いつも多くのご感想と誤字報告、ありがとうございます。そろそろ一足進めましょう。
とはいえイニDに介入するわけではないのであしからず、あくまでウマ娘ですし。
「すげぇ絵面だな」
「おいおい、走り屋界隈の連中ならわかるがなんで公式ウマ娘レースの連中までこっちに来てんだ?」
蒸し暑い夏の週末、夜にもかかわらず人がごった返す秋名峠は走り屋のレースを観戦に来た物好きたちで賑わっている。
秋名峠は群馬の走り屋たちにとって今一番ホットな峠といってもいいだろう。なぜなら群馬制覇を掲げた群馬内でも随一の走りやチーム『赤城レッドサンズ』の快進撃を蹴散らしたハチロクがいるからだ。
通称をハチロクと呼ばれ、扱う人間によっていくらでも化けるAE86、峠でその名をとどろかせ、あるいはかのレーサーの愛車として公式レースでも異彩を放ったまさに伝説だ。
しかし伝説こそ確かなものの時代の流れには逆らえない、すでに2020年を過ぎたこの時代では旧式中の旧式であり、再生産されてそのポテンシャルは認められつつも人気はかつてほどではない。
もはや過去の伝説となったあのハチロクが、この秋名で蘇った。そうなれば伝説を知りこの世界にあこがれを抱く走り屋たちが注目するのは必然である。
自分の穴場スポットに愛車を置いてスタート地点にやってきた走り屋の男性二人はいつもとは様子の違う峠のギャラリーに眼を泳がせていた。
「群馬の連中がいるのはいつも通りとはいえ、中央の連中がうろちょろしてんのはおかしいだろ…」
群馬トレセン学園のウマ娘が走り屋のコースに出没するのはもはや群馬で走り屋をするなら常識だ。
群馬トレセン学園には群馬スペシャルという俗称の峠を模した坂路があり、その大元である峠で活躍するウマ娘がいるので現地を走りたがるウマ娘は多くいる。
そのため人気の少ない夜に連れ出して公道ランニングなどを行うのだが、当然ながらバッティングするのである。
その傾向はホームコースとされている芦名峠に近いほど確率が増し、一番近い位置の秋名峠は出現頻度が高いのだ。
故に群馬トレセン学園や地方レースのウマ娘がいるのは普通であるし、当然ながらトレーナーもいる。男性たちも、顔見知りにいるくらいだ。
しかし中央のトレーナーとなれば話は別、明らかに異様である。
明らかに慣れていない足取り、似つかわしくない格好、何よりつけている人はつけている中央のトレーナーバッジとくれば見分けるのはたやすい。
「ま、とはいえあんま見覚えのあるトレーナーじゃねぇな」
「いやいや、さすがに超一流どころはいねぇだろ?暇じゃないだろうし。お、青い羽無しWRX、シマカゼ来てるぞ」
「だよなぁ…あれ?あそこにいるの。藤井じゃね?」
男性の片割れが指さす方向には、明らかにこの場に慣れていない足取りできょろきょろしている見るからに記者と思しきメガネの男性が一人。
この場には似つかわしくない高級装備を付けた一眼レフカメラを持っているのは、以前にいろいろ記事をぶち上げて名が売れた雑誌記者であった。
「うわほんとだ、記者もいんのか。これ案外見てないだけかもよ?いたら多分ウマ娘もいるだろ、探せば有名人くらいいたりしてな」
「ははは…まさか、そんなのいるわけ…」
その時前を通り過ぎた葦毛のウマ娘達に二人は一瞬目を奪われた、なんか見覚えがあった、何ならヤベーハジケリストが見えた。
メジロマックイーンとメジロアルダンをゴールドシップが先導しているように見えた。
何ならその先にオルフェーヴルが傲岸不遜としていてドリームジャーニーがひらひら手を振っているのが見えた。
その周囲にもなんだか見たことのあるウマ娘が興味深そうにきょろきょろしているのが見えた。
あの鬼婦人が珍しく当惑しており、トレーナーがしゃっきりフォローしているのが見えた。
「…いないいない!ある訳ねーよ、多分トレーナーと記者だけだって!」
目を反らした先で3人組のウマ娘が歩いているのが見えた、BMWと紛らわしい名前で呼ばれる3人組に見えた。
一人は慣れが見えて群馬トレセン学園生を一人捕まえて何か問いかけている、その葦毛は少し頭が大きく見えた。
「…だよな!どうせあれだ、この前シマカゼが中央で一発かましたからその影響だろ!スカウトしたくて来てんだろ!!」
