気儘に生きた転生馬物語   作:イナダ大根

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いつも多くの誤字報告、ご感想ありがとうございます。
頭文字Dのバトルは本編を見よう!!





第四十一話

 

 

 

(32がだめなんじゃねぇ、俺がヘボだったからこうなったんだ)

 

夜も更けてきた秋名の峠道、その道路の路肩に止めた愛車であるR32の車体後部についた凹みをなぞりながら中里は口に咥えた煙草の紫煙を吐いた。

これは自分のミスでついてしまった傷だ、自分の未熟さを恨みはすれどあのハチロクを恨む気はさらさらない。

交流戦では負けたが不思議と中里の気持ちは晴れやかだった。とても心を揺さぶる熱いバトルをして、全力を出したうえで負けたのだ。

そこで自分の未熟さを今一度思い知り、かつての初心を思い出せた有意義な敗北だった。

 

(このRに乗り換えたことに後悔はない、だがS13ももっと俺が上手けりゃもっと先があったんだろうな)

 

なぜならあのハチロクがあれほどの戦闘力を持っているのだ、ハチロクにできてS13にできない道理はないだろう。

 

「板金7万円コースか…堪えるなぁ…」

 

今すぐに直さなくても普通に走れる程度の傷であるが愛車を傷物にしたまま街で乗り回すなんて情けないことはしたくない。

理由がないのなら今日明日にでも修理屋に持ち込んで直してやらなければ走り屋としても車好きとしても失格だろう。

当然その代金もその時にきっちり支払わなければいけないのだ、今月は確実に大赤字である。

今月の食費はどこまで減らせるだろうか、しばらくもやしコースだな、とひもじくなる食卓を思い浮かべていると山頂のほうから来る車のヘッドライトが見えた。

近づいてくる車はシビックEG-6、同じ妙義ナイトキッズに名を連ねている庄司慎吾の愛車だった。

シビックEG―6がR32のすぐ後ろに少し離れて駐車すると、勢いよく助手席の扉が開いて中から見慣れたウマ娘が飛び出した。

 

「中里さん!無事ですか!!」

 

「飛び出すなって!あぶねぇな…」

 

「庄司にテューダーちゃんか…悪い、負けちまった。情けない所見せちまったな」

 

「全くだ、妙義ナイトキッズの名が泣くぜ、ったく…ケガねぇか?」

 

「俺は大丈夫だ、俺はな」

 

中里の言葉に引っかかるもの覚えたのか庄司はちらりとR32のほうを見て、一瞬ぎょっとした後で苦笑した。

 

「こりゃまた派手にやったな。高くつくぜ?」

 

「分かってんだよそりゃ…」

 

GT―Rはスポーツカーの中でもハイグレードな高級品だ。再生産された車と言えどそれは例外ではなく、Rはいろいろ金がかかる。

さらに愛車であるR32は自分好みにカスタムを加えているため社外品のカスタムパーツもふんだんに使っている。

この手のパーツは往々にして高額だ。性能は良くても生産量は少なく、再販にも限りがあり、用途も限られるのだから時期によっては割増価格になっている。

そしてカスタム込みでの修理工場に依頼すればその分の手間賃や工賃も割り増しとなるのでコストパフォーマンスが悪い。

見た目はボディの損傷だけ、この手の深く凹むような損傷は起きる際の衝撃がどこか別のところに歪を作っているかもしれない。

そういうものを放っておくと余計な損傷の呼び水になるのでできる限りはフルでのメンテナンスが必要だ、それに掛かる金額は高くなる。

スポーツカー文化の衰退を加速させた原因であるこの高額な費用は、現代になっても走り屋にはついて回るのだ。

その過去の経験を糧に各社はすでに自社や関連会社で生産した純正のハイグレードカスタムパーツを安価で提供しているが、走り屋が求めるパワーアップと性能を突き詰めるためのカスタムからは選択肢からは除外されやすい。

入手しやすく安価、堅実かつ確実な設計、適合と性能の公式保証と保険付き、車検などの各種検査における使用許可、仮に絶版となっても代替品と後継に恵まれている。

なので初心者向け、ライトユーザー向けという立ち位置で性能はサードパーティのカスタムパーツより地味になりがちなのだ。

安くない修理費が降りかかってきて軽くなる財布を思い出したのか、庄司が思わず顔を竦めた気持ちは中里も理解できたことだった。

彼の愛車であるシビックもいざとなると金食い虫に変貌してしまうのだ、その時ばかりは愛車に恨み節が出てしまうのも走り屋である。

 

「動かせるか?無理なら上の群馬の連中に頼んで動かしてもらおうぜ、次がつっかえちまう」

 

「大丈夫だ、エンジンに異音はないしな」

 

「おめーもな」

 

「うるせ。上に戻すから庄司、お前ちょっと周り見といてくれ」

 

「へいへい」

 

「中里さん、ご迷惑でなければご一緒してもいいですか?」

 

「構わねぇ、乗りな」

 

そういえばもしバトルができなければタービンが代わりに走るとか言っていたな、後ろが支えているというのは彼女のことだろうか?

