IS インフィニットストラトス 〜The beginning of the end〜 作:クローサー
「…奴の機体も、よく持つものだな」
『アレって何年前の奴でしたっけ?』
「さあな」
『それで、特殊粒子砲はどうすか?』
「中々面白い。当たれば粒子装甲を剥がすことが出来る。それ以外はゴミ同然だがな」
『当てたんすか?』
「当たらん」
『じゃあ、どうやって?』
「ブレードに対するカウンターだ。それしか当たらん」
『何で三連誘導砲身なんすかねぇ?』
「趣味じゃないのか?」
『黒海に落下した奴はどうします?』
「回収だな。搭乗者や機体が死んでいてもどうでもいい。データさえ生きていればいい。あとはデバイスの回収か」
アメリカ アパラチア山脈上空。
高度3000mを超音速で飛行する、一機のVOB/PN。
(あと4分で、あのデカブツの予測最大防衛域ね…)
セレンはVOB/PNを用いて、ワシントンD.C.を一切の容赦無く蹂躙した、”超巨大六足移動要塞 スピリット・オブ・マザーウィル”に対し、単独で防衛域を突破、懐へと飛び込んで制圧せんとしていた。
しかし、マザーウィル本体も飛び抜けた火力、射程、防衛力を保有しており、更にマザーウィルの防衛部隊の存在も多数存在する事が予測されている。
そんな状況下の中、彼女は単独でカラード最強の要塞へと挑もうとしているのだ。
『──アパラチア山脈上空を飛行中の、所属不明機に告ぐ。直ちに進路を西に変更せよ。さもなければ貴機を撃墜する』
その時、VOB/PNに遠距離通信が入る。その声の主を、セレンは知っていた。
「悪いけど、その要求はお断りよ。ウェンディー」
『…! その声は…セレンか』
「私も一つ、極めて単純な要求があるわ。カラードの、全国家への即時攻撃停止、及び降伏」
『その要求を受け入れるとでも?』
「思ってないわよ?形式上の最後通告だっただけだから」
『…無駄死にする気か?』
「その覚悟も無きゃ、要塞に単機で挑まないでしょうが。けど、死ぬ気も無いけどね」
『…なら、あいつには悪いが、お前にはここで死んでもらう。私達の願いの為にも、人類の為にも』
「やってみなさい」
セレンの言葉を最後に、通信は切れた。
セレンの乗るVOB/PNは、まもなく予測最大防衛域へと突入する。それを合図にマザーウィルからの超遠距離攻撃が飛来するだろう。
「さて…」
セレンは、ゆっくりと目を閉じ。
(すみません、”───”さん。貴女との約束、破らせてもらいます)
そして。
(起動)
その瞬間、セレンの頭に凄まじい痛みが走ると同時に、彼女の意識を落としていった。
15秒後、セレンの乗るVOB/PNは、スピリット・オブ・マザーウィルの防衛域へと突入した。
スピリット・オブ・マザーウィル CIC。
「第四群、到達!! …駄目です!!全弾命中せず!!」
「長射程大型砲の効果を確認!!ですが、進路及び速度に変化無し!!」
「マザーウィル到達まで200秒!!」
「中近距離砲、準備よし!!射程に入り次第攻撃を開始します!!」
『こちらサイレント・アバランチ!!射程に入った!!攻撃を開始する!!』
「くっ…」
マザーウィルの総合火器管制を指揮する軍人男性は、モニターに表示される状況に歯軋りする。
セレンがマザーウィル防衛域へと突入と同時に、指揮官は一切の手を抜かない全力の攻撃を開始させた。
全構成員から見て、比較的初期からカラードの所属に入っていた彼は、ORCAの脅威を正しく認識している。故に、彼は一切手を抜く気は無かった。
しかし、
彼女は真正面から、マザーウィルから発射される巨大レーザー、対空ミサイル、近接弾頭、スナイパー弾の弾幕を強行突破していた。
(…間に合わないか)
その結果、彼は迎撃による撃墜は不可能と判断。残された手段は、近接防御のみ。