視界の端に眼鏡の老人の姿が見えた、その後ろにはまさに麗人というべき黒髪のウマ娘。
その二人を先導するのは顔を引きつらせた茶髪のウマ娘とその取り巻き、表情を引きつらせて周囲のガラの悪い走り屋の注目を浴びておっかなびっくり。
その様子にガラの悪い走り屋も顔色は変えずに首を傾げて見送るばかり。
目を反らす、その先には何故か道場着で妙に威圧感のある初老の男性とそのわきで背筋をシャキッと伸ばす武人のようなウマ娘。
「でも最後は90だろ?下りでいつも三桁出してっから遅く感じたぜ?」
群衆の先にジャージ姿の二人組が見えた、夜なのに外さないサングラスの偉丈夫。
その横で同じく胸を張るサイボーグと言われていそうなウマ娘とどこかはかなげな黒鹿毛の青いバラが似合いそうなウマ娘。
「く、下りと平地を一緒にしちゃダメだろ。そもそも明らかに慣らしてる感あったし」
一瞬すれ違ったのは変装する気なんてさらさらねぇとばかりにメイド服をばっちり着込んだメイドと仕立てのいい服を着たお嬢様のウマ娘達。
その二人を何とか制止しようとしているのは黒髪のお祭りウマ娘のように見える、しかしお嬢様は止まらない。
「そうだな、明らかに揺れがイマイチだった」
「普段もっとこうすげぇもんな」
「あぁ、すごい」
峠の至宝ともいえるあの山脈、本気ダウンヒルでこそみられる躍動を知る男にとってはイマイチだったようである。
目の前を通り過ぎていったようなウマ娘の最速の機能美を持ったすらりとした体つきからは得られない迫力を彼女は持っているのだ。
「慣らしも終わったし次からギア上げてくんじゃね?」
目の前を通り過ぎて行ったウマ娘を追いかけるけっぱりウマ娘を全力で意識に入れないように走り屋は言葉をつなげる。
「上がった結果がアレってことか?」
ゲーミング発光しているように見えるトレーナーに機材を持たせて連れ歩く制服に白衣を羽織ったウマ娘から目を反らしながら彼は思い出す。
それはURAファイナルズ公式サイトに掲載されたシマカゼタービンが走る模擬レースの映像だ。
URAファイナルズ一般予選にて審議を食らい、その後身体検査の過程で行われたその模擬レースはウマ娘レースのファンの間では知らない者はいないだろう。
それは群馬県内の走り屋の中でも同じだ、群馬の走り屋の中では異彩を放つシマカゼタービンの知名度はあの赤城レッドサンズの高橋兄弟に引けを取らない。
普通なら中央か地方のトレセン学園で走っていておかしくない才能と年齢でありながら、そんなものに毛ほども興味がなく峠のレースに出没する姿が目立たないはずがないのだ。
「あれだアレ!まさかあの面子に勝っちまうとはな!」
「バカ、ありゃノーカンだ」
「それもそっか、あはははは!」
その時ふと視界の端に見えた、普通の走り屋や慣れているギャラリーなら避けるようなスタート地点近くに止めてある赤いランボルギーニ・カウンタックの姿。
カウンタックという高級車を乗り回す峠の走り屋がいないわけではないがそれでも相当珍しい、しかしあの赤いカウンタックはどこかで見たことがある。
というか見慣れているように感じる、主にテレビの向こう側で。
「今日はウマ娘ファンのヤツが多いんだな!なかなか面白い時代になったなおい!!」
「あの赤いカウンタックとかヤベーな!車までコスプレか!」
「出来がいいな、あのキットカー。LP400か?自慢していいレベルだぜ」
「だな、腕のいい奴が作ったんだろうな」
二人でアハハと笑う、そんなときふと片方の男とウマ娘が軽く肩をぶつけた。
「おっと、失礼」
「いえ、こっちこそすんません」
ぶつけたのは白い流星が特徴的な茶髪のウマ娘、眼鏡をしていて見た目は変装していたが間近で見ればその姿は皇帝であった。
日本で知らぬ人はまずいない、たとえウマ娘レースに興味はなくとも知っているほどの知名度を持つシンボリルドルフが今ニアミスした。
「「ウェイ!?」」
これはおかしい、異常事態である。自覚してしまえばあとはたやすい、探せばギャラリーに紛れているがいるわいるわ有名人。
自覚してしまえばもう目を背けていられない、いつから秋名峠は秋名峠レース場に改装されたのかと言わんばかりの様相だ。
なんで?どうして?秋名なんて走り屋の中でもマイナーな峠にどうしてこんなに有名人が大挙しているの?
