DARK SOULS → SKYRIM でまったり()スローライフ() 作:佐伯 裕一
前回の粗筋。
ラーナルクが盗賊ギルドへ到着して早速スケコマシた。
メルセルはブリニョルフの動きに気付いている模様。
マルカルスにおいて大いに働き、入れ替わるように町へ入った盗賊達に後始末を任せた私は、ウィンターホールドは相談役殿の屋敷を訪ねていた。
作戦中も度々帰還しては報告や相談をしてはいたものの、今回の私の働きについて、ブレックスがどう感じているのか気になったのだ。私個人としては大変満足しているが、『日課』など遊び(余裕の意である。本当だ)が無いでもないだけに、私とは違う認識を持っているのではないかと少々心配になったのだ。
「まずはお疲れさん。詳細も聞いてるが、しかしまた随分と好き勝手にやってくれたもんだな。俺の目算でも大概力業だったけれどよ。手前はその上を行くよな、良くも悪くも」
「すまん。大筋ではともかく、後処理を一党に丸投げしてしまう手際であったのは、詫びねばなるまい。折角仕事を任されたというのに、友の助け有りきでの働きになった。申し訳ない」
「フン。別にお説教ご講説垂れてやろうってんじゃねえよ。手前が派手に動いたおかげで、俺の計算以上にマルカルスを従属関係に置けた。その分、降って湧いた苦労は、手間賃ってなもんだ。悪かねえよ」
私としては少々後ろめたさもあった今回の一件ではあるが、相談役殿からすれば然程のことでもないのだろうか。
悪態をついてはいるものの、私にはわかる。これはかなり機嫌が良い。
友をそれほど上機嫌にするような良き戦果を上げた自覚は全くないのだが。
どちらかと言えば、市警隊相手に憂さ晴らしをして、小生意気なマダナックの心を折ることに愉悦を覚え……。私自身の楽しみのために遊び呆けていた覚えしかない。
勿論、当時からそのつもりだったわけではない。きちんと計画に必要なことだからと理屈だって考えもしていた。だが、やり終えてから思い返せば、計画を言い訳にブレックスの言う通り『好き勝手』にはしゃいだだけの気もしてくる。
い、いや。そんなはずは……。
自らを問い質し、自責と自罰の念に囚われていると、救いの手はすぐ目の前の友から差し出された。
「何にせよ、手前がマルカルスを
まず銀がでけえ。五大都市に引けを取らない程度には町を復興したいと思ってたからな。いつまでも俺達の手出しってわけにもいかん。そこにいくとマルカルスの銀が財源として使えるのは有り難いことこの上ねえ」
「それは私も考えていた。既に我が町は四都市の中でも見劣りしないだけの規模にまでなりつつあるからこそ、我々の稼ぎだけで賄うのは不可能だろう、とも。だからこそ、マダナックから上納させる分以外にも、協力者や話のわかりそうな現地人に鉱山の経営を任せるよう首長の権限において触れを出しておいた。
これで復興までの財源に困ることはないだろう」
これは一件の中でも数少ない、私の自慢できる働きだったのだ。この頭目を相手に胸を張れること自体少ないので、ここぞとばかりに強調しておく。
が、これまた予想外にお褒めの言葉をいただく。
「手前の言うとおり、銀の確保が上首尾に終わったことは望外だ。だがそれだけじゃねえ。
まず、このウィンターホールドの東西には何がある?」
「西にソリチュード、東にウィンドヘルム、か?」
「そうだ。お上の意向で疎遠になりつつある両者だが、主義主張のねえ商人ならどう思うかね。
西の果てから、大都市と大都市のあいだの復興中の町があり、更にはそこに銀が流れてくる。働き口はいくらでもあって、売れる品もあれば、大学由来の買い込める品もある」
「それは、放っておく間抜けはおらんだろうな。首長自ら末端の取引にまで口を出す愚を犯さぬ限り、民たる商人はウィンターホールドを中継地且つ市場として認識し、必ず足を運ぶはずだ」
「となると、だ。ウィンドヘルム、ウィンターホールド、ソリチュードをつなぐでかい経済圏が生まれるわな。そしてウチはリフテンのスノー・ショッド家から支援を受けている。ウチが儲けるとなりゃ、一口も二口も絡んで来るだろうぜ。
そしてウィンターホールドの復興財源である銀はスカイリム西端のマルカルスから運ばれてくる。
……まだピンと来てねえみてえだな。手前は一手打っただけのつもりかもしれねえが、もう既にウィンターホールドの復興計画はスカイリム中の経済に組み込まれてるっつー話なんだよ」
なんだか急に話が大きくなってきた。いやしかし、五大都市に限って言ってもあと一つ……。
「ホワイトランはどうなる。銀鎧と私は
