IS インフィニットストラトス 〜The beginning of the end〜 作:クローサー
マザーウィル内部への入り口を見つけ、内部へと侵入したセレン。
既に非戦闘員は退避し、内部には戦闘員を配置していないのか何の抵抗も無く、スイスイと中心部へと進んで行く。
そして、本当に何も抵抗が無いまま、
仕方なく、少し離れてSALINE05の分裂ミサイルで破壊しようとしたその時、突然閉ざされていた隔壁が開いた。
「…?」
いきなりの出来事に警戒しつつ、指揮場へと侵入する。
「ようこそ、ORCA」
そこには、アメリカ軍服を着た1人の男が立っていた。
「…」
「安心してくれ、マザーウィルには、俺とあんた以外に戦える奴は誰1人として居ない。此処に来るまでの道筋を証拠として出そう」
「そうだとしても、何で貴方1人だけ此処にいるのかしら?」
「簡単な話だ。俺は"惨敗兵"として生きるつもりは無い。最後まで、自らの命を捧げる軍人として生き、自らの命を捧げる軍人として死ぬ。それが、アメリカ戦線副指揮官としての使命だ」
「…」
不意に、セレンはホワイト・グリントの展開を解除。生身の姿を晒す。
「…何のつもりだ?」
「私としても、此処には用があるしね。此処を傷付ける訳にいかないのよ。それに…死ぬ覚悟があるなら、1つ勝負をしない?」
「勝負…?」
「ええ」
そう言って、セレンは拡張領域から1つの空薬莢を取り出す。
「ルールは簡単。私がこれを弾いて、落ちた瞬間撃つ。所謂早撃ち勝負ね。これなら貴方も私を殺せる可能性はあるわよ」
「…何故、その勝負を持ちかける?ウェンディーさんと外の奴等を殺ったお前なら、今俺を殺せる筈だ」
「…」
男の言葉を聞いたセレンは、軽く溜め息をつく。
「…私からしたら、その眼をよく知ってるからね。馬鹿みたいな事を平気でやろうとする奴がするその眼。だからこそ、かもね。それで乗るか乗らないか、どっち?」
「………乗ろう」
「決まりね。銃は…あるに決まってるか」
セレンの視線には、ホルスターに仕舞われた一丁のコルト ガバメント。
左手に空薬莢を持ち、弾こうとした時、ふと思い出したような表情をするセレン。
「貴方、名前は?」
「…ジャクソン。ジャクソン・スミスだ」
「セレンよ。 …それじゃ、始めましょう」
ピン、と左手から空薬莢が弾き出されると同時に、双方は抜きの構えを取る。
弾き出された空薬莢は、放物線を描くように飛び。
2人の中央に、落ちた。
「「ッ──!!」」
2人は全く同時にホルスターから拳銃を抜く。
ホルスターから拳銃を抜き取るタイミングは同じ。後は、構え、照準し、トリガーを引く動作の速さ。
果たして、この勝者はセレンだった。
確かに、抜き取り、構える動作までは2人はほぼほぼ同等の速さだった。しかし、照準の速度が明暗を分けた。
ジャクソンが照準し切る前にセレンが照準し、トリガーを引いたのだ。
セレンのグロック17から放たれた9x19mmパラベラム弾は正確にジャクソンの頭部に命中。そのままジャクソンの身体は後ろに仰け反り、倒れた。
勝者のセレンはグロック17をホルスターに仕舞い、死んだジャクソンの首元を弄る。
(…あった)
「事後承諾になるけど、貰っていくわ」
そして、首に掛けていたドックタグをジャクソンから外し、拡張領域に仕舞い込んだ。そして、開かれたままのジャクソンの目を閉ざした。
「さて…」
セレンは周囲の端末を弄り、システムのアクセスを試みる。が、当然と言うべきかロックが掛かっている。
それを見たセレンはすぐさまハッキングを開始。鮮やかな手口でハッキングを進め、ものの十数分で侵入を完了。
「!!」
その瞬間、カウントダウンが表示させる。その残り時間は、8分12秒。
急いで複数の機密ファイルを見つけ、閲覧する。その殆どが作戦指令で埋まっている中、最後のファイルを開く。
「…駄目か」
一応最後まで読んでいるが、作戦指令の文章が続き、落胆の声が出る。
しかし、最後まで読み切った瞬間、違和感を覚える。空白があるのに、それ以上下へ辿る事ができないのだ。
(この方法…私がカラードにいた時の…)
最後の一行から続く謎の空白を辿る為、キーボードを操作して更に下降を開始する。
下降操作から2秒。10行程辿り、文章が現れた。
文章は意味を成しておらず、しかし何処か規則性を感じられる。その文章は7行に渡って書かれている。
(この暗号…!!!!)
