IS インフィニットストラトス 〜The beginning of the end〜   作:クローサー

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お待たせしました。相変わらずのモチベですので、次の更新も気長に待っていて下さい。


第五話(改訂版)

リードに存在する軍事基地より北西1km地点の山中。

 

月明かりに灯された自然の中に、一夏はその身を隠し、双眼鏡で軍事基地なや様子を探っていた。

 

そして、腕時計の画面を確認する。画面には”02:56”と刻まれていた。

 

(…2分経過)

 

腕時計の画面は今もカウントダウンを刻んでいる。

 

再び双眼鏡を覗き、一秒一秒の様子の変化を見逃さない。

 

 

(…ん?何か…妙だな)

 

 

不意に、一夏は様子に違和感を覚える。

 

半年前までの、普通の少年だった一夏ならばそれに気づかなかっただろう。

 

しかし、セレンに戦い(殺し合い)のイロハを教え込まれ、成長した今の一夏は、それを敏感に察知した。

 

(…もしかしたら、プランBに移行する事になるかも知れないな。その時は…)

 

無意識下に、首に下げているドックタグを左手で握っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、軍事基地内サーバー室。

 

「やってくれたわね…オッツダルヴァ、リリウム」

 

セレンの前に対峙する、2人の青年少女。

 

三人の手には拳銃が握られており、セレンはダブルトリガー(2丁拳銃)で2人に照準し、対して2人はシングルトリガーでセレンに照準している。

 

 

「銃を下ろして下さい、セレン。今ならば危害は一切加えません」

 

 

少女…”リリウム”は、冷静な、そして何処か機械的な声でセレンに降伏勧告する。

 

 

「悪いけど、それを私が受け入れると思ってる?」

 

 

「思ってるさ。いや、”そうせざるを得ない”状況に立ってるのは分かってるだろう?」

 

 

セレンの言葉を、”オッツダルヴァ”は否定する。

 

 

「お前の愛機であるブロッサムはこちらの手に。今のお前の武器は、持っている2丁のグロック17だけ」

 

 

「そして、外はカラードが”ウェンディー”の指揮の下、完全に包囲した。ブロッサムを失ったお前にとっては、抵抗しても意味は無い」

 

 

それを聞いていたセレンの表情は、何も変わっていない。あるのは、敵意のみ。

 

 

「どうりで、ここにウェンディーが居ないわけね」

 

「そういう事です」

 

「銃を下ろせ。先程リリウムが言った通り、今降伏すれば危害は加えない」

 

 

 

「…一つ、解せない点があるわ」

 

 

 

その言葉を聞いた2人の眉が僅かに動く。

 

「一体何のことでしょうか?」

 

「…リリウム。今、此処は”戦場”よ?なら今、貴女の目の前にいる、貴女達カラードにとって最大の脅威である()を、最初から降伏するように説得する時点で貴女達らしくない。いえ、”私達”がする事じゃない。

 

”戦場”は殺すか殺されるか、どちらか一択しか存在しないわよ。忘れた訳じゃないでしょう?」

 

「…」

 

無言になったリリウムの代わりに、オッツダルヴァが口を開く。

 

「とぼけているのか?セレン」

 

「とぼけるも何も、私には今此処で殺されない理由の心当たりは無いわよ」

 

「…”黒い鳥”。この言葉に聞き覚えは?」

 

「無いわ」

 

オッツダルヴァの黒い瞳が、セレンの瞳を覗く。

 

「…どうやら、私達の推測はハズレだったようだな。セレンは例の件の犯人ではない」

 

「確信があるのですか?リーダー」

 

「ああ」

 

「…了解しました」

 

「で、私を逃がす気は…やっぱり皆無ね」

 

「当たり前だ」

 

銃口を向け続ける2人に、セレンは目線を外さずに軽くため息を付く。

 

「今言うけど、貴方達は2つ、大きな誤算を犯してるわよ」

 

「…何?」

 

 

 

 

 

 

「一つ…ORCAは”1人だけ”だと思い込んでしまった事」

 

 

 

 

 

その時、突然の爆発音と地面を揺らす程の衝撃が走り、オッツダルヴァとリリウムは足を取られる。

 

 

 

 

「そしてもう一つは…」

 

 

 

咄嗟にしゃがみ、衝撃を耐えていたセレンの右腕にある白色のブレスレッドが発光し、セレンの身体を包む。

 

 

「「!?」」

 

 

それを瞬時に理解し、全く想定していない事態が起こった2人は驚愕するも、すぐさま立て直して2人も”展開”。次の瞬間、2人の身体も光に包まれた。

 

 

 

 

「私が新しい(機体)を手に入れていた事っ!!!!」

 

 

 

 

次の瞬間、三つの光が爆ぜた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1分前。

 

監視を続けていた一夏の腕時計のアラームが鳴った。

 

(…時間か。プランBに移行だな)

 

双眼鏡で大体の基地の配置を素早く確認し、そして立ち上がる。

 

「っ…?」

 

一夏は気付く。

 

 

 

身体が震えが止まらない。それは寒さからでもなく、武者震いでもない。

 

 

 

(…やっぱり…怖い、のか)

 

 

 

