世界に愛された元徳者と世界を憎みし原罪者 ー世界を憎みし少年とその少年より生まれし九つの罪の王と罪徒となった少女達・世界に愛された少女達と聖徒に選ばれし少女達ー   作:オフィユイケウカス・ェンムピツサカ

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infirmi Die unterdrcken

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

タダでさえ危うい立場のハジメが

ステータスプレートが移されないという

前代未聞のハプニングによって、さらにその立場が

危うくなってしまう事態になってしまってから二週間が立ち

 

ある意味その騒動の中心に立たされてしまっている少年

 

南雲 ハジメ

 

 

彼は自分達の訓練を指導してくれている

メルド団長のご厚意の元、様々な王国お抱えの職業の元に

見学や体験をさせてもらっていた、しかしそこでもトラブルがいくつも発生する

 

何と、彼がそのさいに力を使わせてもらうとすると

突然その場に居る者や作業に使っている魔力が突然封じられてしまい

そこでの作業の続行ができないようになってしまうと言う現象が起こり

 

そのせいで作業が滞ってしまうという事態をひきおこしてしまう

 

なおそのトラブルもなぜかハジメがいなくなると続行できるようになり

作業の方の遅れの方もしばらくしてから、落ち着いていく事ができたものの

 

その代わりにハジメは作業場への出入りの禁止を言いわたされてしまい

 

ハジメはクラスメートからだけでなく

王城関係者の大半からも疎まれることになった

 

幸いにもメルド団長や一部の者のおかげで

その実の安全の方は保障されているものの

 

何かが起こったらそれこそハジメは王城から追い出され

いいや、最悪の場合処刑されてしまうかもしれない立場になってしまっていた

 

だが、そんな彼でも落ち着いて過ごすことの出来る場所があった

 

それは

 

「…あ、いらっしゃいハジメ君

 

 今日も来てくれたんだね…」

 

「先生…失礼します…」

 

有る場所に来たハジメのことを出迎えてくれたのは

見た目は彼と同い年だが、この王城の図書室の司書を務めている女性

 

シュガー

 

 

なんだか甘そうな名前をしているなと感じたものの

まあ異世界なのだから気にしてはいけないだろうと考えていた

 

最初はクラスメートや王城の関係者の嫌な視線から逃れるために

入り込んだのだが、そんな時に彼に気さくに話しかけてくれたのが彼女である

 

ハジメはこの世界の人々の第一印象があまり良くなかったこともあり

最初のうちは警戒心をあらわにしていたものの、彼女の気さくで砕けた人柄

 

さらには、ハジメにお勧めの本を勧めてくれたりと

今となってはハジメにとって心を許せる数少ない人物の一人となっていた

 

「そんなにかしこまらないの

 

 先生はいつだってハジメ君のことは大歓迎なんだから

 

 あ、そうそう、もうお友達が来てくれてるよ」

 

「お友達…?」

 

ハジメがそう言って辺りを見回していると

 

シュガーの後ろの方から近づいてくる一人の人物が

それはハジメにとっては嬉しい意味で意外な人物であった

 

「あら、やっぱり今日も来ていたのね…」

 

東雲 渚沙

 

 

七大天使に数えられる美少女で

この世界において、天職を二つ持っているものの

ステータスが低く、技能も必要最低限しかないために

他のクラスメートに比べると立場は低い方に値する彼女

 

しかし、彼女自身特にそれを気にしている様子はなく

この世界においても変わらずにハジメの事を気にかけてやっている

 

彼女も物心ついたときにはこの図書室に来ており

彼女もまたシュガーと話が合うようになり、三人でよく話をしていた

 

「ところで南雲君…

 

 ずいぶんと疲れている感じがするけれど

 夜の方はしっかり眠れているの、体壊すわよ」

 

「ごめん、気を付けてはいるんだけれど

 ここ最近本当にあんまり眠れてなくって…」

 

「…そっかそっか…どうやら経過は順調のようだね…」

 

「‥‥何か言いました、先生?」

 

「へ、ううん何でもないよ

 

 だったら今日は読みたいとか興味のある本を選んで

 仮て言ったらどうかな、そうすれば少しは身体を休めるかもしれないよ?」

 

「ありがとうございます、それじゃあ今日はそうさせてもらいます」

 

シュガーの心遣いに感謝し前々から読みたいと思っていた本や

ふと見て興味を抱いた本などをある程度借りていこうと思ったハジメ

 

向こうの世界ではハジメの味方もそれなりにいたが

彼はそんな存在を知る由など無いためか、信頼できる相手は渚沙しかいなかった

 

こっちの世界においてもステータスプレートにステータスが表示されないと言う

前代未聞のハプニングに始まり、さらには彼が訓練に参加するとなぜか周りの者が

使えたはずの能力が使えなくなるというトラブルが起こってしまい、それが原因で

王城の関係者にも疎まれるようになってしまい、リリィとへリーナを始めとする者が

彼の味方でいてくれているのだが、むろん、ハジメには知る由もないのであるのだが

 

まあそんな一部の人物のおかげで

ハジメはこんな不遇な立場に立たされながらも

腐ることなくしっかりとやっていっているのだった

 

やがて、回りの視線にさらされてしまっているストレスで

ここ最近寝付けなくなっているせいで疲れがたまりにたまっていたので

シュガーのご厚意に甘えることにして一部の本を借りて部屋で休むことにする

 

「うん…?」

 

すると、ハジメは不意にある場所を見つけた

 

そこには扉が半開きになっており奥の方は、真っ暗で何も見えない

 

「南雲君…?」

 

そんな彼の姿を見つけて目をやっていく渚沙

 

「っ!?

 

 待って南雲君!

 

 そこは禁書が保管されている部屋!!

