アインクラッドany%攻略RTA 【暗黒剣】チャート    作:塩なめこ

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筆の走りがとても良い。
まだまだノリに乗ります。
これも評価·・感想・誤字報告・お気に入りのおかげです。モチベMAXパワー!!

このまま完結までいきたいです。






part10

「話がある」

 

 

 突如ガイから送られてきたフレンド申請。そして届いたメール。

 アスナが家事のために家にいる間、俺は釣りをしてくると嘘をついて一人でガイに会っていた。ボスの居場所が発覚する直前の出来事だ。

 

 

「ヒースクリフに違和感を覚えなかったか」

「違和感……ってなんだよ」

「お前もデュエルをしたのだろう。なら分かるはずだ。あいつの異常な強さ……そして速さを」

「……」

 

 

 ガイが語ったのは一つの可能性の話。

 一度も半分を切ったことの無いHP。プレイヤーでは不可能な反応と防御速度。ゲームに対する知識量の豊富さ。そこから割り出される奴の正体。

 だが俺はそれに同意しかねた。それができるのがヒースクリフただ一人なら、ガイの言う可能性に思い至ったのかもしれない。

 

 

「でも、それはお前もそうなんじゃないのか」

「……」

 

 

 ガイだって異常だ。狂気的と言っていい。HPは半分どころか1ミリも減ることがなかったし、ヒースクリフとの戦いで見せたあの突進の速さは、最早プレイヤーが行えるそれではなかった。

 

 

「……似たようなもの、ではあるのだろうな」

「どういうことだ」

「キリト、ヒースクリフと戦ったお前には伝えなくてはいけない。これはアルゴにしか話していない。そしてこれからお前に見せるものは、アルゴも知らないことだ」

 

 

 そう言って彼が話したのは彼のリアル。この世界に至った経緯。この世界で戦う目的。そして、この世界で得た力の全て。

 一撃で彼の一切合切何もかもが砕け散る装備。【呪われし】武具の存在。

 なるほど彼の強さが頷ける。そして声に出そうとしないのも分かる。

 彼はこんな危険な状態でこの1年半を生き抜いてきたのだ。

 

 

「75層、最後のクォーター・ポイントで奴を試す。俺が確信を持ち、動き出したら合わせて欲しい。……俺は嫌われているからな」

 

 

 頷くしか無かった。彼の覚悟とその行動を見せつけられては承諾するしか無かった。それに、できればあって欲しくないが、ガイの秘密を知った今ならばあり得ると思えた。

 ヒースクリフが茅場晶彦なのではないかという可能性を。

 

 

 

 

 

《immortal object》

 

 

 

 

 そして今、()()剣先に表示されたその2つのワードがその絶望的な現実を叩きつけてきた。ガイの推測は正しかった。

 皆は呆然とそのシステムウィンドウを見つめていた。俺たち以外で状況を瞬時に理解出来たのは、ユイの一件でこの言葉を見ていたアスナだけだ。

 

 

「【不死】か。そんなものまで創っていたとはな。ヒースクリフ。……いや、茅場晶彦」

「やはり、君も気づいていたのだね。とはいえ手を出せないものかと思っていたが、流石にキリトくんまでそちら側だとは、部下も思っていなかったようだ」

 

 

 沈黙を破ったのはヒースクリフへの襲撃を血盟騎士団のメンバーに防がれたガイだった。告げられた真実に、攻略メンバーは動揺を隠せない。最強のプレイヤーが一転、最悪の敵となった。

 

 

「いかにも私は茅場晶彦だ。そして付け加えるなら、これは100層で君たちを待ち構えるラストボスのアバターでもある」

「いい趣味とは言えないな。最悪のシナリオだ」

「本来ならもう少し君たちが成長していく姿を見ていたかったが……。参考までに聞かせて欲しい、どこで気が付いたのかね」

「デュエルの時だ。お前は俺とキリトにシステムアシストを使った」

「やはりそこか」

 

 

 さもお気楽そうに奴は語る。事実楽しいのかもしれない。自分の創った世界で抗う俺たちが自分の予想を超え、正体に辿り着いたことに。しかし、そんな身勝手な悦に浸ることを、ここにいる誰も許しはしない。

 

 

