カリスマ()モデルひまりさん   作:くまねこ

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竜人機さん 
評価ありがとうございます。

半年たったらしい。




プロデューサーとひまりさん

13歳で彗星のごとくデビューしてから、常に第一線を走り続けるモデル──姫白ひまり。

 

アイドル全盛期などお構いなしとばかりにファッション誌の表紙を飾り、出演したCMは数知れず。

時間が押しても嫌な顔一つせずやり通すプロ精神には、現場での評価も上々。

次の朝ドラのヒロイン役に推す声もあり、今や美城プロダクションに所属するモデルの中で、一番勢いに乗っていると言ってもいいだろう。

 

そんな女性のプロデュースをしなければいけないらしい。

まだ一人も担当したことがないようなド新米の俺が?

抜擢なんてレベルじゃない話に、何かの間違いじゃないかと確認を取りに行ったほどだ。

──そこで分かったのは、むしろ彼女が俺のことを指名したという事実だった。

 

疑問は膨らむばかりだが、光栄なことだ。

理由は本人に聞かないとわからないが、プロデューサーとしてできることなら何でもしよう。

 

 

 

 

そう、意気込んで迎えた顔合わせ当日。

彼女が姿を表しただけで世界が静まったかのように感じた。

 

テレビで見た時の印象は、穏やかな太陽だった。

口元を隠してコロコロと楽しげに笑う姿に、共演者も視聴者も目尻を下げただろう。

 

……それがどうだ。

触れると折れてしまいそうな体躯とは対象的に、自分への絶対の自信が窺える紺の瞳。

癖一つない長いプラチナブロンドの髪は、月の光を映しているかのように輝いて見えた。

見たものの庇護欲を掻き立てる繊細さと圧倒的な美。

 

思わず心を奪われた。ただ見惚れた。

……だから、聞き間違えたと思った。

 

「送迎が必要な場合は予め連絡致します。では、仕事に行ってきますので──」

 

どうぞ、ここでお寛ぎください。

細い指が差したのはプロデューサーオフィスの椅子。

 

唖然とする俺に一礼すると、振り返りもせず去っていく。

彼女は俺にプロデューサーとして、何の期待もしてなかった。

──選ばれた決め手はゴールド免許の有無。

目の前が真っ暗になったのを覚えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ゃ遅くなって悪いねえ──ん、聞いてる?」

 

少し心配そうに小首をかしげながら車のドアを開けたのは自分の担当モデル。

その白金の髪が、沈みゆく夕日を反射して輝いていた。

妖精はいるかと今聞かれたら咄嗟に頷いてしまうかもしれない。

 

「……すまん、起き掛けで頭が働いてなかった」

 

「おいおい、めっちゃ疲れたんだからさ、安全運転で頼むぞ〜?」

 

座席に体を預けるや否や、ぐでっと体勢を崩す。

時間は18時少しを過ぎており、予定時間を過ぎてもサイン会を続けていたことが窺える。

……設営の人は困っただろう。

後で謝罪の電話を入れておかないと。

 

「今日はもう仕事がないから事務所じゃなくて……家、だよな?」

 

「んや、駅でいいよ。もうちょい体力付けたいから走る」

 

聞かずにケツの有無も分かるとかすっかり本物のプロデューサーじゃん、と明るい声が車内に響く。

なんで少し自慢げなんだか……。

 

 

「というか、ひまりがちゃんと教えてくれないから把握できないんだよ……」

 

最初は送迎が必要な仕事しか予定を教えてくれなかった。

そこからひたすら仕事に付き添って、ようやく仕事のスケジュールだけは(・・・)教えてもらえるようになった。

これで解決したと思ったら、今度は休憩時間にサイン会を開き始めたり、ランウェイにサプライズで登場したり……。

さすがに突発の握手会は危ないので止めたが。

 

『思いつきでやってる』とは本人の弁だが、仕事の合間時間でイベントスペースを押さえてはファンサービス。

そして毎回大盛り上がりなのに、次の仕事には絶対に遅れない。

こんな日々が続けば俺でも分かる。

彼女の中には完璧な予定があって、それを教えてくれないのが心苦しかった。

 

素で話してくれるようにこそなったが、まだ本当の信頼は得られていないと感じる。

彼女にプロデューサー、そして頼れる大人として認められるためにももっと頑張らないといけない。

そのためには受け身でいるんじゃなくて、自分が動くことが大切ではないか?

 

 

「よし、これ以上の無茶はプロデューサー権限で止める!今日は直で家まで送るぞ!」

 

「……はっ!?じゃあ今すぐ下ろせ!」

 

今日は朝早くから人気バンドのMV撮影が行われ、午後には休憩を挟みながらとはいえ握手会で4時間立ちっぱなし。

仕事も自主練も増やすのはやりすぎだろう。

全部をやりきろうとするのはひまりの長所だが、保護者の立場から見ていると不安で仕方なかった。

最近は仕事のペースを落としぎみだったのに、突如として増やしたのも引っかかる。

 

アイドル部門が出来たことで、モデル部門を支えることに使命感を覚えたのかもしれない。

異動した人を心配させないために無理しているとかもあり得そうだ。

そんな焦りを感じるのだ。

担当モデルを一人にはさせられない。

 

 

「──じゃあせめて俺も走ろう!」

 

「お前頭おかしいって!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




もう少し長くしようと半年放置してましたが諦めて投げます。

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