 

 立ち入り禁止の場所よ!!!」

 

渚沙は慌てて、ハジメを止めようとするが

ハジメはそんな渚沙の制止も聞かずに開かずの間に入り込んでいく

 

渚沙もやむおえずに後を追ってその部屋に入っていき

急いでハジメの姿を探して至る所を探していくが見当たらない

 

ハジメは暗い部屋の中にうっすらと見えている

たくさんの本棚にびっしりと詰められている本に眼もくれず

 

奥の方に立てかけられているように

展示されているような二冊の本を見つける

 

「やっと追いついたわ…

 

 ってあれは‥‥一体…?」

 

ようやくハジメの姿を確認して、彼のもとに走り寄っていく

すると不意にハジメの視線の先にある、二冊の本に眼を向ける

 

「……」

 

ハジメは二冊並んでいるうちの左側の本にゆっくりと手を伸ばしていく

 

「っ!?

 

 ちょっと待ちなさい、南雲君!」

 

ハッと我に返り、本に手を伸ばしていくハジメを引き留めようとする渚沙

だがハジメはそれよりも先に本を手に取って、その本を開いていくのであった

 

すると

 

「…っ!?

 

 うぐ!?

 

 ぐうううう!!!

 

 うああああ!!!」

 

ハジメは突然頭を押さえて苦しみだした

しばらくボケッとしていた渚沙も慌ててハジメの方を向く

 

「南雲君、しっかりして!

 

 南雲君!!」

 

頭を押さえて、その場に蹲るハジメに必死に呼びかけていく渚沙

 

そんなことに気づけないほどに大きく叫んでいるハジメの脳裏には

断片的だが様々なイメージが映し出されて行く、底に映し出されたのは

 

九つの異形の姿をした何か

 

断片的なうえに頭痛が激しいのでそれが

どんなものなのかは具体的にわからなかったのだった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「はっ!?」

 

ハジメは頭痛が収まり、気が付くと

医務室のベッドの上に寝かされていた

 

「はあ…はあ…はあ……」

 

彼は起き上がって、あの激しい頭痛のさなかに浮かび上がった

ヴィジョンを不意におもい返していった、あんな目にあっても

その様子をしっかりと覚えているのはさすが、と言うわけでもなく

 

彼自身にもよくわからず、鮮明に覚えているのだ

 

一体あの九つの異形は何だったのか

どうしてあんなものが自分の脳裏に浮かび上がったのか

 

そんなことを考えていると不意に扉の方が開き一人の女性が入っていく

 

「お目覚めになったようですね、南雲様」

 

その女性は侍女、すなわちメイドの格好をしている女性であった

 

「…貴方は確か、リリィの傍にいつも控えてた…」

 

「‥‥そう言えば、こうして面を向かってお話をするのは初めてですね‥‥

 

 私は、リリアーナ王女殿下の専属侍女のへリーナと申します‥‥

 

 改めて、よろしくお見知りおきを‥‥」

 

そう言って丁寧に頭を下げていく少女、へリーナ

 

「…僕は一体、何があって…」

 

「‥‥ハジメさんは、昨日禁書庫の中に入って急に倒れられたんです

 そこを渚沙様と司書の方がここまで運んでくださったのです、しばらくは

 暴れられて、お二人共本当に大変だったとぼやいていましたよ?」

 

「あははは…」

 

へリーナにそう言われて申し訳なさそうに苦笑いを浮かべていくハジメ

 

「‥‥それにしても、一体何があったのですか?

 

 話によると、禁書庫の奥にあった本を見て急に頭を押さえて暴れだしたとか‥‥」

 

「えーと、その…」

 

ハジメはやや説明に困ってしまい

とりあえず自分なりにへリーナに話してみる

 

「‥‥なるほど、禁書庫にあった本を見ると

 頭の中に何やら異形の何かが浮かんできた‥‥

 

 にわかには信じがたい、いいえよくわかりませんね‥‥

 

 何せ、そう言った前例がないものですから‥‥」

 

「…そうですか…

 

 しかし、あんなふうに錯乱気味になったのに

 その時に浮かんだそのシルエットが何でか鮮明に残っているんですよね…」

 

そう言って自分の頭を押さえるようにして触る

 

「‥‥まあ、何にせよ

 

 しばらくはここにいてもらいますよ

 

 まだ体の調子が治っていないと思いますし‥‥」

 

「…わかりました…」

 

へリーナに進められて、とりあえず安静にすることを決めたハジメ

 

こうして、しばらく安静にすることで

だいぶ体のだるさがなくなっていき、動ける分にはよくなったハジメ

 

しかし、彼は知らなかった、この出来事は偶然ではなく

仕組まれた運命であると言う事、さらに彼に迫っていく

破滅への第一歩であると言う事、それらは着実に迫っていた

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ところ変わって、ある少女達の視点

 

一人の少女が歩いていると、そこに一人の少女が

 

「渚沙ちゃん!」

 

そう言って話しかけてきたのは一人の女子生徒

 

白崎 香織

 

 

彼女が話しかけていったのは

クラスメートの中で数少ない、ハジメが心を開いていた相手

 

「‥‥白崎さん…?」

 

東雲 渚沙

 

 

彼女であった

 

「その‥‥渚沙ちゃんに聞きたいことがあって…」

 

「‥‥南雲君の事?

 

 彼だったらもう体調はよくなったって聞いたけど?」

 

それを聞いて、香織はよかったとホッとしたような表情を浮かべていく

 

「ようはそれだけ?

 

 だったらそろそろこれで…」

 

「あ、待って!」

 

渚沙はそう言って去ろうとしたのを香織が止める

 

「‥‥なに?」

 

「えっとね‥‥その…えっと‥‥…」

 

香織は引き留めたものの

何から話していけばいいのかわからず

口ごもった様子を見せていってしまう

 

香織はハッキリ言って渚沙が羨ましいのだ

想い人であるハジメから一定の信頼を抱かれている

 

香織の方も、昔はハジメとそれなりに交流があったが

あの事件以来すっかり距離を置かれてしまっているのだ

 

だが、香織自身それに関しては何も言っていない

その件に関しては香織自身に原因があるがゆえに

 

しかし、だからと言ってこのまま

距離を開けているのはいけないとも感じている

 

だから、向こうの世界にいた時から今に至るまで

ハジメとそれなりに距離を縮めていきたいと思っている

 

もちろん、好きな男性とお近づきになりたいという気もある

 

