は無いのではなかろうか? 体良く労働力として利用されただけな気もする。
用心に
村は食うも困って殺伐としている、などという状況とは真逆であった。リフテンという大きな町から遠くない立地もあるのだという。
明日は今日よりきっと良くなる。そう信じている一団だ。見ていて気分が良かった。……と同時に、若干の腹立たしくを覚えた。我ながら狭量なことだ。
もし「仮にそれすらも演技で、全て村がこちらを油断させ罠にはめるため仕組んだことだと言うのなら」、そのときは彼と二人、存分に
…………そう、彼だ。ブリニョルフだ。
今の私は、大変、彼と顔を合わせづらい心境にある。先程までの私は、言葉を交わしても視線は合わさないようにしていた。
対象には気付かれなかったものの、村へ到着の際、私は村人に弓を引いていた。反射的な行動だった。
ブリニョルフはそんな私を見て一瞬驚愕の表情を見せ、すぐに落ち着きを取り戻してから私に声をかけた。
私は彼の態度と対象の雰囲気から、化け物の類ではないと判断し、弓を下ろした。
下ろしたが、やはりすぐには納得できなかった。
あえて言おう。「だって人の体の上に猫の頭が乗ってたら誰だって驚くだろう?」と。
人の体と異形の体を併せ持った存在は知っている(厳密には『人』の祖である小人とは無関係であるため便宜上の話だが、今は置いておく)。
しかし彼女等は禁忌に触れた結果として、そのような業を背負うことになったのだ。
美しい女性の体と、蟲と、木と。
最も業が深い彼らの母君は、大樹の化け物と化していた。そしてその本体は、大型犬程もある醜悪な芋虫だった。
もはや元が人の形を成していたなどと信じられる者は、それこそ家族である『イザリス』の者たちだけであろう。
また、絵画世界において『鴉人』を目にしたが、彼らは元人であろうが既に異形と化していた。
あの猫人(カジートと言う種だそうだ)がその類だと思い違いをしてしまったとしても、私の経験を踏まえれば致し方無いことだと理解していただけるだろう。
自らの鎮静を図り、言い訳を重ねている私だが……今度ばかりは
ブリニョルフの反応から察するに、件の猫人はこの大陸に当然居るものとして存在しているらしい。
そしておそらくだが、大陸レベルでそれなら、他の大陸、つまり世界に広くその存在が認知され、少なくとも話の上にくらいは挙がるのだろう。
それに対して私が見せた反応はどうだろうか。「そんなものはまるで知らない」と全力で主張してしまった。
これがやらかしでなく、何がやらかしであろうか。
いやだが待て。一応まだ言い訳はある。
私は巡礼者となる折、他の者と違い完全無欠の一般市民であったのだ。
それが寝物語に聞く神へ挑む旅をしろと言われる。気違い沙汰だ、イカれ狂人の戯言だと思った。
しかし本気で実行に移すとなれば、自身の思考も肉体も、文字通り私の全部を更なる狂気で塗り潰し、順応していくしかない。
身を守るためには、一に用心、二に用心、五も用心と心身に刻んだ。刻まざるを得なかったのだ。ちなみに三は「推定有罪」で四は「殺られる前に殺れ」だ。そのため、墳墓で動く死者共を相手取った後にも弓を構えて警戒した。結果としてブリニョルフが物陰に潜んでいたわけなので、私としては自分の行動に正当性を主張する。
そして今回も考えるより先に身体が覚えた動きをまっとうし ──── 馬脚を現したというわけだ。我ながら笑うしかない。
今まで何のために頭を使って会話を繰り広げてきたと思っているのだ。
私は巡礼者で灰だぞ? 数百年どころか数千年、下手をすればもっと長い、いや永い、悠久の時を文明社会と隔絶されて久しいのだ。
それが何を間違ったか、この地に来て早々に知恵者らしき人物と行動を伴にしている。これはちょっとした精神的負荷を覚えるものである。
