IS インフィニットストラトス 〜The beginning of the end〜 作:クローサー
今回、グロ表現があります。
推奨BGM:アーマードコア フォーアンサー「Spirit of Motherwill」
飛ぶ、撃つ、躱す、撃つ、躱す、撃つ──
「く…!!」
「────」
銃火が飛び交う甲板と甲板の間の空間を超音速で飛ぶ
その機動は、異常の一言に尽きる。
アクセル・クイック・ブーストを多用して、全ての弾丸を避けるかの如く蒼い尾を引き、縦横無尽に音速飛行しながらマザーウィル防衛砲台、量産型アーマードコア、そしてウェンディーへと攻撃を加えてゆく。
ウェンディーのRG03-KAPTEYNから超音速弾が発射されるが、その弾丸はセレンに掠る事無く、逆に味方の砲台に直撃する。更に反撃とばかりに051ANARから発射された60×120mm 威力特化型徹甲弾を食らう。
「グッ…!!」
その威力は凄まじく、いとも簡単にプライマル・アーマーを貫通。右脚の装甲の一部を抉り取った。
(クソ、速過ぎる…!!)
近接戦闘開始から60秒が経過した今でも、セレンに一発の攻撃が当たる事が無い。にも関わらず、第一飛行甲板、第二飛行甲板に展開していたカラードの戦力は3割を損失していた。
セレンの攻撃は、超音速機動下の中でも高い命中率を叩き出していた。両手に握るライフルをめちゃくちゃに振り回すように乱射するその姿は、それとは正反対に計算され尽くされた行動だ。
更に、理由はもう一つある。
セレンは気付いているのかいないのか、通信が全回線がオープンされている。
「───ろ」
だからこそ、聞こえてしまう。
「──消えろ──」
「消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ、消えろ──」
何の感情も篭っておらず、ただただ無機質に繰り返されるその声は、開きっぱなしの無線を介してカラードに響き渡り、恐怖を伝染させる。
今の彼女は、ただの殺戮人形。ただ己が思うままに、その暴力を撒き散らす。その証に、その瞳は暗く、虚ろ。
その恐怖に飲み込まれた者は恐慌状態となり、セレンに絶対の隙を見せてしまう。その隙を見抜かれたら最後、弾丸がその身体を貫き、絶命する。その繰り返しだ。
通信は全回線に広がっており、聞こえなくするには通信機能を切る必要がある。しかし通信を切れば、味方との連携が不可となる。
連携が取れなくなれば、確実に各個撃破されるのが目に見える。だから通信は切れず、この恐怖に抗わねばならない。とはいえ、肝心の通信は混線を極めており、オマケに通信を切る暇は無い。
「ッ!!」
再度超音速弾を放つが、やはり命中しない。そもそも、当てる方が無理がある。
考えてみて欲しい。縦1500m×横400m×高さ50mの空間を時速3160kmで縦横無尽に飛行する物体に、高が"超音速で真っ直ぐにしか飛ばない弾丸"を当てる事が出来るならば、その者は正しく天才の域を超えるだろう。
しかし、この戦場にてその条件が当てはまる者が、1人いる。
それこそが、セレンだ。
先も言ったが、セレンはこの超音速機動下の中でも高い命中率を叩き出している。それは何故か。
答えは簡単だ。彼女は戦闘、特に超音速機動戦に置いては、"天才"を超える規格外の才能と実力を有していた。
そう、"有していた"。ただ"それだけ"なのだ。
「ぐはっ!?」
「クソ、1人殺られ──」
『駄目だ、砲台の照準が全く追いつかない!!』
「ッ──」
次々と倒れてゆくカラードの兵士。しかし、彼女を止める決定打は何も無い。
その時、セレンが甲板の根元でその動きを止めた。その動きは、無理矢理止めた様な様子を思わせる。
「「「「「!!」」」」」
チャンスだと言わんばかりに、生き残ったウェンディ、全ての兵士達、そしてセレンが各武装の照準を合わせる。
(…なるほど)
よく見れば、ホワイト・グリントの各ブースターから高熱と白色の煙が排出されており、如何にブースターを酷使したかが一目瞭然となっている。今ブースターを吹かせば、確実に破損するのは確実だった。
全員が一斉に引き金を引こうと指に力を入れた。
その時、六門の主砲を中心に爆発が発生し、内部にあったジェネレーターとエネルギーが誘爆、マザーウィル全体を揺るがす大爆発を引き起こした。
更に次の瞬間、一本の青色のレーザーがボロボロだったGAN01-SUNSHINEの胸部を貫いた。
『選ばれるだけはあるな。不完全でこれ程、か』
「──!」
「何、だと…!?」
その声に反応するように、セレンは後ろを振り返る。
彼女にとって決して忘れる事の無い姿が、そこにいた。
かつて、自らの恩師を殺し、あの時の仲間を蹂躙した
その姿を認めた瞬間、063ANARをJに向けた。
この瞬間、この戦場はカラード、ORCA、死神の三つ巴状態に突入。
数ではカラード、質ではORCA、死神が勝る。誰が倒れても何ら可笑しくは無い。
「…下の階層はどうした?」
『生きている奴は1人も居ない。弱過ぎる』
「──ッ、2分で4つの飛行甲板を…!?」
『否、お前達もだ』
その言葉と同時に、Jは2段クイック・ブーストを発動し、左背のレーザーキャノン"EC-O300"から青色のレーザーが発射。その先にある砲台を貫通し、爆発させた。
そして、セレンも後方へクイック・ブーストと同時に両肩のSALINE05から2本のミサイルが発射。0.4秒後、ミサイルの外殻が外れ、中から8本の小型ミサイルが発射。計16本のミサイルがカラードへ殺到する。
「ッ──!!」
ウェンディーは咄嗟に回避行動。その横を1本のミサイルが通り過ぎる。
しかし。
Jの追撃の弾丸が、プライマル・アーマーを貫き、腹部装甲に被弾した。
「クソッ…!!」
(最悪の展開だ…!!)