だがそれともう一つ、自分はハジメの味方であるのだと知ってほしいのだ

 

ハジメの味方は想像以上に少ない、あの事件以来は光輝の影響力もあって

クラスではまるで仇を見る様な敵意を向けられており、そのせいでハジメは

クラスメートからは当然、他のクラスや他学年、教師や保護者からも疎まれている

 

香織をはじめとして一部の者はそんな光景をよく思っていない

だからこそ同に貸したいと雫や姫奈、風香とともにどうにかしようとしてきた

 

そして、この異世界に飛ばされても彼はステータスが表示されないこと

彼の周りでなぜか魔力が発動されないなど、不可思議な現象が起こっていき

 

そのせいでハジメが、王城の関係者達からも

爪弾きにされてしまっているのを、さすがに香織も気付いている

 

だから、渚沙に助力を頼みたいと思っているのだが

いかんせん渚沙は基本的に誰とも積極的にかかわろうとはしていない

 

故に、どう話をしていけば分からないのだ

 

「‥‥はあ…

 

 別に普通でいいわよ…だから早くしてくれる…?」

 

「う、うん…

 

 その‥‥渚沙ちゃんにね、南雲君との仲を取り持ってほしいの…

 

 私、今のように南雲君が理不尽な扱いを

 受け続けているのをどうにかしてあげたくて…

 

 別に男女の仲にうなりたいわけじゃない、ううんできれば鳴りたいけど…

 

 ただ、南雲君に分かってほしいの、私は南雲君の味方なんだって…

 

 私のように南雲君のことを気にかけている人はいるんだって、だから…」

 

香織は頼み込もうとするが、渚沙は即座にかえす

 

「‥‥申し訳ないけれど、貴方に協力することは出来ないわ」

 

「え…!?」

 

真坂の拒否の言葉に香織は驚愕の表情を浮かべていく

 

「‥‥本当に彼の支えになりたいと思っているなら

 誰かに頼るのではなく、自分の力でやってみなさい

 

 誰かに頼っていい結果を得たところで、長続きはしない…

 

 強力はしてあげるけど、手伝うことは出来ないわ…

 

 本当に彼のことを支えたいと思うなら

 自分の力で彼と向き合って見せなさい…」

 

「で‥‥でも、南雲君と話そうと思っても無視されちゃうし…」

 

「‥‥だから何だっていうの?

 

 それで、南雲君と向き合う努力をあきらめるっていうの?

 

 だったら彼の事なんて諦めなさい

 半端な覚悟で南雲君と向き合うくらいなら

 その方がむしろ、南雲君のため、もしもその覚悟が

 半端なものじゃないって言うなら、それを彼に示してみなさい」

 

渚沙は香織にぴしゃりと言い放っていく

 

「渚沙ちゃん…」

 

香織は不思議とそんな彼女の言葉を聞いてしばらく呆けていたが

暫くすると香織はなにかを決意したように真剣な表情を浮かべていく

 

「そうだね‥‥渚沙ちゃんの言う通りかも…

 

 私、自分でも気が付かないうちに誰かに頼るのが当たり前になってた…

 

 でもそれじゃだめだよね‥‥このくらい、自分の力でどうにかしないと…

 

 南雲君を支えるなんてこと‥‥できないもんね!」

 

そう言って前向きな姿勢で決意を大きく表していく香織

 

「ありがとう渚沙ちゃん、私、とにかくやってみる!」

 

「‥‥ええ、あんまり暴走しすぎないようにね…」

 

そんな微笑ましい会話をしていった後に渚沙は訓練場に向かうのだった

 

そこには誰も来ていないので

借りて来た本でも読んで待っていようかと考え

もってきていた本を開いて目を通していく、すると

 

「っ!」

 

渚沙は不意に後ろの方から抑えられ

口を防がれ、身動きがとれなくなってしまう

 

ふいに視線を向けると、そこにいたのは

 

「へへへ、悪いけどついてきてもらうぜ」

 

不良男子生徒四人グループの一人

 

近藤 礼一

 

 

彼はそう言って渚沙を無理やり

人気のないところにまで連れていく

 

そこには

 

「よお、東雲ぇ~?

 

 随分と久しぶりにあったなぁ~?」

 

不良男子生徒四人組のリーダー

 

檜山 大介

 

 

更にその両側には

 

中野 信治

 

 

斎藤 良樹

 

 

三人の姿があった

 

「‥‥あんた達…これは一体何の真似…!?」

 

「決まってんじゃん、俺らがこれから

 役立たずのお前に直々に訓練を付けてやんだよ

 

 所謂、親切心って奴さ」

 

「でも俺らってさ、女に手を上げる趣味はないからさ

 

 東雲にはかるーく相手をしてもらえればそれでいいんだよ」

 

「そーそー、何より別に俺ら東雲に恨みがあるわけでもねえし?

 

 だからさ、頼まれてほしいんだよ」

 

鋭く睨みつける渚沙に檜山達は下卑た笑いを浮かべていく

 

「‥‥頼まれてほしいですって?

 

 私にいったい何を要求させるつもりなの…?」

 

「それはさ、南雲を俺らのところに連れてきてほしいんだわ

 

 いっつも俺ら南雲の事を訓練に誘おうと思ってんだけどさ

 あいつここ最近どうにも慎重になってきてさ、それでアイツと仲のいい

 お前に連れてきてほしいんだよ、お前の誘いだったらアイツも来てくると思うしさ?」

 

渚沙にそう言って下衆な要求をしていく彼らに、心底軽蔑の感情を抱き始めていく

 

「‥‥卑劣な男…

 

 そんなのやってって言われて私がやると思う?

