IS インフィニットストラトス 〜The beginning of the end〜 作:クローサー
二つの組織のリーダー、オッツダルヴァとセレンの心境は…
某所、カラード本拠地。
そこに、一機のアーマードコア、ステイシスが降り立ち、待機状態へと移行する。
(…やはり、こうなったか)
オッツダルヴァは、セレンとの会話を思い返す。
『その為に、一体何億、何十億人の人々を路頭に迷わせるつもり?そして、一体何人の関係無い人々を殺すつもりかしら?』
『まだ、人々人類は自らの手で道を正せるわ。私達は道を示し、それを見守るだけで十分。私達が表から動く必要は無いわ。何も知らない人々は、何も知らなくていい』
「…セレン。それだけでは、人類は破滅の道を辿り続ける。人類の未来の為ならば、私達は何人でも殺してみせよう。大罪人にでもなってみせよう」
そして、オッツダルヴァは空を見上げる。空は夕焼けにより、紅く染まっていた。
「それが、私達の出した”答え”なのだからな」
その時、冷たい風がオッツダルヴァの頬を撫でた。
頬に、一筋の涙が流れたことに気がつくことがなく。
同時刻、ORCA本拠地 シークレットアイランド。
その砂浜に、一機のアーマードコア ホワイト・グリントが降り立ち、待機状態へと移行する。
ホワイト・グリントの所有者、セレンの表情は顔が俯いているせいで伺う事は出来ない。
『もう手遅れだ。人々は、ISという物を手に入れておきながら、自分自身でその道を捨て、軍事利用という愚行を犯した。最早”対話”では人々は救えない。私達が人々の愚行を止め、人々を破滅無き道へと導く』
思い出したくないのに、思い出されるオッツダルヴァとの会話。
『私達ORCAは、貴方達カラードと全面対立する。貴方達は、私達が止める。そして、貴方達は私達の手で殺す』
『…残念だ』
『貴方は私の手で殺す』
『その時が来たら、お前は私の手で殺す』
(………)
セレンは、重い足取りで本拠地施設を目指して歩いてゆく。
そして、小さな林へと入ろうとしたその時。
「セレン」
セレンの後方、つまり砂浜の方向から声が掛かる。
その声に反応し、セレンは振り返る。
「…何かしら?一夏」
その声の正体は一夏。だが、一夏の表情は何処か悲しみがあるような表情だ。
「…今まで何処に行っていた?」
「別に、少し気分転換に1人になっていただけよ」
「そんな顔で、気分転換にでも行っていたのか?」
「…何が言いたいのよ」
「セレン、何でも1人で抱え込もうとするな」
「何の事?」
「無理するな。現に今も─────
泣いてんじゃねぇかよ」
「っ!?」
その言葉を聞いて、セレンは初めて自分の両目から涙が出ているのに気が付き、急いで拭う。
しかしその涙は止まる事は無く、再び頬を伝っていく。
「な、何で…?」
セレンが困惑していると、いつの間にか近付いていた一夏が、セレンを優しく抱きしめる。まるで、今にも割れてしまいそうな割れ物を大事に扱うかのように。
「人間ってのはな、本当に悲しい時は自分自身じゃ涙が止められなくなるんだよ。
お前は俺と出会うまでは1人で、ずっと”自分自分”を押し殺してたんだろ?だから今まで強くいられた。だから1人でいられた。
だけど、その必要は無いんだよ。今は、俺や真改がいる。
だからもう、自分を押し殺さなくても良いんだよ。
お前はもう、
「…!!」
その言葉が、引き金だった。
「…ぁ」
セレンの瞳から、大粒の涙が流れ始める。
「いち、か…」
「…」
一夏は、ほんの少しだけ強くセレンを抱きしめる。
そして、セレンは一夏の胸元に顔を隠す様に額を押し当てた瞬間、セレンは感情を…
「…ぅ、あぁ」
”悲しみ”という感情を、静かに爆発させた。
「…すまなかった、セレン。今まで、お前の本当の気持ちに気が付かなくて」
その言葉にセレンは応える事はなく、一夏の胸の中で静かに泣き続ける。
「俺は、セレンの過去は知らない。だけど、これだけは知っている」
一夏は、それに構わずに話す。聞こえてなくても、別に構わないのだから。
「俺にとっては、オッツダルヴァ達はただの敵だが…
セレンにとっては、大切な仲間だったって事はな」
その後セレンは泣き疲れ、一夏の胸の中で静かに眠りに付いた。
「…ん」
「お、起きたか」
数時間後、本拠地施設内の一夏の個室にて、セレンは目覚める。
セレンの目の前には一夏の顔が見えており、後頭部にはベットとは違う、暖かさと共に柔らかい感触がある
「…何で膝枕してんのよ」
そう、一夏はセレンに膝枕をしていた。あえて言葉にするならば、「逆膝枕」とでもいう状況だろう。
「なんとなく?」
「何で疑問系なのよ…まあ、いいわ」
そう言ってセレンは起き上がり、一夏の側に座る。
「気分はどうだ?セレン」
「お陰様で吹っ切れた気分よ。ありがと、一夏」
「礼は要らない。お前をほっとけなかっただけだからな」
「それでも受け取って。貴方がいなかったら、私は押し潰されていたかも知れないわ」
「…分かった」
そして、セレンは立ち上がる。
「さて、真改を呼びに行きましょう」
「ああ」
「猶予は、どれだけ長く見積もっても一週間。その間に準備するわよ。
カラードとの全面戦争に備えて、ね」
そして、数日後。
遂に、その時は訪れる。
セシリアの裏切りにあったIS学園。ショックから立ち直っていた真也達は、夏休み前に最後の練習を開始する。
カウントダウンは、既に秒読み段階という事を知る由もなく…