中里はテューダーガーデンと一緒に庄司が車の通りを見ている間にR32を回頭させ、上り車線に入れる。

庄司が手を振って『先に行っとけ』と言ってきたのを見て、中里は同じく手で感謝を示しながら車を再び山頂に向けて走らせた。

情けないことだが敗北だ、これは甘んじて受け入れなければならない。

 

「次、うちの先輩が走るんです。中里さんは秋名の先輩見たことありましたっけ?」

 

「ないな、秋名のは。どういう風の吹き回しなんだ?話は聞いてるが、ああいうお節介はあいつらしくない」

 

「ほら、今日中央の人たちが無駄に集まっちゃったじゃないですか?あれでもしなんかあったら収拾付かないからって」

 

「あー…確かに。ウマ娘の公式の連中とかどう話したらいいかわかんねー」

 

同じウマ娘でも走り屋相手ならいくらでも口は回る、しかし公式レースを走っている現役の競争ウマ娘が相手となれば話は別だ。

そもそも生きている世界が違うのだ、話が合うはずもない。こちらの常識はあちらに通じず、あちらの常識はこちらに通じないのだ。

そもそもこれでは争いにすらなっていない、互いに何を言っているか理解しないまま声を張り上げてわめいているだけだ。

そんなもの、止めるなら両方の頭をひっぱたいて無理やり口を閉じさせて引き放すしかない。

 

「ですので、目の前に人参ぶら下げて矛先変えちゃおうってわけでして」

 

「自分から餌になりに行くやつがあるかよ」

 

それを中央が今一番警戒している芦名の走り屋『シマカゼタービン』が、自分を餌にして口を閉じさせに行ったのだ。

芦名峠のナンバー2、芦名の峠ならあの赤城レッドサンズにだって引けを取らない実力者。

WRX―STIを使わせたら右に出る者はまずいない4WDの申し子にして生粋のダウンヒラー。

そしてウマ娘の走り屋としてなら『公道最強』を名乗っても名前負けしないほどに生身の足でのレースでさえも強い。

群馬県内の走り屋ならば芦名のダウンヒラーを話題に出して、シマカゼタービンの名前を知らず語れない走り屋はいない。

彼女はただ一人、生身でも走り屋の車と同列として認められている規格外なのだ。

 

「誰とやるんだ?」

 

「純粋にタイムアタックじゃないですかね?ソロだと思います、余韻を台無しにしたくないでしょうし」

 

バトルではなくソロのタイムアタック、その予想に中里はすぐに合点がいった。これは自分たちに対する気遣いでもあるのだ。

シマカゼタービンもこのバトルの余韻を濁す気はないのだ、だからさらにバトルを行うのではなく純粋なダウンヒルを行おうとしているのだろう。

だがそれだけではない、きっとこれは関係のないところで苦労を背負ってくれた群馬トレセン生たちへのご褒美だ。

 

「俺としちゃちょっと複雑なんだが…」

 

「まぁまぁ、かっこよかったですよ?中里さん」

 

助手席でへにゃりとほほ笑むテューダーガーデン、その裏表のない純粋な微笑みに中里は思わず目を奪われかけた。

 

「どうしたんです?」

 

「…なんでもねー…ありがとな」

 

「いえいえ」

 

「それにしてもここでソロか、あいつのことだから手加減はしねぇんだろうな」

 

「それはそうでしょう、自己最速記録更新を目指しますよ」

 

「そりゃ楽しみだな、あいつのタイムアタックはいつも期待しちまうぜ」

 

その期待に嘘はない。峠の走り屋に本気で足で勝とうとするウマ娘なんてあの芦名でしか聞いたことがないし、それで成果を出しているのだから注目しないはずがない。

だからこそ彼女の本気の峠攻めは群馬の走り屋にとっては常に楽しみなサプライズだ、次はどれほどタイムを縮めて近づいてくるのか、どんな技術を身に着けてくるのか、その未知がとても面白い。