「全員に通達!!これより、マザーウィルは近接防御を実行に移す!!非戦闘員は直ちに全飛行甲板から退避せよ!!」
そして、彼は通信機を取り出し、通信を開く。
「総指揮官!!間も無くORCAが到達します!!」
『らしいな。しっかりと通達されていたぞ。やはりお前に任せて正解だったようだ』
「しかし…」
『お前の欠点は、そのネガティブな思考だ。もっと自分に自信を持て』
「…はい。総指揮官」
『私も準備する。通信を切るぞ』
「了解しました。 …幸運を祈ります」
同時刻。
マザーウィルの各所から数多くの対空放火が発せられる中、スピリット・オブ・マザーウィルの大部分を構成する6つの可動式飛行甲板の一つ、第一飛行甲板。
そこに、アメリカ戦線総司令官となったウェンディーがいた。
「…来るか」
彼女は愛機のレイテルパラッシュを展開。
「…ぐぁっ!?」
しかし、展開と同時に彼女に強烈な頭痛が走る。
それは意識をも侵食し、彼女は堪らず片膝を付き、右手で頭を押さえる。
だが、それは数秒の出来事。それを過ぎた瞬間、すぐに痛みが引いていった。
その時、マザーウィルの各所に設置されている全ての対空機銃が起動。全ての砲口が一つの方向…水平線の先にいる、VOB/PNへと向ける。
次の瞬間、一斉射撃。まだVOB/PNは射程圏内には入っていないが、相手は超音速。タイミングさえ合えば勝手に弾幕の中へと突っ込む事になる。
そして、VOB/PNがマザーウィルの近接防御圏内に突入。
同時に、偏差射撃によって形成された超密度の弾幕の中へと突入。百数発もの弾丸がVOB/PNに命中し、各所から火が上がる。
その後も何十発もの弾丸を受け、業火を上げながらも突進してくるVOB/PN。
マザーウィルまで2000m地点に辿り着いた瞬間、VOB/PNからホワイト・グリントが上へと飛び出した。
”ホワイト・グリントが飛び出した衝撃でVOB/PNの空中分解が始まる。
コントロールを失ったVOB/PNは破片を散らばらせながら、第1飛行甲板の下にある第3飛行甲板へと墜落し、爆発した。
『突っ込んで来るぞ、撃て!!』
そして、VOB/PNから脱出したホワイト・グリントへと対空射撃が始まる。だが、アクセル・クイック・ブーストの連発によって一発の被弾さえさせない。
ホワイト・グリントは物理法則に従う様に対空放火を避けつつ降下。
次の瞬間、第一飛行甲板に火花を上げながら滑り降りた。
同時に全ての射撃が止まり、第一飛行甲板に展開していた数機のGAN01-SUNSHINEは全砲門を素早く向け、対空機銃はゆっくりと再照準を始める。
そして、ウェンディーも全武装を展開。RG03-KAPTEYNの銃口を
同時にセレンはゆっくりと周囲を見渡し、ホワイト・グリントのカメラアイの光がウェンディーへと向く。
その時、彼女はセレンの”変化”に初めて気付く。
「…”弊害”か」
そう呟いた瞬間、ウェンディーの瞳の光が変化する。
”敵意”を孕んだ光は、”嫉妬”と”殺意”の光へと。
そして、レイテルパラッシュの全武装の安全装置が解除され。
「…私達は、お前の事が羨ましいよ」
「…」
ホワイト・グリントが真正面に向き、自然体で構える。
「お前が忘れない事でも──」
「…」
二人は、同時に腰を落とし。
「私達はいずれ、”忘れてしまう”のだから!!」
「…消えろ」
同時に、戦場を駆けた。
『始まりました。作戦を開始してください、”J”』
『了解した。”オリジナル・グリント”、出撃を開始する』
「っ…レーダーに新たな反応!!機影1、所属不明のアーマードコアです!!速度…4000km/h!?距離3500m!!迎撃、間に合いません!!来ます!!」
CICのレーダー員がそう叫んだ途端、第四飛行甲板に一機の白いアーマードコアが着地した。
──戦場は、新たな混迷を極める。