僕はそこそこ朝に弱い方だ。
一度起床してしまえばテキパキ動けるが、そこまでがそこそこ……いやかなり長い。
と言うか、何かしらの区切りがないと一生布団の中でゴロゴロしてしまうのだ。
そう言う訳で、目覚ましは相当な音量でかけているのだが──最近はそうでもない。
「……」
目が覚めて最初に映る、赤い天井。
毒々しい色合いとは裏腹に整えられた小綺麗な内装は、如何にも「スピネルらしさ」に溢れている。
壁に飾られた靴のバリエーションも、ここ一年でかなり増えてきたように思う──そう、寝る時は屋根裏部屋を大改装したスピネルの自室で、彼女と一緒にベッドに入るのがルールになっているのだ。
仕事に熱中し過ぎるのを抑制するために始めたのだが、これがかなり良い。
勿論自分の部屋にもベッドはあるが、そちらを使う機会はもう殆どなくなっていた。
そして次に感じるのは、人肌の柔らかさ。
彼女の「病的な白」を通り越して灰色に差し掛かった肌は、丹念なケアの甲斐もあってかビックリするほどの滑らかさとしっとり感を保持している。
その一方で、内に宿す呪いのせいか真夏でも冷たくて生気をあまり感じない。
人によってはかなり不気味に感じるだろう。
でも、僕はそんなスピネルが好きだった。
夏の暑さに彼女の冷たさはよく効く。
直接口にすれば「保冷剤代わりかよ」と不機嫌になるのは間違いないが、それでも隣にいるだけで不思議と眠りが深くなる。
それに、スピネルの冷たさは特別だ。
呪いがそうさせるのかは知らないが、何故か世俗や熱気から隔絶されるような印象を感じて──その違和感が、彼女の存在証明になる。
今となってはもう離れる筈もないのだが、ひんやりした肌と触れ合うと「ちゃんとそこにいるんだな」と確認させてくれる。
そうやって、昨夜から絡まったままの指を一頻り堪能していると──突然きゅっと握り返された。
「……おはよう」
「ああ、おはよう変態さん?」
驚いて顔を横に向けると、こちらを見詰めてにたりと意地悪な笑みを浮かべるスピネルの姿。
その声に、寝起き特有のぼやけた感じは見られなくて──どうやら僕より先に起きていたらしい。
これはやられた。
まさか寝たふりをしているなんて。
「で、楽しかった?」
「いや、まあ……うん。すごい柔らかくて……」
「うわ、キモっ」
「うぐ」
「ド変態」
「んんっ」
「マゾヒストの指フェチ」
「いやちょっと待ってよ」
続けざまの罵声に、思わず声を上げる。
最早変態であることは否定出来ないかもしれない。
思いっきり指の感触を楽しんじゃったし。
綺麗に揃えてネイルもした爪を見て「やっぱガサツな男の手とは違うなぁ」なんて考えちゃったし。
でも、マゾヒストではない。
バシバシ言葉を投げ合うのが楽しいのであって、一方的に罵られる趣味がある訳ではないのだ。
などとテンパった頭で必死に弁明していると、彼女がクスリと笑った。
「ふ、ふふ……必死すぎんだろ」
「いや、だってさあ」
「ま、アナタだから許してあげるけど」
光栄に思えよ?
