紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです 作:ライドウ
side:remilia
ドサリ。
そんな音ともに、送り込んだメイドの一人が帰ってくる。
・・・最初の一人が帰ってきたとき、美鈴が大急ぎで全員を呼び出した。
一人、また一人と帰ってくるたびに・・・嫌な予感が私を貫く。
偶然にもクモリだったために日傘をさしてはいないが・・・何か、肌を焼くようなチリチリとした嫌な予感がまとわりつく。
そして最後に帰ってきたメイドは・・・マリアの部下としても優秀な妖精メイドのはずだ。
その子が、頬を涙で濡らし大きな声で鳴いている。
「だ、大丈夫!?ど、どこか痛いの?め、メイドちょ・・・マリアは!!」
私も、段々と冷静さを欠いてゆく。
その妖精メイドは、やがて肩を震わせ私を見る。
「れみりあ・・・さま、わたしは・・・わたしたちは・・・」
「しっかり、大丈夫だから・・・マリアは、どうしたの?」
焦る頭を何とか押さえつけ、その言葉をひねり出す。
その妖精メイドの大粒の涙がボロボロといまだに出ている。
「メイド長は・・・・・・マリア様は!!」
「ご自身の使命を全うし、その”生涯の最後”まで貴女様を案じておられました!!」
「・・・・・・え?」
世界が急速に灰いろに染まっていく。
冷水をぶっかけられたかのように、頭のてっぺんから足先まで寒気が広がる。
そのせいか、手足がだんだんと震えてくる。
呼吸も、浅くなり・・・・・・
「マリア様の遺言が・・・ござい」
「あ・・・あぁ。」
いや、まだだ。
「っ・・・パチェッ!!」
「分ってる!!緊急で大規模転移魔法を発動させる!!ホブゴブリンも外に出てるメイドもいない!!今すぐ行けるわ!!」
「許可する!!」
「了解ッ・・・発動!!」
叫ぶように、パチェを呼び大規模転移魔法を発動させ、無理やり幻想郷へと向かう。
大丈夫だ・・・あのマリアが、あのマリアが死ぬはずがない!!
だって、マリアは・・・マリアは強いんだ!!私たちが思っている以上に強くて・・・優しくて・・・そんなマリアが・・・まりあ・・・が。
やがて光が無くなり。
目の前に絶望が広がる。
「うっ!?こ、これは!?」
「ひっ・・・これ、全部・・・妖怪!?」
「こ、このハルバートはっ」
「それに・・・一面真っ赤・・・」
無数に転がる、有象無象の妖怪の死体。その死体を貫く、”見覚えのあるロングソード”。開けた場所にある・・・”見慣れたリボンがまかれたハルバート”
そして・・・
「うそよ・・・・・・こんなの、ニセモノよ!!」
”真っ赤で、穴だらけの・・・落ちている妖精の羽”
「っ・・・おかあ・・・さまっ!?」
「・・・・・・ゎたしは・・・なにもできなかったの?」
「うそっ・・・でも、この・・・残留魔力は・・・」
それは、マリアが・・・・・・いなくなったことに関して、十分すぎるほどの証拠だった。
~~~~~~~~~~~~~
side:Frandle
幻想郷に転移してからというもの、レミリアお姉さまも、咲夜も美鈴もパチュリーも・・・抜け殻の様に動かなかった。
私?私は、うん。私も本当は動きたくなかった。
だけど、レミリアお姉さまが動けない今、この紅魔館の事をできるのは唯一マリアが消えたという事実を受け止め、向き合おうとしている私と副メイド長と・・・マリアについていったメイドたちだけだ。
「フラン様・・・今日もレミリアお嬢様方は、食事もとらずに閉じこもっているっす・・・います。」
「そう・・・あとで無理やり口に入れさせて。吐くようなら液体化させたのを飲ませて・・・それと、口調はいつも通りでいい。」
「・・・はいっす。」
正直、副メイド長もかなりつらいはずだ。
だけど、副メイド長は長年生きている大人だからか、何とか向き合おうとしている。
「フラン様もお休みになられた方が・・・もう4日も睡眠をとっていないっすよ?」
「・・・私もそうしたい、けれど。あの紫のアバズレがさせてくれないのよ。」
今回のマリアを殺した張本人、いや、マリアが死ぬように仕掛けた張本人は到着早々、私たちにこう言い放った「ようこそ、幻想郷へ。幻想郷は、あなた達を歓迎します」と・・・現実逃避で、もぬけの殻のお姉さまたちはその言葉を聞かずにしゃがみ込み・・・私はその言葉の裏の真意と・・・・・・その”ムカつくほどのいい笑顔”を見て、大体察した。
そして、その翌日・・・何とかレミリアお姉さまたちを部屋に返した後、紫のアバズレが紅魔館との協定を結ぼうとやってきた。
一つ、幻想郷は紅魔館に土地と食料である血液を提供する。
一つ、紅魔館・幻想郷、双方において一切の組織との干渉・交流を禁ずる。
