気儘に生きた転生馬物語   作:イナダ大根

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いつも多くの感想、誤字報告ありがとうございます。
今回は夏の小話、ここでも好き勝手にやる所存。とりあえず葦名がやりたい放題やります。
細かいことは良いんですよ。葦名は葦名で戦国マインドで難易度・FROMみたいなもんだからね、しょうがないね。






夏閑話1・葦名城散策

 

 

 

夏の昼下がり、群馬県芦名市も例にもれずうだるような熱気と日差しが差し込む猛暑日だった。

世界でも有数の観光名所である葦名城、その入り口であり幾多もある観光名所たちに向かうバスターミナル。

そこでひと際注目を集めるのは水色の涼しげなシャツに白のロングスカート、麦わら帽子で着飾ったディープインパクトだった。

夏合宿の合間の休みの日、こうして単身で葦名城観光に来たディープインパクトはすぐさまバスターミナルから見えるその城の全景に圧倒された。

 

「でッかッ!!」

 

切り立った崖と小山で形成された特異な形状の地形を橋で繋ぎ、戦略的に攻略しづらい山城として作り上げられ、戦国末期以後もずっとこの地のシンボルとして生き続けてきた葦名城。

学校の教科書にすら乗っている世界的にも価値があり、そして積み重ねてきた歴史からも世界中の歴史家に愛され、そして世界屈指の武術の聖地として知られている。

ここを目指す武を尊ぶ者は多く、今や世界の猛者たちから憧れの聖地と認定されている場所だ。

ここだけは異世界といっても過言ではないほどに、ウマ娘レースの気配が欠片もない。すでに出入り口からしてすごく濃ゆい。

あるのは圧倒的な武の空気、右を見ればロケットランチャーを担いだ筋肉雄ゴリラ、左を見れば対物ライフルを担いだ筋肉雌ゴリラ。

ブッシュハットをかぶり葉巻を吹かす髭男が先導し、後に続くはソフトモヒカンと緑色のム●ク。

屋根の上には忍者、スナイパー、タキシード、ボディスーツ。その軒下にノー●ン・リー●スな配達員とマ●ツ・ミケ●センな兵士が並んで赤ん坊をあやしている。

その脇には妙にデカい段ボール箱、不思議な存在感と雰囲気を醸し出しており目を反らすといつの間にか消えていた。

空を見上げればハインドDとF―16が混戦模様、そこに飛び込む人型2、さらに城からミサイルと対空砲火の打ち上げ花火。

上空から1機のF―22、4機のF―14D、2機のF-15が乱入する。そして沸き起こる野太い大歓声。

使い捨て上等な荒くれ共が、規律正しき正規軍が、日夜治安を守る警察が、そしてこの日を待っていた猛者たちが今か今かと熱気を放つ。

はじける筋肉!飛び散る汗!これぞ漢の義務教育!!ただでさえ熱いのに生きてる加湿器と暖房器具が葦名の城下を完全武装で練り歩く!!

 

「走るなよディープ、葦名城は逃げんよ」

 

「まぁまぁ、葦名城初めてなんでしょ?そりゃ興奮するって」

 

「そうは言うがなダイオー…こんなんでいいのか?もっとこう同世代の連中と遊ばんのか」

 

「トレセンじゃ歳の差なんてそこまで気にしないわよ?」

 

「一般人にゃわからん感性だねぇ…」

 

「「「お前が言うなお前が」」」

 

聞きなれた友たちの声に振り向き、そして迫りくる八つの巨大山脈の圧力に慄いた。

そこには揺れる魅惑の震源地が乱立していた。それはまさに真夏の昼の●夢、まさに夢の体現であった。

 

「デッッッカッッッッ!!」

 

「おい、どこ見てんだおい」

 

「ふっふっふ、自慢の天然モノだヨ。最近90超えました♪」

 

「こんな愉快な性格しててどうして最初アレだったのかしら?」

 

「悪くないと思いますよ?面白いですし」

 