そう言いながら僕の頬にぺちりとデコピンしたスピネルがうつ伏せになる。
朝の爽やかな陽光に照らし出される赤い毛布と、そこに浮き上がる並外れた抜群のスタイル。
もし写真に収めたらあらゆる雑誌を片っ端から薙ぎ倒せるであろう、神秘性すら感じさせる光景。
だが、彼女は確かに存在している。
触れられるんだから間違いない。
十年の時を越えて、スピネルはこの村に戻ってきた──その事実が何度でも骨身に染みていく。
「……こっち来て」
「いいの?もう七時半だけど」
「今日は土曜だろ……もっとお前と寝てたい。それに」
「それに?」
「夜のお祭り、行くんだろ?」
だから先に寝ておけ、と。
タオルケットを片手で持ち上げて庇を作ったスピネルが、こちらに横目で視線を送ってくる。
そんなちょっとした仕草すら、もう有り得ないくらい様になって惹き付けられる。
しかも絵とか写真とかに残したくない──独占したくなるタイプのワンシーン。
スピネルが何かするだけで見惚れてしまう、色ボケな自分がいるのは最早否定しようがなかった。
そうして誘われるがまま、やっと出たばかりの毛布の内へふらふらと自分から戻ってしまい──どちらからともなくまた手を繋ぐ。
そして、スピネルは呟く。
「……あったかい」
何か言い返してやろう、なんて。
そんな考えは一瞬の内に消え失せた。
それどころか、ただされるがままに手を差し出してスピネルのひんやり柔らかな頬を包んでしまう。
──成る程、これが惚れた弱みってヤツか
だとしたら、僕は弱点まみれだ。
彼女の一挙手一投足にやられていては、その内何も手につかなくなってしまうに違いない。
それはちょっと、困ってしまう。
まるで猫みたいに手のひらへ頬を擦り寄せるスピネルを見ながら、僕はそんなことを考えていた。
この村は、およそ何も無いことで有名だ。
有人の駅舎が無い。
住む人がいない。
何ならちょっと前までスーパーもなかった。
人口の一極集中・地方の空洞化が深刻な昨今において、まさにその代表的な──自然ばかりが主張する、合併秒読みの過疎村。
自然が多いのは良いことだとする流れもあるが、それはさておきおよそ特長らしい特長が無いのが、我が村である。
住民である自分が言うのも悲しいが、本当に無い。
誇張や冗談抜きで無い。
──だが
実は、一つだけ。
たった一つだけ周辺地域にも目立つ物事がある。
それは、夏祭りだ。
いや、まあ……祭なんて一定以上の規模がある市町村なら大体一年のどこかでやっているし、取り立てて珍しいものでもない。
他の祭と比べて特別派手な花火を打ち上げるだとか、他では見ないような出店が出現するとか、そう言ったこともない。
もし祭りのレビューサイトなんてものがあったら、規模はそこそこ、やってることも普通な──地味なお祭りだと評価されることは間違いなし。
特段溜めて話すようなことでもないだろう。
では、何が目立つのか。
「そりゃまあ、気合いだろうなぁ……」
メイン会場である役場へ続く村道。
そのあちこちから響く工作機械の音やら威勢の良い掛け声やらに、僕は思わず苦笑した。
「おう先生、見回りかい!ご苦労さん!」
「あーダメだよ先生こんな所ウロウロしてたら。先生ヒョロヒョロなんだから怪我しちまうだろ」
「あら先生久し振りねぇ。今日は私も張り切っちゃって……長生きしてみるものねえ」
なんて、ちょっと脇を通るだけでこの通り。
いや本当に、あまりにも気合いが入り過ぎている。
この村に住んでいる人のおよそ半分は、65歳を越えた……世間一般で言うところの高齢層ばかり。
しかも、もう外を出歩くのも中々難しいような御老体が殆どだった筈なのだが。
ここ数年、この時期になるとどういう訳か非常に生き生きとした様子で出店やテントを設営を行う爺さん婆さんが出現するのが風物詩となっていた。
理由は、簡単だ。
──人が来る
それも、沢山。
そう、これはちょっとした自慢になるが──「向日葵畑で、君と」の影響で、この何にもない村を訪れる人が以前の何倍にも増えたのだ。
多分、かつて本物があった場所で向日葵畑の再現をやっているのも効果があるのだと思う。