 

 私が貴方たちの言う通り、南雲君と仲が良くとも

 良くなくとも、貴方達のそんな最低な要求を呑むわけないじゃない

 

 そんな風だから、白崎さんに振り向いてもらえないのよ」

 

「…てめえ、役立たずの雑魚のくせに随分とでかい口を叩くじゃねえか…

 

 俺らの言うこと聞けねえっていうんなら、力づくにでも聞かせてやるよ!」

 

渚沙のすました態度に虫の居所が悪くなったのか、手を上げようとする檜山

 

「‥‥っ!」

 

渚沙は近藤からの拘束を逃れ、向かってくる四人に

蹴りと掌底をそれぞれ食らわせていき、吹っ飛ばしていく

 

「‥‥女だからって、甘く見たからそうなるのよ…」

 

「てめえ‥‥」

 

身体を鳴らしてほぐしていく渚沙に

檜山達四人はさらに虫を悪くしたのか、怒りの表情を見せていく

 

「‥‥悪いけれど、私は貴方達のくだらない

 憂さ晴らしに付き合うつもりなんてないわ…

 

 そういうわけだから失礼させてもらうわ…」

 

そう言ってその場から去ろうとする渚沙だったが

ふいに足元に何かがふるわれて、それによって渚沙はバランスを崩していく

 

「‥‥っ!?」

 

その犯人は近藤、彼が武器である槍を使って

渚沙の足を払ってバランスを崩させたのだ

 

「‥‥ちい!」

 

渚沙はそれを受けても持ち前の身体能力を使って

身体を一回転させ体制を整える、擦るとそこに中野と斎藤が

炎の魔法と風の魔法を放っていく、渚沙はそれをかわしていき

そのままその二人の方に迫っていき、それぞれにアッパーと膝蹴りを食らわせる

 

「ぐあっ!?」「ああっ!?」

 

二人はまたも吹っ飛ばされていき、地面に倒れこむ

 

「‥‥まだやるつもり?

 

 こんどはこっちからも行かせてもらうよ?」

 

そう言って近藤が持ってい槍を拾い上げ、残った檜山の方を見る

 

「こ、このクソアマ!

 

 調子に乗ってんじゃねえぞ!!」

 

そう言って剣を手に勢いよく切りかかっていく

 

「‥‥ねえ、知ってる?

 

 剣で槍にあてるには三段の構えが必要だって」

 

「あ?

 

 んだよそれ‥‥」

 

かわしつつそう言って行く渚沙に檜山は首を傾げるも

特に気にすることもなく、再び剣をふるって行く、彼の天職

軽戦士は力よりも早さの方に特化している天職故に攻撃の切り替えしが早い

 

それを生かして、素早く攻撃を渚沙の方にへと向かって振るって行く

 

「ひい!」

 

だが、攻撃は簡単にいなされ、さらに

檜山の喉元に槍の柄頭を突き付けていく

 

「‥‥槍は長い分、剣よりもリーチがあるの…

 

 そのリーチを上手くかいくぐって

 攻撃を当てるのに必要な距離なんだよ?

 

 でも、今の今まで剣を握ってこなかった貴方に

 そこまでの技量はない、天職や技能に頼っているだけなら、なおさらね」

 

「…へ、へへへ‥‥

 

 そんな風に粋がっていられるのも今のうちだぜ!」

 

そう言って檜山は槍を掴む、さらに

 

「‥‥っ!?

 

 しまった!?」

 

さらに両腕を使かれて抑え込まれる

抑え込んでいる犯人は中野と斎藤であった

 

「はあ…はあ…やっと取り押さえたぜこのアマ……」

 

「へへへへ‥‥随分とやってくれたじゃねえか…たっぷり礼をさせてもらうぜ!」

 

そう言って渚沙を地面に押し付ける中野と斎藤

さらに、抑えるように檜山が渚沙に馬乗りになる

 

「…ここまで来たらもうやけだ

 

 俺らに楯突いたらどうなるのかたっぷり思い知らせてやる!」

 

そう言って服をはだけさせていく檜山

それによって渚沙の肌が露わになっていき

胸を覆っている白いブラが露出していった

 

「‥‥っ!」

 

渚沙もこれから自分が何をされるのか理解し

必死に抵抗しようとするが腕を中野と斎藤に押さえつけられ

檜山に馬乗りされているせいで身をよじることも出来ないうえに

さらに足の方もむなしくばたばたさせるだけで何の役にも立っていない

 

やがて檜山があらわになった渚沙のブラを手に欠けようとしたとき

 

「やめろおおお!!!」

 

そんな声が聞こえると、横から飛び出してきた誰かが

檜山達三人を勢いよくぶっ飛ばしていき、渚沙は解放される

 

檜山達をふっとばしたその人物は

 

「はあ‥‥はあ…東雲さん、大丈夫!?」

 

「‥‥南雲君…」

 

息を切らしたハジメであった

 

「東雲さん、速くここから離れて!」

 

「‥‥何言ってるの!?

 

 ハジメ君はどうするの!」

 

渚沙は驚いた様子でハジメに反論する

 

しかし

 

「なあああぐううううもおおお!!!!」

 

檜山がものすごい怒りの声でハジメに向かって行く

 

「うおっぷ!」

 

檜山は力いっぱいハジメを押さえつけていく

 

「ぐう…」

 

「…よお、南雲~?

 

 この世界に来てから随分とご無沙汰だな~?

 

 俺たちが誘おうと思っても機会に恵まれなかったからな~

 

 まあ、そっちから来てくれたのは嬉しいぜ!」

 

そう言ってハジメの顔を思いっきり殴りつけると

倒れていたハジメを無理やり引っ張り出していく

 

「おらあ!」

 

「があ!」

 

檜山はそう言ってまるでさっきまで渚沙にやられた苛立ちや

渚沙の体によるお楽しみを邪魔された怒りをぶつけていくかのように

ハジメを殴ったりけったりしていき、ハジメの顔はひどくはれ上がっていく

 

「このキモオタ野郎が!

 

 いっつもいっつも、俺の邪魔ばっかりしやがって!!」

 

「ぐぶ!」

 

何度も何度も執拗に顔や腹など

殴られると苦しい部分ばかりを狙われて行く

 

「そうだ、全部てめえのせいだ!

