気儘に生きた転生馬物語   作:イナダ大根

109 / 113


いつも多くの感想と誤字報告ありがとうございます。
今回はやらかした結果の世界の反応の一部とちょっとした騒動開幕。
トレセンでやらかしたマスゴミのペースを一般相手に開放したらただのキチガイなんよ。






第四十四話

 

 

 

≪もっともっと強くなります、みなさん期待していてください!!≫

 

「あらあら、今年のジャパンは随分と威勢がいいようですね」

 

イギリス某所、荘厳にして瀟洒な屋敷の居間。レース観戦用にしつらえた高画質液晶テレビに大写しにされたとある記者会見を見つめるウマ娘はくすくす笑う。

誰も見ていないにもかかわらず身に沁みついたとても気品のある仕草でティーカップを口に持っていき、深呼吸で乾いた口の中を紅茶で口を湿らせた。

外面ではわからないにしても彼女は内心では動揺を隠せなかった。敬愛し尊敬する彼女の存在が世間に知れ渡ったのは良い、あれは彼女の判断であり決断である。

しかしこの期に及んで考えもしなかった方向から熱烈なアピールと宣戦布告、ここまで一気にやられるとさすがの英国淑女も穏やかではいられない。

 

「我が恩人にして娘のmasterに挑む、なるほどこれはこれは面白い」

 

思い出すのはまだ挫折から立ち直れず燻ぶっていた心を誤魔化して生きてきた日々の記憶、偶然にも出会った彼女との思い出だった。

無理を承知で小遣いを使い切って彼女を雇い入れ、彼女に背負われて回ったほんの2週間の冒険だった。

憧れた世界にもう一度戻れた嬉しさ、娘と同じ世界を並んで走れた温かさ、そして自分の中で燻ぶっていたナニカが再び燃えて、その明かりで見えた新たな未来。

あの彼女がやったことは我々がやるはずだと思っていた、もっと入念な準備を終えたうえで我々が一番に挑みかかるはずだった。

だが違った、横から現れた彼女がすべてを抜き去って彼女に対する宣戦布告の一番乗りをやってのけたのだ。

 

「まだクラシックを終えたばかりの若輩でそれを口にするとはよほどの自信があるのか、それともただの自信過剰か。

どちらにしても良い目をしています、先が楽しみというのは間違いない。しかしこれでは娘達の計画は台無しですね…シリアス?」

 

「はい、ウォースパイト様」

 

側に仕える見目麗しいウマ娘のメイドは恭しく答える。白銀の髪を短く揃え、豊満な胸部を惜しげもなく強調するメイド服。

その左腰にはその姿に似つかわしくない鞘に収まった西洋剣があり、この室内に似つかわしくない僅かな金属音を鳴らした。

 

「ウェールズはどのように?」

 

「予定は変わりません、わが一族の総力をもってマスターを迎撃する、と」

 

「あの子ったら…きっとみんなを振り回してるのでしょうね。大尉に連絡を、予定に変更あらず、と。

それからネルソンにも声をかけてあげて頂戴?レースならば海軍も融通を利かせるでしょう」

 

「よろしいのですか?」

 

「問題ないでしょう。どのみちコレは起きるべくして起きるモノ、マスターシマカゼがどう考えていようともね。

URAファイナルズ、公式ではないただの派手なお祭りならば確かに彼女の理想の場といえるでしょう。

すでに気の早い連中は行動に出ているわね、どうかしら?」

 

「はい…あの、皆様、戦争でも起こす気でしょうか?軍も動かしているようですが…」

 

「あら?それ面白いじゃない。余興でペイント弾でも撃ち合ってみようかしら?葦名祭りみたいに」

 

「やめてください作品が違います」

 

「あら、英国人は恋と戦争では手段を選ばないモノなのよ?」

 

くすくすと微笑む。当然そんなつもりは全くない、この時代において戦争をする理由はどこにもないのだ。

もし必要があるとすればそれこそ、同じ地球に住まう同胞ではない宇宙人の侵略くらいではなかろうか。

人類皆兄妹、とまではいかないが、ただの喧嘩で済むならそれに越したことはないのだ。

 