「貴様……っ! 俺たちの忠誠を、よくもぉ!!」

 

 

 一人の血盟騎士団員がその憎しみを込めた刃を振りかざす。だがヒースクリフはシステムアシストを受けた手さばきでウィンドウを出すと、あるコマンドをここにいる全員に実行した。

 

 

「《麻痺》、しかも俺たち以外の全員にか」

「どうするつもりだ。まさかこの場で全員殺して隠蔽を図る気か」

「そんな理不尽なことはしないさ。私は一足先に第100層で君たちを待つとするよ。だがその前に、私の正体を見破った二人に報酬を与えなくてはならない」

「……報酬だと」

「チャンスをやろう。キリトくん、ガイくん。君たち二人のどちらかに、今この場で私と戦える権利を与える。無論、【不死属性】は解除する。もし私が倒されればゲームはクリアされ、君たちは晴れてこのアインクラッドからログアウトすることができるというわけだ」

「ハッ、二人同時じゃダメなんだな」

「君たち二人が失われれば攻略組を率いる者がいなくなってしまう。待つばかりの私としてはそれでは困るのだよ」

 

 

 二人同時でも負ける気は無い、ということか。しかも勝つ自信すらある。

 それもそうなのだろう。あいつはGMでこちらはプレイヤー。こっちの使える手段は全部あいつが開発したものだ。意表を突ける隙は僅かしかない。

 そんな絶対的なアドバンテージがある中で俺たちのどちらかは挑まなくてはならない。……引くのも手なのだろうが、それはガイは勿論俺も許さない。

 

 

「……」

「……キリトくん」

 

 

 アスナを見る。覚悟は決まった。

 ガイにやらせる訳にはいかない。たとえ彼にどれだけ実力があろうとも、彼の命は薄氷の上にあるままだ。そんな状態の奴を一人で戦わせる訳にはいかない。

 そんなことをすれば俺が俺を許せなくなる。アスナに胸を張って生きられない。そして、あいつが好きでたまらないアルゴにも───ッ!? 

 

 

 棘が、足に刺さっている───!? 

 

 

「ガイ!?」

「女がいるお前を戦わせるわけがないだろう。いい加減にしろ」

 

 

 HPバーの横に表示されるのは《麻痺》を表す電撃のアイコン。コイツは最後まで……!! 

 

 

「いい加減にするのはお前の方だろ……ッ!」

「人殺しは一回で充分だ。背負うな」

「!」

「ここからは、俺の仕事だ」

 

 

 馬鹿野郎。背負ってるのはお前だろ! 

 お前にもお前を大事に思う女の子が居て、お前の帰りを待つ奴がいるじゃないか! 

 そんな反論を言う間もなく、ガイは剣を引き抜いた。こいつはいつも生き急いで、マイペースで、周りに迷惑ばかりかけて───! 

 

 

()()()は帰るんだ。そう()()()()()()

 

 

 ───そして、結局皆を救うのか。その心に傷を増やしながら。

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

ちょっと眠ってろお前!! 

 

 

 

 と、言うわけでキリトくんを昏睡(大嘘)させてヒースクリフ戦に突入です。とっとと【スキルコネクト】使って彼をぶち殺したいのですが、まぁそうは問屋が卸しません。

 

 なぜならこのラスボス戦はRPGゲーム定番のイベント戦闘だからです。

 このゲームが発売されてから数年経ち、ようやく実現が叶ったオリ主ヒースクリフ戦イベントですが、あまり想定されていなかったルートなためか結構イベントが盛り沢山なんですよね。

 

 

「しかし驚いたよ。君がその装備を使ってこのアインクラッドを登ってくるとはね。どこでその効果に気づいたのかな?」

「……お前が、俺たちに造らせたんだろうが!!」

「おぉ、そうか。君はアーガスの……。なるほど通りで」

 

 

 ほらね? 

