IS インフィニットストラトス 〜The beginning of the end〜 作:クローサー
さて、本当に長らくお待たせいたしました。最新話、ヴィクコラク遊撃隊戦です。(相変わらず展開が早い戦闘描写ですが)
推奨BGM:「Varcolac」
もがれる翼の断末魔が響く、ヨーロッパ諸国本土第2防衛戦線上空。
幾多の戦闘機が入り乱れ、火を纏って墜ちる中。一機として寄り付かず、誰1人の介入を許さない空域があった。
その空域には、5機の戦闘機が空戦を繰り広げていた。
4機の
その戦闘機は、正に異形の一言。
全長は約25mの巨体。後方に5つの巨大ブースターが付いていて、前方には幾つかの武装が接続されている。
『散開』
1番機の指示により、一斉に4機のX-02が散開。VOB/PNを四方に捉えようとする。
それに対し、VOB/PNの操縦者である一夏は、高度20mまで急速降下。ビル街のギリギリ上に突入し、振り切ろうとする。
『逃がさない』
ミサイルアラート。ピッタリと後ろに付いていた4番機から一本のミサイルが発射され、ブースターの熱を捉えて追尾する。
「クソッ!!」
右へと旋回し、先にあるビルへと全速で突入し、貫通。貫通したビルは倒壊し、瓦礫に突っ込んだミサイルは炸裂した。
ヴィクコラク遊撃隊は既に編隊飛行で距離を取り、再び状況はリセット。
──最初から、この繰り返しだ。
ヴィクコラク遊撃隊は
X-02は燃料を過剰消費するアフターバーナー未使用による
VOB/PNもスペック上ではX-02と同等だが、その巨体故に加速度にはどうしても劣ってしまう。その間にヴィクコラク遊撃隊は離脱し、体勢を整えてしまうのだ。
更に一夏1人に対し、ヴィクコラク遊撃隊は4機。1機に集中すると残りの3機に背中を見せてしまう。
そして追い詰めるかの様にやってくるのは、経験の差。
数的有利、空戦における性能的有利、経験的有利。この三つ全てをヴィクコラク遊撃隊は制していた。
(けど…見つけた!!)
しかし、一夏はこれを切り崩す”隙”を見つけた。
『ヴィクコラク4、突出し過ぎるな』
『…了解』
それは、自信。
ヴィクコラク遊撃隊は、元々は傭兵だった。
カラードに雇われる前には、幾多の空戦に参加し、その全てに生き残ってきた。部隊に誰1人の犠牲を出すこと無く。
彼等は空戦においては誰も寄せ付けない、天才的な才能を持っていた。
そして、その才能と共に実力も身に付いていき、やがて彼は自分の実力に絶対的な自信を持つようになった。
しかし、過多な自信となると、それは”過信”となる。
そして過信は、やがて己を滅ぼす刃と化す。
再び、ヴィクコラク遊撃隊が散開。今度は各自判断による、不規則な散開。
まずは、1番機に搭載されたEMLによる攻撃。連射こそしないものの、瞬間的に到達する超音速弾がVOB/PNを掠める。
そして、次は。
『掛かった!!』
またしても真後ろに付いた、4番機。
一夏は振り切ろうと加速し、旋回するが全く振り切れない。
そして、ブースター出力を調整。3番、4番ブースターの出力が弱まる。
『っ…まさか。ヴィクコラク4、回避だ!!!』
それを見て、一夏の意図に気付いたリーダーが叫ぶ。
その瞬間。
「ぐ…ぅお!!!」
ブースター出力のムレにより音速を保ったまま、通常ではあり得ない半径で宙返り。
『な…!?』
今まで散々後ろを取った4番機でさえ、追い付けないその機動。
そして、4番機の背後に付いた。
「終わりだ」
機体下部に搭載されたVTFキャノンから近接弾頭が発射。
4番機は回避機動を取るが、遅かった。
近接弾頭から発せられる電波の反射を感知し、爆発。幾つもの超高熱の破片が4番機の機体を抉り、火に包まれる。
そして
『『トーリャッ!!』』
『…墜ちたか…ヴィルコラク隊、臆するな!!』
リーダーが発破をかけるが、見て取れるように動揺が機動のキレに現れている。
(この間に…!)