目の前には正体不明の死神、J。所々視界に映るのは、再度超音速機動戦を開始したセレン。
(真っ先に私達を潰しに来たか──!!)
現在、スピリット・オブ・マザーウィルに存在する勢力は3つ。その中でも、最も数が多いのはカラード。
実力は置いておいて、数による面攻撃は最低でも牽制には嫌でも成り立つ。
だからこそ、2人は"手を組んだ"。"目的"は違えど、"過程"を果たす為。
「ッ!!」
『フン…』
すぐに味方の援護をしようにも、目の前にはJが立ち塞がっている。何とか隙を見つけ、抜け出さなければならない。
しかし、Jはウェンディーの攻撃をいとも簡単に躱すその姿は、"明らかに手加減されている"ようにも感じ取れた。
それもその筈。Jはウェンディーに攻撃する必要"すら"無かったのだから。
瞬間、いきなりウェンディーの視界が広げられた白い手によって覆われた。
刹那、頭部を掴まれ、勢いそのまま甲板に叩きつけられた。その反動で、手に持っていたRG03-KAPTEYNが離れた。
その速度は2400km/h近く。その勢いで頭部は、一瞬で頭蓋骨を粉砕。それのみに留まらず、粉砕された頭蓋骨が頭皮を突き破り、更に脳漿がその隙間を広げ、ブチまけた。
しかしそれはあくまでウェンディーのアーマードコア、レイテルパラッシュの"中"で行われた出来事。今この瞬間死亡したウェンディー以外には、その死を見る事は出来ない。
次の瞬間、右手から離れたRG03-KAPTEYNが甲板を2度叩く。1度は銃口を叩いて僅かに跳ね、2度目で甲板に横になる。
その音を合図に、ウェンディーの頭部を超音速で甲板に叩きつけた本人、セレンは屈めていた身体を立ち上げ、拡張領域から063ANNRを取り出す。
そして、両腕のライフルを死亡したウェンディーの頭部に狙いを付け、即座に発射。
プライマル・アーマーの防護が効かない至近距離から発射された2発の60×120mm 威力特化型徹甲弾は、容赦無く装甲とウェンディーの頭部を"破壊"。レイテルパラッシュの外にも
「…」
そして、セレンはJの姿を探し始める。
──ウェンディーが死んだ今、既に"生きている"カラードの戦闘員は誰1人居ない。
──Jがウェンディーを引きつけている70秒の内に、セレンは第1、第2飛行甲板を完全に制圧していたのだから。
しかし、周囲にはJの存在が確認出来ず、既にその姿を消していた。
「──ッ!!!!」
その時、セレンは右膝を付き、頭部の展開を解除。同時に口に溜まっていた血を吐き出した。
その原因は1つ。アサルト・クイック・ブーストの多用による身体の酷使。
3160km/hを瞬間で出すアサルト・クイック・ブーストは単発だけでも軽くない負担が掛かる。それを連発すれば身体に酷使するのも無理はなかった。
しかし、この程度でセレンは止まる事はない。
セレンは両手のライフルを拡張領域に格納。後ろへ振り返り、光が戻った瞳で頭部を破壊されたウェンディーを見る。
「…さよなら、ウェンディー」
その一言だけを発して正面へと向き直り、頭部の装甲を再展開。両手にライフルを呼び出し、今もなお走る強烈な頭痛に耐えながら、マザーウィル内部への入り口を探し始めた。
『こちらJ、フェイズ1-2は達成した。G-14へ帰還中』
『了解しました。フェイズ3への準備をお願いします』
設定集を更新します。