「マスコミの方に根回しは?」

 

「すでに。ですがあくまで当家の力の及ぶ範囲に限られます、何分日本の事ですので」

 

このイギリスにおいても日本ウマ娘レースの大珍事はすでに広まっている。とはいえ、まだ真偽が定かではない段階だったが。

映像も出回っており真実を知る者はもはや顔面蒼白だ、彼女を知る人間というのは存外多いのである。

そもそも日本の競争ウマ娘界隈は、イギリスに限らず欧州方面全般の上層部は上に行けば行くほどに羨ましがっているのが現状だ。

歴史を傘に着て何かと見下したり軽視する連中は何も理解していないか、理解を拒んでしがみついているだけである。

現実的な話、ウマ娘レース界隈は欧州方面の経済においてはやや斜陽、今はまだ良いのだが徐々に人気に陰りが出ている。

これはそもそも娯楽という面においてこの現代では多種多様な選択肢があるためだ。かつては国を挙げた興行であり最大の娯楽であったが、今は数ある娯楽の一つにすぎず、そちらに客層を奪われ始めているのだ。

今はまだ人気ナンバーワンという地位は揺らがないが将来的にどうなるかはわからない。

何か手を打つ必要はあるが、イギリスに限らず欧州のレース界は保守的な派閥が新しいナニカに踏み込むことを拒む。

連中にとっては人気と歴史のある既存のレースを運営していれば黙っていても金が入ってくる美味しい状況である上に、その状況を『高貴な自分達』に相応しい態度だと思っている客層がいるのだ。

元々、イギリスのウマ娘レースは『貴族相手の興行』という歴史で始まったものだ、高貴な存在という一面は今もなお残っていて一般層への浸透率は実のところ日本より悪い。

レースというファン相手の客商売、新規顧客が見込めない業界なんてどこも先細りするというのが見えていないのだ。

日本のようにフットワークが軽く、様々な施策や新しいイベントを開催して新鮮な息吹を吹き込むという土壌が整っていない。

古い時代のあれやこれが悪い方向に凝り固まり、それを取り巻く制度や利害などでがんじがらめになっている。

そしてそれはレースをするウマ娘達の中にも言えることであり、ここ最近は日本のレースを経験したウマ娘が妙に入れ込む例が多々あると報告がある。

理由は解りやすい、あそこはちゃんとリスペクトしてくれるからだ。

日本のレースファンは外国人であっても認めてくれる。多少の色眼鏡は有れど平等であり、勝利をちゃんと認めて祝ってくれるからだ。

ウィニングライブの会場でそれこそ何万人もの大歓声を経験したウマ娘ほど、祖国と欧州レースのギャップに苦しむのだと。

 

「雀の涙ね、起きることは避けられない。ならあとは起きた後に収めましょう」

 

これがただのバカ騒ぎで収まるのならばいいだろうし、事態を知れば渦中の彼女もそれを望むに違いない。

しかしそうはならないだろうという予感はあった、なぜなら彼女が引き起こしたことはすでに世界的にも大珍事である。

そしてその彼女との決戦の場を求めて伝説たちが、そして未来の英雄たちがすでに日本へ向けて歩を進めている状態だ。

かくいう自分も娘もすでに日本へ向かう準備を整え、レースに飛び込もうと画策しており、それには自分も賛成なのだ。

 

「それで?我らが閣下のお言葉は?」

 

「変わらず、オーダーはただ一つ」

 

「「見敵必殺」」

 

大英帝国の夜は長い。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「全く、いったい何だってんだ?」

 

バカみたいに足音を立てて目の前を通り過ぎていく記者共がいなくなったのを見計らって、俺は入っていた青いゴミ箱の中から静かに忍び出た。

いつもは静かな芦名市街地の裏路地なんだが今日はとてつもなく空気がやかましい。理由は簡単、表に裏に恥も外聞も投げ捨てて俺を追いかけてくる記者やテレビクルー共のせいだ。