 

 てめえさえいなきゃ、すべてうまくいってたんだ!!」

 

「ああ!」

 

そして、檜山は手に剣を大きく振りかざしていく

 

「お前みてえな奴がこの世に存在すること自体、間違ってんだあああ!!!!」

 

「うがああああ!!!」

 

檜山の振りかざした剣がハジメの体を思いっきり切り裂いた

 

その衝撃と痛みによって、ハジメの意識はフェードアウトしていき

段々と周りの景色を認識していく事は出来なくなっていったのだった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「う‥‥うん…」

 

気が付くと、そこは以前にも見たベッドの上であった

違うのはあたりが隔離されており、全身に痛みが発していたこと

 

全身が包帯でぐるぐる巻きになっていたことだ

 

「いっつ~…

 

 確かあの時…檜山君にボコボコにされて…」

 

そう言って今、おかれている状況を整理していくハジメ

すると、ハジメの元に一人の少女が入っていく、その少女は

 

「っ!?

 

 ハジメ君!」

 

白崎 香織

 

 

何と、彼女であった

 

「…白崎…さん……?」

 

「あ‥‥うああああ…うわああああん!!!」

 

香織はゆっくりと起き上がったハジメに勢いよくだきついてきた

 

「うわああああん!!!

 

 バジメぐううううん!!!

 よがっだよおおおお!!!」

 

「いだだだ!!!

 

 ごめん、ちょっと離れて

 すっごい身体痛い、痛いからあああ!!!」

 

号泣してハジメに抱き着く香織にそのせいで

全身がさらに痛みに襲われてまたも気を失いかけるハジメ

 

香織はハジメの悲痛な叫びを聞いて

ハッと我に返るようにハジメを介抱する

 

「ご、ごごごごごめん!?

 

 ハジメ君の意識が戻ってきたのが嬉しくってつい…」

 

「…いったたた…

 

 あーまた意識がフェードアウトしてくと思った…」

 

ハジメはゆっくりと痛みが戻っていくの感じていくのと

それに合わせて段々と気持ちが落ち着いていっているのも感じていた

 

「そ、そのごめん…

 

 南雲君、あの時から全然目を覚まさなかったから…

 

 本当に心配になっちゃって…」

 

「…う、うん、分かってる…わかってるから…」

 

香織を制止させるように右手を突き出して答えていくハジメ

 

「‥‥その…ごめんね‥‥…

 

 いっつもその‥‥南雲君に迷惑ばっかりかけちゃって…

 

 今回のことだって‥‥原因は私にあるし…」

 

「そんな、白崎さんが謝る事じゃないよ

 

 悪いのは檜山君やそれに便乗してる周りの人達なんだし…」

 

香織が謝っているのは、ひょっとして自分が

檜山のせいでひどいけがを負ってしまったからなのだと思い

 

香織自身は本当に悪くないので

頭を下げて必死に謝る彼女を諫めるハジメ

 

「‥‥ううん、だってそもそもナ南雲君が

 あんなにもひどい仕打ちを受けてるのだって…

 

 そもそも、私が南雲君に必要以上に構いすぎたせいだし…

 

 私がもっと周りのことを見て、考える事が出来ていたら

 もしかしたら南雲君はきっと普通に当たり前の生活を送ることが

 出来たかもしれないのに‥‥本当に…本当にごめんなさい‥‥…」

 

そう言って涙を浮かべながらなおも謝り続けていく香織

 

「…もういいよ、何度も言ってるけど

 白崎さんは何にも悪くなんてないんだよ…

 

 もとの世界のことだって、さっきのことだって

 白崎さんが直接手を下したわけじゃないんだし…

 

 それに、白崎さんが向こうの世界にいた時から

 僕のことを気にかけててくれてたのも気が付いてたから…」

 

「‥‥南雲君…」

 

涙を浮かべた顔を上げて、ハジメの方を見ていく香織

 

「…本当はしっかりと白崎さんとも

 話をしておきたいって思ってたんだ…

 

 でも、僕が白崎さんと関わってるとそれこそ周りがうるさくなるし

 だからいっつも突き放すような態度を取って距離を取るしかなかった…

 

 別に僕自身は気にしないけど…白崎さんが悲しむと思ったから…

 

 でも…僕の方も考えが至らなかったみたいだね…結局

 白崎さんの事悲しませちゃったし…本当にごめんね白崎さん…」

 

「そ、そんな‥‥ハジメ君が謝る事じゃないよ…

 

 寧ろその‥‥嬉しいよ、ハジメ君が私のことを

 気にかけてくれていたんだってことが分かって…」

 

ハジメの言葉を聞いてまだ涙を浮かべて居るものの

ハジメが自分のことも気にかけてくれていたのだと言う事が

分かって少し嬉しそうにしていく、そこで香織は少し話をしていく

 

「‥‥実はね、私が南雲君のことを知ったのは

 高校に入学したときじゃないんだ、私が南雲君に

 出会ったのは中学二年のころなんだ、あのころから…

 

 私は南雲君のことが気になったんだよ」

 

「中学…二年の時…?」

 

香織は話していく、彼女が

ハジメのことを知るきっかけになったときのことを

 

ガラの悪いチンピラ風の男の服を飲み物をもって

走り回っていた子供がぶつかってしまい、その男は

その子供とその子の祖母に絡んでいき、子供の方に

殴りかかろうとしたときに、颯爽と現れて子供とチンピラの間に

割って入って、チンピラの男を抑え込んでいき、おばあちゃんと子供を逃がした

 

結局ぼこぼこにされて、そこに駆け付けた警察によって無事に救急車で搬送された

 

全治数か月のけがを負ったものの、それでも無事におばあちゃんとお孫さんを

無事に助け出すことが出来たのでお見舞いに来てくれた二人に感謝されたのだ

 

「…そうだったんだ…」

 

「‥‥あの時の南雲君は本当にかっこよかった…

 

 一見すると一方的にやられちゃって

 みんなかっこ悪いって感じるかもしれない…

 

 だけどあの時、私や周りの人達が怖くて何もできない中で

 迷わずおばあちゃんとお孫さんを助けるために飛び込んでいった南雲君…

 

 すっごくかっこよかく映ってた、だから高校に入って南雲君のことを

 見かけたときは本当に嬉しかったんだ、だから私、南雲君と仲良くなりたいって…

 

