DARK SOULS → SKYRIM でまったり()スローライフ() 作:佐伯 裕一
また、麦茶太郎様、誤字報告ありがとうございます。大変助かりました。
前回の粗筋。
盗賊ギルド外部協力者、銀細工師イーザイルが大活躍。
同じく協力者の隈取錬金術師ボテラも協力。
イーザイルは最後にポカをやらかして、ちょっと叱られた。
※活報に、不死人の身体についての私なりの解釈? みたいなものを載せました。
私の父は銀鉱山を経営していた。
今になって思えば、それなりに裕福で暮らしに余裕があったおかげか、両親の喧嘩を見るのはあまり無いことだった。
父は、その恵まれた生活を鉱夫達にも分け与えたいと考え、給金や待遇の面で便宜を図っていた。
辛い肉体労働の現場であるはずなのに、どこか牧歌的な空気の流れる、優しい場所だった。
カン。カン。カン。鉱山から絶えず聞こえる鶴嘴が鉱脈を叩く音と、鉱夫達の歌声と、表で洗い物や煮炊きをしている女達。それが私の原風景。私は、あの故郷が大好きだった。
幼い私は、そんな暮らしがずっと続くと信じていた。
私が十になるかならないかの頃から、父が難しい顔をすることが増えた。
シルバー・ブラッド家による嫌がらせが続いていたのだ、とあとから知った。家族に心配をかけまいとする父のことだ。私が気付くより、もっと前から被害に遭っていてもおかしくはない。
母は首長様に頼ったほうがいいのではないかと父に提案したが、父はあまりよい顔をしなかった。フォースウォーンにアンダーストーン砦を奪われた若い首長がどの程度頼りになるのか、はかりかねていたらしい。
そのうえ、彼の家はマルカルスにて多大な影響力を保持しており、それは年々大きくなっている。首長のお膝元で大きな顔をしている厚顔な者が相手なのだ。首長の手腕に期待するだけ無駄だと考える父の思いは、察するに余りある。
結局、父は有効な手段を打てないまま、経営権を奪われることになった。
いよいよ苦しくなった際には首長府を頼ったようだが、イグマンド首長が彼の家に対して有効な手段を取ることはできなかった。「何が首長か!」と父が初めて怒鳴り散らすところを見たが、母も私も同じ思いであった。
首長側としては「もっと早くに訴え出てくれれば」と言い訳するかもしれないが、おそらく結果は変わらなかっただろう。今の彼の家の権勢を見れば一目瞭然というやつだ。
父がなまじ抵抗したことが気に障ったのか、他の商敵に対しての見せしめの意味があったのか。父は、というか我が家は、鉱山の権利の他にも、金目の物は一切合切奪われた。
シルバー・ブラッド家に雇われた人足や傭兵達が、家から家財道具や思い出の品を無造作に荷車へ積み込んでいく。父はシルバー・ブラッドの傭兵に縋り付き、私は母と抱き合いながら、その光景をただ見ていた。
父は改めて首長の下へ訴え、その足で彼の家へ直談判に赴いた。首長はやはりあてにならなかったのだろう。だが、それは極めて愚かな選択だった。それきり、父は返って来なかった。
母が現実を受け止めるのは予想外に早く、新しい男を作ってリーチから出ようとした。その際、男は私の義父になることはなく、寧ろ私を邪魔者扱いしたために、母は私を捨てた。母も生きるのに必死だったのだろうが、母の事情と、当時の私が味わった恨みと絶望とは関係無い話だった。
孤児となった私は鉱夫の家族達に育てられたが、シルバー・ブラッド家の鉱山経営は父の時代より苛烈であったようで、生活は苦しくなった。
私はある程度働ける歳になったあたりで鉱夫達に礼を告げ、自分の食い扶持を稼ぐためにマルカルスの宿屋の女給に収まった。こうして、私の家族は見事な一家離散を果たしたのである。
この件で私が思ったのは二つ。力の強い者には最初から逆らわないことと、シルバー・ブラッド家への恨みを忘れないということ。矛盾するようだが、私の胸中でそれはいがみ合うことなく同居した。
少なくとも、家から何もかもが運び出されているあの光景を忘れられないうちは、この怨讐が薄れることもないだろう。
そうして数年が経ち、自分で宿屋『シルバーブラッド』の看板娘だと自負するようになった頃、マルカルスに嵐がやってきた。
嵐は人の形をしていて、始めはとても大人しかった。せいぜい酔客と殴り合いの決闘をするくらいの、ごく普通な傭兵の男。
