IS インフィニットストラトス 〜The beginning of the end〜   作:クローサー

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推奨BGM:エースコンバットZEROより「THE DEMON OF THE ROUND TABLE」


第五十二話

ヨーロッパ諸国本土防衛戦線より離れた海域に存在する海、黒海。

 

その海上に、1機のアーマードコアがオーバード・ブーストで駆け抜けていた。

 

「…ECMは正常稼働。まだ艦隊のレーダーは潰れているな」

 

この為に用意していたECM(電子的妨害装置)の効果もあって、艦隊からの遠距離攻撃は飛んできていない。

 

しかしジャミング(電子妨害)により、確実に敵の警戒は最大まで高まってるだろう。それがヨーロッパ戦線における本隊ならば、なおさらだ。

 

「…どのタイミングで、どう来る?」

 

カラード本隊である第11連合艦隊までの距離、17km。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カラード 第11連合艦隊。

 

大型攻撃艦 クイーンズ・ランスを旗艦とした、攻撃艦35隻、空母23隻、護衛アーマードコア10機、ワンオフ型アーマードコア2機で構成された、合計艦艇59隻、アーマードコア12機で構成された超大型艦隊。

 

クイーンズ・ランス、攻撃艦のミサイルハッチから発射されたミサイルの噴射煙が周囲を僅かに覆う中、クイーンズ・ランスのCIC(戦闘指揮場)はざわついていた。

 

「レーダーはまだ回復しないのか?」

 

「…駄目です。依然回復の目処が立ちません」

 

 

 

「…姉さん」

 

「…恐らく、そうでしょうね」

 

 

 

その中に、リリウムとセシリアの姿もあった。

 

「司令、どうしました?」

 

「…艦長、全艦に通達を。対空警戒最大。主砲、CIWS(近接防御火器システム)、全対空ミサイル、全対空機銃用意。護衛アーマードコアをスクランブルして下さい」

 

「…まさか、ORCAですか?」

 

「恐らくは………私達も出ます。艦長、艦隊指揮を頼みます」

 

「了解しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第11連合艦隊までの距離、7km。

 

今もなお超音速で向かう一夏。その時、心臓が跳ね上がるような感覚が襲う。

 

「っ…!!」

 

第六感に従い、右方向へと高出力の2段クイック・ブーストを発動。同時に、前方から1発の赤色のレーザーが飛来。

 

(狙撃…!!しかもこいつは──)

 

その時、更に2発の紅色のレーザーがプライマル・アーマーを貫通、機体に直撃。ほんの僅かに胸部装甲を溶かす。

 

(っ…アーマードコア!!しかも2機かよ!!)

 

更に狙撃が飛来。これを2段クイック・ブーストの連発で躱そうとするが、どうやっても回避先に狙撃が飛来し、次々と被弾してゆく。

 

(コンビネーション良過ぎだろ!?)

 

そう毒づく一夏の視線の先…正確には水平線の先に、人工物が目に入る。

 

「見えた…っ!!」

 

 

またしても第六感が何かを告げ、それに反射する形で2段クイック・ブーストを再度連発。

 

 

その時、大量の127mm(5インチ)弾が飛来。レーダーが使えない現在、手動で照準を合わせている為に命中精度は大きく落ちているが、それでも約30隻からの一斉砲火の迫力はかなりのものだ。

 

 

第11連合艦隊までの距離、2km。

 

 

CIWS(近接防御火器システム)を搭載した全艦艇が、近接防御を開始。CIWS(近接防御火器システム)のファランクスの砲身が回転。毎秒50〜75発という、圧倒的な発射レートで銃弾が放たれる。

 

しかし、2段クイック・ブーストによって躱されるか、プライマル・アーマーによってその威力を大きく減衰され、装甲に弾かれるかの二つに終わる。

 

 

第11連合艦隊までの距離、1km。

 

 

その瞬間、一夏はHLC02-SIRIUSとSAPLAの照準を2隻の攻撃艦に照準、発砲。砲身からハイレーザーとグレネードが放たれると同時に2段クイック・ブーストを用いて回避機動。艦艇とアーマードコアからの砲火を躱し、混乱させる。

