IS インフィニットストラトス 〜The beginning of the end〜   作:クローサー

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The beginning of the end Part4

ガシャン、ガシャンと駆動音が静かに鳴り響く、IS学園。

 

『…』

 

索敵開始から、既に40分。未だに、セレンの姿をJは探していた。

逃走した可能性も無きにあらずだが、そんな選択肢を彼女が選ぶという想定は一切していない。否、確信とも言える読みをしていた。

彼女は再び、目の前に現れると。

そして何度目かになる、本校舎前に差し掛かったその時。

 

「ッ──!!」

 

Jの後方、林の方面から2発のミサイル、及び1本のレーザーと60mm弾が飛来。それらは全てN-OGⅧ/Jの周囲に展開された緑色に阻まれ、60mm弾以外は完全に防御される。唯一貫通した60mm弾も威力が減衰されたせいか、N-OGⅧ/Jの装甲に弾かれた。

そして、振り向きざまに右手のレールライフルを速射。超音速の大口径弾が林の木々を抉り取っていく。

その弾幕を出力を半分に絞ったクイック・ブーストの連発によって躱し、セレンが林から姿を表すと同時。

 

「ハッ!!」

 

本校舎の方向から、1本のエネルギー波が緑色の膜に着弾。

そちらを見れば、空裂を両手に構え、突撃する箒の姿が見える。それを見たJはすかさず左手のレールライフルを照準、射撃。

しかし、箒は臆さずにその弾幕の中を躱し、突き進みながら空裂のエネルギー波を次々と放つ。

2人が取った戦法は、単純なもの。

──Jは状況を見て、クイック・ブーストで大きく距離を置き、引き撃ちを開始。

 

(奴の周囲を囲う緑色の膜の強度は堅く、一切の攻撃を通さなかった──)

(だけどあれがプライマル・アーマーならば、連続攻撃による減衰飽和が格下の常套手段──)

 

──距離を置かれた2人は、即座に追撃。箒は弾丸を"叩き斬りながら"突撃し、セレンは全力の攻撃を続ける。

 

(ならば、攻撃が通るまで間髪無く攻撃を当て続けるのみ…)

(そうすれば、いずれプライマル・アーマーは消滅する筈…その時が最大のチャンス)

 

((攻撃は、最大の防御!!))

 

最早狂気的とでも言うべき速度で距離を詰めた箒は、PICのマニュアルコントロールで横に回り込み、紫電一閃。緑色の膜に一瞬干渉させ、そのまま距離を取って再度一振りし、エネルギー波を射出。

それに続き、セレンはクイック・ブーストを吹かし、射線から退避。同時に右背のSALINE05をパージ。落下するそれを思い切り蹴り飛ばし、緑色の膜に直撃。

緑色の膜に阻まれたそれは、大きくひしゃげて弾かれる。そこにレーザーが着弾し、内部に内蔵されていた10数発のミサイルが爆発。

 

『…成る程、だが』

 

2人の意図を理解したのか否か、N-OGVIII/Jの両肩の装甲が開き、そこから2発の小型ミサイルが発射。

 

──小型とはいえ、それはあくまで"18mの巨体であるN-OGVIII/Jと比較"した場合の話だ。そのミサイルのサイズは、戦闘機に搭載されるレベルの大きさに相当する。

 

「ッ──!!」

「何ッ…!?」

 

2発のミサイルはセレンへと凄まじい速度で向かう。が、すぐさま迎撃され、1発は爆発。もう1発はクイック・ブーストでもギリギリ躱しきれず、プライマル・アーマーに着弾。

大きさに反して威力は低かったが、プライマル・アーマーが消滅する寸前になり、大破した装甲をより破損させる。

 

(両肩の中に仕込んでたって訳ね…巨体を有効活用するんじゃないわよ!!)

 

内心で毒づきながらも、攻撃の手は休めない。それは、その光景を見ていた箒も同じ。

 

『ふっ…!!』

 

そして、それにJも応える。

最早、セレンと箒の思考に、"自分達以外の生存者がいるかも知れない"という仮定は存在しない。

 

──自身が生き残る為に、目の前の敵を撃滅するのみ──

 

Jは徹底して引き撃ちを。セレンは中距離戦闘を。箒は近距離戦闘を。それぞれが全く異なる戦術で、決死の死闘を繰り広げる。

状況は、一進一退。が、状況は常に止まることはない。

引き撃ちを続けるJの両肩の装甲が再度開き、開口部から複数発の小型ミサイルが覗く。そしてロケット・モーターから噴射炎が放出。両肩から放たれようとしたが。

 

──ガァン!!