「このトンマ。スカイリムの中心に位置してシロディールにも陸路で続くホワイトランだぞ? 周囲が揃って儲かってんのに、強みが消えたわけでもない交易都市がハブられるわきゃねえだろうが」
それもそうだった。
とはいえ話がトントン拍子に大きくなった。少し整理をつけたい。
つまりだ。
まず、我が町ウィンターホールドの復興が進むことで、ウィンドヘルム、ソリチュード間の経済活動が活発になる。
それに付随して、銀を提供するマルカルスにも、当初から支援を行っていたリフテン貴族にも、恩恵がある。
そしてスカイリムの交易が盛んになればなるほど、ホワイトランも儲かる。
結果、五大都市全てに恩恵が有り、すると衛星都市とも言える四都市にも影響はある……。
……。
「もしかして、なのだがな。計画……。私が始めに考えた、盗賊ギルドに対するブラック・ブライア家の影響力を削ぎたい、というそれは、もう私の手を離れているのではなかろうか?」
「今更気付いたのか、このトンマは。手前がマルカルスで大はしゃぎしてくれたおかげで、ウィンターホールド復興計画は手前の当初の計画を超えて、スカイリム全体の国家事業になっちまってんだよ。
誰かが音頭を取ったわけじゃあねえ。ただ、俺達がやりたいようにやってたら『そう』なっていた、ってだけの話だ。
おかげで復興自体も確定事項になったぜ。そりゃそうだろう? この復興計画を面白くなく思って邪魔したい輩が出たとして、何か策を打ったとする。だがそれは絶対に失敗するっつー算段なわけだ。
なんつったって、この計画でスカイリムみんなが豊かになるんだ。みんなが幸せになるんだ。それを邪魔するヤツはスカイリムの敵だ。大々的な動きにはならなくとも、利権に絡む
友の言葉は耳に届いているのだが、頭での理解が追いつかない。
私が当初ブリニョルフの家で大風呂敷を広げたとき、この計画は数十年がかりになるだろうという予感があったのだ。それでも、しないよりはマシだと考えて提案した。
それが、リフテン近くで新たに友を作り、その友の助言に従って北の地へ居を移し、衛兵達を揉んでやりながら数年過ごし、極最近西の果てで騒動を起こした。
それで、私の計画は達成されたのか?
知恵者の友が言うのだからそうなのだろう。だが、やはり、理解が追いつかない。
「手前、『苦労と成果が見合ってない』って面してるぜ。そのせいで、『こんな簡単にことが成ってしまっていいのだろうか』とでも考えてんだろ」
図星である。まさに言うとおり。
「いい加減このトンマは手前の非常識さってヤツを自覚してきた頃だと思ってたんだがな。まだ足りなかったか。先の言じゃあねえが、俺様がご講説垂れてやるから、耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ」
言われたとおり、耳に指を突っ込んで垢を掃除する。
「まず直近のマルカルスでの騒動だがな。手前ははしゃいだだけと思っているかもしれねえが、そもそも個人だろうが組織だろうが、あの推移も結果も望外なんだよ」
それは言い過ぎではなかろうか。現に後始末を頼んでいるこの頭目と一党であれば、うまく住民を扇動せしめたのではないかと思われる。
「たしかに俺達でも似たことはできた。だが似ているだけじゃあ結果に天と地の差があるうえに、かける時間も全く違う。
手前は町を恐怖のどん底に叩き起こした挙げ句、町の有力者を公開処刑にかけた。自覚がねえかもしれねえが、この時点で公権力への侵害。投獄モンだわ。しかしそれはなし崩し的に許された。何故か? 民意があったからさ。
手前が恐怖させて手前が持ち上げた住民達が手前を支持した。だから首長は身動きが取れなくなった。
俺の算段じゃあ、経済的な影響力を強めて、数年後には実権を奪う。ってなことを考えてたわけだが、その手間がいっぺんに吹き飛んだわけだな。マルカルスについては自覚できたか?」
褒められているのであろうが、あまりに手放しなせいで皮肉を言われているような気分にもなる。不思議だ。
「そんで計画を大きく前倒した全ての原因は、手前のソウルの業とやらだ。
ブリニョルフが魂石採掘隊を組織し、ほぼ独占的な契約を結んだ。手前は嘘みてえに尽きない魂をせっせと魂石に詰めた。供給源だけ確立されてたってしかたないが、大学とマルカルスのカルセルモっつー需要者と話をつなぐことで、こいつは大きなシノギになった。
覚えてるか? お前がイーストマーチに留め置かれているあいだ。俺達がウィンドヘルムの貴族や豪商共を味方につけようと、ギルドの連中と張り合っていたのを。
何故張り合えたのか? 相手はギルドだぞ? 一盗賊団に毛が生えた程度の俺達とは資金力がまるで違う。そこでモノを言ったのは手前が魂石で稼いだ金だ。