 

 ガイくんがこれまで見たことのないほどの饒舌になっております。無愛想だった口調にも荒さが見え始めちゃってますね。

 こうなってしまうのはちまちまカットしてたオリ主イベントのせいです。本来なら最終層までじっくりこってりイベントを消化していき、これまでの軌跡として個別エンディングが流れる仕様なのですが……ヒースクリフと戦うと残り25層分のイベントが回収できなくなっちゃうんですよね。

 ですからヒースクリフとの戦闘イベントのフラグが立った段階でオリ主くんが饒舌になり、広げた風呂敷を一気に畳みに来るのですが……流石に時間が足りません。

 

 

「【呪われし】装備は我々の遊び心のひとつだった。凶悪な性能と引き換えのデメリット。HPの最大値を1にするそれを使う者はいないと思っていたのだがね。正攻法で生き残るとは大したものだ」

「俺は、お前を殺すことだけを目指してきた! それがお前に付き従ってしまった俺たちの、唯一果たすことの出来る責任、果たすべき義務だったからだ!」

 

 

 そんなわけでヒースクリフ戦に全てを注ぎ込むというわけです。見てくださいヒースクリフのあの顔! すごい邪悪な表情でポンポンと煽りが出てきてます。原作だとキリトくんに一言も言わなかったくせに!! ガンダ○みたいに煽りながら戦いやがって!

 

 

「一刻も早く皆を解放する必要があった! こんな世界に囚われていたいと望む奴はいなかった!!」

「ふふっ、違うな。君がそう思う者を消した。消して回ったんだ」

「……ッ! あぁ、そうだ。この世界を肯定させる訳にはいかない。誰もが簡単に人を殺せる場所を、人を殺させてしまう場所を!!」

 

 

 あと一応、ソードスキルがヒースクリフには全くの無力ではないかとガイくんが考えているのも【スキルコネクト】が使えない原因だったりします。相手はGMだからね。仕方ないね。

 

 

「そうして君は数多のプレイヤーを殺し、とうとう私すらも捉えようという訳だ。素晴らしいよガイくん。君の感情の発露は」

「黙れッ!!」

「その解放への欲望が、覚悟が、精神が私の予想を上回ったのだろうな。システムがまさか君に【暗黒剣】を与えるとは!」

 

 

 逆なんだよなぁ……。ヒースクリフはソードスキル発生直後の硬直を狙うからこそ【スキルコネクト】が刺さるのです。本来なら防ぎきれていたはずの攻撃、カウンターを成功させようとするまさにその時こそがヒースクリフを狩り取れるのです。

 

 

「なんだと!?」

「本来ならユニークスキルは90層以降、ランダムにプレイヤーに割り振られる物だった。私というボス専用の【神聖剣】と、英雄のような役割を与えていた【二刀流】以外はね」

「……!」

 

 

 だけどガイくんはそこまで思考が回らないようです。事実、これまでの攻撃の全てが涼しげに受けられているわけですからね。しかも煽られながら。冷静でいられるわけが無いです。

 

 

「【暗黒剣】はクリアに非情な者、もしくは最も残虐な者に与えられる予定だった。【二刀流】とは違ってプレイデータが十分にある頃だったからね。身体能力からではなく、その軌跡から役割(ロール)を授けることができた」

「……黙れ」

「だが君は50層の時点でそれを手に入れた。システムは判断したのだろうね、今後君以上にそのスキルが似合うプレイヤーは現れないと!」

「黙れッ!」

 

 

 とはいえヒースクリフが原作より余裕なのは、こちらの攻撃が【二刀流】キリト程激しくないからです。ソードスキルなしでの攻防で切れる手札は前回全て切ってしまったので、今攻めると簡単にやられちゃうんですよね。だから、堅実に攻める必要があったんですね。

 

 

「君のその覚悟、その力、真っ直ぐな意思はシステムを超越したという訳だ。とても素晴らしい」

「誰が……ッ!」

 

 

 あとは【暗黒剣】の手数が純粋に少ないこともあります。盾メイン相手に盾を構えなくちゃならないの、【呪われし】装備の痛いところね。

 

 

「誰が!」

 

 

 あ、【呪われし】装備以外の【暗黒剣】も結構面白いですよ。あらゆる剣攻撃に効果が乗るおかげでSAOならあらゆる武器種で恩恵が得れます。

 

 

「誰が好き好んで……!」

 

 

 固有のソードスキルは片手剣限定なので使えなくなりますがね。それでも【暗黒剣】大剣の超火力気持ちええんじゃのぉ〜〜!! 