その文章の解読方法を、セレンは"知っていた"。
だからこそ、その内容を即座に知る事が出来た。
「………」
閲覧を終えたセレンは、ホワイト・グリントを展開。完全な閉所の為、高速機動は困難だが、それでもカウントダウンまでの脱出には十分な速度だ。
外の光が見えた瞬間、オーバード・ブーストを起動。音速を超えた速度でマザーウィル外部へ脱出。そのまま旋回し、西へと向かう。
瞬間、後方で大爆発が起こるのを感じ取るが、止まる事は無かった。
数時間後。
太平洋、アメリカ合衆国 排他的経済水域圏内。
海上に浮かぶ、世界に数少ない
複数のブロックと油田から構成された石油プラントは、静かに海上に佇んでいる。
すると西から爆音と共に、ホワイト・グリントを纏ったセレンが接近して来た。
800m地点でオーバード・ブーストを解除。急速に速度と高度を落とし、メガフロートの地面に着地した。
「…」
そのままセレンは地面を歩き、メガフロートの中心へと歩いていく。
そして、中心に立つ一際大きい建物が立つブロックに差し掛かり、建物の屋上を見上げる。
「…ウェンディーとマザーウィルは殺られた、か」
「…オッツダルヴァ」
そこには、青を基調としたカラーリングのアーマードコアがセレンを見つめていた。
右手にアサルトライフル、左手にレーザーライフル、左背にレーダー、右背にミサイル発射管を装備している。
そのアーマードコアの名は、"ステイシス"。それを駆るはカラードの総司令官、"
「一応聞くけど、どうする?貴方は最後の砦な訳だけど」
「それこそ愚問だな。お前も、あの時に言った筈だ。私はお前が殺すと。そして、お前は私が殺すと」
「そうね…」
両者はブーストをゆっくりと吹かし、セレンは上昇、オッツダルヴァは下降し、高度を20mに合わせた。
そして、両者は構える。
「さあ、始めよう。セレン」
「ええ、始めましょう。オッツダルヴァ」
その瞬間、両者から殺気が放出。
──セレンとオッツダルヴァ。かつてはリリウム、ウェンディー、メルツェルと共に理想を描いた仲間だった。
「私達の──」
「私達の──」
2人は言葉を紡ぐ。その言葉が途切れた瞬間、始まるだろう。
──しかし共に描いた理想はすれ違い、その繋がりを引き裂いた。
『こんなやり方じゃ、何も変わらないのよ!!』
『だが人類は愚かだ!!早急に示す必要がある!!』
『だから何億人を犠牲にしろと!?それが仕方ない犠牲だって言うの!?』
『ならば、お前は犠牲を出さずに私達の理想を成し遂げる事が出来るのか!?』
「
「殺し合いを」
その瞬間、2人は引き金を引いた。
──皆が抱いた理想は、純粋に人類の未来を想って。だからこその決別。だからこその敵対。
──だからこそ、殺しあう。人類の未来の為に。
──その先に、どんな運命が待ち受けていたとしても。
次回、ORCAとカラードの決戦。
その戦いの先には──