 だけれどそのせいで‥‥あんな事件が起こってしまって…」

 

またも、香織は少し悲しい表情を浮かべていく

 

「‥‥あの事件の時は本当にショックだった…

 

 私はただ南雲君と仲良くなりたいって思っただけなのに

 ただそれだけなのに‥‥南雲君が一方的に悪者にされて

 

 本当に学校をやめた言って思うくらい‥‥ショックだった…」

 

「白崎さん…」

 

香織はしばらく表情を落としていたが

それでも、意を決したように顔を上げていく

 

「‥‥でも、雫ちゃんに

 

 ここで逃げちゃったら本当の意味で

 南雲君を助けることの出来る人がいなくなる

 

 そうなったら、いくら彼のような強い人間でも

 きっといつかはガタガタになっちゃう、彼が苦しんでいるのに

 自分だけが逃げてていいの、私の南雲君への思いはそんなものなのって

 叱られちゃって、それで私も私になりに南雲君のことを護ってあげようって思ったの…

 

 結果は散々だったけどね…」

 

「…そっか…

 

 なんかその…ごめんね…

 

 気を遣わせちゃったみたいで…」

 

「ううん、南雲君が悪いわけじゃないもん…

 

 それに、私がこうして南雲君のことを支えて

 あげたいっていうのは、私自身が決めた事なんだしね」

 

そう言って笑顔を浮かべていく香織に

ハジメは少々気恥ずかしくなってきたのか

貌を真っ赤にしながら顔をそらしていった

 

「私、決めたよ、もう自分に嘘をつくのはやめる!

 

 これから南雲君の傍にいて、南雲君の事‥‥しっかり守っていくから…

 

 だから南雲君、何かあったら私に相談してね、力になるから」

 

「…うん、ありがと…

 

 それじゃあ、その時はお願いね…」

 

香織はそう言ってハジメの手を優しく握って

ハジメはそれにどこか頼もしさを感じていた

 

すると、そこに

 

「‥‥随分と仲よくなってるみたいね…

 

 お邪魔だったかしら…?」

 

渚沙が入ってきたことに驚いて

香織は顔を真っ赤にして慌ててハジメから離れていく

 

「んな、なななな、渚沙ちゃん!?

 

 こ、こここここれはそのえーっと!!!」

 

「東雲さん」

 

「‥‥無事に意識が戻ってきたのね…

 

 いえ、目覚めなかった方がよかったかもしれないけど…」

 

ふいに洩らした渚沙の言葉に香織は反応する

 

「ちょっと渚沙ちゃん!

 

 何今の良いかた、ハジメ君が

 目を覚まさない方がいいってどういう事!?」

 

「‥‥実は相当まずいことになっているのよ…

 

 南雲君にとっては特に、ね…」

 

香織の少し怒りのこもった言葉に対して

渚沙は深く頭を抱えるように答えていく

 

それを聞いて香織は怒りが収まって真剣になり

ハジメ自身もただ事ではないと感じてしっかりと耳を傾けていく

 

「‥‥実は…」

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

ハジメが檜山の一撃を受けて気を失った後

 

「はあ‥‥はあ…はあ‥‥…

 

 ざまあみろ!」

 

そう言って気を失ったハジメに唾を吐き捨てる檜山

渚沙はさすがに見てられないと感じて駆け寄ろうとすると

 

「何やってるの!」

 

そこに時のこもった少女の声が聞こえ

一同が振り向いた、そこにいたのは

 

「やっべ!」

 

檜山達の想い人である女子生徒

 

白崎 香織

 

 

彼女とそのそばには同じように通りがかった数人の人物

 

天之河 光輝

 

 

坂上 龍太郎

 

 

中村 恵里

 

 

谷村 鈴

 

 

八重樫 雫

 

 

南野 姫奈

 

 

西宮 風香

 

 

その者達も現れる

 

「ハジメ君!」

 

香織はすぐさまハジメに駆け寄っていき

かれに治癒魔法を掛けようとするのだが

 

「‥‥あれ?

 

 魔法が発動しない…?

 

 何で、何で治癒ができないの!?」

 

なぜか魔力を発動することが出来ず

必死に手をかざして詠唱を唱えていくも

どうしてか魔法を発動することが出来ない

 

その後も何度も何度も魔法を発動させようとするが

 

「何で‥‥何で発動しないの…早くしないと、南雲君が‥‥…」

 

涙を浮かべて何度も魔法を発動させようとしている

 

「‥‥どいて香織!

 

 とにかく安静にできるところに運んでもらうから!!」

 

そう言って渚沙は呼んできた救護の人間に

気を失ったハジメを安静にできる場所に運んでもらっていく

 

「‥‥それで、一体何があったの?」

 

「詳しく聞かせて頂戴、まあ大体は予想がつくけれどね…」

 

雫が檜山達に事情を聞くが、姫奈の言う通り大体予想がつく

 

「あ、ああ、いや‥‥

 

 俺らさ、なかなか特訓に来ない

 南雲を訓練に誘ってやろうと思って

 

 それで渚沙に南雲に俺らの元に連れてくるように

 頼もうとしただけで別に深い意味はないんだけどさ‥‥」

 

「ふうん、要するに…

 

 いっつもいつも厳しい訓練を受けているのに

 一人だけ訓練を受けていない南雲君を疎ましく思って

 それで南雲君を連れだすために私たちの中でも比較的

 南雲君と仲のいい東雲さんに南雲君を連れてくるように言ったけど

 

 東雲さんにそれを拒否されてその腹いせに東雲さんに襲いかかろうとして

 そこをハジメ君に邪魔されてボコボコにして今に至る、そんなところかしら?」

 

姫奈の脅威的な洞察力に一同は舌を巻いていた

 

「だ、だから俺らはもともと南雲に訓練を付けてやるつもりで‥‥」

 

檜山はそれでも見苦しく言い訳をしていく

 

「‥‥けない…」

 

香織はふるふると体を振るわせて

必死に声をひねり出すように声を漏らしていく

 

「し、白崎‥‥!?」

 

「ふざけないでよ!