俺達は手前の稼いだ金で有力者と伝手を作り、その伝手で採掘隊の運んできた魂石をウィンドヘルムまで運び、そして各地へと流通させていったわけだ。おかげで今まで何不自由なく動けたぜ。
カジート商隊やアルゴニアン共にも流して遠方で取引されてる分もあるだろうが、まあその程度の約得や認めてやらにゃあな」
ウィンドヘルムでの伝手作りは『あって困るものでもないから』程度に考えていたが、そんなところに役立っていたとは。
しかしアルゴニアンもカジートも商魂逞しいな。種属柄なのか、商売人とはそういうものなのか。
「まだ微妙な顔をしてんな。これも先の言じゃあねえが、あんま鈍いとマジで説教になるぞ。
魂石で稼いだ結果、俺はこうして相談役なんてもんに収まっているし、手前は大学とのコネを太く強くできたわな。
手前のほうは珍しい魔法の一つや二つ見せればなんとかなったろうが、俺のほうは違う。
胡散臭いどころじゃねえ。後ろ暗いでもまだ足りねえ。
何をどうしたら、脛が傷だらけの盗賊が町の采配なんてできる立番に収まるんだよ。首長の爺様が認めたって、普通は周りが止めるぞ。何で止めなかったか? 金に物を言わせて屋敷を二つも立てちまったからさ。それもあっという間にな。
多少怪しかろうが、「只者ではない」「あまり手を出さない方がいい」とそう思わせられたからこその今日だ。
そこからの移民を募るのも、労働力を町の拡張工事に注ぎ込んだのも、全部金があったからだ。これが無けりゃあ、それこそ手前の言うとおり何年も何十年もかけて少しずつ話を大きく広げていくしかなかったろうぜ。
手前は『やれたからやった』程度の認識なんだろうがな。もうホント、いい加減認識を正しく持ってくれや」
『くれや』と言われても、人の認識とはそう簡単に変わるものでも……。
いや、駄目だな。これを言うと確実に足を蹴られる。私にはわかるのだ。
「ついでに言うとな」
「まだあるのか」
「あるんだなこれが。
さっき『スカイリム全体の国家事業になったから、復興計画は守られる』みたいな話したろ。『そうじゃなくても、確実に俺の耳には届く』って」
「言っていたな。利で結ばれているとはいえ、スカイリム中が我々の背を押してくれるとは。人の縁というものはわからんものだな」
「うん、いや、そういう人生訓みてえのはまた今度でいいんだわ。俺が言いてえのは、『逆にそうならなかった場合、その相手は十中八九サルモールだと断定していい』ってことだ。何せ俺達は『反サルモール派』だからな。
これはデカいぜ。防衛時の概念ってのは、基本的に周辺は全て仮想敵だ。それが概ね一本に絞れるってのは、策謀だろうが軍事だろうが、かなりの負担減になる。勿論油断はしねえが、使える人員の問題だな」
我が功がまだあったとは。面映ゆいどころか、誰か他人の話をされているような気分だ。その者はきっととても立派な人物なのだろう。限られた石で何羽もの鳥を落としたのだから。
……とはいえそろそろ辛い。反撃に転じよう。
「先程からの講釈で私の功績については理解が及んだと思われる。ただなぁブレックスよ。
私の耳には『適材適所。そんな力を持った友を正しく有効活用した俺様はもっと凄い』と聞こえたのだが、気のせいか?」
ブレックスは「バレたか」と言って笑う。いい加減、褒め殺しからは開放してくれるようだ。助かる。
別に本当に自らの功を誇っているわけではあるまい。此奴は、自らが成すべきと思ったことを成すために労を惜しまぬ男だからだ。
ただ、開放してくれたのには、別の理由もあったらしい。
「さて、そんな計画の立案、実行に多大な貢献を果たした英雄殿にしか頼れない大事業があるんだなこれが」
照れ隠しなのか、少々戯けた物言いをする。私もそれに乗って「何でも言ってくれ。私に任せられないことなどないぞ」と返す。
「そう言ってくれると信じてたぜ。じゃあ首長殿の砦と高級宿屋、迎賓館つったほうが聞こえがいいか? ポンと立ててくれや」
……聞き間違いだろうか。どちらも私にできることではないと思われる。
「図面は俺が既に引いた。装飾に関しても大学連中が城壁に合わせた文様を考えてくれてるし、完成のあかつきには大学同様、魔法的な防御を張ってくれるとよ。当然規模は小さくなるがな。
迎賓館も同様だ。いざって時には砦と迎賓館に籠もって戦うことになる。こちらは砦よりは外観重視だが、防御機構が備わっているに越したことはねえ」
「待て。待ってくれ。聞けば我々の屋敷のような突貫工事で成せるものではないように思えるぞ。それに、時間的な猶予はどれだけ残されているのだ?