何にせよ夏になると観光客が来るようになったし、向日葵の管理小屋は大規模に改築された上で小洒落たカフェまで併設されている。
ボツポツとではあるが移住した、ないしはこれからする人だって現れ始めている。
何にも無い村は「大体何も無い」が、一方で「全く何も無い」ではなくなったと言う訳だ──勿論、衰退を止められるほどではないが。
だからもう、祭りに来るのは地元民だけじゃない。
隣町から、県境の向こうから。
普段の辺鄙で長閑な村の様子からは想像も出来ないほど沢山の人がワッと押し寄せる。
それでまあ、後何年残されているか分からない爺さん婆さんはハッスルしてしまう訳だ──「人生の最期に一華咲かせるぞ」と。
いつまで続けられるか分からなかった祭りが人々から注目されるこの機会に、村を盛り上げようと力を振り絞って奮起している。
それを、潔すぎると見るか。
気持ちの良い生き方と見るか。
生き死にに対して見出だした輝きは、その人だけのもの──僕が判断できることではなかった。
まあ、普段ぼんやりしていて起きているんだか寝ているんだか分からないような御老体がシャキッとしている姿は、相当驚くものではあったが。
「うわっ」
「気を付けろ……と、お前か」
そんなことを考えながら役場に向かって歩いていると、突然壁のような影がぬっと目の前を遮った。
いや、壁ではない──物凄い長身で、物凄くガタイの良い人……ならぬ妖精。
それは両腕に木材とポールを山のように抱えた妖精騎士ガウェイン/バーゲストさんだった。
彼女は尋常ではないパワーを活かして、爺婆では苦労するような重量物を運んでいた。
そして炎天下で肉体作業に勤しむ人々のため、飲み物を役場に届けるのが僕の役割と言う訳だ。
「お疲れ様、バーゲストさん。飲み物どうぞ」
「ああ、助かる……役場に行くのではないのか」
「ちょっと寄り道程度なら大丈夫です」
そうか、と言いながらどさどさ資材を置いた彼女に、背中のリュックから取り出したペットボトルのお茶を渡す。
重労働の後だと言うのにしっかりした手つきでそれを受け取ったバーゲストさんは、蓋を外すと思いの外ちびちびと飲み始めた。
「……何か?」
「いや、もっとワイルドに行くものかと思って」
「それは……
ああ、そりゃあそうだ。
毎度変化の大きさに驚かされるが、バーゲストさんは公私の切り替えがとてつもなくしっかりしているヒトだった。
騎士として戦う時だったり仕事の時は口調が固くて威圧的な一方で、プライベートでは淑やかな印象の立ち振舞いがよく目立つ。
先程までは騎士モードだったが、休憩に入ったので緊張を解いたのだろう。
それにしても、だ。
「まさかこうして立ち話をするような仲になるとは思わなかったなあ……」
「ええ、私もこの村を何度も訪れることになるとは予想していませんでした」
お互い顔を見合わせて、笑う。
まあ実際、ファーストコンタクト最悪だったし。
モルガン陛下の命令で様子を見に来たバーゲストさんと、スピネルが自失状態になって気が立っていた僕──あまりにもタイミングが悪すぎる。
「あの時の子供が、まさかこうなるとは」
「うっ……」
何なら彼女が言う通り、僕はあまりにも不敬極まりない啖呵を切っていた訳で。
百回あの時に戻っても百回同じことをする自信があるけれど「我ながらよくブチ殺されなかったな」と今更のように安堵してしまう自分がいる。
本当に──あの頃は無鉄砲で、考えなしだった。
「まあ、昔のことですわ」
「……っすね。流して貰えると助かります」
「それは……ふふ、どうしようかしら」
「……」
「……冗談ですから、無言で後退すらないで下さいまし」
などと一頻り談笑してから、僕は地面に下ろしていたリュックを背負い直す。
世間話も悪くないが、何時までも役場の人を待たせる訳にはいかない。
「この後は?」
「向日葵畑のカフェでも行こうかと」
「あら、家には戻りませんの?」
バーゲストさんが指摘する通り、自宅に戻る方が選択としては賢いだろう。
向日葵畑のカフェは冷房完備で涼しいが、役場からの距離で言えば自宅よりも離れている。