夏故に軽装、一段と魅惑的に肌を晒して蠱惑的に揺れている。

シマカゼタービンは薄手で水色のポロシャツにハーフ丈のジーンズ、ハーフ丈のジャングルブーツ、肩掛けバッグを掛けており谷間にバッグのスリングが食い込んでいる。

ノルンファングはアーミーグリーンの短パンに黒横縞柄のタンクトップ、アーミーグリーンのアーミーキャップを被りサングラスを装備。腰にウェストポーチを巻いている。

ツバキプリンセスは清楚な白いワンピースに夏物のおしゃれなサンダル、どこか田舎の香りがする麦わら帽子。

ホクリクダイオーは白いミニスカートに青いチューブトップ、薄手のジャケットを腰に腕の部分を縛る事で巻き、足はスニーカーだ。

みんなデカい、どこがとは言わないがみんなデカい、全員が確実に90台に乗っている。ケツも背もあって大変宜しいのである!

対する自分はどうだ、ディープインパクトは素晴らしき大山脈軍から目を落として自分の胸元に目を落とした。

程よく実った瑞々しい果実が二つ、美少女とはいえまだまだ発展途上、それだけである。目の前の世界級には程遠い!!

 

「くッ…いいもんね、私には未来がある!!」

 

「あんた、それ僕達にゃ未来はないと申すか」

 

「事実だぞ、こんなもん歳とりゃ垂れるだけだろ。俺は今から未来が怖いぜ?」

 

例えそうだとしてもやはり目の前の規格外クラスの大行進と比べてしまえば所詮まだまだ未熟の果実。

勝てない、いくら中央で無敗を誇ろうとも目の前のあの超大型巨●人の群れにはかなわない。

自分のような木っ端なんてあっという間に踏みつぶされて、ぺちゃんこにされてしまうだろう。

なんという大人の余裕、目の前で朗らかに笑う彼女は何も答えていないのだ。

 

「俺はそれくらいでいいと思うがね」

 

完敗である、その素晴らしき大山脈に乾杯、デカくて速くて柔らかい奇跡に幸あれ。

ディープインパクトはひざを折った、目の前の戦力にどう立ち向かおうとも無意味だということを悟ったのだ

 

「本当にそうでしょうか?ウマ娘って―――」

 

「ノルン、あんたが言うと怖いからやめて」

 

「そう?」

 

「あんたんとこ基準は時間軸ぶっ壊れでしょーが。お祖母ちゃん基準はダメ絶対」

 

「えー?」

 

「横見ろ横」

 

「あー」

 

「おい、どうして俺を見て納得するんだ?怒らないから言ってみな?」

 

おい、なんか聞き捨てならないことをほざいてるぞこいつら。時間軸が狂ってるってナニ?いったい誰の事を話しているのだ?

いかん、いけない、変な空間に飲まれかけている、ここは一度仕切り直さねば!!

 

「と、ところでみんな、今日ってこれどう言う状況?」

 

「あん?なんだお前、葦名武術祭の事知らんで来たのか?てっきりグラスから聞いてるもんだと思ってたが」

 

「いやいやまったく」

 

それか!!グラス先輩がここをお勧めした理由は!!

 

「あいつ、武道場直行したって聞いてるからてっきりお前も下見の類かと」

 

「来てるのすら知りません」

 

「なんだ、じゃただの偶然か。この祭りはなぶっ!?」

 

葦名武術祭について語りだしそうになったシマカゼタービンの口をツバキプリンセスがふさぐ。

その身のこなしにディープインパクトは驚きを隠せなかった。その動きに全く気付けず、それを目で追うことすらできなかったのだ。

ツバキプリンセスがすぐ横に寄ってきていたことも、シマカゼタービンに手を伸ばしていたことも、まったく気付いていなかったのだ。

そしてシマカゼタービンも、ツバキプリンセスの行動に反応できていなかった。

 

「ももがが…お前なにすんねん」

 

「長くなるから後にしなさいな、どうせ城に行けば分かるわよ」

 

これが彼女の本来の姿ということか、ディープインパクトは背筋にゾクゾクとする感覚が走るのを覚えた。

かつて並走した時に見せていた彼女の姿とは打って変わった猛者の背中が見えた、それこそシマカゼタービンの横に立っておかしくないその凄みを。

思えば一挙一動、すべてがあの時とは違う所作の鋭さを感じる。それこそ全員からそんな雰囲気が出ていたのだ。

 