 

 訓練だからって何?

 

 訓練だったらあんなに

 南雲君のことをボロボロにしてもいいっていうの!?」

 

香織は怒りと悲しみを込めて怒鳴り声をあびせていく

 

「挙句の果てには見苦しい言い訳して恥ずかしいと思わないの!?

 

 他人を平気で傷つけて、貶めて、何とも思わないの!?

 

 どうして貴方達はそんなにも南雲君のことを目の敵にするの!?

 

 私が南雲君に積極的に話しかけるから?

 

 南雲君がオタクで普段の態度が悪いから?

 

 本当にいい加減にしてよ!

 

 そもそも、私が誰と仲よくなろうと私の勝手じゃない!!」

 

香織の怒りのこもった言葉が辺りに響いていく

 

「この際だからはっきり言わせてもらうよ檜山君…

 

 貴方が私のことをどう思ってるのかなんて

 知らないし知りたいとも思わない、だからこれだけ言わせてもらうね…

 

 私は貴方みたいに自分の責任も碌に背負えないような卑怯者の負け犬、大っ嫌い!」

 

ハッキリそう言い放つ香織

 

檜山は想い人である香織に

はっきり嫌いと言われてショックを受け

その場に呆然と立ち尽くしていたのだった

 

「香織、やめるんだ!

 

 檜山にそんなひどいことを言うんじゃない」

 

だが、そんな時に空気を読まないことをする者がいた

 

天之河 光輝

 

 

彼はそう言って檜山を庇護するような言い方をする

 

「何、光輝君‥‥檜山君たちを庇うような言い方して…」

 

「確かに檜山達はやりすぎたかもしれない…

 

 だが檜山達はあくまで訓練をさぼっている

 南雲の不真面目さをどうにかしようとしたんだ

 

 それで東雲さんに頼もうとしただけなんだろ?

 

 だったら檜山達はあくまで親切でやってくれたんだ

 

 なにより俺たちは仲間、仲間が仲間を陥れるような

 真似をするわけないじゃないか、遣りすぎたのは事実でも

 そこまでひどいことを言われるような云われはないんだよ」

 

光輝はそう言って檜山達ではなく

ハジメの方に問題があると遠まわしに言って行く

 

「わかった…

 

 それだったらもういいよ…」

 

香織はそう言ってその場を離れていこうとする

 

「香織、何処に行くんだ!?」

 

「南雲君のところに決まってるじゃない!

 

 こんなやつと一緒のところにいるくらいなら

 南雲君の傍の方がずっといいに決まってるじゃない!!

 

 言っておくけれど光輝君、ついてこないでね!!!

 

 ついてきたら絶交だから…」

 

そう言って訓練場をあとにしていく香織

 

「おい香織…!」

 

「やめなさい光輝…

 

 あんたが言ったって余計にこじれるだけよ…

 

 今はそっとしておきなさい…」

 

香織を引き留めようとする光輝を止める雫

雫はむしろ香織側なので、香織の気持ちを優先させたのだ

 

やがて、騒ぎと話を聞きつけた

メルドと騎士団にもろもろの事情を話していく

 

やがて、訓練を中断させたことに糾弾された檜山は

土下座をしてメルドや一同に必死に謝っていくのだが

 

その口から出てくるのはあくまで南雲に稽古をつけてやろうと思った

南雲が弱すぎて手加減してもボロボロになったなど、出てくるのは口八丁ばかり

 

香織にあんなことを言われたのにまったく何にも変わっていない

 

渚沙はそんな檜山達に呆れてものも言えず

さらに檜山に厳しい事を言い放とうとするのだが

 

そこに一人の人物が割って入っていった

 

「‥‥何やら随分と騒がしい様ですが、何かあったのですかな?」

 

イシュタル・ランゴバルド

 

 

教会のトップである教皇の老人である

 

「イシュタル殿、実は‥‥‥」

 

メルドが詳しい話をイシュタルにしていく

 

すると、それを聞いた

イシュタルの言葉は納得しがたいものである

 

「‥‥なるほど、でしたら檜山様方に厳重注意をしておきましょう‥‥‥」

 

「‥‥はあ!?」

 

イシュタルの言ったことは何と注意喚起

今後からは気を付けるようにと厳しく言いきかせる事

 

ただ、それだけである

 

「‥‥ちょっと待ちなさいよ、たったそれだけ!?

 

 だって彼らは私のことを犯そうとして

 南雲君に重傷を負わせたんですよ、それなのに

 厳しく言いきかせるだけなんて、いくら何でも甘すぎです!」

 

「確かに彼らのやったことは行きすぎです‥‥‥

 

 しかし、何でも

 檜山様方がその物が傷つけてしまったのは

 あくまで不運な事故、それに檜山様方が彼らを

 傷付けたという確証を示す証拠もないのでしょう?」

 

「そうだぜ、証拠がないんだ!」

 

「証拠もないのに俺らを犯罪者にしようとすんなよなー!」

 

イシュタルの言葉に便乗して檜山グループが野次を飛ばしていく

 

さらに、イシュタルはとんでもないことを口にする

 

「それに、ワタクシといたしましては

 檜山様方よりもその者の方に問題があると考えますが?」

 

「‥‥はあ!?」

 

これには、渚沙も言葉が出てこなかった

 

「何でもその者の周りでは魔法を発動できなくなったり

 魔道具が使えなくなってしまうと言う現象が起こっているそうではないですか‥‥‥

 

 おかげで使徒様の訓練にはもちろん

 騎士団の魔法訓練に支障をきたしているそうではないですか

 

 私としましては、むしろそちらの方も問題があると考えますが?」

 

「‥‥そんなの、それこそ言いがかりです!