そもそもウィンターホールドで開催する必要があるのか? ソリチュードは難しいにしても、ウィンドヘルムかホワイトランあたりを間借りすることだって可能だろう」
「『中立性を保つ』って意味ではそれも有りだ。こっちに野心がねえとアピールするためにもな。だがウルフリックに力を持たせたくはねえからウィンドヘルムは却下。バルグルーフを説得するよりこちらで場所を用意してしまったほうが早えから、それも却下だな。何より、言い出しっぺが招かねえと格好がつかんだろうが。
ついでに言えば、『大災害の爪痕と、復興中の町を見せる』って目的もある。あの馬鹿でかい城壁が削れている様なんか、直に見ねえと肌身に感じることはねえぞ。そしてそこから既にかなりの規模まで復興している町。
ある程度脅威に感じながら儲け話に一口噛みたいと思わせるにゃ絶好の景色だ」
友の言うことは一々正しい気がする。
では肝心の時間的猶予はどの程度あるのだろうか。それによって、工事の段取りも色々と違ってくる。
「
バルグルーフあたりは我が強いから、周囲に説得されてもなかなか『うん』とは言わねえはずだ。そこで時間が稼げる。そんでソリチュード以外の五大都市が揃うなら、他の四都市からも表明が来る。計七都市ってあたりか?
だから時間に直せば……ざっくりとしか読めんが、短ければ四ヶ月ってところか? それ以上はわからん
ただはっきりしているのは、『親ウィンターホールド』の色を示したい連中ほどそれなりに早く来る。そしてそれ以外の連中も、わざわざ敵対姿勢を見せることはねえだろう。つまり、大幅に遅れてくるヤツはいねえってことだ。工期の延長はあんま期待すんな」
「首長の砦は廃屋の改修ではなく、一から作るのだろう? だがそんな場所はもう無いぞ」
「また岩山を削りゃいいじゃねえか」
「簡単に言ってくれる……。削ってできた空間に、石造りで見栄えも兼ねて砦を作る。それが終われば同様に迎賓館も作る。いくらなんでも年単位の仕事だ。前言を翻すようだが、こればかりは無理だ」
「いいやイケるね。俺達の屋敷を建てたときには、少数のダンマーしかいなかった。だが今ではその何倍もの移民がいる。他所から新しく雇ってもいい。各地の物乞い連中を集めてでもな。
そしてこっちもデカいが、当時の何倍もの聴講生が大学にはいる。そいつら全員に召喚術を叩き込んで、氷の魔術で突貫工事だ。
そんで手前だな。眠らず、休む必要すらねえんだから、自分で召喚した精霊と並んでお化け鶴橋を振るっていりゃいいだろ。人足には単純作業だけやらせておけば、時間短縮になる。穴掘りが終わってからは、大学から更に人員を借りるわ」
この男。目が本気だ。ほぼ私を使い潰す勢いで竣工を目指している。冗談だと思いたいが、この目はけして冗談など伝えていない。私にはわかるのだ。
「……も、もし間に合わなければどうする?」
「もしも案山子もねえんだよ。間に合わん無様を晒せばウィンターホールドが舐められる。そうすりゃ今までやってきたことのいくらかは無駄になる。やるっきゃねえんだよ。
今、崖を削って港を作っている連中と、山肌を削って下町を作っている連中を全て投入する。町の一大事だっつってな。それでなんとかしろ。現場監督の手前が率先して汗を流してりゃ、それなりに空気は引き締まる」
あぁなるほど。そちらも使っていいのか。町の拡張工事と港湾整備。これは復興計画の中でも二大事業となっている。それを一時的に止められるなら、いけないことも、ない、のか?