 

そして、ハイレーザーが艦艇を貫通させ、グレネードが炸裂して艦艇に大きな穴を開け、そこから大量の海水が入り込み、沈没が始まる。

 

 

第11連合艦隊までの距離、0m。対艦隊戦突入。

 

 

オーバード・ブーストを停止。前後左右に2段クイック・ブーストを常時発動させ、一定の場所には留まる事なく、HLC02-SIRIUSとSAPLAを確実に照準し、撃つ。

 

そして新たに1隻の空母と攻撃艦に致命的な損害を与える。

 

 

しかし、それを彼女等は黙って見ている筈が無い。

 

 

その時、8機の紅いビットが一夏の周囲を張り付く。

 

 

「っ!!!!」

 

 

すぐさま、一夏は2段クイック・ブーストを発動。その瞬間、8機のビットが一斉砲火。8本の紅いレーザーがすぐそばを通り過ぎ。

 

 

前方から飛来した、赤いレーザーが直撃した。

 

 

「ぐっ…!!またか!!」

 

 

そう言って一夏はビットとレーザーを飛来先を見ると。

 

 

「セシリア、合わせて」

 

「ええ、姉さん」

 

 

それぞれの獲物を構えるアンビエント(リリウム)ブラット・ティアーズ(セシリア)が、そこにいた。

 

(今はアーマードコアを相手にするな…最優先は艦隊だ!!)

 

そう判断した一夏は、アーマードコアを一切無視しながら艦隊の攻撃を強行する。

 

 

 

そうするのにも、理由がある。

 

第11連合艦隊から放たれる、事実上無差別な遠距離攻撃によりヨーロッパ諸国本土第1防衛戦線は崩壊、第2防衛戦線でも連合軍は甚大な被害を負っている。

 

もし、もう1度遠距離攻撃が放たれたのならば、確実に第2防衛戦線も崩壊、ヨーロッパ諸国本土の中心へと攻め込まれるだろう。

 

現在はECMによって艦隊のレーダーは潰している。しかしECMの稼働限界までに壊滅出来なければ、ヨーロッパ諸国本土防衛戦線の崩壊は免れないだろう。

 

つまり今、ヨーロッパ諸国の運命は一夏1人に託されているのだ。

 

ECMの稼働限界前に壊滅出来れば、数で勝る連合軍が押し返せる。逆に壊滅出来なければ、ヨーロッパ諸国本土防衛戦線は崩壊、ヨーロッパ諸国の中心へと攻め込まれてしまう。

 

故に、アーマードコアとまともに交戦する暇は一切無いのだ。

 

 

 

「くうっ…!!」

 

常時2段クイック・ブーストを発動している一夏の身体の負荷は凄まじく、現に発動の度に身体が悲鳴をあげている。しかし、止まれば艦隊の集中砲火が直撃し、致命傷を負うのは確実だ。だから止まる事は出来ない。

 

 

艦隊、アンビエント、ブラット・ティアーズによる全方位からの集中砲火を浴びてながらも、艦艇を確実に沈めてゆく一夏。

 

そしてまたハイレーザーの直撃を受け、1隻の空母が沈んでいく。

 

(6隻目…!)

 

残る艦艇は、53隻。まだ1割の損害も与えられていない。

 

「これ以上は…沈ませない!!」

 

リリウムからの狙撃を回避した瞬間、8機のビットが一斉砲火。回避した一夏に一直線に向かう。

 

「っ!!」

 

まともに回避する事も出来ず、各部に全弾直撃。

 

ECM発生装置にも、1発が直撃した。

 

(っ…マズイ!!ECMが途切れる!!)

 

何とか持ち直そうとするが、集中砲火を浴びている中ではそれをする事も出来ない。

 

(クソッ…!!)