「おっと、気付いちゃったかな?さすがダービーウマ娘」

 

「中央の精鋭というのは伊達ではありませんね、大変宜しい」

 

あぁ畜生、やっぱりこいつらもか。気が付かないうちに背後に回られ、両肩にそれぞれ手を置かれてディープインパクトはノルンファングとホクリクダイオーに挟まれていたことに気づく。

全く気付けなかった、彼女たちが並んできたことに話しかけられてようやく感じて気づいたのだ。

この二人もだ、今まさに直感が警鐘を鳴らしている。レースで培った直感が、こいつらと素でやり合うな、初見でやり合うなと、下手すれば負けるとそう告げている。

 

「…速いんだ?」

 

ノルンファングは答えない。ホクリクダイオーは意味深に微笑むだけ。

それが答えである、やはり群馬を訪れて正解だったのだ。こんなにも素晴らしい出会いを、中央だけで走っていたら逃していたのだ。

そしてそれはそれとして背中に感じるたわわが大変すばらしい、田舎娘特有の無防備な距離感最高!

 

「ディープ、別に気にしなくていいわよ。物騒な連中が街で楽しくやってるだけっておもっときゃいいわ。

こんな暑い日にフル装備、日本の夏をちょうどいい訓練材料としか思ってない。暑苦しいけどそこは我慢して頂戴」

 

「毎年コレなの?」

 

「そうよ。正確には夏と冬、年二回の武術の祭典、その道じゃ有名な話だけどレースには関係ないから知らなくて当然よ」

 

「へー…武術なの?」

 

「そうね」

 

「武術なの?」

 

ディープインパクトは目の前で起きているそれを二度見して指を差す、そこは城下町に入ってすぐでなぜか土嚢で区画分けされた駐車場。

その中で観光バスや車を盾に2組の勢力が銃撃戦をしているのが見えた。

銃撃戦である、まごうことなき銃撃戦である、片方はドンドンパンパンやかましく、空薬莢が飛んで金属の落ちるいい音が鳴り響く。

反面、相手のチームの銃はモーター音と静かな発射音、時折ガシャコンガシャコンと派手な金属音が鳴る。

 

「なんか撃ってないアレ!?」

 

「ありゃ訓練弾だよ、実弾バリに迫力はあるが出るのはただのペイント弾、当たると痛いが死にはしない。

でも近づくなよ、あそこはバトルフィールド指定されてる区域だ。外から見てる分には流れ弾は当たらんよ」

 

「我がアラサカ社が誇る傑作訓練弾、実銃エアソフト両対応、実物志向からBB弾まで全網羅。

アレルギー対策万全で食べても安心、染みが心配?ご安心を、ペイントは普通に水で落ちる水溶性、洗濯機で一発洗浄可能!

色も各種ご用意、お予算次第では特別な色もご用意可能!リアルな映画が撮りたい?なら血糊入りをご用意しましょう。

世界中から大人気のベストセラーでございます!なんと葦名なら特別価格、お安く販売しております!!」

 

「はい、宣伝ご苦労ダイオー」

 

どこから出したんだその背景とテロップは、そのいつのまにか出てきた無駄に厳つくて無駄にサイバーパンクな黒服と警備員はいったい誰だ?

ついでに言えばその唐突な登場に誰も驚いていないしまったく気にしていない、むしろいつもの事とでもいうようにお疲れさまと声をかけている人までいる。

これが葦名か、ディープインパクトはどこか間違っているような気がしたが納得することにした。

 

「もう野良試合おっぱじめてんの?相変わらずね、どことどこよ?」

 

「ソ連軍空挺部隊とメイド服、常連ですね。ブーゲンビリアとフライハイトです」

 

「共産趣味とサバゲガチ勢?うちらしいや」

 

いいぞやれやれ!!メイドさんがんばれ!!ウラー!!などと周囲から声援が飛び、バトルフィールド内の熱気が上がる。

しかしそのどちらの参加者も顔に見せているのは笑み、楽しそうな満面の笑みだ。

その笑みはうちも外も変わらない、誰もが純粋に楽しんでいる。

 