今日は今朝から何もかもが狂ってやがる、朝起きたらなぜか家にも会社にもマスゴミが大挙して押し寄せてきていて出る事も入ることもままならない状態だってんだからな。

何のことかさっぱりなもんで親父と兄貴が怒鳴り込めば俺を出せの一点張り、なんで俺なのかさっぱりなもんで話を聞けば取材させてほしいと乗り込もうとしてきやがる。

お陰で朝の配達すらできやしない、朝っぱらから営業妨害も甚だしい。おかげで先方に謝りまくりの電話からスタートだよ。

向こうも理解してくれたからとりあえず何とかなったけど、問題はそれでも向こうはまるでお構いなしだっていうところだ。

今日は学校だからそんなもんできるかって話だがそんなことどうでもいいと阿保みたいなことを言い出す。

話になんないし会社も回んねぇし学校にも行けねぇから、親父と兄貴引っ込めて伝手と警察に連絡させる時間を作るために顔を出せばカメラとシャッターと聞くに堪えない取材攻勢。

眩しいっちゅうにフラッシュ焚きまくるし、聖徳太子じゃねぇってのに一斉に喋りやがる。

どこの馬鹿どもも行動原理は一緒と来てるからおかしい話だ。こいつら朝早くにもう会社に損害賠償請求される身になってんのに解ってないんだわ。

馬鹿どもが口に出すのは決まって一種類『三冠ウマ娘のディープインパクトさんからの挑戦に対する返答は?』だ。

いったいなんのこっちゃ?挑戦?全く以って意味わからん、知らんと答えても聞きやしない。

仕事の邪魔だといっても聞く耳持たず、通学の邪魔だといってもあーだこーだ言い訳ばかり、騒音被害だ警察呼ぶぞといえばマスコミだからうんぬんかんぬん煙に巻こうと馬鹿みたいに囀る。

どうしようもねぇ、話にならねぇ、そうなりゃ実力行使しかねぇわな。狙いは俺なんだから、俺が逃げればこっちに来ると思ったら大当たり。

家の事は親父達に任せて囮になったのよ。今頃会社経由で警察に連絡、あと顧問弁護士と裁判を起こす準備が始まってるだろうね。全部まるッと法的にも物理的にも決着つけてやるわ、やる気になったらとことんやるから逃がさねぇぞ。

費用云々は考えなくていい、ここでしっかり潰すための必要経費だから安心して裁きを受けてくれたまえ。

誤算だったのは、マスゴミ共の人数が思ったより多くて市街地まで来たけど今なお振り切れてねぇってところか。

 

「!」

 

気配を殺して市街地の路地裏を進んでいくと前方で気配、咄嗟に地面に伏せて室外機の残骸の陰に隠れる。

その目の前をさっきとは別のテレビクルーとリポーターが実況しながら前を通り過ぎた。

これなんだよ、行く先々に別の連中がうろちょろしてやがる。しかも全くの別口ですべて統制が取れてないから先読みも何もできやしない。

ここまで統制取れてないと、これまでの経験が全く役に立たなくて本当にこっちも行き当たりばったりしかないからきつい。

ド素人の集団だから逆にどこ見てるんだかわかんねぇ、全く以ってやり辛い。

 

「ったく、今日俺スニーキングスーツじゃねぇんだけど?」

 

学校に行くつもりだったから制服なんだがもう泥だらけ埃だらけだ、これで授業なんか受けられっこない。

制服ってのは汚れて上等な面はあるけど限度があるんだよ限度が。なんでこの街でいきなりこんなことせにゃならんのだ、俺はただの走り屋なんだっての。

しかしこれからどうする?こいつら放っておいてもなんかもう周りでやらかしてるっぽいんだよな、そのまんまはまずいだろ?