「「…よし、見なかったことにしよう」」
この時二人は緊急手段を再び発動した、理解することをあきらめる、これも処世術である。
◆◆◆◆◆◆
「これどーすんだ、マジで。来てはみたけど…」
結局、疑わしい噂が解消されることはなくこの日がやってきてしまった。俺は愛車で秋名の峠を上がりながら周囲を見て頭を抱えたくなった。
変なことになってるから問いただしてみれば答えは簡単、イツキの奴がやらかしやがった。
バイト中に中里が勝負を仕掛けに来た時、ガソリンスタンドには偶然にもイツキしかいなかったらしくそこでいらんかっこつけをぶち上げてあれよあれよと勝負の話を受けちまったそうだ。
池谷先輩や拓海がいなかったのは仕事だった、ついでに店長も裏のビルに伝票届けに行ってたとかで一瞬いなくってこの有様。
最初はすぐにでも誤解を解くもんだと思ってたんだが、どういうわけか噂は流れに流れ、訂正されることもなくこの日が来たわけだ。
「どーすんのこれ?マジでこれやるの?」
「どうだかねぇ…あいつの性格なら梃子でも動かないが…」
とはいえ、どうも思っていたような展開にはならなそうだ。厄介な話になってきそうだぜ。
「でもこのギャラリー数はちょっとシャレにならんくない?」
「見た限り、なんかシャレにならない面子もいるように見えるわね」
一緒に来たあやめ、小町、風香も事情を知っているから少し困惑気味。そりゃそうだ、走り屋の違法レースにしちゃ集まり方が異様だ。
なのに今日ときたら何だこりゃ?いつものメンツに加えて群馬トレセンの連中はまだわかる、よその走り屋も面白半分に来ているってのもまだわかる。
しかしね、なんでそこかしこに中央の制服を着たウマ娘が混じってんだ?いつからここはレース場になったんだよ。
こりゃ失礼を承知で口出しした方がよかったかもしれんな、秋名の事だからあんま口出しせんほうがいいと思ってたんだが。
「ねぇタービン、あんたターボに声かけした?」
車をいつもの場所に停車させて降りると小町がすごい怪訝そうな表情で問いかけてきた。
んなもんするかよ、俺はてっきりすぐ否定されるもんだと思ってたんだぜ?
「しねーよ、というかあいつならあんなもん信じねーし否定するわ」
「じゃなんでなんか見たことある連中混じってんの?」
知るかよんなこと…だが小町のいう通り、少し歩いただけで本来ここにいるべきじゃねぇウマ娘連中が多すぎる。
というか、なんか中央の制服そのまんまでこっちに来てるやつらもいるんだがどうなってんだ?ここはトレセン学園じゃねーんだぞ。
こんなタバコすぱすぱ吸ってるような場所、完全にお門違いだ。レース場と勘違いしてないか?
「池谷先輩たちは…まだ来てねぇみてぇだな」
ココアシガレットを咥えながら時計を見る。勝負の時間は夜の10時、まだ9時ちょっと過ぎ、場所取りにいつもはやめに来るんだが今回はちょいと遅かったようだ。
時間まではまだあるがあんまりギリギリなのはよろしくねぇぞ。
否定しなかったということは何かしら手はあるか、別口で話をつけているんだとは思うんだが…まずいな。
「今日はあの妙義ナイトキッズが相手だ…ガラの悪さを発揮しなきゃいいんだが」
「妙義はあいつら抱えてるもんね、来てるみたいよ?」
「そりゃナンバー2だ、来るだろうさ」
最近、また調子に乗ってるみたいだからな、あの野郎。中里に差をつけられてから焦ってんのかさらに手口が悪辣になってやがる。
一歩間違えたら地獄逝きなガムテープデスマッチとかこの場面でも平然と吹っ掛けてきそうで怖い。
普通のバトルならそれでいいんだよ、でもこの場面でそれやるとインパクトが強すぎるっての。
中央の連中、変なところに陣取ったりしてねぇだろうな?公道には客席なんざない、安全圏は存在しねぇぞ。
「まさかハチロクを見に来たのかしら?」
「群馬ならともかく中央がハチロク?ないでしょ」
「でも今日のメインは一応ハチロクとR32よ?Rは都会でも珍しくないけどハチロクはさすがに見ないと思うし」
AE86は名車だが、所詮は古いスポーツカーだ。今のおしゃれでハイパワーな車に比べたらいかにも野暮ったいスタイルだ。
人気車種ではあるけど人気の方面で言えば昔の名声と使いこなしてこそ本領を発揮する玄人向け名車って感じで気色が違う。
素でただ乗り回して楽しいってなりゃどう考えても都会ならRだもんな。
「やっぱターボがいろいろ話しちゃったんじゃないかな?ターボならいつもの調子で絡むだろうし」
「おいおい、上澄みだけがウマ娘じゃねぇぞ。他にもいるだろ走り屋くらい」
「元走り屋ならいるかもね、あそこ超有名国公立だから」
あぁ、あそこで走るならそういうもんとは縁切りしてるのか。ターボみたいなのはむしろ希少種か、しかも峠専門だ。
「でも知ったからってあいつが吹聴するとは思えんぞ、拓海のことはあいつもよく知ってる」
「確かに、それはないわね」
ターボ、拓海と文太さんにがっつり懐いてたからな。拓海とだって、中央に行くまでは普通に遊び倒してたんだ。
拓海の性格ならターボもよく知ってるんだよ、だからこんなレース普通はしないってわかってるはずだ。
そもそも群馬トレセンが出張ってるってのもおかしな話だぞ、あいつらがこんな与太話信じるなんてありえない。
なら別の角度で信ぴょう性が高いっていう話でも出てきてんのか?いやでもなぁ…ん?ターボ?