「Приходить Сахаров! Погружайтесь в!!」

 

「Да!」

 

ついにひとりまで追い詰められたギャルっぽいメイドが隠れる車の影に、ソ連軍は二人でカバーし合いながら距離を詰める。

隠れている場所に辺りをつけて牽制射撃を加えながら足早に距離を詰め、腰のポーチから取り出した手榴弾の安全ピンを抜いた。

 

「手榴弾!?」

 

「スプリング式散弾手榴弾のF1型か。性能はまちまちだがガス式よりずっと安い、使い捨てにはもってこいだ」

 

ソ連兵はすぐさま投げ込む、ふわりと遮蔽を飛び越えて奥に消えていく手榴弾。それを奥から伸びた手が力強く握りしめて受け取った。

 

「「へ?」」

 

「は?」

 

「わぉ♪」

 

唐突なキャッチにソ連兵二人は気を取られ、一瞬反応が遅れる。その隙を逃さなかったメイドが、上半身を晒し、振りかぶって手榴弾を足元に返投した。

その反撃にソ連兵の二人は反応できず、メイドは即座に車の陰に身を隠す。

 

「「あばぁ!?」」

 

「はーい!勝負あり、勝者チームフライハイト!」

 

返答された手榴弾が足元で起爆して中からペイント弾がばら撒かれてソ連兵をピンク色に染め上げる、その瞬間に審判役らしい駐車場の持ち主の八百屋のおばちゃんが声を上げて区切った。

最後まで残って起死回生を図ったギャルメイドが歓声を上げて腕を振り、撃たれてペイント塗れになっていた参加者は退避エリアの観光バス内からぞろぞろ出てきて健闘をたたえ合っていた。

 

「はい、勝利コインね」

 

「おぉ!!いかにもな金コイン!」

 

最後まで残っていたメイドに八百屋のおばちゃんが金色のコインを渡す。

 

「あれ何?あと野良試合って?」

 

「この祭り期間、メインイベント以外にもいろいろあってな。その一つがこの公開野良試合、こうして所々にバトルフィールドが設営されててな。

そこで腕試ししたい連中が試合すんのさ、一般参加型の興行みたいなもんだな。

こんな風に期間限定でマッチアプリもあって、登録しておけばどこでだれが野良試合してるのか、どこで何が予定されてるのかが分かる。

示し合わせて事前の予約やダイレクトメールで挑戦状送り付けたりもできるぞ」

 

シマカゼタービンは自分のスマホを取り出すとアプリを起動してその画面を見せる。

葦名城全体のマップと各所に設置された大小さまざまなバトルフィールドが見やすく振り分けられており、どこが空いていてどこが混雑しているのかもわかるようになっていた。

 

「ちなみに空も野良試合のフィールドだ、今はアメリカ空軍と群馬トレセンがやり合ってるな」

 

シマカゼタービンがアプリをスワイプして葦名城上空のフィールドを選択する。

画面に映し出された使用者名の欄にはアメリカ合衆国空軍・ウォーウルフ隊VS群馬地方ウマ娘トレーニングセンター学園空中演武飛行隊・イザベル隊、ハラン隊と表示されていた。

2対2のマッチングで、今まさに葦名城の空をFー22A戦闘機と人型兵器が縦横無尽に駆け巡りミサイルと機銃が交差し、ビーム砲が唸るドッグファイトの真っ最中である。

 

「群馬の方はイネスとレーネ、俺の後輩だ。腕は鈍ってないようだな」

 

「試合なのアレ?映画の撮影じゃなくて?うわすっごいビーム…」

 

「れっきとした試合だよ、まぁ安全は配慮されてるから安心しな。ビームなんてかっこよく光ってるだけだぞ」

 

「こちらの訓練機材も我がアラサカ社が格安提供しております!!ミサイル爆弾機銃弾、全部安心安全ペイント弾、弾頭諸々も自然分解プラスチックで自然界にも配慮済み。

もちろん流れ弾対策の自爆装置完備、使用機体から一定距離離れるなど一定のシークエンスをもって自爆、95%消滅するクリーン仕様の生物!!

