ラブライブ Start over 〜18人の物語〜 作:ジョリポン
ヒフミトリオって名字無いよね、少し困った
「う〜……緊張する!!」
ついに本番当日! 新入生歓迎会が終わり、私たちはライブを予定している講堂にいます。
「穂乃果、本当に待ち合わせはここなんですか?」
「本当だよ! 私が間違えるわけないでしょ?」
私たちはここで、今日手伝ってくれるはずの吉田先輩を待っています。助っ人も何人か連れてきてくれるみたい。
「穂乃果ちゃん、来たみたい!」
ことりちゃんが指さす方向を見ると、扉が開かれ丁度人が入ってくるところでした。
「ごめんごめん、少し遅くなったね。歓迎会の後処理とかに時間がかかって」
そう言って吉田先輩が5人の助っ人を連れてきた。……というかあれって……
「ヒデコ、フミコ、ミカ! それに紀伊山くんだ!!」
「やっほ! 穂乃果たちが頑張ってるんだし、私たちも負けられないなってね!」
ヒデコ、フミコ、ミカは私の友達! いつも仲良しな3人組で私はまとめてヒフミちゃんってよんでる。
「どうも、昨日ぶりですね」
「紀伊山さん! 先日はお見苦しいとこをすみません」
「あれ、彼女たちと仲良いのは知ってたけど紀伊山くんとも既に知り合いだったんだね」
「チラシ配り手伝ってくれたんだよね♪」
「はい」
やっぱ色んな人に手伝って貰えるって嬉しいなぁ。あ、そういえば吉田先輩が連れてきてくれた助っ人はもう1人いるんだった! まだ話していないそのもう1人を見る。
ピンクの髪をした小柄な男子。見たことないし1年生かな? 邪魔しちゃ悪いと思ってるのかタイミングを伺ってるみたい。
「キミも手伝ってくれるの?」
「は、はい!」
そう話しかけると顔がぱっと明るくなった。少しかわいいな。
「はじめまして! 僕は1年の
「わぁ……! 凄く礼儀正しいんだね♪」
「えへへ」
「というか、伊助にいちゃんって……」
「あぁ、眩期は俺の親戚なんだ」
「そうなんですね」
「よろしくね芽野くん!」
「はい!」
「よし、それじゃあ挨拶も済んだことだし作業の分担を発表するぞー」
「はーい」
「音響係としてヒデコさん。ライト係に眩期とフミコさん。集客、接客係に紀伊山くんとミカさん。高坂さん達は音響、ライト係と協力してステージ準備の方をよろしく。俺は全体的にまわりながら手伝っていくよ。みんなOK?」
「「「はい!」」」
「よし、じゃあ開始! ヒデコさんは俺についてきて。機械の説明するから」
「わかりました!」
そうしてみんなそれぞれ作業に取り掛かりはじめた。だけど今の話で気になった事が1つ。
「ねえことりちゃん気付いた? 吉田先輩、ヒフミちゃんのこと全員下の名前で呼んでたよね!?」
「確かに……も、もしかして……!!」
「穂乃果、ことり。私たちも早く準備しますよ!」
「「はーい」」
という事でステージに上がる。それから立ち位置チェック、音響チェック、ライトの流れや振り付けの確認などを済ませていく。みんなに手伝ってもらったおかげでスムーズに準備は進んでいき、後は着替えて開演を待つだけとなった。
「みんな着替えた? 私は着替えたよ! ほら!」
そう言いながら更衣室のカーテンから飛び出す。そこには既に着替え終わったことりちゃんがいた。
「わあっ穂乃果ちゃんかわいい! 似合ってるよ♪」
「えへへ、ことりちゃんも似合ってるよ!」
「ありがと♪ あとは海未ちゃんだけど……」
まだ海未ちゃんの姿は見えない。まだカーテンの中で着替えているんだろう。
「す、すみません……着替えてはみたのですが、やはり恥ずかしくて……やはり私にはこんなフリフリの服は無理かもしれません……」
「大丈夫だよ! ほらはやく見せて見せて」
「うう……」
カーテンから海未ちゃんが渋々出てくる。青い衣装が海未ちゃんの性格や髪色に合っていて凄くかわいい。
「凄い似合ってるよ! ねぇことりちゃん」
「うん! 私の見立て通り、すっごくかわいいよ♪」
「2人とも……」
「この最高の衣装でお客さんたちを楽しませよう!!」
「……はい!」
「うん!」
そして3人で幕の閉じたステージに立つ。
「……そろそろはじまるんだね」
「そうですね……」