 

「?」

 

考えながら移動していたら着信音のバイブレーション、すぐにスマホを取り出して出る。

 

≪タービン、良かった通じた。大丈夫?≫

 

「小町か、すまんが今は取り込み中だ。あとにしてくれ」

 

≪知ってる。その取り込み中の件についてだよ、こっちも大変なことになっててさ≫

 

「まさかお前ん家にまで突撃かましたとか言わねぇよな?」

 

≪いや高校、完全包囲だよ。まだ踏み込んできてないけど登校中の生徒に無差別取材しまくってる。

みんなあんた目当て、もうめちゃくちゃだよ。学校の中に入ったはいいけど今度は出られなくなっちゃった。

授業も全部自習で完全ストップ、逃げられたのは遅刻常習犯くらいかな。今校長が対策練ってるよ≫

 

「馬鹿どもが…」

 

小町が言うには芦名高校の周囲にもすでにマスコミ共が屯していて、周りを取り囲んで俺を待ち構えているつもりらしい。

校長たちが今も対応しているけど、小町曰く妙にふてぶてしいマスゴミがあーだこーだと会話にならない返答しまくって言葉を反らして全く耳を貸さないそうだ。

つまりまさにステレオタイプなマスゴミなんだと、個人情報バラしても顔色変えないタイプの面の皮が厚いタイプか、呆れたもんだ。

こっちにも突撃かましてきたことを言うと小町は呆れたようにため息をついた。うちは会社でもあるから、余計に容赦ないぜ。

 

「いったい何が起きてるんだ?俺目当てらしいが、俺自身全く身に覚えがないんだが?」

 

走り屋云々なんざ今更だ、変に騒ぐことでもないと思うんだがね。

 

≪あんたこの前の菊花賞見てないの?≫

 

「見てないな」

 

興味ないしな、そういうもんは。

 

≪あんたってやつは…いやもう今更か、あんたはそうだもんね≫

 

「家のバイトしてたんだ、何かあったのか?」

 

公式戦で何かあった所で俺に飛び火してくるようなことはないと思うんだが…馬鹿どもは三冠ウマ娘って言った、つまり勝ったんだよな?

 

≪どうしてこう…ディープインパクトは勝った、けどその後の記者会見がね≫

 

「なんだ?何やらかした?」

 

≪あんたに宣戦布告してクソ雑魚三冠を自認した≫

 

「…?」

 

ナニ?え、なに?クラシックの最後の最後、三冠とってお祭り騒ぎ、めでたいめでたいの中で?俺に宣戦布告?

え?なに?まって、いみわかんない?ちょっとまって、どうしてそーなんの?え?どうして俺が出てくんの?

 

「???」

 

≪…ネットで読め、いったん切る≫

 

一方的に通話が切れる、小町の言う通りに俺はスマホでネット検索して菊花賞の記事を探す…必要なかったわ、トピックにでかでかとあるわ。

なになに…ふむふむ…なるほど完全に理解したので、とりあえず小町に電話を掛け直す。

 

≪理解した?≫

 

「バカじゃねぇの?」

 

≪レースの連中は住む世界が違うってこと、そんであの子はあんたのこと同列に見てんの≫

 

「バカじゃねぇの??」

 

≪まだまだ中学生真っ盛りなんだからそりゃ理解しろなんて無理な話だとは思う、けどあの子はそういう立場になっちゃったからねぇ…≫

 

「バッッッカじゃねぇのッッッッ?」

 

≪そうね、バカになってんのよ≫

 

馬鹿じゃないのか?なぁ馬鹿じゃないか?ディープ、お前何やってくれてんの?お前前世じゃお行儀良かったよね?

なんでお前こんなジャジャウマ娘ムーヴかましてんだお前、いきなりぶちあげてなんでわざわざ爆弾起爆してんだお前!

穿った記者も記者だがそれに乗っかって好き勝手に爆弾かましたお前が一番問題じゃい!!

今までみんなだんまりだったのはねぇ、利権もそうだけどこういうバカ騒ぎ起こさないためでもあったのですよ。

ついでにそういうのに乗っかってた方が俺も家も会社も全部都合がいいから乗っかってたの、何もなかったでいいんだよ!!

それに乗っかる連中も連中だよ、相手何歳だと思ってやがんだ?あのがきんちょのぶっちゃけに何の意味があるというんじゃ!

