IS インフィニットストラトス 〜The beginning of the end〜 作:クローサー
The beginning of the end Part1
第三次世界大戦勃発から、3週間が経過した。
カラードの残党が時々テロ行動などでニュースを騒がせる程度に抵抗が収まっている現在。
主戦場となったアメリカ、ヨーロッパでは復興が今も尚進み、少しずつ元の姿へと戻りつつある。
だが、失われた命は、決して戻る事が無い。
過去現在未来、永劫に。
IS学園。
第三次世界大戦勃発と同時に、カラードの標的にされた元戦場。
現在は機密エリア、寮の使用部屋以外が難民キャンプとして開放されており、約5000人が収容されている。
学園の周辺には自衛隊の艦隊が展開されており、カラードの残党に対する準備も万端。
更に教師達が交代で量産機の側に居るようにしており、IS学園からのスクランブルも可能となっている。というのも、IS学園に居た専用機持ちは、全員母国へと帰り、それぞれの役目を果たしている最中なのだ。
「追加のお皿持ってきたよ!」
「すまないな。そこのテーブルに置いてくれ」
そして今、学園に残っている専用機持ちである篠ノ之箒は、寮付近で朝食の味噌汁を難民に配給していた。
手慣れたように鍋から味噌汁を丁寧かつ素早く注ぎ、次々と手渡していく。
(………)
しかし行動とは裏腹に、箒は考えていた。
(…何で、まだ姉さんは連絡してこないんだ?)
それは自身の姉、篠ノ之束について。
(第三次世界大戦から3週間…なのに、姉さんから一切の連絡が来ない。いや、勃発と同時に
(何で姉さんは連絡を取らない?何で私達の前に現れない?何で姉さんは動いていない?)
(…一体姉さんに何があったんだ…)
「箒」
「…何だ?」
「ちょっとペースが落ちてるけど…体調が悪いの?私が代わる?」
少し視線をずらすと、多少ではあるが行列が伸びてきているのが分かる。
「…そう、だな。頼む」
「うん」
クラスメートに担当を任せ、箒は歩き始める。
(…)
すっ、と建物の影へと移動。壁に背中を付け、ポケットから携帯電話を取り出し、電話帳に無い番号をダイヤル。
そのダイヤル先は、箒しか知らない束特製の盗聴不可な携帯電話の番号。束が唯一変えていない番号であり、箒の携帯電話にも通話履歴が残らないように細工されている為、篠ノ之姉妹しか知らない秘密の電話となっている。
ダイヤルを決定し、スピーカーに耳を当てると「トゥルルルル」という音が聞こえてくる。
しかし2回程で、留守番案内のメッセージが流れ始める。
『ヤッホー、箒ちゃん!!ゴメンねー、束さんは今忙しいんだ。後でこっちからちゃんと掛けるけど、何かメッセージがあるなら合図の後で言ってね!』
『それじゃ行くよ!箒ちゃん大好きー!!』
そのメッセージが箒専用となっているのだが、元々箒以外に知る由も無い為に出来るのだろう。
そして、箒はゆっくりと話し出す。
「………姉さん、今何処に居ますか?お願いだから、声だけでも聞かせて下さい」
「今まで、こっちから掛けて5分以内でいつも掛けてきてくれましたよね。私の悩みにも、弱音にも、姉さんはいつも真剣に聞いてくれていた」
「臨海学校の時だって、頼んでもいないのに勝手に紅椿を持ってきて、私の誕生日プレゼントと言わんばかりに披露してきた。まるで、私の気持ちが全部分かっているように」
「だから………だから、今の私の気持ちも、分かりますよね?」
ポロポロと、箒の目から涙が流れ始め、スルスルと座り込む。
「………会いたいよ、姉さん」
そこにいるのは、純粋に姉の無事を祈る、1人の女の子。
それ以外の、何者でも無かった。
数分の間泣き続けだから箒は、涙を拭い取り、再び立ち上がる。
「…これからも、毎日掛け続けます。だから、明日でも。1週間後でも。1ヶ月後でも構いません。私に、声だけでも聞かせて下さい」
その言葉を最後に、通話を終了した。
瞬間。
学園に、サイレンが響き渡る。
「ッ──!?」
このサイレンの意味は、「敵性勢力がIS学園防衛圏に進入された」非常事態。
それを示すように、上空に自衛隊が発射したミサイルが通過し、教員が乗るISがスクランブルしている。
その光景を見た箒は、即座に紅椿を展開。前もって指示されたように、近くのアリーナへと難民の避難誘導を開始。
近くにいる生徒達と協力し、難民を集めながらアリーナへと誘導。難民達の足が完全にアリーナへと向いている事を確認した箒は、直ぐに通信を取る。
「山田先生、聞こえますか!?」
『はい!!箒さん、どうしました!?』
「第3、第4アリーナへの大まかな避難誘導は完了しました!!あとは皆に任せて、私も合流します!!」
『分かりました!!それと、真也君の方も先程終わったとの事です!!』
山田真耶との通信を交わし、箒は教員の待機場所へと飛翔する。
十数分後の、IS学園防衛圏内。
そこには、自衛隊の艦隊は"存在していなかった"。
代わりに存在するのは、黒色に染められた巨大な暴力の権化のみ。
『それじゃ、計画通りにねー』
『了解した』
そして、背中のX字形ブースターから膨大なエネルギーが放出。
真っ直ぐに、IS学園へと向かう。
1時間後、全世界にIS学園襲撃のニュースが流れた。