だから私も、いつもどおり世辞混じりに声をかけた。「マルカルスのハンサムさん」と。贔屓にしてくれれば、私の懐に入る金貨も増える。その程度の気持ちだった。
ところがその男は、まるで私の視線を遮っては悪いとでも考えたのか、身をかがめたり「誰だ『ハンサムさん』は?」と言わんばかりにきょろきょろ見渡したりしていた。
軟派な男がおどけてする仕草とも違う。多分、これまで一度も容姿を褒められたことが無いせいで、本心から決めてかかっているような……。
今どきこんな純朴な男がいるのか、と気がつけば笑いのつぼにはまってしまい、大変だった。
私は積極的に男へ
男の体はよく鍛え上げられているように見えたが、男女のあれこれには、存外、初心なのか。私は、半ば押しかける形で男の寝室まで付き添った。
だが、期待していた展開にはならなかった。
男は言い訳のように話した。愛した女性には先立たれた。つい最近、溺愛していた息子とも別れを経験した、と。
昔の女の話のときは遠い目をしていた。きっと、それなりに時間が癒やしてくれているはずだ。だが息子のほうは違った。私の、様々な人間を見てきた目が節穴でなければ、愛息との別れはつい最近の話のはずだ。
元々私から粉をかけたところに、そんな弱った話を聞かされてはたまらない。自分の女を使って慰めてやりたいと思った。
それでも、やはり私の望む展開にはならなかった。股座は反応していたようなので、私に魅力が無いというわけでもないのだろう。だが、今は駄目だ、という。
きっと、その愛息を通して先立たれた妻を思い出しているのだろう。そうして、他の女を頭に浮かべながら私を抱くのは不誠実だ、とでも考えたようだ。
不器用な男だと思った。だからこそ余計に、ここで引き下がってはいけないと思った。けれど無理に押しても、男は私を遠ざけるだけだろう。
そこで折衷案として、別料金は受け取らず、同衾だけすることに落ち着いた。手を出さないなら、それも良し。先立った女に不義理を働いたことにはならない。手を出したくなったら、それも良し。心と体が癒やしを求めているということだ。それを駄目だという女なら、私が奪い取ってやる。
男は終始、私を邪険にしてはいなかったので、最終的には「女の恥になる」と言えば納得してくれた。押しに弱い男である。
私は、男の腕の中に収まり、体を預けた。乾いた薪を焚べた篝火のような、優しい匂いがした。
男は片腕で抱いた私に、寝物語の代わりだとマルカルスの話をせがんだ。町の成り立ちでも、どんな人間が住んでいるのかでも、最近耳にした噂でも、何でもいいと。
そういうことなら、マルカルス中探したって私以上の適任者はいないだろう。宿屋で酔客から話を聞き、首長府からの触れを目にする機会だってあるのだ。
流石にアンダーストーン砦の奥深くにある首長府のことまではわからないけれど、シルバー・ブラッド家
男は私のする話を何でも興味深そうに聞いた。男は存外聞き上手で、初日なんて朝になって鳥の鳴き声が聞こえるまで話し続けてしまった。おかげで男は絶倫だと噂されたし、私は私で店主クレップルから生暖かい目で労られた。鬱陶しい。
男の興味は幼子のように尽きず、それは愛息を失った悲しみからの逃避のようにも思えた。けれど眠らずに無事でいる人間なんているはずがない。二日目からは適当なところで切り上げて、男を寝かしつけるようにした。
このときにはもう、私が男を守ってやらなくては、という気分になっていた。どんな屈強な戦士であっても、休息は必要だ。出会って二日目。客と商売女の関係であるはずなのに、随分と絆されたものだと我ながら思った。
あるとき、男がシルバー・ブラッド家について尋ねてきた。町での評判はどうなのか。私個人はどう思っているか。仕事を受けるなら、やはり彼の家を頼るべきか。
傭兵としての稼ぎや名声を考えれば、私はその問に頷くべきだったのだと思う。それでも、どうしても、男が連中に使われているところは見たくなかった。
だから、「あまり近づかないほうがいいんじゃないかしら。大きな声では言えないけれど、良い噂も聞かないし」と忠告の形を取った。男は少し考えるように間を置き、わかった、と答えてくれた。
男がその後、連中の仕事を請け負ったとは、情報通を自認する私の耳にも届いていない。
暫くして。私が一人の客に独占されていることに苦情が入った。
そうはいっても、男は常にマルカルスにいるわけではない。傭兵らしく、町の外へ度々稼ぎに出かけている。だから独占なんて言い草も、私を買えない甲斐性無し共の言いがかりに過ぎないのだか……。
