IS インフィニットストラトス 〜The beginning of the end〜 作:クローサー
「私は”レイナ”っていう名前で通ってるわ。もう一つの名は、No.15670[A.M.S.]。よろしく、兄妹?」
「「っ…!?」」
2人の前に突然現れた、セレンと酷似した容姿を持つ女性、レイナ。
しかし、その事を気にする余裕を回せない新たな事実に、2人は驚愕していた。
「No.15670…です、って…?」
「ええ。正真正銘、貴女達の妹に当たるわよ、お・ね・え・さ・ま」
「…!!」
その時、オッツダルヴァが一歩前に出る。
「…レイナ、だな?いきなりですまないが、話がある。着いて来てくれるか?」
「ん〜…そうね。急ぐ用事でもないし、付き合ってあげても良いわよ」
レゾナンスの近くに存在する、カラードの根が絡んだ、とある高級ホテル。
最上階、スイートルームの一室に、セレン、オッツダルヴァ、レイナは居た。
テーブルを挟んで設置された二つの大型ソファー。片方がレイナ、片方にセレンとオッツダルヴァが座っている。
「ねぇ、お仲間はまだ?暇なんだけど」
「今エレベーターにいる。もうすぐ着く」
別行動を取っていたウェンディー、リリウム、一夏は2人の連絡を受け、この部屋で合流する手配を取っていた。
数十秒後、3人がスイートルームに入り、リビングに入る。そして、レイナの姿を見た。
「「っ!?」」
「セレン…?いや、違う。お前は…誰だ?」
「…あんたら、私の事説明してなかったの?」
「説明するより見た方が早いと思ったからね」
「あっそ」
(まーた自己紹介すんの…?)
そう思ったレイナは、一瞬だけ面倒くさそうな表情を浮かべる。
同時に、ウェンディー、リリウム、一夏がセレンとオッツダルヴァが座るソファーに座った。
「先に会ったお2人には言ったけど、私の名前はレイナ。もう一つの名はNo.15670〔A.M.S.〕」
「さて、皆が揃った所だし…始めましょうか。楽しい楽しいお話を」
その瞬間、部屋全体に緊張が走る。
「…貴女は一体、いつ、あの研究所から脱走したの?」
「そうね…何処から説明するか…」
レイナは少しの間、顎に右手を添え、思考を走らせた。
「覚えてるかしら?裏切り者の試験体2人によって新型ACが強奪されて無数の試験体、研究員が殺されたあの夜。行方不明になった21人の試験体……その中の1人がこの私」
「あの時に…あなた以外の試験体はどうなったのです?」
「最低でも17人は殺されたわよ。ある傭兵にね」
「傭兵だと…?試験体にただの傭兵が勝てるものか」
「……つまり、貴様は我々と同格、もしくは我々以上の戦闘能力を持つ”普通の人間”がいると言いたいわけか」
「そう言う事」
「──っ」
ウェンディーが放った言葉に、セレンの肩が一瞬震えた。それを感じ取ったウェンディーはセレンに問いかける。
「セレン?心当たりがあるのか?」
「…少し、ね」
言葉を濁すセレンに、ウェンディーはそれ以上問いかけようとしなかった。
「…単刀直入に聞く。貴様はこの世界に失望したか?」
「失望って……なんで失望するの?