ブリニョルフ自身が好ましい人物であったために、幾ばくかは緩和され、どうにか取り繕えているだけだ。
あぁ、やはり彼と顔を合わせるのは気が重い。年頃の乙女でもあるまいに。
だが日に二度のやらかしはなぁ……。
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ブリニョルフが村長と諸事交渉を終え、宅を出る。
明朝までの寝床と食事、それとリフテンまでの食料をいくらか融通してもらった。
村長宅に空き部屋はあったが、
つい今日、絶大な開きを見せた彼我の戦力差を鑑みるに、
それに天幕を希望することで、旅慣れている、それほど裕福でもない、と印象付けられれば、より危険は減る。
男自身も、「嫌だ俺はベッドでしか眠れない」と駄々をこねるお坊ちゃん育ちでなかったための選択だ。そんなものを見せられては少々幻滅してしまうが。
ブリニョルフは未来の協力者の心象を僅かにでも良くしておこうと、細々した配慮を重ねていた。
そして思い出したように「彼にも一仕事頼んだことだし」と笑う。
予想では村人達は恐れ慄き、自分たちは腫れ物のように扱われると考えていた。
それがどうだろうか。やんややんやと持ち上げられ、男は随分と便利使いに奔走させられている。
男の冗談じみた力を知る者としては、些か滑稽であった。そこいらの力自慢とはわけが違うというのに。
というか、その「力」を知る者としては男が気分を害さないかと慌てたものだが、男は困惑しながらも、気の所為でなければ少し楽しそうだった。
気の良い男である。
──── そう、現在最大の問題は渦中の男なのだ。
「常識がない」どころの話ではない。
『タムリエル』の外。いや諸々鑑みれば、更に遠く、全く別の世界から来たと言われても納得できる。
見慣れない意匠の身なり。見たことの無い魔法。明らかにワケありだろう様子。そして欠落した常識。
リフテンも五大都市基準ではやや閉鎖的ではある。交通の便が悪いためだ。
そしてブリニョルフ自身は『スカイリム』中を股にかけて活動する盗賊である。
故に、他の開放的な町を見て、地域差というものが生じるのは十分理解できる。
それらを踏まえて極論として仮説立てるなら、「酷く閉鎖的な土地で、半ば軟禁状態のまま偏った英才教育を受け、常識を欠いたま『タロス』の如き戦士となった」という筋書きは思いつく。
絶対にあり得ないとは言えない。この世は不思議であふれている。
しかし神々が創造したもうた『ムンダス』、もしくはこの星『ニルン』の外から来たという
墳墓から慌ただしく落ち着かなかったために、日の高い内に休息場所を確保し、男とじっくり話をしようと考えていた。
そしてリフテンの自宅で男の最終的な見極めを行い、うまくことが運べば、ギルドに連れて行って皆に紹介しようとも。
その皮算用の崩れた感触が、ブリニョルフの胃の辺りを締め付けていた。
幸いなのは、男が「おそらく」善人で、「おそらく」こちらへ好意的であるということ。……不確定要素が大である。
まぁ何にせよ話をしてみなければ始まらないと、村長から渡された軽食を持って天幕に向かった。
「兄弟、いるな? 村長が君の献身的な働きに感動して、供物を用意してくれたぞ。いやぁ、善行は積むものだな。夕餉までのつなぎにして欲しいとのことで…………君はよくよく俺を驚かせるのが好きだな? 頭を上げてくれ」
「いや
ブリニョルフが天幕へ入ると、男が大きな身体を小さく縮めて座り、頭を下げていた。それでは話がしづらいため、楽にしてほしいと言っても聞かない。どうしたものか。
……絶対的強者が恐縮している。いっそ少しつついて見るか?