その姿は群馬地方トレセン生にとっては劇物であるが同時に生きた伝説であり、ウマ娘がそこまで至れると示す現実の証明だ。

ウマ娘が挑み到る事出来る極地、その実現の道は確かに存在する。その道をたどることはできずとも自分が到れる道は確かにあるという前例なのだ。

 

「そうですよね!さすが中里さん、わかってますねぇ!」

 

「ま、あいつとの付き合いは結構長いからな」

 

実際、彼女が妙義に時折出没し始めたのはおおよそ彼女が中学一年生の時だ。もう5年ほどの付き合いになる。

最初は無謀な夢を追いかけているトレセン学園に入れなかった競争ウマ娘志望のウマ娘かと思っていたが、現実はその横斜め上を突き抜けていた良い意味でのキチガイだった。

まさか峠に心を奪われた生粋の走り屋だとは当時の自分は夢にも思っていなかった、知っていれば妙義ナイトキッズに彼女を迎え入れる事もできたかもしれない。

 

「庄司の奴だって絶対バカにしねぇだろ?あいつとも長いから認めてんのさ。少し前なんか朝まで走ってたもんだからファミレスで一緒に朝飯食ってたぜ?」

 

「確かにあの人、感じは悪いのにそういうことしないし先輩も嫌ってない…これが男友達、トレセンの友達が見たら目がつぶれてしまうわね」

 

「そこまで劇物か?よくある話だろ」

 

「中央は男子禁制ではないですが機会そのものは限られますから」

 

そういうものだろうか、中里はイマイチピンと来ないまま首を傾げる。走り屋の男衆と卓を囲んで食事をしているシマカゼタービン

の姿はあまりに当たり前なのだ。

エンジョイ勢であると広く浸透している芦名の走り屋で、本人も極めているとはいえエンジョイ勢を自負しておりいろいろ弁えている彼女は基本的に群馬県内の峠ならどこでも歓迎される。

歳を食った歴戦の走り屋たちがたばこや葉巻などをすぱすぱ吹かしているその中に平然と並び、自分もココアシガレットを口に咥えてコーラを片手に粗野な談笑を繰り返しているなんてザラである。

若い連中には若い連中の接し方で輪に入り、誰かが持ち込んだハンドカラオケで一曲歌うなんてこともやっていた。

 

「まあ、先輩なら万が一なんてないんでしょうけど…おや?」

 

葦名流次代剣聖と名が知れた彼女に喧嘩を売る奴はそういない、喧嘩になった際に助っ人を頼んだら余りの強さにドン引きした過去を思い出していると、上空を何かが飛び抜けていく影が上に見えた。

 

 

 

 

◆◆◆◆

 

 

 

 

幸運なことに交流戦は無事に行われてハチロクの勝利に終わった。正直、ギリギリまで出てこなかったあいつの姿を見るまでは、正直来ないって思ってたよ。

いったい何があいつをレースに駆り立てたのやら…拓海の奴、実は意外と乗り気なのかね?口ではあれだけど。

まぁそれはそれとして…燃えたぜ、めちゃくちゃ熱いバトルだった。峠レース初見の連中にもその熱さと面白さを見せつけてくれたよ。

スペック上では明らかに優位なR32を相手に、非力なハチロクでああもテクニカルに勝っちまうんだ。

俺だって見てて疼いちまう、今すぐにでも走りたくてうずうずしてんだ、全くもってトンだ伏兵が潜んでたもんだ。

今年の群馬はマジで面白くなる、この秋名を中心にして走り屋同士バチバチのバトル三昧に違いねぇ。

 

「すまん、この通りだ」

 

だがしかし、交流戦が終わったから解散って訳にはどうもいかなそうだ。現にやっと一仕事終えた感のある野戦司令部の裏で俺に頭を下げて頼み込んでる池谷先輩がいる。

その理由は単純、今回さんざん骨を折ってくれた群馬トレセン生のために秋名で一発ダウンヒルをやってほしいってさ。

理由は解らんでもない、今回はいろいろイレギュラーがありすぎてこうも穏便に終わったのは幸運だ。

だがその結果として、秋名スピードスターズは望まずして群馬トレセンにでかい借りができちまった。

別に群馬トレセン側も気にしねぇのは池谷先輩も承知してんだろうけど、やっぱり世話になったら何かお返ししないと気が済まない。

かといって所詮は走り屋、しかも秋名スピードスターズみたいなどこにでもいる仲良しチーム程度の規模じゃたかが知れてる。

だから普段から群馬トレセンと仲が良くて良くも悪くも注目されてる俺の走りを見せてお礼をしたいそうだ。

 