「失望したかしていないか、と私は聞いているが」
「失望してない。というか失望も何も……あぁそうか、とも思わない。現実に失望も希望も無いもの。”今”を在るがままに受け入れ、そしてその中で生き足掻く。それだけでしょ?」
「変えようとは思わなかったのか?この壊れた世界を」
それを聞いたレイナは無垢な子供の様に言葉を紡いだ。
「なんでさ?」
その表情はただの疑問。分からないから尋ねる、そんな表情。
「女尊男卑だかなんだか知らないけど、なーんにも変わってないじゃん。なのに何でワザワザ変える必要あるの?あ、もしかして理想抱いてたとか?バカ過ぎて笑いも出ないわ、ホント。どっかの兎がなんかISとか作ったみたいだけど、世界を引っ掻き回す事くらいしか出来てないでしょ?その証拠に弱肉強食の真理は不変、世界を回すのは国、そして国を動かす政治家共だけ。それの何が悪いの?」
「ISは本来、宇宙探索用なのよ。それを軍事利用しているのが……」
「あーあーあー、聞こえなーい聞こえなーい。軍事利用?宇宙探索用?だからなにさ。私達が使うACだってその“宇宙探索用パワードスーツ“とやらを土台に技術ブッ込んで戦闘用にしてるから邪魔って事でしょうが」
セレンの言葉を切って話を強引に終わらせ、レイナはリリウムの顔を見た。
「にしても…あんたによく似た奴をどっかで見たような気がすんのよね〜…ウォルコット?ウォル……オルだっけ?…まぁいっか。忘れたって事はどうでもいい事でしょ、多分。一応アイツが殺した事は知ってるけど」
その瞬間、リリウムの表情が、何かに耐えるような表情に変化し、同時に纏う気配も変わる。
「…その事、詳しく言いなさい」
「はぁ?なんでそんな事…ん、ウォルケット…オルハット…オルコット…オルコット?ああ、”オルコット”って名前の奴を私の知り合いがぶっ殺したからね〜。それでこう、引っかかってたワケよ。ソッチの身内だったらまぁなに?ご愁傷様かしら」
「……殺した人間の名は」
「んー?アイツ名前無いから、知っても意味無いわよ。戦争孤児だったか少年兵だったかで忘れたってさ」
「………そう」
レイナと向き合っていたリリウムは目を閉じ、それ以上の追及をする事をやめた。
「国家転覆を狙う没落貴族サマをお国から指示されて列車ごとみーんな爆破…………まぁ、”ベルカ機関”に手を貸してたらそりゃそーもなるでしょ」
「…ベルカ機関?」
疑問を問いかけたオッツダルヴァを見て、レイナはキョトンとした表情を浮かべる。
「………ねぇ、まさかとは思うけど、あんたらが知らないとか言わないよね。私達を造った所じゃん」
「何…!?私達を造ったのは国ではないのか!?」
「プッ…フフ…アハハハハハハハハッ、ハハハハハハハハハハ!!!!!」
それを聞いたレイナは突然、腹を抱えて大笑いし始めた。
「あー、腹痛い…お宅らバカでしょ。いや、バカね。アレが国なワケないじゃん。いい?」
その瞬間、レイナは身体を前に出す。
「────アレは国じゃなくて”ベルカ機関”っていう”一つの組織”に過ぎないわ。世界各国から、頭のネジが全部外れた変態技術者共がワラワラとハエの様に集まって出来た、何処の国にも属さない
「ていうかさー……あの変態技術者共がたかが
「っ…!!」
それを聞いたオッツダルヴァは、何も言う事が出来なかった。
レイナの言った事は、正に正論。その一言が当てはまる主張。むしろ、何故それに気づかなかったのか、分からない程に。
そして、レイナは次に一夏を見る。その顔に、軽蔑の表情を浮かべながら。
「それと、おりのむら……だっけ?ソッチの子は。人殺しなんかになっちゃってさー、あんたのご家族泣いてるよ、多分。あ、家族に見捨てられたんだっけか。ごめんごめん、どっかのアホと同じく生まれた時から殺し合いしてるとか思っちゃってたわ」
「てめぇ…っ!!」
「駄目よ、一夏」
レイナの挑発染みた言葉に一夏は立ち上がりかけたが、セレンがそれを制止させた。
「…」
セレンの制止によって、一夏はレイナを睨みながら浮かした腰を降ろした。対してレイナは、笑みを浮かべながらセレンを見た。
「私を庇ってくれてありがと、”お姉様”。不肖の妹は感謝感激」
「その口を閉じろ。私もこの状況じゃなかったら黙ってなかったわよ、No.15670。調子に乗るのもいい加減にしなさい」
「私にもちゃんとレイナって名前があるんだけどー?」