良い方向へ転べばいいのだが。
「ならそのまま聞いてくれ。兄弟、今から俺の思っていることを話す。デカイ独り言だとでも思ってくれ。否定も肯定もしてくれなくていい。その上で、兄弟がどう思うか、どうしたいかを教えてほしい」
男はブリニョルフの言葉を、姿勢を変えないまま、聞いている。
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天幕へ近づいてくる足音が聞こえる。これはブリニョルフのものだ。
浮かんだ思いは「どうしよう」だ。堂々としていればいい、と戦士たる私が脳内で叫ぶ。いや、まずは苦労をかけたことを詫びるべきだ、と市民である私が脳内で叫ぶ。
議論の猶予は無く、それでも二派閥が激しく争う内に天幕が開かれ……『私』による強行採決によりまずは頭を下げた姿勢で固まってみる。
やってから思った。この姿勢は目線を合わせないのに丁度良いのではないだろうか。やらかしによる羞恥心が晴れるか誤魔化されるまで、このままでいよう。
薪の王も卑屈になったものだ。同じ境遇に至ったお歴々は泣いてもいいぞ。
「兄弟、いるな? 村長が君の献身的な働きに感動して、供物を用意してくれたぞ。いやぁ、善行は積むものだな。夕餉までのつなぎにして欲しいとのことで…………君はよくよく俺を驚かせるのが好きだな? 頭を上げてくれ」
供物……匂いからして食べ物だろうか。記憶にある最後に口にした物は友と乾杯した酒であり、他で言えば食事に分類して良いものか迷う『エストスープ』だ(勿論『緑化草』などは除く。あれは一種の強壮剤であり、断じて食べ物ではない)。故に軽食は欲しい。
しかし今だに羞恥心が我が内心の最も上位に居座っているため、顔を上げづらい。何か話そうかとも思うが、言葉が口をついて出ない。
「ならそのまま聞いてくれ。兄弟、今から俺の思っていることを話す。デカイ独り言だとでも思ってくれ。否定も肯定もしてくれなくていい。その上で、兄弟がどう思うか、どうしたいかを教えてほしい」
なんだろうか。混乱した頭では、何を言われるのか
「まず、兄弟は良い奴だ。会ったばかりなのはわかっているが、俺はそう確信している。
俺としては、兄弟とは長く続く友人関係を築きたい。
しかし兄弟は遠く、本当に遠くから来た。
それこそ、広い意味でこのあたり一帯を指すスカイリムなんぞではなく、大陸を指すタムリエルですらなく、星を意味するニルンなんて範囲ですら当てはまらない。
……人が球体である星の上に生活しているのは知っているか? あぁ、うん、取り敢えずそこは置いておこう。昔の上司が色々とそういうことに詳しかったんだ。
とにかくとんでもなく遠くから来た異邦人であることは間違いないと思っている。
ここからが本題だ。冗談みたいな腕っぷしや魔法を持ってはいても、異邦人たる兄弟を町まで案内して、さぁ『人里だぞ自由にしてくれ』と別れたところで、兄弟はうまくやっていく自信があるかい?
大変失礼なのを承知で申し上げるが、兄弟が何かしら行動した結果、意図せず人々を驚かせてしまい騒動になる、そんな未来は想像できないかな?
そこでだ、暫くのあいだ、俺に兄弟の生活の世話をさせてくれないか? その間にこのあたりのことを俺が教えよう。
そして兄弟がもう十分だと思えば、何処かへ旅立ってもいいし、個人的な望みを交えれば俺の仕事を手伝ってほしいとも考えている。
墳墓からこっち、取り敢えず頭に浮かぶのはこんなところだな」
色々と気になる単語が聞こえた。五大都市というだけあって、おそらくは都市国家のようなものが栄えているのだろう。それで、更にそれらを包括する地域をスカイリム。
そしてスカイリムが属する大陸がタムリエル。その大陸がある……星? 些か理解が及ばないが、ニルンだったか。うん、いくら記憶の整理棚を引っ掻き回しても出てこない単語だらけだ。
これは町に到着しても、すぐさま一人で生計を立てていくのは困難だろう。
むしろ元いた世界でさえ、見知らぬ土地では難しい話だ。
彼のいうとおり、私にはこの世界の一般常識が全く足りていない。
様々な常識が異なる世界においてそれが可能かなど、考えるまでもなく否である。
というか遠い異邦人であるとは流石にバレたか。二度のやらかしを見逃してはくれなかったらしい。
勿論、打算はあるのだろう。「仕事を手伝ってほしい」と言った。臭わせていた話の全部かはわからないが、おそらくは間違いあるまい。
盗賊稼業の彼が、自分に世間一般の常識を教え、その間の生活の世話をし、そして彼の後ろめたい仕事を手伝う。
「何処かへ旅立ってもいい」云々は建前だな。……いや、そうとも言えないか?
自惚れでなければ、私を手元に置いていることそのものが利益を生む、もしくは私が右も左も分からないあいだに外堀を埋めておく。
やりようは如何様にもあるはずだ。
…………覚悟していたより、ずっと甘い。
厄介者だとわかったうえでの親切心。少し、心が温かい。自分は今、新しい友をみつけようとしているのだろうか。
否やは無い。あぁ無いとも。これで裏切られたとしたら、それもまた一興。
いや、自分は、このブリニョルフという男になら騙されてもいいとすら考えてはいないか?
