「おれは8月に投稿しようと思っていた小説を投稿したら、いつの間にか11月になっていた」
な...何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった...
頭がどうにかなりそうだった...催眠術だとか、超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ...』
と、いうわけでこの度は投稿が三か月も遅れてしまい申し訳ございません!!!
言い訳としては原神やユナイトにはまってしまったこと、また明日やろう明日やろうと先延ばしにしていたこと...です。
でも、この間にポケモンや原神、あとはアズレンとかの創作ネタが温まっているので、今後は単発にはなると思いますがそちらの投稿も行うと思います。それで勘弁してください
では、異世界帰りの魔王様の第三話、どうぞお楽しみください。
「久しいな、異世界の勇者。いや、我らが仇敵よ」
月の光を靡かせ、無数の
先日、僕が打倒したまつろわぬフレイの妹にして、アース神族側に所属していながら、敵方のヴァン神族の出身である女神。
彼女は、典型的な美の女神だ。オーズという夫がありながら、彼女に貞操観念は存在しない。体を合わせた男は数知れず、その中で有名なのは、彼女に猪に変えられてしまった人間の愛人オッタルや「ブリーシンガメンの首飾り」を作らせるためにドワーフたちと交わった逸話だろう。
一方で、彼女は戦場の女神だ。北欧において死んだ勇士たちを、主神オーディンの館「ヴァルハラ」に導く戦乙女たち「ワルキューレ」の女主人であり、死んだ勇士たちはオーディンとフレイヤとで分け合われた。このことから、フレイヤはオーディンの妻であるフリッグという女神とも同一視され、キリスト教が台頭してきてからは、フリッグの役目の多くをフレイヤが務めていた。
次々と湧き上がる、知らないはずのフレイヤの知識。
______剣を研げ。大地にあまねく恵みをもたらす陽光よ、猛々しく燃えよ。
頭の中に響くのは忘れもしない、フレイの声だ。
声とともに一本の古びた剣が、徐々にかつての輝きを取り戻しつついく様が浮かぶ。
______剣を研げ。大地にあまねく恵みをもたらす陽光よ、猛々しく燃えよ。
「ほぅ、我が愚兄の剣を研ぐか。私を魅了してやまない黄金の剣。私たちを
フレイヤの美しい顔が歪む。
酷く憎いものを見るような、とても眩しい存在を見つめるような、そんな複雑な表情だ。
「だが、今は許そう。私は寛大だ。だが、その前に______疾く失せよ、極東の《鋼》よ、我ら女神が零落した末路たる神祖よ。これより我が兄が治めるアルフヘイムは我ら二人の逢引の場となる。よもや、邪魔をする、などという無粋な真似はせぬな?」
ふっ、と笑うフレイヤが睨むのはこの場にいてはいけない、無粋な輩。
「わぁってるよ、そんくらい。だが、まあ、最後に助言だけしていくか。神からの神託ってやつだ。
______お前の中に眠るキカン坊の権能。そこの淫売の言葉を借りるならそれは"勝利の剣"だ。最源流の《鋼》に連なる、あまねく女神どもをまつろわせる征服者の剣。お前はすでに知っているはずだ」
「は?いや、知ってるってどういう...」
「そんくらい自分で考えろ。いずれにしろ、そこのおっかねぇ女神を倒せなきゃお前は死ぬ。死にたくなきゃ思い出せ、かつての旅路でふるったお前の相棒を」
かつての旅路でふるった僕の相棒。
聖剣のことだろうか。だが、聖剣は魔王討伐後に帰還の魔法陣を使う前に聖女に預けたはずだ。
それを思い出す?一体、どういう______。
その時、パシッと、媛のたおやかな手が僕の頬を包む。
その行動に驚き、彼女の顔を見やる。