「今回はみんながフォローしてくれたおかげて本当に助かった、本当なら俺たちがなんかしてやるべきなのはわかってんだ。

けど、こんなでかいことになっちまったら俺達みたいなチームじゃ手に負えない、情けないこと言ってるのは解ってるけど、頼む!」

 

「いいっすよ」

 

「拓海が来たから走る理由はないっての解ってんだでも―――いいのか!?」

 

「構わないですよ、ってか頭上げてください。先輩と俺の仲じゃないですか」

 

池谷先輩に頼まれたらよほどのことじゃなきゃ断る理由はない、昔から面倒見のいい先輩には走り屋として意外にもちょくちょく世話にはなってんだ。

別に無茶なお願いされてるわけでもないんだし、あんなレースの後だ。俺も走りたくてしょうがない、渡りに船だぜ。

 

「頼んどいて変なこと聞くけど、次のレースに差し支えちゃったりは?」

 

「体を整えるのにちょうどいいんでOKです、どのみちどこかしらで走るつもりだったんで」

 

「すまん、助かる!この礼は必ず!!」

 

「ならいつもの焼肉屋で目一杯食わせてくださいよ?先輩のおごりでね」

 

おごりで金を気にせず腹いっぱいに食べる焼肉は至極の幸せだ、ウマ娘だから食う時は食うんだぜ。

それも顔なじみの焼肉屋だからね、あそこの大将本当にいい人でサービスしてくれるからリピートしちゃうのよ。

 

「ソロのタイムアタックでいいっすか?さすがにこの空気でもう一勝負ってのは野暮です」

 

メインはハチロク対R32で勝負は着いたしな、これでもうひと勝負するとかちょっと空気読めてない。

あくまで主役はあっち、俺はおまけの添え物、偶然出てきたおまけでしかねぇ。

あいつらがだめだった時の保険でしかなかったんだから、あとからしゃしゃり出るのは余計なお世話だろ?

 

「構わない、うちの連中にも伝えておくよ」

 

「了解です。ま、今できる全力をお見せしますよ」

 

走るからには手加減なんてするつもりはない、今できる全力で俺は走る。

拓海があんだけやったんだ、俺がだらしねぇ接待走りなんかできるわけがない。

今はまだ理想に届かなくても見せてやるよ、俺の本気をな。

 

「じゃぁ俺は先に行ってますんで」

 

「ああ、ありがとう」

 

また頭を下げる池谷先輩の頭を上げさせて表に戻ると、俺を待ってたのか妹たちが勢ぞろいしていた。

ジョンソンとシャットは面白そうにニマニマしてる、ナッツは普段通りに澄ましてるけど全然雰囲気が隠せてない。

 

「おぅ、一本ソロで走るわ、準備してもらってて悪いがバトルはなしな」

 

「この空気でバトルもう一本はねーって、うちも分かってるさ。もう準備万端だぜ?」

 

姉のことよく見てる妹だこと。俺が池谷先輩の頼み事を断るなんてそうそうないってこと解ってんだろ。

 

「その代わり本気で走ってくれるんだろ?」

 

「当たり前だろ?自己ベスト更新は目指すさ」

 

峠の走りはバトルだけが主役ってわけじゃねぇ、そもそも峠の走り屋がやってるのは基本的にタイムアタックだ。

いかに峠を攻めて、どれだけ速く走れるかを競ってんのさ。タイマン勝負だけが峠と思ってもらっちゃ困るな。

ソロのタイムアタックだって面白い、そもそも普段からやってる芦名のダウンヒルだって基本はソロだ。

 

「はいこれ」

 

シャットが投げ渡してきた掌サイズの機械と無線機を受け取る、いつもの空撮ドローン用の追跡ビーコンだ。

スイッチを押して電源を入れ、バッテリー残量を確認してから固定用クリップで短パンのポケットに挟む。

しかし世界が変わると時代も変わるもんだ、前々世もいろいろ飛んだり走ってたりしたがいろいろ物騒だったな。

それをこっちでは学生と学校がこういうの使うんだから、感慨深いねぇ。

 

「いつも通り、撮らせてもらうけどいいよね?」

 

「構わんよ」

 

前々からそうだしな、俺のレースが公式の参考になるなんざ思っちゃいないが気分転換にゃなるだろうし。

 

「下にいったら連絡して?イネスとレーネが空中待機してるから」

 

「あいつらが?演武用まで持ち出してるのかよ」

 

「あれは小回りが利くからね、変なとこに入っちゃってる素人さんを引っこ抜くのにちょうどいいから」

 

演武用勝負服で十全に飛べるのなんてまだあの二人かチームスプリガンのトレーナーさんだけだからしょうがないか。

小回りが利くから救助用とかパレード用に売り込もうとか考えてるんだっけか?