軍事転用?無理無理!パッケージ開封したら分解始まっちゃうから耐久性落ちるし、そもそも壊れるようにできてるんだなこれが!」

 

「はい、宣伝ご苦労」

 

だからどこから出てくるんだそのテロップ、というかそれ持ってくる妙にごつい黒服たちはどこから来るんだ。

やっぱり少しおかしくないか?なんで誰も変に思わないんだ?まともなのは私だけか?

 

「100%じゃないの?」

 

「だって塵とペイント液は散るし、消すんじゃなくて無害なくらいに砕くタイプの消滅だから。

ま、変に99%とか言うとめんどくさいしね。世の中理屈っての解ってない人も多いから」

 

「こんなにやり合ってんのに今更少し埃被ったくらいで文句言う奴は来る場所間違えてんだよ」

 

「いるわよね、そういうタイプ。迷惑ったらないわ」

 

「綺麗な自分に浸りたければ自分の家で姿見でも眺めてりゃいいんでござるよ」

 

ホクリクダイオーの言葉に何か思うところがあったのか、通りすがりの金髪チャラ男、ゴリマッチョ漢女、ござる侍が頷く。

うんうんと頷いて去っていく3人、自然と入ってくるなここ。

 

「ちなみに参加費はもらうが、現地調達できる弾薬や燃料類は半額で提供してる。公開試合してもらってるからな、芦名市が半分負担してんのさ。

あとこんだけ集まるから衣類や装備品も掻き込み時、アピールにぴったりなもんで世界中からメーカー大集合。

メジャーからニッチなところまで何でもありだ。セール価格で大体2割か3割はお得だし、新作どころか試作品も先行販売してる」

 

「だからって戦闘機まで飛ばす?」

 

「お前焼肉屋で普段の半額で上カルビ食えるキャンペーンやってたらどう感じるよ?」

 

「当然大喜びです」

 

「そういうこったよ」

 

そういうもんなのか。どこの組織もお金のことになると大体厳しくなるんだね。

 

「さっきのコインは勝利コイン。こいつは集めた数に応じて景品と交換できるんだ、案内所で交換してもらえるよ」

 

「景品システムなんだ」

 

「ま、一番人気はクリーニングとコインランドリーの無料クーポンか銭湯の無料回数券だけどな。どっちも一枚で3回分と交換できる」

 

「着替えは自分で用意しなきゃならないのが射撃戦の一番のネックだったりしますからね。

戦うならちゃんと勝敗が分かる格好じゃないと試合になりません、あのまんまでやろうとしたらフィールド管理者に突っぱねられます。

それに動き回りますからね、冬でも大汗かきます。夏なんかそれ以上に絞られる勢いで、毎回熱中症とのチキンレースやってますよ」

 

「ガチな連中はわざわざ洗濯専門要員連れてきてるくらいよ?クリーニング屋とコインランドリーはそれなりにあるんだけど足りないの」

 

「そこらへん加味すると連戦なら近接戦が有利なんだが、そこは相性もあるからな」

 

「撃ち合いだけじゃないの?」

 

「そらそうだ。ほれ、次が来たぞ」

 

シマカゼタービンが指さす先、バトルフィールド内に再び人影が入ってくる。今度は二人、一対一らしい。

一人は無骨な両手剣を携えて艶消しされた銀色の西洋鎧を着こんだ壮年の騎士、もう一人はホルスターを体の前後に下げてカウボーイスタイルでキメた西部のガンマン、どちらも西洋系の外国人だ。

 

「いざ!!」

 

「カモォンッ!!」

 

騎士が一歩踏み込む、瞬間目にもとまらぬ速さでガンマンが腰のホルスターからリボルバーを抜いて腰だめのまま2連射。

放たれたペイント弾を騎士は剣をすばやく振って切り払い、さらに踏み込んで距離を詰めていく。

 

「切った!?」

 

「さすがね、射線を見切って撃つ前に準備終えてるわ」

 

「ディープにわかるように説明するとね。撃つ前に相手の射線を予測してて、そこに剣を置いておいて撃ったら微調整しての切り払いしてんの。慣れてるよ?あの騎士さん」

 