「…しかしターボか、いやでも…うーん?」
「なんか心当たり?」
「そうじゃねぇよ、もしターボがこっち来てるんなら野戦司令部あたりに顔出してんじゃないかってな?」
ほれ、と空を指さす。空には真っ白な撮影用ドローンが試験飛行中、どこからどう見ても群馬トレセンモータースポーツ部の奴だ。
連中もこっちに出てきていつも通り野戦司令部をこさえて見物する腹積もりだろうさ。
「ターボが来てたら、おそらくカノープスも来てんだろ?あっちも大所帯みたいじゃないか。
理由が無けりゃチームメンバーをハブることもせんだろうし、それでこれなら見やすい方を選ぶ、行ってみるか」
「ターボがいるなら群馬も顔パスね、情報収集にもなるし行ってみますか」
「秋名の野戦司令部か、そういえば作ってるところ見たことないな、どこだろ」
「目星はつけてる、というかそんな広い場所そうそうないし」
野戦司令部は規模が規模だけに設営場所は大体決まってんだよな、芦名はそこそこあるけど秋名ってのは確かに珍しい。
隣だからウマ娘が走りには来るけど野戦司令部こさえるような大規模練習はないからな。
「というか、電話でよくね?」
「コマツ、それは無粋ってもんだろ。せっかくここまで来たんだぜ?」
そんで野戦司令部があるだろう頂上付近に足を運んだわけだが…
「コントローラー足んない!!予備どこ!!?」
「バッテリーの接続急いで!!プロジェクターはあっち!!」
「ドローンの挙動が遅い!!回線が重くなってる!!」
「無茶言わないでよ!!もう容量いっぱいなんだから何とかして!!」
「アパム!アパーム!!早く延長コードもってこい!!アパーム!!」
「航空部から連絡!ドローン到着まで10分!!」
「追加物資が落ちてくるわよ!!回収準備急いで!!」
「その椅子はあっち!飲み物はあっち…って飲んでる場合かぁぁッ!!」
「誘導班から連絡!新たに中央制服―――パーカー避けろォッ!!」
「うぎゃぁぁ!!?ハチミーだ!!ハチミーの原液が降ってきた!!」
「せ、制服が体に張り付く!!」
「畜生、地獄だぞまるで!!」
「プロジェクター用の幕が足んないよ!!何やってんの!!」
おい、戦場になってんじゃねぇか。もう絶句だよ小町たち、いつもの群馬トレセン連中がフル回転で場をこしらえてやがる。
臨時客席なんざ満員御礼じゃねぇか、中央の連中がごった返してるっていったい何事だ?
とりあえず野戦司令部の周りで立哨警備してるサバゲ部の奴に聞いてみるか。
夏制服の上にプレキャリつけてるからすぐ分かる、暑いからアイスダミープレートを入れられるプレキャリは夏に人気だ。
こいつらに取っちゃ体のいいお遊びだし、アイスダミープレート入りプレキャリは良い重りになってちょうどいいし熱中症対策にもなる。
「よう、お疲れさんだな」
「あ、ボス!お疲れ様です!」
「ボス言うな、敬礼もいらん。どうしたんだこれ?随分集まってるじゃねぇか、中央と共同練習かなんかか?」
「いやそれが…ちょっと厄介なことになってまして」
「なんぞ?」
「驚きですよ、中央司令部に向かってください、皆さんがお待ちです」
あ、これ厄介なことになってるわ。
「分かった、行こう…お前らどうする?」
「タービン、そっちはお願い。うちらは別角度からちょっと当たってみる」
「こっちの仲間にも声掛けしとくよ、なんかあった時のためにさ」
「私も兄さんに連絡してくる、学校使うかもだし」
おっと、それはうれしいな。群馬トレセンだけじゃ収拾不可になるかもしれんし、ここで警察にご厄介はまずい。
走り屋は後始末も極力自分でやるもんだし持ちつ持たれつだ。こんなところで大騒ぎ起こしてみろ、麓からお巡りさんがスパス12を抱えて飛んでくるぞ。
何せ相手がウマ娘やら走り屋の車なんだ、車載散弾銃を手にするには十分な要件がそろってる。
あの大砲をずらりと並べられて向けられてみろ、普通のギャングはそれだけでビビっちゃうぜ。
「OK、行ってくる。何かあったら連絡を」
3人が頷くのを見てから俺は野戦司令部の中を進む。瞬間、周囲に散らばっていた中央のウマ娘やらトレーナー達から注目を浴びた感じがした。
まったく、こいつらいったい何がしたくてこんな秋名くんだりまで遠征してきやがったんだ?
それを無視して見慣れた野営地の中を進み、司令部天幕前まで行くとそこで待っていた2人のウマ娘を見つけて大きなため息をついた。
「む?タービン、お前らも来たのか?」
「タービン、久しぶり!」
「なんでいるんだよ」
ナリタブライアンとディープインパクトが司令部の前で手持無沙汰で待っていた。
2人とも私服姿、変装していたんだろうが今は素のまま、俺はもぅなんか何も言う気が失せてきた。
「あぁ、ハチロクを見にな」
おいおい、クラシック3冠ウマ娘様からはまず出ないだろう言葉が出てきたぞ。ハチロクってあのハチロクか?
「ハチロクぅ?…ここらで86は見ないぞ、秋名の連中で使ってるやつはいない」
「いや、新型の方じゃなくて古いほうだ。AE86、スプリンタートレノだ。レビンじゃないぞ」
ニュアンスで聞き分けできるあたりマジだなこりゃ。
「ますますわけわからんな、そこまで言う理由はなんだ?」
おいおい、なんでまたお前からそんな名前が出てきてんだよ。お前らとは業界被らねぇだろ。
ただ事じゃなさそうだ、いったい何があったんだよ?