「私からしたら貴女の名前を呼ぶ意味が無いわね」
「じゃ、私はあんたをタイプUFTって呼ぶ事にするわ。それともコッチがいいかしら?ねぇ、”実験体”さん」
その瞬間、セレンの眉が細まり、一切の手加減無しに殺気が放出される。
「……実験体、ですって?」
「あんたのUFTは所詮、欠陥を持つプロトタイプに過ぎないって話よ。そもそも、あいつらが一時的人格変異を引き起こす欠陥品をそのままにする筈がないでしょ?私の中にはUFTの完成品が入ってる。変態共を見くびり過ぎじゃないの?」
「…へぇ、それじゃ貴女は”完成品”さん、とでも呼ばれたいのかしら?」
「そっちのご想像にお任せするわよ、”実験体”さん」
レイナも殺気を放出し、一発触発の状況になる。
「「………」」
しかし突然、同時に殺気の放出が止まり、一発触発の空気が無くなった。セレンは眉を細めたままであるが。
「”ブラックバード”……貴様が強奪したあのアーマードコア。アレはどうした」
「ノーコメント。例え兄弟だとしても、塩基配列パターンが同じ存在だとしても、そこだけは教えてあげない。そもそも教えてもこっちにメリット無いし」
「ふざけているのか?」
「アサルトアーマーでここを吹き飛ばす事を選択肢に入れてる位に真面目よ?私はアレをあんたらに返す気無いし、そんな大事な物を盗られる程ガバガバな警備してるのが悪いじゃない」
「こいつ……」
「それに、私にとっては”戦い”こそ生きる意味だしね。あいつらと同じく、人殺しとかで金を稼いで命繋ぐのよ」
「こうも差があるとはな」
「私からすれば気が狂ってるのはソッチ……って、いたちごっこだからやめるとしますか」
そう言って、レイナは立ち上がる。
「さて…そろそろ頃合いだし、失礼させてもらうわ。長々付き合う暇も必要も無いし」
「頃合い?」
頃合い、とは恐らくレイナが此処に来た目的の事に入るのだろう。
それを予想した一同は、レイナの次の言葉を待つ。
そしてレイナは────
「”スシ”を食いそびれるワケにはいかないのよ」
そんな事をほざきやがりました。
「「「「「…は?」」」」」
想定を遥か真上へとぶっ飛んだ回答に、5人は唖然とする。
「……寿司だって……?」
「スシよスシ。ゲイシャとスシとゴジラでしょ、ニッポンって言ったら」
いきなり緊張状態だった空気をぶち壊した発言に続き、場をなんとも言えない空気にさせる発言を連発するレイナ。
「………………お前、騙されてるぞ」
それも、堪らず一夏がツッコミを入れるレベルにまで。
「え?ニンジャとかサムライとかいなかったけど、どういう事なの?」
「それ、殆どがアニメとかの日本で、実際は全く違うぞ。というか忍者も侍も100年以上も昔だぞ」
「…………あのアホ、後でぶっ飛ばしてやる」
レイナはそのまま立ち去ろうとするが、リビングから出る直前に立ち止まり、振り返らずに話しかける。
「あ〜、もしさ。さっき言った知り合いに会いたければ特徴だけ教えて上げるけど」
「言って」
「とにかく強い、べらぼうに強い、殆ど二人組で行動してる……くらいかな。後は黒い先行量産型アーマードコアを所持して、悪趣味な死神のエンブレムを左肩にデカデカと付けてるのも特徴。金と依頼次第で何処にでも行って淡々とどんな形であれ依頼をこなす傭兵の鑑、3度の連戦で17もの最新鋭型ACを葬り去る化け物、傭兵であればその戦果を知らぬ者はいない…………私の知る限りでは最強の傭兵、それが奴よ。正直な話、
「……死神のエンブレムを付けた黒い先行量産型アーマードコア……」
「アイツの前に敵として立ったなら、死を覚悟して戦わなければ生き残れないわ。例えワンオフ型だろうと試験体だろうと、奴にとっては例外無く殺すべき『敵』でしかない。そういう存在。──あぁ、確実に会いたいのなら戦争を起こせば簡単に会えるわよ。全世界規模の戦争、それだけで必ず現れる。金と硝煙の匂いに惹かれて、屍の山を築きながら、ね……」
そう言って、レイナは今度こそ立ち去った。
少しの時間が経った後、セレンが呟く。
「…レイナ、か。まさか私達の妹がいたなんてね…」
「私達とは絶対的に対立するだろうがな」
「それには同感ね。一夏」
「ああ」
セレンと一夏が立ち上がり、退室する。
「次は、戦場で会いましょう。カラード」
去り際に、
納得行ってない部分もあるので、今話だけもしかしたらまた修正入るかも…
P.S.
設定集更新します。