「しかしモレノも悪くありませんね、全く動じていない。切り払ってくるのは予想していたのでしょう。

しかしあの連射、使っているのはおそらくスーパーブラックホーク、反動の強いマグナムであの手捌きはなかなかですよ」

 

撃ち込まれるペイント弾を両手剣で弾きながら突貫し、対するガンマンも面白そうに獰猛な笑みを浮かべてさらに2連射しながら一歩引く。

しかしそれよりも早く、騎士はさらに踏み込み距離を詰めて一気に刃の届く距離まで踏み込んでいく。さらに射撃、それも騎士を止めるには至らない。

振り下ろされる剣、それをすんでのところでよけつつ即座にリボルバーを眼前に突き付けようとしてその手を肘ではじき返され、最後の弾も明後日に消える。

そして振り下ろした剣を振り上げて攻撃につなげた騎士、その刃に蹴りを入れて弾いて即座にバックステップして距離を取る。

それを騎士は追わない、仕切り直しとでもいうようにその場で構えを正す。その隙にガンマンも弾切れのリボルバーを持ち替えて構える。

一対一の決闘、先ほどの一戦とは違う緊張感に馬は大盛り上がりでディープインパクトも次に二人がどう動くのかとてもワクワクしていた。

 

「すっごいねぇ…」

 

「だろ、こういう野良試合鑑賞も祭りの醍醐味だ。そろそろ次に行こうぜ、目立ってるみたいだし」

 

シマカゼタービンが周囲を見てこっそりという。その様子にディープインパクトは一瞬意味が分からなかったがすぐに思い至った。

今の自分は何を隠そうダービーウマ娘、否が応でも有名人、昔のように気楽で身軽な身分ではなくなってしまった。

今だからこそ先達たちのあれやこれやな苦労が身に染みるほどに理解できる、そんなスケジュールの合間を縫ってここにいるのだ。

 

「ねぇ、あれディープインパクトじゃない?」

 

「レースの連中が葦名に来るのか、時代は変わったな」

 

「葦名といえばオニカゲとコカゲじゃ、歴史を知るのは良い事じゃろうて」

 

「お爺様古いわね、今は次代剣聖様よ?ほら隣にいるじゃない、勢ぞろいよ」

 

「次代様、相変わらずお美しい」

 

「ありがたや、ありがたや…」

 

目立ってんのはお前らもじゃねーか。

 

 

 

 

 






あとがき
というわけで夏の閑話、がっつりやるとストーリー進まないんでこんな感じ。
観光に始まり色々わちゃわちゃとやりたいなと思うところ、Dもやりたいしな!
ちなみにディープちゃんも設定上は一応豊かな部類、良いモノお持ちだぞ。ただ周りがちょっと大きかっただけだ!





おまけ・UMA娘版葦名城の変遷(簡易)


戦国時代・葦名滅亡
戦国時代末期、内府軍との戦争とある忍びの暗躍により葦名の国は滅亡したものの堅牢なつくりであった葦名城そのものは残った。
その後しばらく放置されていたが、戦闘が終結し復興が始まった際、残った葦名城は地元民に親しまれ心のよりどころとなる。
それを葦名衆の生き残りとなり復興を指揮していた御庭刑部政孝の娘・オニカゲが復興拠点として整備し、のちの行政機関の詰め所となり機能を取り戻した。
とある元忍びの仏師が金策のために己が身に着けた武術などを教える場所にも選んでいたことで、時代の流れで居場所を失った武芸の流派が流れ着く武芸の聖地としての下地ができ始める。
のちの時代、長い徳川政権下の安寧で居場所を失った元内府軍戦忍びなどの武芸者達ものちに葦名で道場を開くなどしている。