男はそれに対し、ずしりと重い金貨袋でクレップルを始めとした店中の男共を黙らせた。「私がいるあいだ、彼女は好きにさせてもらう。足りないことはないはずだな?」。正直、少し痺れたし、私の名も上がった。
とはいえクレップルは、せめて酌にくらいは回らないと、男の身が危なくなる、と囁いた。
それは大袈裟とも言えないし、男も「君の立場が悪くなるようなことは避けたい」と言って、ベッドで同衾するとき以外は男へ付きっきりではなく、以前のように接客にも精を出すようになった。
……そんな気遣いができるのなら、そろそろ手を出してくれてもいいのに。こっちだって
私がそんな不満を抱え始めた頃、マルカルスに事件が起きた。嵐が、人の皮を破り捨てたのだ。
あの忌々しいシルバー・ブラッド家に買収され、狗に成り下がっていた市警隊が何人か、宿屋近くの広場で殺されたらしい。
早朝、店先の掃除のため出たときには、もう死体は無かった。ただ、夥しい、どころか大きな水袋を破裂させたような血痕は複数残っており、大量殺人が現実のことであるのだと知らせていた。
私はその場で戻してしまった。人生でそんな衝撃的な場面を目撃したのは初めてだったのだし、月の物以上の出血など知らない一般市民なのだ。仕方ないだろう。
ただ、四つん這いになり、口元を抑えたとき、違和感を覚えた。胃の中身を戻して苦しいはずなのに、私の手が触れた口角は、嗤うように釣り上がっていたのだ。どうやら、あまりに衝撃的だったせいで、私はおかしくなってしまったらしい。
次いで頭に浮かんだのは、男のことだ。こんな事件は前代未聞である。巻き込まれていなければいいのだが……。
と、そんな私の心配を余所に、男はいつもどおりふらりと宿に帰って来た。安心するやら憎たらしいやらで、理不尽だとわかっていてもつい男に当たってしまった。脇のあたりを
私と男の平和な日常が戻ったこととは裏腹に、マルカルスの事件はその後、何日も続いた。
事件が続くあいだ、男は寝入ったと見せかけてすぐに外出し、皆が起き出す前にベッドへ戻るようになった。男が事件に関わっているのは、おそらくトロールだって理解できるはずだ。
それでも敢えて私にもわかる形で事件を起こしたことが、堪らなく嬉しかった。そして男は耳元で甘く囁くのだ。「事件があったとき、私は君と過ごしていたことにしてほしい」と。今更過ぎるし、私は危険な匂いに当てられてまいっていた。
更に事件が続いた頃、最近は市警隊を見かけなくて困る、と男が言った。
他の町の人間が聞けば、「恐ろしい事件が起きているのに、町の安全を守る市警隊が見当たらないとは、一体何事なのか!?」という意味に聞こえるだろう。
しかし今のマルカルスでそんなことを言うのは、一連の下手人以外にいはいないのではなかろうか。私の口角は、腰抜けの連中を思い描いて、知らずうちにまた釣り上がっていた。
それを男に見られたとき、冷水を浴びたように焦った。しかし男は、悍ましいと遠ざけるでもなく、「市警隊か彼の家に恨みがあるのか?」と訪ねてきた。私は意を決して、身の上話をした。
男は言った。「そういうことなら、私に協力すれば、きっと、もっと、この催しを楽しめるぞ」と。
私は男に、市警隊の隊舎や自宅、友人宅を洗いざらい話した。
そうして私が教えた住所に隠れ潜んでいた市警隊が殺される度、男の言うとおり、脳髄がぞくぞくするような悦びを味わった。
ああ、お父さんごめんなさい。スヴェンは悪い子になってしまいました。でも仕方ないよね。お父さんをいじめたシルバー・ブラッド家に尻尾を振る連中なんて、みんな死んじゃえばいいんだもんね。
男との共犯関係が続き、犯行が何度か続いたとき、下腹部のあまりの熱に耐えかねて男を襲った。なんのかんのと言っていたが、耳には入らなかった。それでもしっかり愛してくれたのだから、やはりいい男だと思う。反面、お父さんごめんなさい。スヴェンはやっぱり悪い子です。
男と関係を持った日に聞いたのだが、男には他にも三人の協力者がいるのだという。それなら私の協力は必要なかったのではないだろうか。男の優しさに甘えて、一人、空回っていただけなのではないだろうか、と不安になった。
しかし表情を暗くした私に、男は「初動こそ最も肝心なのだ」と言った。他の三人も確かな伝手を持ってはいるが、軽々に動くのは難しいのだという。だから、私の密告はとても助かったのだと。