「あぁ、お前は知らないのか。ハチロクの名前は生徒会では有名なんだ」
「どういうこったよそりゃ?」
「ツバキプリンセス達がスカウトの返答に使っていたんだ、全員な」
なぁにぶちあげて断りやがった我が親友、なんかシャレにならんことになってるぞ。
「なんて言いやがった?」
「中央で走ればハチロクに勝てるのか?とな」
「勝てるかバカモン」
なんて阿保みたいな文句垂れやがってんだ?あのアホンダラ共。調子に乗ってやがるのか?いくら何でも馬鹿にしすぎだ。
どっかでぶちのめして気を引き締めさせにゃならんか?中央相手にそれじゃ勝てるもんも勝てんわ。
「即答か」
「当たり前だろ、どうやって競争ウマ娘でスポーツカーに勝てってんだ。旧式とはいえハチロクはれっきとしたスポーツカーだぞ」
何も手を入れてないAE86にだってまず勝てねぇってのに、あいつらが言ってんのは親父や文太さんレベルのハチロク乗りだ。
んなもん真っ当にやって勝てるわきゃねぇだろ、あのレベルになると峠というステージならガチで天井無しのトンデモだ。
たとえ高崎レース場に呼び出したって勝てないね、川砂で平地なんてハンデにならねぇ。中山レース場?芝じゃもっと勝負にならねぇわ。
「ったく…悪い、ダチが変な難癖付けた、今度俺からゲンコツかましとくわ」
「勝てない、と?」
「うぉッ…なんだルドルフさんか」
後ろからぬっと来たなシンボリルドルフ。なんだ、急に空気が?なんだよ、なんか変なことを言ったかね?
「そりゃそうだ、スポーツカーだぜ?出力からしてちげぇ、ウマ娘何人分だって話だ」
「どれくらいなのかな?そういう面は素人でね」
「そうだな…店売りノーマルなら4AーG、直列四気筒DOHCでNA、約1600CCか。あ、NAはノーマルアスピレーション、ターボなしって考えでいいぜ」
「ウマ娘換算では?」
「130、単純計算で130人分だな」
圧倒的だよな、83年にはそんなレベルの車が峠でデビューしてんだ。それでもどんどん高性能な奴らが出てきて伝説を塗り替えてる。
NAでさえこれなんだ、ターボやらスーパーチャージャー付になるともっとパワフルになる。パワーじゃ話にもならんさ。
今更ハチロクなんてっていう連中の気持ちも分かるんだよな、実際もう40年近く前の車になるんだからよ。
「まぁ今回走るかもしれんのはカスタム入ってるから…確か150馬力だったはずだ」
「圧倒的だな、君でも勝てないかい?」
「今日走る二人を相手にして、という意味か?」
ルドルフは頷く。全く、何をわけのわからんことを。
「峠の走り屋とは言え
ハチロクは言わずもがなだ、この時代にハチロクをあそこまで習熟してるやつはそういねぇよ。間違いなくトップクラスの実力は持ってる」
「そこまではっきり言うのか」
「言うね」
「そうか、なら質問を変えよう。君は今回のレース、ハチロクとGTーRのどちらが勝つと思う?」
R32とハチロクか。車のスペックならR32の圧勝だ。普通に考えたらR32が勝つ可能性が高い。
R32、スカイラインGT-R・BNR32ⅤスペックⅡ。乗ってる中里の腕も確かだし、乗せている装備も豪華だ。
FRと4WDの良いとこ取りみたいな駆動系のアテーサEーTS、こいつはオリジナルが積んでいたものよりブラッシュアップが進んでさらに凶悪になっている。
エンジンはリファインされたRB26DEツインターボ、直列6気筒で2568㏄、こいつも曲者だ。
新規生産のリファインモデルは重量増加の原因だった鋳鉄部品やトラブルを抱えていたオイル系などが新素材に変わった結果、重量はほぼ据え置きとはいえオイル管理系やバルブ陥没などのトラブルが解消されエンジンの安定性が向上してる。
つまり発売当時よりもだいぶ無理が利く耐久性を会得しているわけだ、パワー頼みのぶん回しだけでも脅威だぜ。
しかし拓海のハチロクは文太さんのハチロク、はっきり言ってどんな頭のおかしいセッティングにしてるか俺も皆目見当がつかない。
それでいて腕前ははっきり言ってピカイチ、まだ限界が見えないレベルだ。文太さんのハチロクは、仕事用に妥協してるとしても普通にピーキーなんだ。
それにR32がいかに優れていようとも弱点はある。この秋名のステージだとあのヘビー級はちょっと窮屈だし、重さとアンダーステアの課題は残っている。
そこを中里がどう対処してR32を使いこなし、地の利と経験で勝る拓海に食らいつくか。注目すべきはそこだろうな。
「難しいところだが、面白い勝負にはなるだろうよ。長所もあれば弱点だってあるからな、互いによ」
「ほぅ、どういった弱点なんだい?」
「教えるのは構わねぇが…その前にこっちからも質問いいか?何であんたらがこっちにいるんだ?」
「うん?さっきも説明しただろう?」
「そこがわけわかんねぇんだよ。袖にされた理由付けがハチロクなのはわかったが、なんでこんな秋名くんだりまで大挙してきやがった?