明治維新
葦名は新政府側に立ちつつも戦争には参加せずに、新政府と幕府両面からの避難民や負傷兵の受け入れと治療を粛々と行いつつ安穏と過ごす。
葦名城は城の形を残しつつもただの一地方行政機関にすぎず、戦力も治安維持用の小戦力しかない上に立地も最悪であったためである。
また新政府側に立った時の行政と治安維持用の少数部隊は脅威でなくとも、住人たちの潜在的脅威度が高く、下手に攻め入ると痛い目を見るのは確実と幕府から見られていた。
その上に戦略的価値もまるでなく、立地も地形も最悪であり、葦名をとってもどちらも得なんてほとんどないという状況であった。
そのため、葦名を戦場にするとめんどくさいことになる未来しか見えず、意味もないから実のところ無視していた。
新政府側は葦名の表明を受け入れつつも戦力の派遣など一切の口出しをしなかったのも同上である。
やってくれることするだけでいいと最初から捨てており、もし危機に陥っても救援などは送らず見捨てるつもりであった。


明治時代・廃城令
城の形をしていたが書類上はすでに廃城だったので、幕府末期の書類にすらすでに記載すらなかった。
明治政府内でも存在そのものは知られていたが政府内の書類上でも葦名城そのものの分類は城ではなく、行政機関あるいは歴史遺産的な扱いであった。
そのためなんか残っているとは思われつつも放置され、新政府も忙しかったためいろいろやり過ごす。
その間も葦名城そのものは老朽化や改修が必要となり、国内各所で仕事を失った城の建築士や整備経験者の受け皿となり技術の喪失を防いだ。
その技術継承が、のちの戦後の時代に各所での起きた観光地としての城の再建や歴史研究にいきることになる。
また明治維新で居場所を失った武家、士族が己の武芸を生かせる場所として葦名を活動拠点に選んだこと、受け皿として政府もそれを容認したことから、武芸の都としても本格的に発展し始める。
その武芸の都の話は海外にもわずかに伝播しており、一縷の望みをかけた海外武術の拾得者とその家族がたどり着き、技術の継承と一族再興を成し遂げている。


第2次世界大戦・空襲
アメリカ軍による本土空襲の際、歴史的建造物であるが辺鄙なところにある事と軍事的に深い意味(武芸の都)だったため標的になる。
1945年2月から5月にかけ、Bー29を主体とした戦略爆撃を3度受け、その後は終戦まで散発的な攻撃を受ける。
葦名城を中心とした各所の対空砲陣地群『鉄砲砦』による対空砲火を主力にしてそのほとんどを撃墜、被害は軽微であった。
また空中鹵獲による米軍兵器の戦力化にも成功しており、戦闘機乗りだった忍び衆が鹵獲に成功した後Bー29を母機とした忍び衆による空中鹵獲部隊も編成された。
末期戦ながら圧倒的戦果を挙げ当初は日本軍内で戦果の過大報告として問題視されたが、証拠を見せつけるとなぜか無言の黙認状態になる。
その後、葦名防衛部隊の鹵獲Bー29によるマリアナ・サイパン夜間空襲、基地潜入物資鹵獲または破壊工作作戦などの反撃に文句をつけるなどどっちが味方なのかわからない状態に。
当時の米兵からは攻撃命令=死刑宣告と言われるほどに恐れられており、攻撃を迷ったために日本側の迎撃を受けて大損害を受けるケースが多発した。
なおこの戦いで多くの米軍捕虜が葦名周辺で確保されたがその取り扱いは穏当であり、武芸の都としての性質から戦争で勇敢に戦った戦士を冷遇することはなかった。


一度目・主力爆撃機B-29×30、護衛戦闘機P―51D×20。全機未帰還。
二度目・主力爆撃機B―29×50、護衛戦闘機P―51D×30。帰還機・B-29×5、P―51D×2、なおのちに廃棄処分。
三度目・主力爆撃機B―29×200(カーチス・ルメイ少将搭乗機あり)、護衛戦闘機Pー51D×50・F4U×10・F6F×30。帰還機・F6F×10。カーチス・ルメイ少将は捕虜となり葦名城で軟禁、指揮官先頭を実践した勇気ある将として厚遇される。


なお鉄砲砦そのものは従来の対空砲を改造して射程を伸ばしただけの改造品と綿密な連絡網による連携、それに熟練したベテランによる超遠距離狙撃の職人技であった。
捕虜となり葦名で終戦を迎えたカーチス・ルメイ少将はのちに『葦名の鉄砲砦は想定以上であった、調子に乗って突っ込んだ我々は無謀すぎた』と述懐している。


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