だが……。
「それほどまでに融通を利かせるのならば、もっと早くから取り掛かっていても良いのではないか?」
「さっきも伝えたろ大トンマ。俺の算段ではマルカルスが完全に味方になるにゃあ、あと何年もかかってたんだよ。それを手前が三ヶ月程度で達成しちまうから、こうして計画を修正せざるを得なくなってんだろうが張り倒すぞ」
言いながら頭への平手と脛への蹴りが見舞われる。なるほど。原因たる男がそれを自覚せず文句を言えば、それは腹も立つか。
「わかった。どうにかやってみよう。最悪でも砦ができていれば、迎賓館は無くても格好は付くのだろう?」
「まあな。迎賓館はそのあと高級宿屋として使おうと思っちゃいたが、砦に比べれば費用対効果も薄い。五大都市ですらない復興中の町だからな。首長の砦に客を泊めたって、そこまで目くじら立てる連中もいねえだろ。
問題は側仕え以外の兵までは入らねえだろうから、長屋か一般向けの宿屋を急ぎでっちあげにゃならんことだが。まぁそっちは木造で十分だ。工事とは別口で材木や職人を発注するから、そこまで負担にはならんはずだ」
こうして、向こう数ヶ月は文字どおり眠れない日々が続くと確定した。
散々褒めちぎられたのは、このためのご機嫌取りだった、とは思いたくない。多分、それは本当に違うはずだし。
ただなぁ。友の言が真実なら、私は偉業を成したはずなのだ。それがいったいどうして馬車馬の如き働きを求められているのだろうか? 功有るものはそれなりに遇されるはずでは?
ブレックスの下から下がり、星々の瞬く夜空に、私の疑問というか愚痴というかは溶けていった。
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ソリチュードはブルーパレスで、二人の貴人が周囲の顔色も目に入らぬほど、激しく口論していた。
「ならんというのがわからんのか!」
「父上こそどうしてわかっていただけないのですか!」
「トリグ。お前は事実上の次期上級王なのだぞ! その身の
「だからこそです。私は
一度首長会議を蹴った上級王が、あの首長会議もどきに参加することは許されません。しかしウィンターホールド首長のこれまでの姿勢からすれば、会議に正当性を持たせたいはず。
上級王の子息たる私が非公式に訪れ参加を申し出れば、無下にはされないはずです」
「参加が認められたとて、それがどうだというのだ。所詮は四都市のうちの一つ。それも復興中の町だ。何故こちらがそこまで下手に出ねばならん」
「下手ではありません。並び立つのです。昨今のスカイリムはこのソリチュードではなく、ウィンターホールドを中心に回っていると言っても過言ではありません。
五大都市ですらない比較的小さな町が、異常な速度で復興を遂げている。これは反帝国を掲げるウィンドヘルムとの地政を鑑みても、軽んじて良いものではありません」
「お前のいいたいことはわかる。だが、お前が思う以上に上級王とは権威あるものなのだ。かつてはこの王冠を求めて内乱になったことすらある。
お前のほうこそ軽々に動いてはならん。古き権威を軽んじてはならん。これは主義の問題ではない。実利の話だ」
「父上の懸念、一々尤もです。ですがここで動かなければ、ソリチュードは手遅れになります。ひいては帝国の判断をも誤らせることとなりかねません。
ソリチュードのため。スカイリムのため。帝国のため。このトリグはあの町をこの目で直に見て、各地の首長と話し合わなければなりません。
まだ現段階でどの程度の参加があるのかはわかりませんが、ウィンドヘルムのストームクロークは来るでしょう。あまりに立地が近すぎる。噂ではリフテンとも懇意にしているとか。となれば九都市のうち、半数弱が参加しても不思議ではありません。巧遅は拙速に如かず、です父上」
息子が思いの外しっかりとした理論武装をしていることに感心すると同時に、だからこそ頭を痛くする父親。
言いたいことはわかる。だがそれでも帝国、ひいてはサルモールとの関係を考えればここは
「……申し訳ありませんが父上。更にお言葉が無いようでしたら、トリグは行かせていただきます。
あくまで非公式でなければなりません。途中で帝国側の人間に見つかりでもすれば
子は背に受ける「待て!」という声を無視して謁見の間を出る。その目には強い光を灯している。
場合によっては、ウィンターホールド首長の首を刎ねることすら視野にいれて。
自分がデスマーチだからって友達もデスマーチに引きずり込む盗賊の鑑。