 

「んじゃあれか、あいつらマジでウマ娘界隈の連中ばっかなのな…道理でなんか浮世離れしてると思った」

 

≪ウマ娘レース相手のノリでこっち来てるわよ、周りも同調しちゃってる。おっと…≫

 

「今度はなんだ?」

 

≪今まさに守衛さんに嬉々として挑もうとしてる、ただの警備員がなんぼのもんだとか≫

 

マジか?うちの学校の警備員、アラサカ系列なんだけど?そもそも武闘派が多い生徒に対抗するためにみんな強いんだけど?

 

「やらかしたか…警察相手にもうやってるからまさかとは思ったが」

 

ふと屋根伝いに移動していた時に見た光景を思い出した。大通りを封鎖して制止してたっぽい群馬県警の車列の後ろでお巡りさんたちが両手両足縛られて倒されてるの。

見張りとかそういうのはなかったから解放して助けたよ、けどあれはやりすぎだろ?

お巡りさんも大変よね、一回はやられてあげなきゃならんのだから。今?狩りの準備を始めてるよ。

 

「その口ぶりだと、大方トレセンの守衛と同じようにしか思ってねぇんだろう。確かターボが…ん?」

 

犬童警部の言う通りに上を見上げると、ドローンがフライパスして何かを投下する。

俺にめがけて落ちてくるそれは、よく見る空中投下用ドロップケースだった。こいつは…

 

「すまん、切る」

 

≪OK、落ち着いたらまたね≫

 

電話を切ってケースを受け散る。すぐさま別の着信、見るとやっぱり犬童警部から。

 

「はい、もしもし」

 

≪カイラルネットワーク所属Sランク国際ポーター、シマカゼタービンに群馬県警から緊急の配送依頼だ、端末を確認してくれ≫

 

それだけ言うと電話が切れる、はいはい、そういう感じでやる訳ね。そろそろ動く下地が整ったか。

ケースを開くとポーターの仕事の時に使う黄色いテープで目張りされた運搬ケースが一つ、それを背負うためのハーネス、各種ホルスターとマガジンポーチ、ポーターの仕事で使う手錠端末が入っていた。

そして護身用の拳銃とサプレッサー、たっぷりの予備弾倉、警棒、武器所持・携帯許可証、使用許可証。

エルボーパッド、ニーパッド、タクティカルブーツ、タクティカルグローブ、通信機、骨伝導マイクとイヤホンが入っている。

手錠端末を右腕に取り付けて起動、見慣れた起動シークエンスを見ながら手早く装備を身に着けて拳銃を点検する。

カイラルネットワーク経由で手に入れたデッドストックのMk22 MoD0ハッシュパピーを改造した麻酔銃。

前々世の伝説の英雄が使っていたものを参考にこちらで調達した代物で、幸い実戦で使ったことは一度もない。

スライドを引いてバレルと動作を確認し、引き金を引いてトリガーと撃鉄の違和感を確認、問題なし。

照準に歪みなし、構えた感じにも問題なし。銃口部のねじも問題がないのでサプレッサーを取り付ける。

使用できるサプレッサーも専用品で、オリジナルと違って耐久性は高く抜群の消音性を持つ。

サプレッサーをつけた状態で構えても問題なし、照準もしっかり見える。

麻酔弾の詰められたマガジンを装填し、スライドを引いて初弾を装填しプレスチェック、装填を確認してから慎重に撃鉄を下ろしてホルスターに納める。

一息ついて、意識を切り替え、手錠端末を起動して自分に出された緊急の依頼を確認する。

依頼は指定時刻に指定地点への配送、配送品は同梱されたSサイズの配送コンテナ一つ、内容物は警察の機密資料。

依頼を受諾して返事を待つ、すぐに手錠端末の方に通信が入った。

 

≪こちら犬童、聞こえるか?≫

 

「感度良好、依頼は受注しました」

 

≪確認した。今回の依頼は群馬県警の重要な内部資料の配送だ。

今回はこちらの調査により襲撃の危険性があると判断されたため、安全のために武器所持と使用の許可が出ている。

こちらで預かっている君の装備を一部同封した、破損や不足はあるか?≫

 

「綺麗に梱包されてましたよ。ちなみに中身のモノは?」

 

≪すまんが機密事項だ、安月給がばれてしまう≫

 

「そりゃ残念」

 