 

そして、ECMが停止し、ジャミングが終了した。

 

 

 

 

 

 

 

それが、始まりの合図だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、クイーンズ・ランスCIC(戦闘指揮所)

 

「ジャミングの停止を確認!!レーダーが回復します!!」

 

その一言を聞いた艦長の指示が飛ぶ。

 

「全艦、ESSM(艦対空ミサイル)用意!!目標、ORCA所属アーマードコア!!」

 

「了解!!」

 

その時、レーダー員が叫ぶ。

 

「艦長‼︎超音速で接近する未確認機を捕捉!機数1、識別不能、該当データ無し!速度は…⁉︎し、信じられません!!通常のアーマードコアの三倍以上、時速6000km以上の速度で本戦域に接近しています‼︎」

 

 

その瞬間、CICの全ての動きが止まる。

 

 

「6000km以上だと⁉︎敵はVOBを改造でもしたのか!?位置は⁉︎」

 

 

「ちょ……直上‼︎既に本艦の直上です‼︎」

 

 

「な…⁉︎」

 

 

 

そして。

 

 

 

 

『奴程の力があるや否や……俺が測ってやる』

 

 

 

 

何処かから、そんな声が聞こえたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、突然起こった。

 

 

クイーンズ・ランスの直上から、一本のエネルギーの奔流が直撃。

 

 

エネルギーの奔流によってブリッジを切断され、弾薬庫が爆発。連鎖爆発によって、四散した。

 

 

唐突に起こった出来事により、全艦、全員の動きが止まる。

 

 

それが、いけなかった。

 

 

上空から2本のエネルギーの奔流が飛来。超音速で動くそれは瞬く間に艦艇を切断し、次々と艦艇を沈めてゆく。

 

 

その飛来元を見ると、そこには青白いエネルギーの尾を引きながら、白いナニカが上空を超音速で飛び回っていた。

 

 

 

「なんだ………これは………」

 

 

 

一夏は、その光景を見て言葉を失い。

 

 

 

「なに……あれ…なんなのよ……!!」

 

 

 

セシリアは、その光景を見て戦慄し。

 

 

 

「そんな……なんで、”あの機体”が……っ‼︎」

 

 

 

リリウムは、その光景を見て驚愕する。

 

 

 

抵抗も虚しく、次々とエネルギーの奔流によって沈められてゆく艦隊。全滅するのも、容易だった。

 

 

そして次の瞬間。最後の1隻が、沈む。

 

 

75秒。たった75秒で53隻いた第11連合艦隊は全て海の底へと沈んで行った。

 

 

生き残った生存者は一夏、リリウム、セシリアの三人だけ。

 

 

海上には、幾多の艦艇の破片が浮かんでいるだけ。

 

 

 

そして、“それ“は姿を現した。

 

 

 

──それは、究極。

 

 

その機体は各部位の形は違えど似ていた。

 

 

──それは、異端。

 

 

セレンが駆る白の機体、ホワイト・グリントに。

 

 

──それは、最凶。

 

 

その機体は、純白の装甲を纏っていた。

 

 

──それは、最恐。

 

 

その機体は、背中にX字型のブースターを持っていた。

 

──それは、人の作りし悪魔。

 

その機体の周囲には、美しい緑色の粒子が漂っていた。

 

 

──それは、白き彗星。

 

 

その機体の名は。

 

 

──それは、白き天使の形をした魔獣。

 

 

 

 

「”ホワイト・コメット”……っ!!」

 

『さて、メインイベントと洒落込むか』

 

 

 

 

ベルカ機関が生み出した、プロトタイプ・ネクスト3番機 ホワイト・コメット。

死神が一柱、Rの駆る白の悪魔。




ホワイト・コメット
人間を思わせる生物的な造形と背部のX字大型ブースターが特徴的な純白のプロトタイプ・ネクスト3番機。
高火力、高防御、高機動という兵器としての究極を目指した機体で、性能のみを追求した為、搭乗者及び機体本体にかかる負荷は一切計算されておらず、搭乗者を死に追いやり機体を自壊させる程の負荷を生み出した。その結果、高すぎる性能と負荷故に常人どころか試験体ですら持て余す程で当時では負荷を含め「誰にも扱えない」と評されていた。

試験体でさえも殺人的な加速に耐え切れず、骨折、吐血、気絶の3コンボ。
もし常人が乗りこなそうとするならば、初期加速で全ての内臓が潰れ、関節部から身体がバラバラになる。
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