嘘か本当かはわからない。男は人を騙すのが得意だ。初めは純朴な傭兵だと思ったのに、本性は形が人なだけの嵐だったのだ。もしかしたらデイドラかもしれない。それでもいい。嘘でも本当でも、優しい言葉をかけてくれる男が欲しくて、私はまた覆い被さった。
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私には無二の友がいる。あまり自分のことを語らない男だ、しかし、その並外れたドゥーマー文化への興味は、私と遜色が無いと言える稀有な人物だ。
研究に興味は不可欠だ。興味無くして、発見は有り得ない。
いつだったかは、私がドワーフセンチュリオンの動力コアの働きを見たいと言えば、ファルメルを蹴散らし、友へ突進してくるセンチュリオンを受け止め、私の模写が完成するまで抑え込んでくれていた。これはドゥーマー文化への愛にも似た興味関心がなければ為せぬ業であろう。やはり、我が無二の友と呼ぶに相応しい。
一つ欠点を上げるとするならば、多少飽きっぽいところがあることか。
一つの実験を始めれば、少しずつ条件を変えて何度も試行する必要がある。しかし彼は途中で飽き、切り上げようとしてしまうのだ。これはいけない。
だが同時に、私が一つの実験にかかりきりになっていると、他の物を指して新しい実験を提案することがよくある。飽き性ではあるが、それは次々と興味が移ってしまうが故の弊害なのだろう。私は彼のその悪癖を、どこか好ましく思っている。
その友が、あるとき市警隊の名簿や巡回順路を調べてほしい、と依頼してきた。
そんなつまらないものをどうするのかと思ったが、調べて彼に教えるだけで、またドゥーマー遺跡行へ共に出かけてくれるというではないか。ならば是非もなし。
研究に興味は必要であるが、逆に言えば興味のわかない雑事は大概の場合不必要かつ無意味なのだ。少なくとも私にとってはそうだ。だからそのあたりの些事はどうでもいい。
私はその日のうちに市警隊の責任者を訪ね、魔術の行使も厭わない意気で以て洗いざらい吐かせた。勿論、翌日からは実り多き探索行だ。本当に、得難い友である。
そういえば彼は、私と同じく盗賊ギルドの外部協力者で、なんと魂石充填を行っている当人だというではないか。
彼のおかげでどれだけ研究が捗ったか。何度も礼を言う私に彼は、ギルド以上に、私との友誼を深めてくれたら嬉しい、とだけはにかみながら言う。
水臭い! 我々は既に無二の友だというのに!
そもそも私がギルドの協力者に収まったのは、魂石欲しさからだ。彼が個人的な友人であるのならば、別にギルドとは縁を切っても構わんのだ。
しかし、それは彼自身に止められた。我々の友誼を疎んじたり、研究成果を盗み出そうとする輩がいるかもしれない。ギルドには味方だと思わせておいたほうが良い、と。尤もだ。危ないところであった。頼もしい友である。
ただ、いくら友の頼みであったとしても、ファルメル語で書かれた日記の翻訳依頼を渋ってしまったことは、許してほしい。
ファルメル。元はスノーエルフと呼ばれていた彼奴等の文化を知ることは、ドゥーマー文化への造詣を深めるために必要なのだ。大事な研究成果なのだ。
とはいえ、新たにドワーフセンチュリオン二体の稼働しているコアを直に触れる機会まで用意されては、流石に頷かざるを得ない。
ドゥーマー機械全般に言えることだが、あれらは魂石から発せられる魔力以外にも、蒸気機関の力を利用して稼働している。つまり熱が重要な要素なのだ。しかしコアは稼働が止むと、表面の赤い部分の材質に変化が見られてしまう。稼働したままのコアに触れて調査できたことは、望外の喜びと言って差し支えないだろう。
手? 彼の特異な回復呪文にかかれば欠損していても治るのだから、神経が全て焼き尽きるまでは許容範囲だろう。それ以上は単純に調査ができなくなるため、流石の私も自重くらいする。
あ、そういえばもうじきサルモールから司法高官が来るのだった。これは……、彼に伝えるべきだろうか。
伝えるべきだろうな。彼は私の話なら何でも興味深そうに聞いてくれる。きっとこれを種に、また探索行へ付き添ってくれるだろう。そのはずだ。彼がいなければできない調査や研究が山程あるのだ。我々の道は遥か遠く、しかし光り輝いているぞ、友よ!