≪しかし許可があるとはいえ、お前のCQCはどれだけ手加減しても過剰と取られる可能性がある。

なので今回はできるだけ控え、警棒と銃を使え。ナイフもなしだぞ、現地調達も控えろ≫

 

胸の下に隠すようにつけた警棒のホルスターから伸縮式特殊警棒を勢いよく振り出して一回素振りしてからホルスターに戻す。

問題ない、これなら仮に力加減をしくじっても警棒が壊れるだけで殴った相手にはひどい傷は与えられないだろう。痛くないとは言わないが。

 

「ご親切に」

 

≪今回の依頼は指定時間まで納品はできない、よってそれまでは君に配送品を守ってもらわなくてはならない。

不足に備えてサポートもこちらで用意した、必要があれば頼ってくれ。連絡先とマップ情報を更新した、端末で確認してくれ。

こちらは配送品の受け入れ準備を進めておく、必要があればすぐにこちらに連絡をしてほしい。以上だ、通信終了≫

 

端末の通信が終了する。ま、つまりこういう事だろ?大捕り物の準備をするからそれまで時間を稼いで、罠の前にトレインして連れて来い、ってな。

あいつら、自分たちがマスコミだからってどうにも現実を理解してないところあるからな。そもそもマスコミっていう立場はそんな無敵なもんじゃねぇ。

あいつら、何故か知らないが情報を握ってるだけで無敵になったような気になってるんだよ。情報ってのは所詮情報、物理的な防御力はない。

そもそもマスコミの得意分野で反撃する理由はないし、マスコミだから何やろうとしてるかなんて逆によくわかるから先手打てるし。

そういえば前々世の後輩が言ってたな、デュエルマッスルがどうたらこうたら。カードゲームはよく知らんからうまく言えないけど、腕力は大切だぞ?最後に頼れるのは自分自身だからな。

前々世で見てきたよ、有りもしない権力を持った気になってる馬鹿どもが…いや、今回も上はとばっちりを喰らってる類かな。

前世からそうだけど、なんだかんだあるけどあくまで清濁併せ持ってるだけの人ばっかりなんだよな。

しかも大体苦労人で現場の動きにいつも振り回されてる感じ、前世の中央競馬のお偉いさんとか率先して頭下げに来てたもんね。

 

「了解、配送を開始する」

 

久しぶりに頑張ろうか、会社どころか地域を上げて大捕り物だ。社会舐めちゃいかんよマスコミさん、てめぇらも同じ社会人なんだから。

四方八方から恨まれてる上に一つ崩せば総崩れっていう砂上の楼閣にいること、解ってる連中はこんなことしないから。

だからこんなことしてる連中は覚悟があるってことでいいよな?ま、答えは聞いてないけど。

 

「マースコーミさーん、一緒に遊びましょう♪ってか」

 

とりあえずイライラ発散したいから的になれ、お前らサンドバッグな?

 

 

 

 






あとがき

シマカゼタービン
群馬県芦名市/芦名市街地
翌日/10:21:42
終了条件1・芦名駅前への到達。
終了条件2・一定時間経過後、マスコミに発見された状態で芦名駅前へ到達。








おまけ・とある荒尾の音声記録

「何がクラシック3冠よ、ふん!!」

「おやおや、強く出ましたなぁ中央、身の程知らずでワロタ」

「ふぇぇ…これだといろいろ世界がやばいんじゃ?」

「あー…まぁ師匠が言ってた知り合いは、きっと燃えてるだろうね」

「良いじゃない、世界に荒尾の強さを見せつけるいい機会よ」

「アケボノ?どういう…あ、これファイナルズに出てくるやつじゃん!!」

「だから何?中央にも、群馬にも負けてなんかいられない!URAファイナルズは私たち荒尾が、この第七駆逐隊が制するのよ!!
こうしちゃいられないわ、すぐに練習するわよ!オボロは場所取り!サザナミは私と機材レンタル!ウシオ!あんたはクソ提督呼んできなさい!!」

「あらほらさっさー!」

「ま、ちょっと気分落ち着けたいし良いよね?」

「はい!頑張ります!!」


オワレ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。