 

 

 

「人を殺したいと、思うんだあああああああ!!!」

───キュイイイイイン

 

 

 

 百層ともなると【呪われし】装備も流石に型落ち、ラスボス戦なら……え? キュイイイイイン??? 

 

 

 ▼───そして俺は頼ってしまった。ソードスキルに。

 

 

 

 

は? 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 ヒースクリフの言葉から次々と放たれるガイの秘密。それに激昂したガイはソードスキルを放った。放ってしまった。

 最大の憎しみを込めたそれは【暗黒剣】最凶の技、《ケイオス・ブレイク》。【暗黒剣】最大の連撃数を誇るそれは確かに強力だが、それが相手に一つも当たらなければ意味は無い。残るのは長い硬直だけだ。

 

 ガイにはシステム外スキルである【スキルコネクト】も教えて貰ったが、アレは冷静な思考の切り替えによって実現できる技だ。今の彼にそれは難しいと言わざるを得ない。

 いや、そもそもの話ヒースクリフは剣を掠りさえすれば勝ちなのだ。【スキルコネクト】が使えたとしても奴の攻撃は避けきれない。

 どの道GM対プレイヤーの戦い。勝てる要素はどこにもなかった。このままでは間違いなくガイは死ぬ。

 

 

「……! 待て───!」

 

 

 そんな諦めにも似た感情が芽生え始めていた時、突如走り出す者が居た。咄嗟に制止の声を挙げるが聞きもしない。

 この場でたった一人ヒースクリフのコマンドを受けなかった彼女。ヒースクリフはこのボスフロアに居たプレイヤーのみに《麻痺》を付与していた。彼女は最初ここにはいなかった。

 きっと彼女はガイが戻ってくるのをあのボス扉の向こうで待っていたに違いない。

 ずっとフレンドリストからガイの位置を補足していたであろう彼女は、ガイがプレイヤーと戦っている姿を見て扉を開けたんだ。

 

 そして聞いてしまった。ヒースクリフが話すガイの全ての秘密を。ガイが最も信頼するアルゴに絶対に喋らなかったそれを。彼が知らせたくないと断言したそれを。

 

 

「アルゴ───!!!」

 

 

 彼女は止まらない。今ガイを切り裂かんとするその剣に向かって走る。そして。

 

 

「全く、最後まで世話の焼けル……」

 

 

 彼の攻撃を受け止め。

 

 

「あ、るご……?」

 

「その泣き顔が見れただけでも、来た甲斐ガ──」

 

 

 散った。

 

 ガイはどうすることもできず、ただただそれを見ていることしかできなかった。今まで見たことも無い一筋の涙をその目から垂らしながら。

 

 

 追撃が迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け───!!!! 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

 今ガイを守れるのは俺だけだ!! アルゴの犠牲を無駄にするつもりか!!! 

 疾く、疾く、疾くッッッ!!! 

 

 

 

「行って、キリトくん────!」

 

 

 傍らに居たアスナが俺の背中を押してくれる。

 あぁ、届かせる。今、絶対にこの剣を、奴に───ッ!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────。素晴らしい」

 

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

『ゲームがクリアされました』

『ゲームがクリアされました』

『ゲームがクリアされました』

『ゲームがクリア───』

 

 

 

 

 

 

終わった……だと……っ!? 

 

 

 

 全てイベントでおしまい? 

 ヒースクリフ戦が? 

 ラスボス戦なのに? 

 

【スキルコネクト】が使う必要すらなかったっていうか……。これ、見れないじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未知のイベントなのに観賞できないじゃん!! 

 

 

 

 計測期間は……キャラ作成終了後から、ヒースクリフを倒してエンディングが終わるまで……。エンディングが終わるまでッッッ!! 

 

 

 オリ主くんのエピローグは全スキップしないと記録が……。アババババババババババ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記録は……【24時間56分41秒08】です……。

 ご視聴……ありがとうございました……。

 完走した感想ですが……。

 

 

 

 どうして、どうしてRTAでイベントが乱発するんですか……っ!!!

 

 

 

 




ゲーマーの最大の痛み。それはイベントを逃すこと。
RTAのためにガイくんの精神をすり減らすから……こんなことになったんだ!


というわけで次回、(多分)最終回。
エピローグです。

見れないのは、走者だけ。
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