その正体は、「恐怖」。

 

 

今から”人殺し”になる恐怖、殺される恐怖。それらが一夏の心にのしかかり、プレッシャーを与える。

 

 

(…覚悟は決めてる)

 

 

一夏は視線を落とし、ドックタグを握る。相変わらず震えは無くならないが、既に殆ど収まっている。

 

 

(後は、今の自分自身を”捨てる”だけだ)

 

 

ドックタグが発光。その光は一夏の身体を包む。

 

 

 

 

「さよならだ、”織斑一夏”」

 

 

 

 

「行くぞ。”織斑一夏(人殺し)”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──それは、唐突に起こった。

 

 

突然の、複数の発砲音。

 

しかしそれは、兵士が持っている重火器が発せられる類の物ではない。まるで、対物ライフルが連射されたような、重い発砲音。

 

次の瞬間、ハンガーの入り口付近に収容されていた戦闘機が爆発。搭載されていた燃料と弾薬をも巻き込み、更には隣にあった戦闘機にも誘爆。

 

2機の戦闘機の爆発によって生まれた幾多の破片は、物理法則と高熱を持って、全方向に、無差別に飛来。

 

ハンガーの壁を貫く破片、地面や機器に突き刺さる破片、外へと飛び出る破片、人体を貫き、致命傷を与える破片。

 

 

そして何よりも効果があったのは、混乱。

 

 

一つのハンガーを壊滅させる規模の爆発により、周囲にいた人々は混乱を生み出し、指揮系統はその瞬間、麻痺を引き起こす。

 

 

その瞬間を、(一夏)は利用する。

 

 

一夏はオーバード・ブースト(OB)を使用し、基地の懐へと低空かつ超高速で突入。

 

「敵だ!!」

 

兵士の1人が懐に入る前に接近に気付き、叫ぶ。そして、手に持つアサルトライフルを連射。

 

他の兵士や対空砲もそれに続いて対空射撃を開始。無数の弾幕がその行く手を阻まんとする。

 

 

戦闘機ならば、苛烈な防空網を突破するのは不可能だろう。

 

 

しかし、一夏が操っているのは戦闘機ではなく、”アーマードコア”だ。

 

 

弾丸がブラック・グリントに着弾する140cm手前で、”不可視の膜”によって、緑色の光と共に消滅する。

 

不可視の膜によって次々と消滅される弾丸。これでは対空射撃は全くの無意味。

 

そして防空網を突破して懐に飛び込み、オーバード・ブーストを解除。

 

流れるようにして、左手に握る03-MOTORCOBRAを負傷兵を運ぶ兵士に照準。

 

 

 

 

 

──次の瞬間、甲高い、蒸発音のような発射音が響く。

 

 

 

 

 

「ッ!?」

 

その音を聞いた一夏は、反射的、そして第六感に従って伸ばした左腕を下げると同時に、急停止。

 

そして右上の方向から、2本の超高出力の巨大レーザーが一夏の前方を通過、地面に着弾して”蒸発”させた。そのまま進んでいたら直撃するコースだった。

 

 

 

「想定外の事態、か…地上部隊は直ちに退避しろ。こいつは私が殺る!!」

 

 

右上を見れば、そこには真鍮色に塗られた”アーマードコア”が存在した。

 

右肩部に搭載された、鞘に納めされた大剣のような形状をしたレーザーキャノンが展開されている。恐らく…いや、十中八九、先程の巨大レーザーはそこから発射されたのだろう。

 

それを操っているのは、声からして女性。

 

 

(…っ)

 

 

しかし、一夏はそれらを考える余裕は一切無かった。

 

 

 

(これが、本物の”殺気”、か…!!)

 

 

 

殺気。説明するならば、「人を殺そうとする時に、発する気迫」なのだろう。

 

しかし、一夏が浴びている殺気は、そのレベルを遥かに超えている。

 

 

一瞬でも気を抜けば、身体が震え始め、金縛りに遭ったかの様に動けなくなり、負の感情に押し流され、全ての思考回路を停止してしまうだろう。

 

 

彼女が発する殺気は、正に”凶器”その物。

 

唯の一般人がそれを浴びれば、どれだけ良くても失禁、最悪ショック死をも招くだろう。

 

 

 

(これが、カラードの単体戦力三強の1人…)

 

 

 

「さて、貴様は一体何者か…いや、ソレ(アーマードコア)を持っている以上、お前は無視出来る存在ではない」

 

 

そして、彼女は発する。

 

 

──そして、一夏は思う。

 

 

 

「此処で消えて貰うぞ、イレギュラー」

 

 

(”ウェンディー”の実力か…!!)

 

 

彼女達(カラード)”にとって、イレギュラーである一夏への死刑宣告を。

 

 

──これが、彼女(セレン)が言っていた、”戦い(殺し合い)”なのか、と。




改訂前を呼んでいる方々でも分かっている人はいないと思いますが、”黒い鳥”の設定を変更しました。これにより、第二章も一部改訂する事が決定しました。
第四章の続きを読みたい方々が圧倒的に多いと思いますが、改訂が終えるまでお待ちください。

P.S.
設定集を近いうちに更新する…かも知れない。(現在検討中)
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