 

 だって南雲君だってその理由が何なのかも分かっていないのに…」

 

渚沙は必死にハジメの弁護をしていくのだが

 

「しかし、我々としても魔人族との戦争のことも考えると

 彼のように周りの足を引っ張るだけの存在は、ハッキリと

 申し上げて害悪でしかありません、私としても彼の待遇の方を

 そろそろ何とかするべきであると考えています、これは私のみならず

 

 教会、王族全員の創意です」

 

「‥‥そんな…

 

 でもだからって彼は被害者で

 私だって彼が助けてくれないとどうなっていたか…」

 

渚沙はそれでも何とか粘るが、イシュタルは聞く耳持たず

 

しかし、イシュタルは言葉を続けていく

 

「‥‥では、こうしましょう‥‥‥

 

 次の実践訓練に向かうオルクス大迷宮において

 目覚ましい結果を残すことが出来たなら、放免としましょう‥‥‥

 

 彼の天職はいまだに不明、参加をさせない理由にはなりません

 

 ですから、彼には参加するにあたって見事

 我々にとって益になると証明することが出来るなら‥‥‥

 

 彼をこの場に留まらせることを約束しましょう‥‥‥

 

 しかし…‥それができなかった場合は‥‥‥」

 

「‥‥わかりました…

 

 それでいいのなら‥‥問題はありません…」

 

イシュタルの提案に乗るものの

どこか不服そうな様子を見せる渚沙であった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

「‥‥なにそれ…

 

 それじゃあまるで

 南雲君が悪者みたいじゃない!

 

 しかも、実戦訓練って…

 

 こんな大けがを負ってるっていうのに!?」

 

香織はイシュタルのことを聞いて

怒りを抑えられない様子であった

 

「‥‥ええ、しかも予定はスケジュール通りよ…」

 

「確か実戦訓練があるのって‥‥明後日じゃない!?

 

 どう考えたって南雲君は戦闘どころか

 まともに動けるのかもわからないのに…」

 

香織はあまりの理不尽さに大いに取り乱していく

 

「‥‥私も進言したけど、聞きいられなかった…

 

 実践訓練が始まるまでに南雲君の意識が戻らないなら

 その分予定が遅れてけがの回復に専念ができたんだけど…」

 

「‥‥それで南雲君が目覚めない方がよかったって言ったんだね…

 

 でもそれだったら南雲君が目を覚ましたことを内緒にすれば…」

 

「‥‥いいえ、いずればれると思う…

 

 彼のこの王城での立場は悪い方だから

 それを知ったら真っ先に報告に行くと思うわ…

 

 関係者から言わせれば厄介者である彼には

 早めに南雲君にはいなくなってほしいだろうから…」

 

「じ、じゃあリリィに頼めば!?

 

 リリィも南雲君と仲がいいし、頼めばきっと…」

 

「‥‥教会の方が聞き入れないと思うわ…

 

 この国は宗教国家、王族よりも教会の方が立場は上よ…

 

 即位していない王女様の言葉なんて教皇であるイシュタルにとっては

 聞くにたえないものだと受け流されて行ってしまうのがオチよ…」

 

マウントばかり取っていく渚沙に香織は苛立つが

本当に攻めるべきは渚沙ではないとも理解している

 

逆を言えば渚沙も渚沙で考えてくれていたのだから

 

「‥‥そんな…どうしたらいいの‥‥…」

 

「…そんなの…決まってるよ……」

 

ハジメはそう言って

体中に走る痛みにこらえながら立ち上がっていく

 

「…行くしかない…あえてここは向こうの提案に乗るんだ……」

 

「‥‥無茶いわないでよ、今だって立ちあがるのもやっとなのに

 戦闘を想定した訓練に参加するなんて、そんなのいくら何でも無茶よ…!」

 

「そうだよ南雲君!

 

 私たちが何とかするから

 南雲君はここで休んでて!!」

 

必死にハジメを抑えようとする二人だが

ハジメはそれでも決意を揺るがせようとはしない

 

「無茶なのはもちろん、承知してる…

 

 でもここで待っていても何かが変わるわけでも無い…

 

 僕はずっと、理不尽な運命にさらされてきた

 最初は僕の方にも非があるんだって必死に言い聞かせてた…

 

 でも、これはきっとその運命に抗うチャンスなんだと思う…

 

 だから僕は行く、行って僕に定められた運命を変えたいんだ!」

 

「‥‥南雲君…」

 

そう言って決意を秘めた瞳を見詰めていく渚沙

 

すると

 

「‥‥わかった、南雲君がそうしたいって言うなら…止めないよ‥‥…」

 

「‥‥白崎さん!?」

 

すると、香織はハジメの肩に手を置くと

ベッドに無理や座らせ、横にして布団をかけてやる

 

「‥‥でもね、南雲君

 

 南雲君は確かに優しくて強いけど

 それでいて良く無茶とかもするんだもん

 

 止めないけれど、休めるときにはしっかり休んでね」

 

「白崎さん…」

 

香織はそう言ってハジメをベッドに寝かしつけ

彼の顔にそっと顔を近づけて、優しくつぶやいた

 

「私が南雲君の事、しっかり守るからね

 

 今回のように治癒が発動できないことがあったとしても

 魔法が使えない状況に陥ったとしても、私は南雲君の傍にいるから

 

 私が‥‥南雲君を…守るから‥‥…」

 

「…で、でも…」

 

ハジメが言葉を続けようとすると、渚沙に額を指で小突かれる

 

「女の子にあんなこと言わせておいて、恥をかかせちゃだめよ…

 

 ここは素直に受け止めておきなさい」

 

「っ!

 

 よ、よくわからないけど…わかったよ…」

 

渚沙に諭されて、よくわからないまま了承するハジメ

 

ただわかっていたことは香織が安心したように微笑んでいたこと

それを微笑ましく見つめていた渚沙の微笑んだ表情が写っていた

 

それからしばらく三人で雑談して香織と渚沙は自室に戻っていき

ハジメも明日の実践訓練に供えて体を休めていく事にしたのだった

 

しかし、実はこの時その様子を見ていた者がいたことに

ハジメは勿論、香織と渚沙も気が付いていなかったのだった

 

… ‥‥ ‥ …‥ ‥‥‥ ‥‥‥‥ …‥‥ …‥‥‥ ‥‥‥‥‥

 

‥ …‥ … ‥‥ ‥‥‥ …‥‥ ‥‥‥‥

 


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