IS インフィニットストラトス 〜The beginning of the end〜 作:クローサー
中々描写が固まらず書いては消して、消しては書いての繰り返し…大変でした。
少々ブランクもあるので、上手く書けてるか不安。
あれから3ヶ月。
一夏はセレンの監督の元、アーマードコア…ブラック・グリントの飛行、戦闘訓練を3ヶ月間行った。
技術の吸収はセレンの想定よりも遥かに早く、たった1ヶ月で一夏の身体が耐えられる、そしてセレンが教えられる限りの全ての技術を習得し、一夏が習得出来る全ての技術を習得した。
そして残りの2ヶ月は全て戦闘訓練になった。しかし、最初こそ何とかついていけていたが、その内容徐々は苛烈を極めていった。
クイック・ブーストの習得、2段クイック・ブーストの習得、オーバード・ブーストの習得、戦闘機動の習得、超高速下における射撃訓練、レーザーブレード、ドローンでの戦闘訓練、etc。
何よりも苛烈だったのが、セレンと1on1の実戦演習。
セレンは手加減こそしているものの、それでも一夏は全く歯が立たなかった。
下手に距離を取ればミサイルと2丁のライフルによる弾幕を張られて近づけなくなり、下手に近づけばブーストの出力を上乗せされた蹴りなどを喰らう。
そして07-MOONLIGHTで切りかかろうとしても、ホワイト・グリントの両手の甲にある小型のレーザーブレード”EB-O600”により「受け流される」。
しかし、この時の一夏に一つの疑問が浮かんだ。
07-MOONLIGHTとEB-O600の出力差は圧倒的。なのに何故EB-O600で07-MOONLIGHTを受け流されたのか。その事を聞いてみると、セレン曰く──
「レーザーって言っても、何処か1箇所は波長の乱れがあるわ。そこを正確に波長が異なるレーザーが直撃したら、波長の乱れが全体的に広がる。後は波長の乱れに逆らわずに流してくだけ」
かなりの技量が必要だけど、と付け足していたものの、流石にこの技の習得は諦めている。というか、説明が難しすぎる。
一夏は今どうしているかと言うと、シークレットアイランド地下施設に存在するテストアリーナ内で戦闘機動の演習を自主的に行っている。
広大…とまではいかないものの、それでも十二分な空間を使って飛んでいる。
「っ、と」
アリーナの中央に着地し、最後にもう一回戦闘機動に入る。
一夏が駆るアーマードコア ブラック・グリント の背部の翼がせり出し、一直線にスライドして”オーバード・ブースト ユニット”が展開。それと同時に下部のオーバード・ブースト ユニットも展開。
エネルギー収束音が響き、次の瞬間、オーバード・ブーストが起動。
「っ…!!」
起動と同時に、ブラック・グリントは急激に加速。それに比例して、一夏の身体に凄まじい
たった2秒でブラック・グリントは超音速の速度領域、1860km/hを突破。しかし、これ以上の加速は一夏の身体が持たない為、リミッターが掛かっている。
そして最高速度に達した瞬間、オーバード・ブーストを停止。オーバード・ブースト ユニットが折りたたまれると同時に、強力な推進力を失った機体が急減速を開始。
急減速から0.8秒後、クイック・ブーストの推進力を利用する”クイック・ターン”を発動。560km/hという、常識ではあり得ない速度で180度ターン。
通常ブーストで更に減速、その後前進を開始と同時にクイック・ブーストで急加速。またしても強力なGが一夏の身体にのしかかる。
そして右方向へクイック・ブースト。景色が一瞬右へとぶれる。
(…っ。まだまだ!!!)