めちゃくちゃ操作が難しいから完全な玄人向けになるだろうけどそれが使えるってことがステータスになる感じで。

操作の簡略化は現代の技術じゃできませんってアラサカも匙投げて逆の手法取ってるみたいだし。

 

「そうだ、今回のデータ、あとで俺にもくれ。俺の走りなんだ、いいだろ?」

 

「好きに持っていきなよ、姉さんならだれも文句なんて言わないよ」

 

「姉様、こちらを」

 

「お、さんきゅー」

 

いつの間にか背後に回り込んでいたナッツが肩にジャージをかけて着せてくれた。

これはあれだな、今回もパドックをやれってことだな?相変わらず好きだね全く。

 

「中央に動きがあります。それからノルン先輩が動きました、ナニカ企んでますよ?」

 

「ノルンが?」

 

おいおい、まさかこの空気で乱入バトルなんて腹じゃぁあるまいな、ノルンらしくない。

あいつだって走り屋なんだから、この空気でそんなことするのは良くないことくらい分かるはずだ。

 

「OK、もし乱入してきたら蹴っ飛ばしてやる」

 

邪魔してくるなら容赦はしねぇ。ここは峠だ、言いたくはないが死人に口なし。ノルンも重々理解しているはずだからな。

もしそれでも茶々入れる気なら同じ芦名の走り屋だからって容赦はしない。今日はバトル無し、それは決定事項だ。

でも乱入つっても今日あいつら車もって来るのか?ツバキとダイオーはともかく、ノルンのハゴは目立つから見逃すはずがない。

 

「シャット、ノルン今日何できてる?」

 

「いつものパジェロ」

 

パジェロでもできないわけじゃねぇが…うん?変だな、あいつが乱入するつもりってわけじゃないのか?

 

「ダイオーとツバキは?」

 

「どっちもばらしててバスだよ、対レッドサンズ用に仕上げてる途中だったのを路線変更して長引いてる」

 

ははん、対ハチロク仕様に組み直すつもりだな?学内に専用ガレージがあるとそういうところもいろいろできるから面白いだろうね。

 

「ふむ…まぁいいか、何かあったら何とかするよ」

 

「ノルン姉さんが変なことするとは思わないけどね」

 

「あいつを甘く見ない方がいいぞ、普通にやるときはやるから」

 

だから面白い奴なんだけどな、同時に予想ができない。悪い事ではないだろうし変なちょっかいではないんだろうけどねぇ。

 

「ま、蹴ってだめならCQCでぶん投げとくさ」

 

「容赦ねぇな、さすが姉貴だ」

 

何を言う軍曹、一文字二連でないだけマシだぞ。鍛えに鍛えた我が一文字二連はどんな相手だろうと確実にブチ転がす。

あの一心校長もこれは洒落にならんと太鼓判を押して貰えたくらいだ、絶対本気で人にやるなとも言われたが。

そりゃね、よほどのことが無きゃ本気ではやりませんよ、それくらいわかってますよ、泣かれたくないし。

 

「さて、やりますか」

 

久々の秋名ソロだ、恥ずかしい真似はできねぇな。

 

 

 

 

 






あとがき
というわけで秋名峠戦、相手は過去のタイムとなります。すまぬ、あのバトルの余韻を汚したくないのじゃ。

シマカゼタービンが敢えて純正のカスタムパーツにこだわっている理由の一つがこれ、価格の問題だったりします。
やっぱりスポーツカーってね、高いんですよ。カスタムして、チューニングして、その他諸々付け足してってやるともうすごいことになる。
だからこの世界では企業も対策でお値段そこそこなハイグレード部品を作って価格も抑え、車検諸々にも申請を通した普段使いも問題ないものを出してます。
こうして警察にも法的にも問題のないパーツ類を出して、ライト層やエンジョイ勢を取り込んで裾野と入り口を増やすんですね。
昔通りにがちがちにやりたいガチ勢や修羅の住人は今まで通りにやってもろてという感じ。
シマカゼタービンも一応このライト層やエンジョイ勢に区分されてる方で、いつ警察が見ても違法性ゼロなカスタム車です。
ガチ勢と対等にやり合ってる?エンジョイ勢がガチ勢に勝てないと誰が決めたのかね?


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