一つ、幻想郷が危機に瀕した際には、その戦力の7割を八雲紫に譲渡すること。
一つ、先遣隊に関する被害は今後一切不問とする。
・・・対等な条件に見えて、圧倒的に紅魔館に不利な内容を吹っ掛けてきたのだ。
しかも、マリアの生死についての責任追及をしないということをその協定に練りこんできやがったのだ。その協定を聞いた時、思わずレーヴァテインを抜剣しようとしたのだが・・・ここは、八雲紫のホームグラウンド。いま紅魔館を守る戦力は、私含めた12人程度。私の能力で有象無象は破壊できようとも対策される。
それに、せっかくマリアが命を捨ててまで確保してくれた安全を・・・・・・その怒りの感情だけで捨てるほど、私はまだ落ちぶれてはいなかった。
故に、向ける場所の無い殺気を抑えつつ・・・その協定書に私の名前でサインを記した。
「フラン様・・・」
「・・・大丈夫、私はマリアに教えてもらっていたからね。」
どんな状況になっても余裕と冷静さを失わないこと。
メイド隊にも教えられていたことだが・・・その言葉が、今の私を何とか奮い立たせている。
「・・・どうするべきか。」
「あら、簡単よ。」
ギィと、執務室のドアが開け放たれて・・・随分と元気な姿のお姉さまが入ってくる。
「お姉さま・・・よかった、元気になれたみたいね。」
「ええ、”気の触れた”妹のおかげでね?」
「・・・っ!?」
私の生存本能が最大限の警鐘を鳴らす。
すぐさま迫りくる、真っ赤な槍・・・ぐ、”グングニル”!?
その飛んできたグングニルを副メイド長が隠し持っていたナイフで弾き返してくれる。
「はぁっ、はぁっ、お姉さま・・・どうして?」
「レミリアお嬢様?!何を考えているっすか!!」
「どうして?何を考えている?
それはこちらのセリフだ”フランドール・スカーレット”、”アンナ・ゲールマン”!!
なぜ、なぜマリアを殺したこの世界の管理者と協定など結んだ!!
相手は、マリアを殺した殺人犯だ!!それをなぜお前は、お前たちは見逃して協定などというふざけたことをしている!!」
・・・あぁ、あの目は見たことがある。
あれは・・・”狂気”だ。
「私は、この世界を・・・幻想郷を許しはしない!!マリアを殺したこの世界を許すものかよ!!」
レミリアお姉さま・・・いや、レミリア・スカーレットがそこまで言うと、完全武装の狼女たちと、随分と濁った瞳の美鈴が入ってきた。
「・・・何をするつもり?お姉さま。」
「その呼び方で私を呼ぶな、フランドール!!美鈴!この気の触れた小娘を地下牢に放り込め!!そこにいるメイドもろともだ!!」
「・・・御意。」
・・・このお姉さまも、美鈴ももう駄目だ。
自身の都合のいい考え方をして、マリアが死んだという事実から目をそらしている。
ゆらりといつもの優しい雰囲気ではなく、どす黒い飲み込まれそうな雰囲気を醸し出して一歩と近づく美鈴。
副メイド長が、ナイフを構えて警戒するが・・・止まる気配はない。
・・・・・幸い、外はクモリだ。
「アンナ!!」
「っ、分かったっす。多少手荒ですけど許してほしいっすよ!!」
副メイド長・・・アンナが私を抱きかかえて、窓から外に飛び出す。
雲の合間から差し込む日光が、私の肌を少しだけ焼くが・・・地下牢に閉じ込められるぐらいならまだましだと思える。
「・・・お姉さま、その怒りは・・・復讐は本当にマリアが望んだことなの?」
遠ざかる紅魔館を見つめながら、私の独り言はただただ森の中へと吸い込まれていった。
~~~~~~~~~~
side:Remilia
フランドールが、人間のメイドに抱えられて脱走する。
「まあいい、逃げたところでしょせん野垂れ死ぬだろう。」
ギシッと・・・先ほどまでフランドールが座っていた場所に私も座る。
こちらに、忠誠心の目を向けてくる美鈴とその部下の狼女たち。
「レミリアお嬢様」
「・・・どうした?美鈴。」
「メイド長補佐と、パチュリー様はいかがなさいますか?」
・・・あぁ、そうだ。咲夜とパチュリーを忘れていた。
彼女らにも考える時間は必要だろう。
「咲夜にはマリアの部屋に入る許可を出してやれ、パチュリーには変わらずヴワルを任せる。なに、今さら必要のない二人が消えただけだ。」
フランドールとアンナ・ゲールマン。
忌々しいことこの上ない、我が仇的と勝手に協定などというふざけたものを結んだ愚かな反逆者。
「・・・ふふ、マリア。待っていてね、いま貴女が望んだことを成してあげる。」
「この幻想郷の崩壊という、貴女の願いを!!」
「あは、あはははははははははっ!!」
私の高笑いは、赤くて真っ赤な綺麗な満月に吸い込まれてゆくのであった。
吸血鬼異変の有無について
-
どうなったか見てみたい
-
おいやめろ(白目)