一夏は攻勢に移行。連携がバラついた今を狙い、3番機の後ろに付く。
当然、3番機は回避機動。そして1番機と2番機から援護が入り、2発のミサイルが飛来。
命中しづらい位置からのミサイル発射の為、回避は容易だった。2発ともVOB/PNの後ろを通り過ぎ、建物に衝突、爆発した。
そして、一瞬止まった瞬間にハイレーザーキャノンを発射。
ハイレーザーは正確に2番機を捉え、エンジンに直撃。爆発四散した。
『ファリド!!くそッ…』
『…やってくれるな、でなければ極少数組織でやっていける筈もないか…
だが墜としてくれるっ!!!!』
1番機と2番機が離脱し、編隊を組む。
そして、ヘッドオン。
1番機が左へと旋回し、2番機は上昇した。
一夏は上昇した2番機を追おうと機首を上げる。
その時。
『食らえ!!』
VOB/PNへと突っ込むように下降してくる2番機と、ロックオンせずに発射された2発のミサイルが目に入った。
「っ!!!?」
それを見た一夏は、即座に3門のブローニングM2重機関銃てでミサイルを迎撃。爆発して視界を塞ぐ。
その爆発を抜け、2番機を追撃しようとしたが、”その必要は無かった”。
何故ならばパイロットがべイルアウトして制御を離れ、ミサイル迎撃時に外れた弾によってボロボロになった2番機がそのまま突っ込んで来ていたのだから。
「なっ!!!?」
あまりにも距離が近過ぎて迎撃は不可能。そして回避も不可能。
そのままX-02と正面衝突。そしてゼロ距離で爆発を受けた。
幸いにも致命的な損傷は受けなかったが、ブローニングM2重機関銃2門、ハイレーザーキャノン1門、VTFキャノンが使用不可となった。
そして、X-02衝突地点より20m上でパラシュートが開く。パラシュートにぶら下がっているのが2番機パイロットだろう。
『………』
そして残った最後の1機、1番機を捉える。
後ろに付かれた1番機は、何故か回避機動を殆ど取らない。
「…まあいい、墜ちろ」
一夏はそれを不思議には思ったものの、ここは戦場。下手な情けを掛ければ自分自身を滅ぼす。
だから一夏は一切の容赦無く、ハイレーザーキャノンを発射。
そして、ハイレーザーは1番機の右翼全てをもぎ取った。
右翼をもぎ取られたX-02は燃料を撒き散らしながら大きくバランスを崩し、右方向にロールしながら墜落してゆく。
「…全機撃破」
ヴィクコラク遊撃隊を全機撃破した一夏は、機体の損害状況を確認する為に目を離そうとした。
その時。
『ハ………ハハ………ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!』
突如、通信に笑い声が響くと同時に、X-02の左翼が後退翼に展開。
そしてロールが急激に収まり、体勢を立て直した。
(片翼を失っても、飛んでやがる…!!?)
『ああ、楽しい………楽しくて笑いが止まらない。ここまで楽しいのは初めてだよ、ブラック・グリント!!!!』
X-02が高度を合わせる。
『まだまだこれからだ、お前の全力を見せてみろ…』
X-02に搭載された右翼側にある、破壊されたEMLが廃棄される。
『お前等を墜として、俺達は世界を変える!!!!!!』
X-02の周囲に、一瞬青白い光と共に”ナニカ”が包み込んだ。
『それこそが……それこそが俺の……!!!!』
そして前進翼のまま急加速し、旋回した。一夏へと、その牙を向けるために。
──彼等が何故、”
──その理由は、たった一つ。
──手負いの獣は、何よりも、誰よりも恐ろしいのだから。