用心は何処へ行った? 知らぬ。今はこの男と共に居たい。
「いいのか? 随分と私に都合がいいと思う」
「提案している俺に尋ね返すのは、建設的な会話とは言えないな。
大事な質問が無いのなら、答えは二択なのさ。
『失せやがれ糞野郎』か『世話になる、兄弟』だ。さぁ、君はどちらを選ぶ?」
私は顔を上げて、得意そうな顔をしている彼の手をとった。
それから私達は、軽食を取りながら様々な話をした。この世界の創世の伝説。大陸のこと。人種のこと。スカイリムのこと。つい最近まで数年かけて続いた『エルフ』との大戦争と『白金協定』と呼ばれる終戦協定のこと。
話すことは多かったため、ブリニョルフが夕餉を村長宅まで取りに行った。
村長からは「是非一緒に」と誘われたらしいが、「連れが人見知りだ」と言って断ったそうだ。
昼間、人を村の玩具にさせておいてよく言うものだ。面の皮の厚さでは敵わない。
夕餉を食べながらも話は続いた。そしてブリニョルフが拠点とするリフテンのことに話が及ぶと、やや歯切れの悪いというか、迂遠な物言いで話すことが増えた。
盗賊である彼が拠点を置いているというのだ。他にも協力者や支援体制がある可能性は高い。
今更感はあるが、まだ自らの稼業を明かしていない彼にとって、慎重に話すべき話題なのだろう。
私なりに、このあたりの私が盗賊稼業をどう捉えているかについては、早急に解消しておいたほうがお互いのためだと考えた。
とはいえ直接切り込むのも野暮だと感じ、件の友人の話をしてみることにした。
「少々話は変わるんだがな、ブリニョルフ、君を見ていて一人の友人を思い出した。唐突だと思うが聞いてくれ。
名はグレイラット。界隈では知られた盗賊らしく、本人もそれを憚ることなく公言していた。義賊、という奴だそうだ。
出会ったときから陽気で、飄々としていて、好漢だったよ。
ちなみに初対面は牢屋の格子を隔ててだ。
なかなか無茶をする男でな。端のほうとはいえ、覇権国家の城に忍び込んで、目ぼしい物を盗もうとしたらしい。似たようなことは初めてではないようだったな。
彼を牢から出したのはもののついでといった側面が強かったので貸し借りは考えていなかったのだが、彼のほうは違うようだった。
彼に言われた野暮用を一件済ませたこともあってか、私の力になりたいと言い、危険な場所に赴いては、私に役立つ品々を持ち帰ってくれた。
その彼が、件の城の本丸へ盗みに行くと言い出した。
私は一度は止めた。すると彼は『優しいな』と言った。
しかし彼はこうも言った。『危険なのはわかっている。だがあんたの友達のつもりだから、行かせてほしい』と。
最期になる覚悟はしていただろう。それでも、私の役に立ちたいと。
結果、彼は私の永遠の友となった。寂しかったが、彼は彼の矜持を貫き、私との友情に殉じた。それでいいと思った。悲しむべきではないと、己に言い聞かせた。
……そんな男が、居たんだ」
「……その話をするってことはやはり、俺が盗みを生業にする人間だと勘付いていたな? そして兄弟は、そういった連中を別段嫌っちゃあいない」
私はどちらも肯定した。
「まいったよ。君が今日、ここまで腹を割ってくれるとは思ってなかった。
君は本当に俺を驚かせるのがうまい。
今日は感じ取っていた程度の人間性を色々と確認して、それから、今みたいな話をリフテンの俺の自宅で腰を据えてしようと思っていたところだ。予定が狂ってしまった。
勿論、物事が順調に進んで悪い、ということは基本的に少ないと思っているがね。
なら、これから話すことこそが本題と言っていい。勿論、これもリフテンで話すつもりだった内容さ。誰かさんのおかげで予定は大幅に前倒しだ。
……察するとおり、俺は盗賊だ。それもスカイリム随一の盗賊ギルドの一員だ。
それが最近、幹部の一人がギルドマスターを暗殺なんかしたもんだから、もうてんやわんやさ。ほら、さっき話した、小難しいことに詳しい昔の上司ってのがそのマスターだ。ガルスと言った。
暗殺騒動が元で、今のギルドはめちゃくちゃだ。大多数は逃亡してしまった。
一応、俺に近い仲間達のあいだでは新しいギルドマスターが立てられたんだが、他にも何人か正統後継者に名乗りを上げている。要するに御家騒動って奴だな。
そんなことをしている場合じゃないのは、ケツの青い新米だってわかりそうなものなのに。