どこからこんな情報仕入れたんだ?こいつは違法レースだ、中央のエリートにゃ縁のないもんだろう?」
なんかやらかしたんじゃないだろうな?なんて意味を込めて少しジト目をしてやると、ルドルフは少し困ったような笑みを浮かべる。
「それは…どう答えたものか。納得してくれるかわからないが…実は私達は何も関与していないんだ」
「…はい?」
「タービン、これ予想外なんだよ。そもそも私達リギルは夏合宿で赤城のほうに行ってて、本当にただの見物目的でこっちに来てただけなんだよ」
ディープ曰く、シンボリルドルフ含む生徒会メンバーは今回あくまでチーム・リギルのメンバーとして夏合宿中。
学園内のあれやこれからは一時的に離れていて、異変が起きているのはここに来て初めて知ったようだ。
今回のトレセン学園生秋名大遠征に関しては誰も示し合わせている様子はなく、本当にただの偶然である可能性が高いそうだ。
「生徒達に話を聞いたのだが、目的などははっきりしているがみんな細部はバラバラ、不審なところはなかったよ」
「それが事実だとして、なんでまた秋名なんぞに?」
「SNSとネットの書き込みが発端、だそうだ。峠の走り屋同士の交流戦が日時込みで噂が流れていたんだよ」
「それでどうしてそうなる…」
「タービン、トレセンからVRの件で相談あったの覚えてる?」
あぁ、そういえばあったな。特に何か問題になりそうなところはなかったし普通にOKを出したが…
「あれね、今トレセンでめちゃくちゃ有名になっちゃってるんだ。あのレースで勝ったウマ娘の疑似体験ができるってことでさ」
「なにバカみたいな使い方してんだよ、どうすればそれで走るなんてこと考えやがる」
「それが結構評判良いんだよ、坂路の代わりにできるし普通じゃ鍛えられないところを鍛えられたりするしさ。
あと車とレースできるってのも大きい!VRなら何にも気にしないで挑めるからいいよね」
「んな都合のいいこと…お前もやってんのか?」
「やってるよ、でも全然ダメだ。すぐ置いてかれちゃって話になんないもん。タービンやっぱめちゃくちゃだって。
それで峠ってなんなんだって話になったらしくてさ、みんな調べてたんだよいろいろ。あ、ほら、またきた」
振り返って野戦司令部入口の方を見ると、そこには見覚えのあるウマ娘と見覚えのない男性トレーナー。
おいおい、スぺにスカイ、ゴールドシップ…あれ!?朱美ちゃんと香ちゃん!?この世界もうそんな歳…いやちゃうわ、馬耳あるわ。
懐かしいな、前世でまだ見習の時に練習で乗せてやったんだ。と、いうことはだ…また知らないやつが増えてるぞぅ…
「マジか…」
「でも峠レースの概要とかはわかってもそこから先で手詰まりってのが多くて、行っても見れるか解んないから下手に現地に行っても無駄足になりやすいってさ。
どうやれば情報キャッチ出来て見れるのか、本当に手探りでわけわかんないしってなってたところにここの情報が流れてきたらしいんだ」
走り屋のネットワークなんざアングラでアナログだからな、違法レースだからあんまり派手にやれん。
このご時世、わざわざファミレスで待ち合わせをして対面で話すとかやってたりネットでの露出も最小限だったり裏サイトだったりだ。
表のネットにこの交流戦の情報が流れた?そんな宣伝みたいなことやってる走り屋なんざ見たことねぇぞ、そもそも違法レース宣伝してどうするってんだ。
池谷先輩たちはそんなことしねぇだろうから十中八九妙義ナイトキッズから情報出してやがんだろ。
だが中里はそんなことをするタイプじゃねぇし、そもそもこんな大騒ぎはあいつも困るはず…あぁ、あいつらならやりかねんか?
「庄司…仲間の手綱は握っておけとあれほど言ったのに」
「心当たりがあるのか?」
「やりそうなやつらを知ってるだけだ、最近図に乗っててな」
庄司慎吾、妙義ナイトキッズのナンバー2でナイトキッズ内の中でもガラの悪い走り屋たちの頭をやってる。
今のあいつ、言葉にできない危うさがあるんだよな。ダーティな悪を気取ってここ最近調子乗ってる感じあるし。
ナイトキッズの中でもガラの悪い連中をひっくるめてから余計に天狗の鼻を伸ばしてんだよ。
妙義のナンバー1を狙ってるから中里とも時々衝突してるって話だが、あいつもこういった大騒ぎは望んじゃいない。
これで中里がこの交流戦で負けたらナイトキッズそのものにだってダメージが入る、それはあいつだって望んでいないはずだ。
おそらくあいつの仲間が情報を流した、多分特に深い意味はない嫌がらせかね。問題はそれを探してる連中がいたってことか。
「悪い、続けてくれ、そんで?」
「えっとね、時間と日時が指定されてるなら暇は作りやすいし、やるのは芦名の隣の秋名で知名度低めかつ好立地、しかも調べたら温泉の名所でしょ?
