紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです 作:ライドウ
シリアス警報デデデデェス。
さて、色々と私について説明しよう。
まず私は妖精としていつの間にか転生し、そして”自分だけの空間を持つ程度の能力”を持っている。
身体能力に関しては、429年メイド長として働いていたからか、かなり妖精としては逸脱したものになってはいる。
そして私の程度の能力は、いい意味では”チート”だとか”なろう系”だが、悪くいえば非常に使い勝手の悪いただのゴミ能力だ。
私の空間は某俺様系黄金暴君と同じで空間内部の物を射出させたり、某体重が5キロな女子高校生のようにスカートから無数の武器を出すことができる。できるのだが、これは有限である。
まず私の空間は”手動で物を貯める必要がある”。
一応、空間内で魔力で複製してそれを射出させることは出来るが、それは1発放つだけで魔力をゴッソリと持っていかれてしまう。
無論、1発で10パチュリー(パチュリー1人の魔力容量がおおよそ10万、それが1発で10人・・・100万程の魔力を消費する)ほどの魔力欠乏が発生する。(そして私の魔力容量はたったの1万だ。言いたいことはわかるな?)
そんなことしたら私の存在が消えてなくなるのでそりゃもちろん空間に溜め込んでいるのは全て鍛治職人に作ってもらった本物だ。(おかげで湯水のようにお金を使う羽目になったよこんちくしょうめ!)もちろん、射出で使用する魔力はプライスレスなので射出する分には問題は無い。
そして次に、”空間は攻撃には使用できるが防御には使用できない”。つまり、空間を発動させている間は敵の攻撃を避けなければならない。しかも、”一瞬でも空間展開の維持を緩めてしまうと30秒のクールタイムが発生するのだ。”
戦いや弾幕ごっこにとってこの30秒は大きな隙だ。その30秒で大抵の戦い慣れしているやつは立て直せるだろう。
総評すれば、”一見すればチートクラスだがその分使用者の負担がいろいろとヤバい能力(しかも敵の攻撃は無意識レベルで避けなければならない)”というものだ。
だが、私はこれを429年の間ずっと使い続けてきた。
副メイド長に頼んで空間展開をしながら副メイド長の攻撃を避け続け、魔力でコピーした物も最適化を何度も何度も繰り返し、針程度の刃物なら飛ばせるようになっている。
・・・そう、そこまでの努力と成長をしてもなお
「・・・遅い。」
「くぅ!?」
空間展開からのハルバードの突き出しや、針状の刃物の射出。更には私自身の格闘をしてまで、全てが避けられ弾かれ、押し負けて、今現在ペったん座りで息を切らせている。
「はぁ・・・はぁ・・・」
副メイド長・・・アンナにはああいったけど割と私もやばい。
何をするにしても”時間を操る程度の能力”が立ちはだかる。
こちらが攻撃した瞬間には、時を止めて隙を突く行動をしてくるのだ。
(まあ、全部憶測でしかないけど。これで身体能力で避けましたなんて言ったら、本当に私が遅いだけだ。)
「本当に、諦めないの?今なら、私がなんとかする。」
「だからぁ、諦める訳にはいかないの。私は守るものを守り通すために戦い。貴女は私が守りたいものを壊そうとしている。だからこそ、諦められないっ、のっ!!」
僅かに残った気力で立ち上がり、ハルバートを横薙ぎに払う。
バックステップでかわされるのは想定内なので、その避けた先に空間展開でハルバートを準備する。
「そう、なんだ。」
「・・・っ!」
避けながら見せる悲しそうな表情に、私は発動を躊躇ってしまう。
敵だとはわかっている。このまま好きにやられてしまえば、レミリアお嬢様は間違いなく浄化されてしまう。
だけどそれ以上に、とても彼女が悲しそうに見えるのだ。
(・・・なら、私はどうするべきなんだ。)
私とて敵には容赦はしない、この429年間で何人ものレミリアお嬢様を狙ってきた敵を葬ってきたことだってある。
それなら、この戸惑いだって既に何度も経験したことがあるはずだ。でもなんで私は、こうして悩んでいる?
(あぁ、そっか。)
今私は、運命を選ばなきゃ行けないんだ。
彼女を、十六夜 咲夜を生かすも殺すも私次第。
・・・なら、私は。
=========
Side:sakuya
背後で、空間がうねっている。
これは今目の前にいる彼女の能力で起きているもの。
つまり私は、チェックメイトされている。
(やっと、私の世界を理解してくれる人が現れたと思ったのに)
私はその理解してくれる人の敵として殺されようとしている。
いやむしろ、それが一番いいのかもしれない。教会の孤児として育てられ、私にとっては異端の象徴である”時間を操る程度の能力”が発現してからというもの、教会の剣として育てられてきた。
そこで私を理解してくれる人などいなかった。
私を育ててくれたシスターは目を背けた。
大司教は私のことなど気にもかけなかった。
ついぞ私は1人になった。あるのは時間という孤独だけ。
あぁ、でも最後で、最後でいいから。
だれか、愛をください。
ふわっ。
優しげな匂いと暖かい人肌の感触。
背後にあった波紋も、私を”抱きしめている”彼女から向けられる殺気もない。
とても、あたたかくて、やさしくて、あんしんできる。
ポロポロとなみだがこぼれおちる。
あぁ、だめ。ないてはだめ。このていどではないてはだめ。あまえてはだめなの。
「やめ、て。」
「いいえ、やめないわ。」
「どうして・・・」
「そうね、気が変わったの。それに、子供が心を押し殺している様なんて見たくないのよ。」
やさしく、あたまをなでられる。
あぁ、ダメだ。ないてしまう。あまえてしまう。
あなたをじょうかしないといけないのに。
「ひっぐ・・・うっ、ううっ」
「大丈夫、私がいるから。泣いても、甘えてもいいんだよ?」
その言葉をかわきりに、私は初めて大きな声で泣いたのであった。
「こわかったっ!いたかった・・・さみしかったよぉっ!」
「よしよし、よく頑張ってきたね。」
今まで押さえつけていた感情が火山が噴火したかのように溢れ出す。
ずっと怒鳴られて怖かった。
ずっと叩かれて痛かった。
ずっと1人で寂しかった。
ずっとずっとずっと…
やがて私は、優しい彼女の元であたたかな眠りにつけた。
やさしくだきしめられ、あたたかくて・・・とてもあんしんできる。
おやすみなさい、おかあさん。