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四人の協力者を得たおかげで、今のところ計画は順調だ。
憂さ晴らしを兼ねた日課により、シルバー・ブラッド家所縁の戦力を削り、同時にその支配が終わろうとしていることを町中に広めている。
協力者への礼は……。どうするかな。
カルセルモ師はまた探索行でいいだろう。イーザイルは利権かな。ボテラは……全く思いつかん。本人に聞くのが早そうだ。
スヴェンはなぁ。父親が持っていたという鉱山の権利をそのまま渡してしまおうか。女経営者というのも悪くはないだろう。
マダナックも、近いうちに約束を守らざるを得なくなる。フォースウォーン復権、というかマルカルス事件を今度こそ完璧な形で成し遂げたい、と話していたあの男のこと。私の怒りを買う下手な真似はしないだろう。
有り得るとすれば、『町の実権を首長と二分する』あたりを破り、首長を暗殺する、くらいか? 毒殺であれば病死に見えなくもない。
その場合は……、どうするかな。これも正直、考えてなかった。
現首長イグマンドの血縁者を探して据えるか? マルカルスに在住する者であれば、そのときは殺されているだろう。
なら他の都市から見繕うもの有りではなかろうか。各地の首長はバルグルーフのような成り上がり者を除けば、古くからその地位に就く一族であることが多い。
であるなら、他地方の都市の血を遡って行けば、どこかでマルカルスの血にも辿り着く公算は十分にある。私には、フォースウォーンのみにマルカルスを委ねる気など毛頭無いのだ。
まあ実際は、そもそもフォースウォーンを町の連中に認めさせることが難しいだろな。
マダナックはマルカルス事件の際、帝国にフォースウォーンの国を承認させようとしていたらしい。その前にウルフリックが私兵を率いてマダナックを打倒したため、潰えた話ではあるが。
この情勢下であれば、帝国及びスカイリムの弱体化を望むサルモールの思惑にも沿う。帝国に再度承認要求を出すのもいいかもしれん。
サルモールの尻を叩いて帝国に要求を呑ませることができれば、マダナック率いる勢力は小さくとも正式に国として認可される。その正当性を以てマルカルスの実権を握る。どうせサルモールは潰すのだ。その前に利用しておくのも一つの手。
……いや、これも微妙だな。そこまでやるとウルフリックは必ず腰を上げるだろうし、フォースウォーンが暴走する恐れもある。というか、どちらも起こる未来しか見えない。
ウルフリックは支持者拡大のためにもマルカルス事件解決を再現しようとするだろう。その場合、フォースウォーンは今度こそとばかりに気炎を上げる。
マダナックはまだわからんが、あのやたら好戦的かつ抑圧されてきた連中が賊ではなく正規の市民と軍人になったのなら、全面戦争以外有り得ない。
だが結果は見えている。完全な奇襲が成功したマルカルス事件でさえ、最終的には失敗したのだ。おそらく、当時はシルバー・ブラッド家が中からウルフリックに協力したのだろう。
今回は彼の一族の戦力を私が削いだとはいえ、フォースウォーンも数を減らしている。情勢がフォースウォーン有利になったわけではない。
それに、我々ウィンターホールドとしては、ウルフリックの影響力拡大は避けたい事態なのだ。大々的に動かれては困る。
やはり、マダナック率いるフォースウォーンにはリーチである程度好きにさせる代わりとして、その身は陰に潜めさせるしかないだろうな。
シルバー・ブラッド家が市警隊を知らぬ間に私物化していたように、フォースウォーンがマルカルス為政に浸透し、巣食う。それは努めて秘したままに。
顔の隈取りさえ落としてしまえば、案外、簡単に為せる気がする。マダナックには、そうして名より実を取ることで納得させよう。
しなかった場合は、私の日課の相手がフォースウォーンになるだけだ。市警隊に比べて面倒な相手だが、やってやれないことはない。何せこちらはいくら死んでも構わんのだ。負ける道理が無い。
その程度はあの男も理解しているだろうから、おそらく心配はないはずだ。そのためにも、奴の心を今一度折るのは必要条件だな。さてどうしたものか。
……そういえば、カルセルモ師が言っていたな。半月からひと月後にサルモールより司法高官が来るとかなんとか。
マダナックに実権を与えたあとならば、話がわかるかどうかで使い道があるかもしれない。しかしどの道、日課の最中に来られては面倒になりかねない。
半月以内にシルバー・ブラッド家を丸裸にし、本家の連中も始末できるよう、投げる数を増やすことにする。
気張っていこう。まだ見ぬ市警隊員が、私を待っているのだから!
オリ主にヒロインレースみたいなのは無いので、せいぜい現地妻くらいなもんです。