仮にだめでも他に流れやすいし、温泉で湯治もできちゃうしで休みにも敵情視察にももってこいって訳なんだ」
「だからって…そういうの事前申請とかあるもんだろ?多すぎて変だとか思わんのか?」
「それに関してはまだ憶測でしかないのだが…」
ルドルフさん曰く、申請の多さと共通点は把握していたが場所と理由を見ても特に問題視していなかったのだろうとのこと。
それは俺も分かる、前世でも遠征調教が多すぎて群馬トレセンがキャパオーバーしてすったもんだとかあったし。
トレセン側も芦名に人が集まりすぎないように外泊申請には気を使っていたようだがここで秋名に行くと申請すれば話は変わる。
そもそも秋名の名所は温泉とか山上湖、湯治するなり気分転換なりなんなり別の理由を使える。
湯治目的なら前からウマ娘相手に結構名が知れていたほうだったし、最近はビワハヤヒデが時々来てるから知名度アップ中だしな。
馬鹿正直に秋名の峠に行くと書いても芦名じゃないからスルー、秋名の立地から代替品扱いになってたらしい。
しかも秋名の峠レースを見に行くっていう理由は全くの嘘じゃないっていうのがな…いろいろ好条件が今回は重なっちまってたわけね。
「夏は合宿や遠征が重なる時期でな、学園から遠出するのは珍しくない。多少申請が多くても不思議じゃないんだ」
「あと何組か日帰りの弾丸で予定組んでる連中もいる、帰りは走る気な奴もな」
「その結果がこれか、そっちもご苦労さんだな」
「全くだ、ここにきて生徒会の仕事をやらされるとは思わなかったぞ」
「そういうな、こちらに迷惑をかけるわけにもいかないだろう?」
もう手遅れな気がするが、指摘しないでおいてやろう。見なかったことにするのも慈悲だ。
「手伝ってくれるのはうれしいけどほどほどにな、峠からすりゃそっちは客みたいなもんだし。
ま、来たんなら楽しんでいってくれ。実際楽しめるかどうかは知らんがね」
「そうさせてもらうよ、考えてみればこういった場所は初めてでね。少し興奮してるんだ」
「タービンが楽しいんなら楽しめるでしょ、ついでに峠の秘訣っていうのも覚えなきゃ!」
「お前の強さを養った走り屋から学ぶチャンスだ、逃す気はない。次こそは勝たせてもらうぞ」
「へいへい…っと、そうだ、俺もうちの連中に話があるんだった。弱点とかはレースの時にでも説明するよ、現物見てた方が分かりやすいだろ」
「それは助かる、私たちはあっちの客席で見る予定だ。楽しみにしているよ」
「おぅ、じゃ、またあとで」
とりあえず聞きたいことは聞けた。一旦話を切り上げて3人と別れて野戦司令部の中央司令部になってる天幕の中に入る。
これは空振りに終わったらただじゃすまないな、噂が独り歩きしちまってただの走り屋じゃ制御不能だ。
池谷先輩たちに収拾つけるなんてできるはずないぞこんなもん、妙義や赤城の連中ひっくるめたって無理だ、ナニカで緩和せにゃならん。
野戦司令部の中央司令部になってる天幕の中は屋外クーラーが設置されててひんやりと気持ちがいい、しかし地獄なのは変わらなかった。
「予備発電機設置及び稼働完了!!コード接続確認、通電準備よろし!!」
「アンテナ追加展開用意、予備サーバー立ち上げ準備!!急げ急げ急げ!!」
「設備班より入電!メインサーバーの温度上昇はいまだ止まらず、熱暴走までおよそ5分!!」
「同時接続が多すぎる!!どうにかなんないのこれどんだけ見に来てるんだよこれ!!」
「クーラーの出力を全開でぶん回せ!!」
「もうやってます!」
「レーダー班より入電。輸送ドローンを確認、規定コースを進行。ビーコン作動、誘導を開始」
「監視班より報告!!上空天気にいまだ変化なし、本校方面より輸送編隊を視認!」
「アルファ、ブラボーは回収作戦を開始、一個も見逃すな!」
「了!レーネちゃん!イネスちゃん!作戦開始、一個でも逃したら即刻山狩りだから覚悟しろってさ!!」
「そこまで言ってないよ!!」
修羅場だ、設置されたラップトップに齧りつく司令部要員や無線設備で上がる情報を精査する情報部員。
それを統括するチームリーダーや幹部たちが頭をフル回転させてあっちに行ったりこっちに行ったり。
邪魔しないようにしつつ目当ての奴がいないか探して…おっといた。
「軍曹!」
「姉貴か?来てくれたのか、助かったぜ、表で話は?」
司令部に設置されたドローン制御装置にかじりついていたジョンソンがこっちを向いて安堵の表情を浮かべた。
群馬トレセン学園の夏制服に使い込まれたレンジャーグリーンのパトロールキャップを被った地黒黒鹿毛のウマ娘、見慣れたもんだ。
「とっくに終わってるよ。しかしヒデー有様だな、そっちから話はしてるんだろうな」
「あぁ、まったくやばい状況だぜ。走り屋の違法レースなんてお流れだって珍しくないってのにまるで分ってくれねぇ。
ダイオー先輩たちも方々に声かけまくって何とかまとまっては来てんだが、このまま退散って訳にはいかなそうだ。
トレーナーたちもあっちのトレーナーさんたちと顔突き合わせて対策練ってる」
「そりゃ収穫なしで帰りたいとはだれも思わんだろうからな」
「どうするんだ?俺たちは別に空振りでもどうってことはねぇが中央はそうはいかんぞ。
さっき話した桐生院トレーナーさんみたいな話の分かる人たちばかりならいいだろうがそうじゃねぇだろうしな」
俺にその話を振るかね…まぁ俺もその話でお前らを探していたんだがな。まったくもぅ…
「軍曹、モータースポーツ部とサバゲ部で使える連中、今どれくらいいる?」
「みんないるぜ?こんな面白いもん逃したくねぇってよ。その顔、何する気だ?」
「ちょっとした保険だ、10時が過ぎてもし拓海が出てこなかったらお流れか別の誰かが走るだろ?