ふと海未ちゃんの方を見ると手が震えていた。それもそうだろう。この私でも緊張してるんだ、真面目な海未ちゃんはきっと私より緊張してるに違いない。
緊張を和らげるために2人と手を繋ぐ。
「大丈夫だよ。ここまで色々頑張ってきたの思い出そう? 毎日3人でレッスンして、振り付けも歌詞も衣装も頑張って作った。宣伝もみんなでやったし、今もみんな手伝ってくれてる。チラシ配りの時、応援してくれた人もいたよね……」
「穂乃果……」
今までの準備を思い出す。笑ったり、辛いときもあったけどみんなのおかげでここまでやってこれた。
「このライブにはいろんな人の思いが詰まってる! これだけ頑張ったんだし、絶対上手くいくよ!」
「穂乃果ちゃん……」
これらの努力を無駄にはしたくない! だから……
「私たちのファーストライブ、最高のライブにしよう!」
「うん!」
「もちろんです!」
思い返して自信がついたからか、心をひとつにしたからか。いつの間にか緊張は収まっていた。
開演のブザーが鳴る。
客席、どれくらいの人が来てくれてるかな? 楽しみだな……
2人と手を離し、期待を膨らませながら幕が開くのを待つ。
そしてカーテンが開く。
しかし。
そこに広がっていたのは無人の客席だった。
すぐには状況が飲み込めなかった。あれ? これリハーサルだっけ? 時間告知間違えちゃったとか?
だが、外から入ってきた吉田先輩の言葉で現実を受け止めることとなる。
「……ごめん……手は尽くしたんだけど……部活勧誘に生徒、取られたみたいだ……紀伊山くんはまだ頑張ってくれてるみたいだけど………俺の考えが甘かった……本当に申し訳ない……」
その瞬間、今までの準備の全てが頭の中を駆け巡る。あれは全部無駄だったって事? みんなの協力も、頑張りも、何もかも……やっぱり、初心者の私たちがいきなり見様見真似でスクールアイドル始めるのは無理だったって事? そりゃそうか。最初に海未ちゃんも言ってたじゃないか。その通りだ。何を舞い上がっていたんだ私は。
「あはは……そうだよね! 世の中そんなに甘くない……!」
「穂乃果……」
「穂乃果ちゃん……」
空元気でなんとか明るく言い放つが、もう限界だ。顔が歪む。涙が滲み出す。膝が折れそうになったその時。
講堂の両側の扉が勢いよく開いた。
「はぁ……はぁ…………あ……あれ? ライブは?」
そう言いながら右側の扉から息をあげて入ってきたのは昨日のチラシ配りの時海未ちゃんに声をかけていたメガネの子。
そして左側の扉から入ってきたのは────
「ま……間に合った……のか……?」
楽人くんだ。なんで!? 学校には入れないはずなのに……
いや、それもだけどそれよりもっと驚く事が1つ。楽人くんの背中に人影が見える。あの白髪、まさか……
「さ……幸くん……!?」
──────────────
目を覚ますとそこはリビングだった。
「幸!!!」
兄ちゃんが駆け寄ってくる。
「大丈夫か!? 朝降りてきたら玄関で倒れてたんだよ。誰かに何かされた? それともまた挑戦してみたのか?」
そうだ。どうしても初ライブを見に行きたかった僕は数年ぶりに外出に挑戦し、失敗したのだ。
「うん……またダメだった……」
「そうか……でも無理はしないでくれ……兄ちゃん、心配しちゃうからさ」
「ごめん……」
心配かけてしまったことを反省しながら時間を確認する。長い間意識を失ってしまっていたようで、時計は既に午後を指していた。
「穂乃果ちゃんたちのライブって……」
「ん? あぁ、あと30分くらいで始まるね。上手くいくといいなぁ」
ここから音ノ木まで約50分くらいかかると聞いた事がある。もうどんなに頑張ったところで間に合わないだろう。
穂乃果ちゃんたちのファーストライブ、見に行きたかったなぁ……
落ち込んでる僕の様子を気遣ってか兄ちゃんが励ましてくれる。
「今回は僕も行けなかったけどさ、もし行けたら動画撮ってくるよ。だからそしたら幸もみんなで一緒に見ようよ。ね?」
それは優しい提案だった。でも、僕はその言葉で気付いてしまう。僕が外に出れない限り僕は本番を直に見ることはできないということに。なんで僕は外に出られないんだ。どうして体は動いてくれないんだ。せっかくの穂乃果ちゃんたちの晴れ舞台なのに、僕のために頑張ってくれているのに僕には何も、見届けることすらできないのか。悔しさが込み上げてくる。