熱中症や脱水状態にはかなり気を付けているとは言え、あまり歩くのは得策ではない。
「スピネルたちが浴衣の着付けをしてるんです」
「ああ、それは……」
「野郎は邪魔だから外で暇潰してろって」
「と言うことは、マスターも?」
「藤丸先輩は……こっちにいないってことは向日葵畑でカフェの手伝いでもしてるんじゃないですかね?」
そう、今夜の祭りにはキリエライトさんやモルガンさんを始めとした妖精國に縁のある人々が揃って参加するのだ──それも全員オーダーメイドの浴衣をバッチリ用意して。
どうやらハベトロットさんを始めとしたその手の専門家が物凄く張り切っていたらしい。
戦うばかりがサーヴァントではないとは聞いていたが、服飾関係の強さには驚かされるばかりだ。
まあ、そのお陰でスピネルの浴衣姿を見られると思えば、暇潰しくらい何てことはない。
「──楽しみですわね」
「……ええ、本当に」
頭上でギラつく太陽は、未だ中天を過ぎたばかり。
しかしまさか気温以外でこれが沈む時が待ち遠しくなるなんて、思いもしなかった。
人生はまだまだ分からないことだらけだ──そんなことを考えながら、僕は役場への道を再び歩き始めた。
何をするにしても早すぎるなんてことはない。
そうスピネルは考える。
普段の振る舞いからな想像し辛いが、元よりバーヴァン・シーは内向的で、いざ物事に取り組むとなれば入念に計画を立ててから望むタイプだ。
モルガンの「善く在ることで生きられないなら悪逆であれ」と言う
それに、何より────
「……」
いや、と頭を振って雑念を追い払う。
今重要なのは、「それ」ではない。
兎に角目の前のことに向き合うべきだと戒めたスピネルは、沈黙を保ったまま姿見に写る自分自身射殺さんばかりの視線で点検する。
──衿合わせ、よし
一応聖杯から知識を獲得し、移住を決めたものの、ブリテンの妖精であるスピネルは日本の伝統や世俗文化に慣れ親しんだとは言い難い。
それ故に、どうして左前が不吉とされるのかはまだいまいちピンと来ていなかった。
しかしルールはルール──スピネルにとって「浴衣のどちらを前にするか」は最優先に確認すべきポイントだ。
ここで躓くようでは、話にならない。
──髪型のセットアップ、よし
余程妙なものにしない限り、例えどんな髪型でも彼が喜ぶ姿は何となく想像出来た。
だが、祭りの場で普段と同じようでは芸がない──万が一にもつまらないと思われたらショックだし、芸術家の沽券にも関わる。
そこで少し、趣向を凝らす。
シンプルではあるが、決して地味とは言わせないスタイルへ──作った房をリボンの代わりに簪で留めて、和の要素で彩りを加える。
──下駄の準備、よし
当然だが、足下も妥協するつもりはない。
寧ろ履き物こそ、この十年でヒールを中心とした数多の靴を手掛けた己の本懐。
浴衣そのものや小物はハベトロットに霊衣として依頼したが、こればかりは譲れなかった。
下駄の構造・歴史を徹底的に調べ上げ、彼にバレないよう隠れて研究した末に作り上げた珠玉の一品。
今日のために用意したそれは、箱の中で今か今かとその時を待っている。
「……よし」
着付けを手伝ったマシュが褒めちぎるほど思い描いた通りに朱い浴衣を纏った己が鏡に写っている。
その出来映えに、スピネルは強く頷いた。
疑う余地なく完璧だ。
と言っても、この一連の流れ自体が既に三度も繰り返されたもので──五分もしない内に落ち着かなくなって結局髪の手入れを始めてしまう。
これでは祭りが始まる前にへばってしまうのは明らかだったが、兎に角手を動かさずにはいられない。
──だって、アイツが見るんだぞ
彼が絵画という形で伝え続けてきたように、この祭りで磨き上げた自分を見せる。
トリスタンの名を背負う騎士であり、雨の国を継ぐ妖精であり、そして彼に相応しい少女であると示す。
スピネルにとってこの祭りは、ある意味で十年間の総決算に等しいイベントなのだ。
だから手は抜けない。
どんな些細な瑕疵でも、決して見逃すことは許されない。