とても、柔らかな、穏やかな表情だ。愛おしい我が子を見つめる母の表情だ。
「羅刹の君よ、御身に施されたかの女神の祝福______それは"あのお方"を再現するものです。彼と救世の神刀は魂でつながった縁深きもの、そして、それは御身と救世の聖剣にも言えるのです。どうか、それをお忘れなきよう______再び、あなた様にお会いできるのを楽しみに待っております」
その言葉を最後に、御老公と呼ばれていた三人はその場から消失した。
いや、どちらかというと転移が近いだろう。かの魔女が駆使した空間魔術の最高峰、彼女ですら行使に際して多くの準備を必要としていたそれを、事も無げに行うとは...。
______いや、確かフレイがここは生と不死の境界であるアストラル界だとか言ってたよな。なら、問題はないのか、要は世界と世界を隔てる境界線、そういった場所は得てして空間自体が不安定だと、魔女が講義の中でいっていたはず。
「さて、ようやく邪魔者が消えたな。まずはあなたに賛辞を贈ろう、異世界の勇者殿。よくぞ我が愚兄を打倒し、その権能を簒奪した。そして、失望を。あなたの魂はとても美しい。煌々と輝く魂のきらめき。それはほかの凡俗なものどもは持たない、唯一無二の輝きだ。さながら天上で我らを照らす太陽のように。神殺しの獣になど堕ちず、勇者のままであったのならば、我が愛すべき勇士として我が閨に招き、熱い夜を過ごそうとも思ったが...詮無きことよ。ゆえに、せめて我が手であなたを葬ることにした。それがかつての勇士であった、あなたへ贈る私の愛なのだから!」
その言葉と同時に、フレイヤの背後に控える
ああ、これはまずい状況だ。フレイの時とは異なり、僕は武器を持っていない。
______ほんとうに?
心のうちから湧き上がる疑問。本当に僕は武器を持っていないのか?
先ほどフレイヤは、スサノオは何と言っていた?
『勝利の剣』。二人の言葉を信じるならば、神殺しの魔王とかいう存在に生まれ変わった僕は、フレイからその剣を奪い取っているはず。
でも、どうやって使えばいい?
「
フレイヤの号令とともに戦乙女たちの攻撃が放たれた。
彼女らが持つ槍が、魔術が、矢の雨が降り注ぐ。
どうする、どうすればこの状況を切り抜けることができる?
______思い出せ、聖剣を。想起しろ、勝利の剣を。
「
自然と口をついた言霊。それと同時に手を、かつて聖剣を握ったときのように前に突き出した。
熱が生まれる。光が産まれる。形が
かつての相棒とは異なり、黄金に光り輝く剣がいつの間にか僕の手の中に存在していた。
なんとなく、剣を上空へと振るう______そうすれば、この状況を切り抜けられるという確信があったからだ。
剣から熱が発せられ、光の奔流が戦乙女たちから放たれた攻撃の雨を、いや戦乙女たちすらも飲み込んだ。
光が晴れると、先ほどまで戦乙女たちが浮かんでいた空には何も残っていなかった。
「______ふふ、ふふふふふふふふ。あぁ、懐かしい、忌々しい輝きだ」
フレイヤの笑い声が周囲に響く。
「さぁ、神殺し______我が愛する勇士よ、
そういったフレイヤの顔は、艶を含んだ恍惚の表情が浮かんでいた。
今回のオリジナル用語
・大地/ゲルズ
フレイの妻である巨人。その名は垣で囲まれた播種された耕地を意味すると考えられている。彼女はあらゆる女の中で最も美しいとされ、彼女の腕の輝きにより空と海が明るくなったとされている。ゲルズに求婚する際に召使であるスキールニルを使いに渡したが、その際に勝利の剣を手放した。このことから、元々は大地の女神と夜明け(もしくは太陽)の女神が習合した存在なのでは、と個人的に考えている。
・あのお方
魔王討滅の宿命を背負った英雄神。原作のラスボス的存在。ぶっちゃけオリジナル用語ではない。