団結すべきときでも、あの欲の皮が突っ張った糞野郎どもは聞く耳を持たない。
新しく組織を立ち上げるより、元仲間と揉めてでもスカイリム全土に影響力を持った盗賊ギルドを我が物にしたい。
あるいは、巨大な影響力を保持した『出来物ガルスの後継』、そう言った肩書が欲しいのかもしれない。
客観的に見ていればわかるよ。『これはもう駄目だ』ってな。
一応、リフテンの実力者は俺達に正統性があると考え、支援を約束してくれている。尤も、他の連中にも同じことを言って、勝ち馬に乗る気でいるんだろうけどな。
そして支援があろうが無かろうが、ギルドの後継がどの派閥に決まろうが、盗賊ギルドの衰退は避けられない。
業突く張り共が欲しがっている魅力的な
ブリニョルフは皮肉気に笑うが、その目は寂寥感にあふれていた。
きっとそのガルスのことを好ましく思っていたのだろう。出来の良い兄を自慢するように話していた。
そしてそのガルス率いる巨大組織に属していたという誇りと喜びが崩れていくのを、ただ見ているしかない無力感と絶望感を味わっている。
「覚えているかい? 俺は『仕事を手伝ってほしい』と言った。それに対して君は『私に都合がいい』と言った。
実は全くそんなことはないのさ。
俺はギルドの衰退を止めたい。意地を張り合っている馬鹿共を始末したい。そのために兄弟、君の力を借りたいと思っている。
これは結構な難題だ。その難題に、君を巻き込もうとしている。
……自分で口にしたことだが、友情を謳いながら友人を面倒事に巻き込むなんてのは、それこそ友情に値しないんじゃないかと、思わないでもないんだ」
ギルドにまつわる憤懣は、ブリニョルフの中でずっと溜め込んでいたものなのだろう。
出口の見えない閉塞感。抗争をしかけてくる元同胞の無理解への苛立ち。自分の行動が本当に正しいのかという不安や迷い。
部外者である私が相手だからこそ、口が軽くなったのかもしれない。
愚痴を零し、弱音を吐き、知らず張っていた緊張の糸が少し緩んだのかもしれない。
心の防壁が脆くなり、彼は少し自信を失っているように思った。
だからこそ私は、胸の内を飾らずに伝えるべきだと思った。
「正直に言おう。私には『どうでもいい』。
いや、これでは誤解を生みそうだな。
まず君は私のことを『良い奴』だと言った。しかし私は君が
その上で言おう。私は君を
別に私としては、君が悪人でも構わないのだよ。
私は永く、殺し殺され奪い奪われる、それはそれは
その中で知り合った連中は、善人もいれば悪人もいた。不快な者もいれば、馬の合う者もいた。
だから、まぁ、つまりだ、君自身がどうだとかは私にとって関係無いのだ。
私は
堂々と友情を謳いながら、堂々と友人に面倒事を押し付けるといい。
きっとその
あぁ、あまりに度が過ぎる場合は鉄拳と槌を交えて
これはそのような話だよ」
ブリニョルフは目を伏せ、少し湿った空気を醸している。
しかし涙は見せず、顔を上げると強い視線を私へ向けて言った。
「ありがとう、
(※あくまで参考にさせていただくまでで、必ずしもアンケートの結果に沿うかはお約束できません) 文字数について質問です。拙作において一話あたりの平均が8000字強くらいらしいのですが、この文字数が長いのか短いのか、読者の皆様がどうお感じになっているのか気になりまして。私としては深く考えず、キリのいいところまで、くらいの意識だったのですが。一つ、ご協力よろしくお願いいたします。
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最低文字数(1000)で十分。
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~5000くらいはいるくない?
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今よりちょい短めで(~8000弱)
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Don't worry.
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もっと長くしろよ読み応えがねえだろハゲ