紅魔館に住み込みで働くことになりました。そして咲夜さんの先輩メイドです 作:ライドウ
私が、運命の出会いだと感じ取ったのは、おおよそ3度ある。
まず、10歳の時に出会って拾った、今のメイド長。
そして、439歳の時に美鈴とグングニルを拾った。
そして今回、散歩道にフラフラと現れ私を見た途端に倒れた紫色の魔女。お父様の制止を振り切り、その子を拾って紅魔館に駆け込んだ。
「この子を今すぐ治療して!」
いつものワガママだったけど、メイド長と紅魔館のメイドたちは迅速に動き始めた。
メイド長が傷の手当を行い、副メイド長が痛み止めの魔法を使い、とあるメイドが他の妖精メイドや人間のメイドに事細かに指示を与えて赤くなった水やタオルを交換していた。
その流れている血を見た時は、吸血鬼としてはおかしいだろうけど…とても飲もうとは思わなかった。
何とか治療が終わったのかメイド長と副メイド長がそれぞれ疲れた様子で、座り込んだ。
私はそっと2人に近づく
「お嬢様・・・何とか容態は安定しましたが、不安要素が多いです。峠は今夜かと。」
息もたえだえながらメイド長がそう伝えてくる。
メイド長の白い手袋が赤くなっているあたり相当な出血量らしい。
429年、長年一緒にいるのだ。その言葉が気遣いや嘘ではなく本当だということはそれだけで分かる。
「そう、なら今夜は私が見ているわ。あなたたちは仕事に戻りなさい。」
「・・・かしこまりました。後でブランケットとお着替えをお持ちします。」
「いらないわ。気遣い、ありがとう」
「なら、明日のおやつはキャロットカップケーキですね。よろしいですか?」
「嬉しいわ、貴女のおかげでキャロットを好きになれそうだもの。」
「承りました。ですが、レディーとしては、血まみれのままの服を着ることは好ましくないですよ?」
「・・・わかったわ、お願いする。ごめんなさいね」
「はい、了解致しました。いえいえ、慣れましたから」
【※血の表現ありです!】
そういったメイド長は紅魔館のメイドたちに合図を送って部屋を出ていった。
今日もまたメイド長に迷惑をかけてしまった。
昨日もそのまた昨日も、メイド長には迷惑をかけっぱなしだ。
でも、メイド長は笑ってそれを許してくれる。
だけど、掃除を増やした時は割と本気で怖かった・・・今でも思い返すと、冷や汗が止まらない。
しばらくするとドアをノックする音。
「お嬢様、メイド長です。」
「入っていいわよ。」
入室許可を出すと、すぐさまメイド長が入ってくる。
背が低いけど、頼りになるメイド長。そのメイド長から、着替えとブランケットを受け取る。すぐさま、その渡された着替えにとりかえて椅子に座り直す。
すると、紅茶セットと一緒に見覚えの無い本を手渡された。
「・・・これは?」
「ヴェスバー・コーウィル著【魔法使い、魔女について】です。彼女が起きる前にお読みになられた方が良いかと。」
「・・・そうね、ありがとう。」
本を受け取り、差し出されたティーカップに口をつける。
うん、メイド長のいつも通りの紅茶の味だ。今日のはちょっとだけ、苦いけど。
「・・・お父様、怒っていたかしら?」
「いえ、またいつもの悪癖か。と嘆いておられでした」
「その割には、口元がニヤついているわよ。」
「お嬢様にはばれてしまわれましたか。」
いつもの軽口をたたきつつ、最後に朝になる前に寝るように伝えてきた。
やっぱり、あのメイド長を拾ってきたのは、私にとって一番最初の運命の出会いだったんだろう。
そう思いつつ、私はメイド長に手渡された本を開くのであった。