 

緑色の膜を貫通していた60mm弾が直撃、貫通。内蔵された爆薬が爆薬し、更に複数発のミサイルにも連鎖爆発。

その結果、右肩の装甲が内部爆発によって破壊。右手の照準が逸れ、その隙に箒が再度接近。右肩の装甲を破壊したセレンは、更に猛攻を続ける。

が、しかし。弾丸は"無数"にあれど、"無限"ではない。

 

──ガンガンガンガン、ガチンッ!!

 

「ッ──!!!?」

 

フルオート射撃を続けていた063ANARに装填されていたマガジン内の弾薬を撃ち尽くし、撃鉄が薬室を叩く。その意味は一つ。

 

(弾、切れ──!?)

 

──元々、60×120mm 威力特化型徹甲弾は主に大型兵器や施設破壊に用いられる。とはいえ、そういったケース(戦闘)は基本的な前提には入っておらず、弾薬自体は少なかった。

 

「クッ…!!」

 

063ANARのマガジンをリロードする隙など無いと判断し、格納。残った2つの武器、ER-O705とSALINE05で交戦を続行する。

 

「──!!」

 

箒も、空裂一本で尚も交戦を続行する。

スラスターから放出される青色のエネルギーの尾を棚引かせ、時には弾丸を避け、時には弾丸を叩き斬り、時にはエネルギー波を飛ばす。

しかし次の瞬間、攻撃が停止すると同時にN-OGⅧ/Jが着地。青白い光を放ち始める。

 

「まさか──箒、逃げなさい!!!!」

「分かって、る!!」

 

セレンが叫ぶと同時、箒は背を向けずに、しかし出来得る限りの全速で距離を離す。そして、それはセレンも同じ。

 

──N-OGⅧ/J周辺の発光が収まり、緑色の膜の表面に複数本の雷が走る。

 

(駄目、あれじゃ間に合わない──!!)

 

しかし元々距離があったセレンはともかく、至近距離に近い距離だった箒は、まだ"間合い"の中にいる。

それを証明するように、N-OGVIII/Jは数百メートルの差を一瞬で詰め、箒の前に現れる。

 

──緑色の膜が大きく広がり。

 

だが。

 

「────ッ!!!!」

 

刹那、箒は後方に向けてイグニッション・ブースト。なけなしのシールドエネルギーを全て注ぎ込んだそれは、瞬間だけマッハ2を突破。勿論それに相当する負荷が箒の身体に深くのしかかるが、歯を食いしばって耐える。

そして、N-OGⅧ/Jの直上を中心とした、大爆発が発生。

箒はギリギリ、その爆炎に直接的に巻き込まれる事なく射程から離脱した。射程外に離脱したからこそ、2人はその爆発の大きさを初めて見る。

爆発は半径100m以上に及び、高さに関しては200m。高熱は半径700m、衝撃波に関しては半径数kmにも及ぶ。

当然2人にも衝撃波と高熱が襲い掛かり、その威力に飛行バランスを崩し掛ける。セレンは空中で1回転し、箒は両足を地面に付け、更に空裂を地面に突き刺して姿勢バランスを立て直す。

 

「「──!!」」

 

そして次の瞬間、直感に従ってセレンは左背のSALINE05をパージし、N-OGVIII/Jの予測地点に蹴り飛ばす。そして箒はスラスター出力を120%に上げ、更にイグニッション・ブーストでスタートダッシュ。超低空で未だ立ち込める爆炎の中へ、N-OGVIII/Jへと突撃。

爆炎に突入する直前、箒の耳に金属同士が高速で衝突し、爆発する音を拾う。咄嗟に両手に構える空裂を突きの体勢に移行。そのまま、真っ直ぐ突き進み。

 

「ヅゥェアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」

 