そうしていよいよ不安がピークに達したスピネルは、本日四度目の全身チェックを始めようとして──不意に肩を叩かれる。
「落ち着きなさい、バーヴァン・シー」
「お母様──」
不安に駆られるスピネルを嗜めたモルガンは、しかし別の意味で彼女を沈黙させる装いをしていた。
白をベースとして桔梗のデザインがあしらわれた浴衣は、女王が持つ冷厳としたイメージを損なわないまま祭りの雰囲気に馴染む、気品のある造り。
そこに黒い羽織を重ねることで、月光を束ねたような美しい艶髪は一層その輝きを引き立てられる。
藍色の髪飾りも敢えて主張を控えめにすることで本人の魅力をアピールする。
「──綺麗」
彼女の前では、どれだけ豪奢に着飾っても陳腐でつまらないものに霞んでしまう。
まるでこの世の最も優れた部分だけを切り抜いて一人に集約したような、美の究極形。
今日のために渾身のデザインをしたためたスピネルでさえ思わずそう呟いてしまうほど、浴衣を纏ったモルガンは美しい。
「そうか」
素朴で、それ故に嘘偽りのない一言に、しかしモルガンは表情を動かさなかった。
別に、喜んでいない訳ではない──寧ろ妖精國での心の籠らない賛辞に馴らされていたモルガンの心に、スピネルの「綺麗」は何より温かく染み込む言葉だった。
だがそれはそれ、これはこれ。
モルガンは自分の浴衣を褒めてもらうためにスピネルに声をかけた訳ではない。
「……ふむ」
「……っ」
じっ、と。
頭の先から視線を下ろしていくモルガンの視線に、とスピネルは生唾を呑んだ。
そればかりではなかった。
手足の先からは瞬く間に僅かばかりの血の気が失せ、鼓動していないにも関わらず心臓が締め付けられるような錯覚に襲われる。
真っ直ぐ立つのがやっとな極度の緊張に晒され、呼吸すら儘ならない。
だが、それも仕方のないことだ。
──見られている
妖精國女王たるモルガンによる評定。
その極めて優れた審美眼が価値を誤ることはなく、一度下された評価が覆ることもない。
つまり、彼に見せるよりも先に誰より正確で絶対的な眼を持つ相手に評価されているのだ。
並の人間であれば、失神していたっておかしくはない──前触れもなく降って湧いてきた試練に、スピネルは打ちのめされそうになっていた。
──でも
ぐっとスピネルは唇を噛み。
やがて、口を開く。
「お母様──私、似合ってる?」
スピネルは、騎士だ。
騎士が主君に怯えるなどあってはならない。
スピネルは、娘だ。
娘が自分を愛する母に怯えることはない。
スピネルは、向日葵畑の君だ。
彼に誇れる自分が、それを恥じてはならない。
故に、問う。
震えそうになる両足に喝を入れ、下がりそうになる顎先を懸命に上げて少女は女王に判決を促す。
そんな彼女をアイスブルーの瞳で見定めたモルガンは、ゆっくりと踵を返し──そして、静かに告げた。
「よく、似合っている」
「────!」
「彼に見せてやりなさい」
それだけだった。
言うべきことを淡々と言ってその場を去る。
何も知らない者が見れば、それは言葉だけの──とても親子のやり取りとは思えない、淡白で無機質な会話のように見えるだろう。
けれど、スピネルにもう憂いはなかった。
何度チェックしても拭えなかった筈の不安は、綺麗さっぱり消え失せていた。
代わりに少女の胸を満たすのは、不器用な優しさと一歩踏み出す勇気の心。
「──ありがとう、お母様」
そう、自慢の母親が「似合っている」と言うのなら、それが間違ってる筈がないのだから。
◯彼/「僕」
指フェチのマゾヒスト(言いがかり)
スピネルとは同じベッドで寝てる。
◯スピネル/バーヴァン・シー/妖精騎士トリスタン
気合いが入り過ぎてる妖精。
本作では2部終章→「向日葵畑で、君と」→サバフェス2023と言う流れを辿っているのでかなり雰囲気が落ち着いている。
また、妖精騎士としての自覚が強いため、サイアクでザンコクに振る舞いつつも高い克己心を見せることがある。
騎士で、娘で、恋する少女。
◯妖精騎士ガウェイン/バーゲスト
肉体作業は任せろー、な妖精騎士。
まあまあ「僕」との出会いは最悪だったが、その辺りの蟠りは解けている。