クイック・ブースト、クイック・ターン、オーバード・ブーストを行う度に一夏の身体に”重力加速度”という物理法則が牙を剥く。しかし、一夏はそれを耐え、更に戦闘機動を続けていった────。
数分後。
「はぁ、はぁ…」
一夏は戦闘機動の演習を終え、テストアリーナの端の壁に背中を預けて座っていた。
「…ふぅ…」
乱れていた呼吸を整え、思考を回す。
(やっぱり、今の俺じゃセレンには足下にも及ばないな…)
一夏は、相棒であり、そして目標であるセレンの姿を、ホワイト・グリントの姿を思い出す。
(…もっと強く。もっと速く。もっと鋭く。もっと柔軟に。か──)
その時。
「また無茶でもしたのかしら?」
突然、横から掛かる声。全く気配を感じなかった為、一夏は驚きながら視線を向くと。
「…言ったわよね。”無茶な戦闘機動は駄目”って」
笑顔とは裏腹に、目が全く笑っていないセレンがいた。
「セレン…気配を消してたら誰でも驚くだろ」
「あら?私は全く気配は消してなかったわよ?なのに、貴方は全く私が近付いてくる事に気が付かなかった…」
(…しまった)
「貴方、忘れた訳じゃないわよね?いえ、忘れたなんて言わせないわよ」
(…)
「いくらブラック・グリントを、貴方の為にリミッターを強く掛けてるって言っても──」
セレンの顔から、表情が消える。
「自分自身の”寿命”を削ってるのよ?」
「…」
「前にも言ったけど、アーマードコアは本来貴方達がそう簡単に乗れる代物じゃないわ。
私の様な試験体が造られたのも、機体のスペックを100%引き出す為の道具でもあり、高性能かつコストに見合う人体改造の方法を見つけ出す為の道具。人を超えた身体能力を持つ私達だからこそ、アーマードコアのスペックは完全に発揮される。
貴方みたいな人間が本来乗るべきじゃないのに、無理な事したら…より早いペースで貴方の身体はガタついていくわよ」
一夏はセレンから目線を逸らしてゆっくりと立ち上がり、ブラック・グリントの待機状態であるドッグタグを握りしめる。
「そんな事くらい、分かってる。けど…」
「けどもなにも、ねぇ」
セレンは一夏の正面へと素早く移動し、一夏の額にデコピンをする。
普通に考えて指一本のデコピンなど、少しだけの痛みと衝撃が一瞬走るだけだ。
しかし。
「ガッ!!!!!!!?」
指一本でデコピンしたとは到底思えない痛みと衝撃が頭蓋骨に走り、脳を揺らし、一夏の意識が混濁する。
そして衝撃の発生源である頭を起点に身体が後ろへバランスを崩し、勢いが付いたまま後ろの壁に後頭部が激突。
2度の衝撃により意識は更に低下し、一夏の意識は完全に失われ、壁に寄りかかる様に身体は沈んだ。
「無茶して倒れても同じでしょうが、全く…」
セレンは一夏の身体を背中に背負ってテストアリーナから出て、通路を歩いてゆく。
(…もしかして一夏は私と比べてるから、焦ってるのかしら)
チラリと横目で一夏の顔を見て、深いため息をついた。
「…っ?」
一夏の意識が目覚め、まず最初に司会に入ったのはこの5ヶ月に見慣れた自分の部屋の天井。
一夏は身体を起こし、記憶を掘り返そうとしたその時。
「やっと起きたわね」
「…セレン」
いつかの時の様に、椅子に座って一夏に向き合うセレンと目が合う。
「一夏。貴方は焦ってるみたいだけど、貴方の焦りは唯の勘違いよ」
「…どういう事だ?」
「貴方は私と比べてるから自分自身を過小評価してるらしいけど、比べる相手を間違えてるわよ。
生まれた瞬間から殺し合う事を決定されていた私と、まだ半年前まで何処にでもいる少年だった貴方と比べたら差も出るわよ」
「…あ」
「そういう事。実際、貴方はもう実戦に出せるレベルに十二分に達してるわよ」
「そう、だったのか」
「そうなのよ」
それを聞いた一夏は、今までの緊張が抜けたかの様に身体の力が自然に抜ける。
「で、その事なんだけど」
セレンからの表情から普段の調子が消え、真剣な面持ちで一夏に向き合う。
「少し私と付き合って貰うわよ。一夏」
「…は?」
恐らく次回の更新も遅れると思います。