曲げていた両腕を真っ直ぐと伸ばし、エネルギー波を纏った空裂を突く。

その瞬間、箒の視界に左右の脚部から多量の緑色の粒子を放出し、鎮座するN-OGVIII/Jを目視。しかし、目視しても超高速で飛行している為に、到達までは0.5秒も無い。しかしそんな事は関係無い。逆に、より加速し、一撃の威力を更に上乗せし。

そして、空裂の刀身がN-OGVIII/Jの胸部装甲に食い込み、(はばき)までその刀身を食い込ませた。同時に、高速で箒の身体もN-OGVIII/Jに衝突し、ボキボキと何本もの骨がヒビ割れて砕ける感触と激痛が走り、内臓を痛めたせいか、口から大量の血を吐いた。

 

「ッッッ──ガハァ゛!!」

 

しかしその激痛を意識の外に追いやり、箒はN-OGVIII/Jの胸部装甲を蹴ると同時にスラスターを逆噴射。戦塵の外へと出て、着地。が、激痛によって膝が折れ、倒れないように空裂を杖代わりにする。

 

「ッ…グッ…」

「倒れちゃ駄目よ、箒」

 

箒の横に、新たに打鉄の近接用ブレード"葵"を片手に持ったセレンが立ち、ER-O705の銃口を戦塵に向ける。

そして戦塵が少しずつ晴れて行き、見えたのは、箒の一撃によって開いた穴から火花を出し、カメラアイの光が消えたN-OGVIII/Jの姿。

動く様子は無く、ただそこに立っている。

 

「………どう、思う?」

「…貴女も、薄々感じてるでしょ?」

 

口に残った血を吐きながら出した言葉に、セレンは応える。断言ではなく、問いかけを。

 

「…だな」

 

激痛に軋む身体に鞭を振るい、空裂を脇に構える。

 

 

「──まだ、殺っていない」

 

 

その瞬間、N-OGVIII/Jのカメラアイが再度灯り、背部から大量の排煙と共に紅い光と電流が流れ、各所の一部装甲が紅く輝き、同時並行で脚部、腕部、肩部の装甲がせり上がり、新たに現れた内部装甲も紅く輝き始める。

 

『ジェネレーター出力再上昇。オペレーション、パターン2』

 

そして激しい電流音が響き始め、胸部を中心に決して小さくない電流が流れ始める。同時に周囲の空間、否、IS学園全体に緑色の粒子が舞い始める。その影響か否か、セレンのプライマル・アーマーがチラつく。

 

「…」

 

箒は僅かに腰を落とし、セレンはレーザー兵器を撃った所でN-OGVIII/Jの装甲の前では無力と判断した為、ER-O705を格納し、葵を両手に持ち、中段の構えを取る。

 

『──流石、と言うべきか。人の中の可能性を、その身に宿すだけの事はある。だが篠ノ之箒、お前は…』

「…?」

『…だが、例えそうだとしても俺のやる事は変わらない』

 

ガゴォン、とN-OGVIII/Jの両手に持つレールライフルが地面に落ち、空いた両手で腰部にあるスタビライザーを持ち、分離させる。

そして、スタビライザーの分離部が変形を開始。内部機構を露出してレーザーブレードを完成させる。

 

『見せてみろ、貴様らの力』

 

新たに両手に持ったレーザーブレードから4本の細いレーザー、そして刃渡り20mもの超高出力レーザーブレードを形成させる。

 

『「「…」」』

 

誰もが動かず、沈黙が、周囲を支配する。聞こえるのは風の音と、ホワイト・グリントと紅椿、N-OGVIII/Jの駆動音のみ。

数十秒、否、数分も経ったかもしれない。緊張状態が続き、時間感覚が徐々におかしくなっていく。

そしてその時は、やはり唐突に訪れた。

 

──パキュゥゥゥゥゥゥン!!

 

そんな甲高い音と共に、セレンのプライマル・アーマーが消滅。

刹那。Jはレーザーブレードを一振りし、光波を放つ。その大きさは40mに匹敵し、その威力は計り知れない。

セレンと箒は即時ブースターを吹かし、セレンは前転するように上に、箒はスライディングするように下へと回避。そして速度を落とすことなく、逆により加速させながら体勢を戻す。

 

「Jェェェェェェェェェェェェッ!!!!!!!!」

「オォアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!」

 

たった3人で繰り広げられる"戦争"は、まだ終わらない。




── In order to prove their power I ──
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