その後に俺も走る、誰でもいいから俺と走れる奴と車を用意してくれ。妙義と秋名の連中には俺から通しとく」
ちょうどテューダーが妙義のほうに顔出ししてるし、そもそも中里とは知り合いだから繋ぐのはたやすい。秋名は言わずもがな。
「秋名で車相手にやる気か!?お節介は感心しねぇぜ?これは秋名と妙義の交流戦だ、そこは解ってんだろ」
「別件で走るだけだ、ただ2次予選の練習にちょうどいい、そういうことにしとけ。見物のついでだついで」
「全く…あいよ、任された」
「頼む。あ、あと悪いんだが予備の体操服とか、貸してくれね?」
走るつもりじゃなかったから用意してないんだわ、芦名まで取りに行くのは間に合わん。
群馬トレセンなら予備の体操服くらいいつもいくらか用意してんだろ?
「それならある…そこのバスの中で待っててくれ、ディアあたりに持っていかせる」
「そこまでしなくていい、ある場所を教えてくれ。そもそもまだ着替えねーよ?レース見物するんだし」
「着替えといたほうがいいぜ?いざダメってなったら速攻でフォロー入らにゃならんだろ?」
ん?…それもそうか、下手に文句が出る隙を与えるわけにはいかんな。意識をこっちに集中させてやらんと。
中央と峠のいざこざなんざツマミにもならん、そもそも一緒にしていい存在ではないからな。
まぁハチロクが出てきてレースが始まりゃ俺は用なしだが…そうなったらランニングにでも誘うか。
「そうか…わかった、着替えてスタンバっておこう」
「そうしてくれ、うちの特等席を用意しとくから」
「いいよ、向こうの観戦席に行く。ルドルフさんたちと約束してな」
「そりゃ助かる!さすが姉貴だ、皇帝様の相手は任せたぜ」
体操服でほっつき歩くわけにもいかんからな、今回は裏方をさせてもらうさ。
あとがき
お前そういうところやぞ。というわけではい、次回は秋名峠戦となります。
相手は一応未定、まぁわかる人はもうわかってると思いますがね。
リベンジに燃える連中は大勢いる、リギルがすでに現地入りしてるとくれば…ね?
ついでに言うと今の秋名にはネームドもだいぶ集まってきてるレース場状態、いろいろおかしいのです。
おまけ『フランキ・スパス12』
日本警察が正式採用している軍用散弾銃。多数の通気口が付いたハンドガードとヒートシールドを持つ大柄な風体から小型の大砲の異名を持つ。
セミオートとポンプアクションを切り替えられるコンパーチブル散弾銃であり、確実なポンプアクションと速射のセミオートを使い分けられる。
チューブ弾倉式8連発、これはセミオートを備える散弾銃にしては装弾数が少なく向いていない設計である。
日本警察がこれを採用した理由は要約すれば『重くてでかくて複雑で欠点もあるから万が一盗まれても扱いづらい難物』だからである。
しかし逆を言えば適切に扱えばこれ以上にない性能を発揮するものであり、特に日本警察内で地位を確立していてパトロール警官や交番勤務者には人気。
でかくて派手でかっこいい最終兵器であり、これを持ち出してこれ見よがしにポンプアクションして音を鳴らせば暴力団でさえビビると評判。
これに扱い慣れるとアメリカ映画でよく見る散弾銃がひょろながのもやしに見えるらしい。
しかしイタリアではすでに生産中止でありオリジナル品は絶版、生産設備はライセンス契約と製造権を獲得していた日本の豊和工業に輸出されている。
そのため現在世界で販売されている民間向けスパス12は外装がアメリカ製で中身は日本製のクローンモデル。
狩猟およびスポーツ射撃用に生産された完品のスパス12を現在でも購入できるのは日本国内のみである。