「………きたぃ……」
「?」
「みんなのステージ……見に行きたいよぉ……!!」
「幸……」
涙が溢れて止まらなくなる。僕だってみんなの役に立ちたい。みんなの頑張りの結果を直に見たい。でもその気持ちに身体がついてきてくれないこの状況に、この無力感に、どうしたらいいのかわからない。その場に崩れ落ちる。
「……幸。どうしても見に行きたいんだね?」
「うん……!」
すると兄ちゃんが一言。
「わかった。兄ちゃんに任せろ」
そう言うと兄ちゃんは僕のことをいきなり背負った。
「しっかり掴んでるんだよ。あと、目も瞑っておいた方がいい」
必死に腕に力を入れ、瞼をぎゅっと閉じる。
それからはどうなっていたのかあまりわからない。でも僕が怖くないようにちょくちょく話しかけてくれていたのは覚えている。途中から風を切るような感触があったから多分バイクでも使ったんだろう。
そして今。
「ま……間に合った……のか……?」
目を開くとそこは知らない建物だった。人はほぼいない。
「さ……幸くん……!?」
声の方を見るとステージの上に人影が3つ。穂乃果ちゃんたちだ。
彼女たちは少しの間呆然としていたが、すぐに真面目な表情になり、穂乃果ちゃんが一言。
「やろう……歌おう! 全力で!! だって、そのために今日までやってきたんだから!!!」
「……うん!」
「ええ!」
そうして彼女たちのファーストライブは始まった。僕はその圧倒的な魅力に、外に出る事ができた事実にも気づかずにただただ見入っていた。
──────────────
────そのライブを見た者は学内の生徒数百人のうち、たったの十数人しかいなかった。
「…………!」
ある者は無言で、ただひたすら夢中に見入っていた。
「ふわぁぁ……!」
ある者は目を輝かせ声を漏らした。
「……うぐ……」
ある者は感激の涙を流した。
「……ふぅ」
ある者は彼女たちがライブをやり切れたことに安堵した。
「……」
ある者は何も感じなかった。
「だからこうなると思ったんだよ……」
ある者は悔しさを呟いた。
「ゼッタイ認めないんだから……!」
ある者は彼女たちに憤怒を抱いた。
「…………」
ある者は彼女たちのこれからを見定めるかのように冷静に見つめていた。
「「「ありがとうございました!」」」
ライブが終わり、客席から拍手が沸き起こる。
やりきった顔の穂乃果たちの前に近づく人影が1つ。絢瀬絵里生徒会長だ。彼女は穂乃果たちに問いかける。
「どうする気?」
「続けます」
即答する穂乃果。
「この人数よ? 私には意味があるとは思えないけど」
まわりを見渡しながらそう言う。しかし穂乃果は動じない。
「やりたいからです! 私今、やってよかったって思ってるんです。きっと2人もそう。……もしかしたらこれ以上誰も見向きもしないかもしれない……誰も応援してくれないかもしれない……でも! ここにいる人たちには届きました!」
そう言って穂乃果は会場のみんなを見つめる。
「これからも頑張って頑張って、私たちがここに立つこの思いをもっともっと届けたい!」
そして最後に一言。
「私たち、いつかここを満員にしてみせます!」
これは、彼女たちの始まり。
彼女たちが世界一のスクールアイドルになるまでの第一歩目だ。
3人称、ムズェ〜!!
ここまでお読みいただきありがとうございます!!
第1章、これで完です! 早かったですね!
最後らへんいい感じにしようとしてあんな感じにしてみましたがどうでしょうか。なんとも言えませんね。
さて、これでずっとウジウジなってた幸くんが外に出る事ができました!(人のおかげだけど) なのでここからは少しずつ彼も明るくなってくると思います。ヤッター!
続きはキリがいいとこまで書き溜めたらになります! 予想はPV撮る回くらいまでですかね。今ストック完全に0というかむしろギリギリ書いたところなので頑張らないとですね。感想、評価、お気に入りを貰えると嬉しくなって続きが出るのが早くなります! ぜひお願いします!
あ、あと芽野くんが出たので絵が追加されました! キャラ紹介から見ていってね!
それでは2章、部活立ち上げ編をお楽しみに!